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病原微生物の除去でがんはなくなるか(3)――利害関係の不透明なキャンペーンが不信感を生んだ子宮頸がんワクチン問題
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JPY
Abstract
・1983 年にツール・ハウゼンにより子宮頸がんの細胞のなかからパピローマウイルスのDNA が同定されたことを契機に,パピローマウイルス感染を予防してがんを防ぐ試みが広がっている.世界的な性行動の若年化により,従来60歳代がピークとされた子宮頸がんはウイルスの蔓延とともに一気に30 歳代がピークに変わり,その予防は世界でも緊急の課題とみられるに至った.・わが国での12~16 歳の女子への16,18 型のサブタイプへの全国的なワクチン接種の試みは,重篤な副作用の報告とともに頓挫し,昨年は接種が8,000 例程度と9 割以上の減少をみた.外資系企業主導によるワクチンキャンペーンがかえって利益誘導の疑いを生み反発をよんだ.パピローマウイルス感染者が広範にわたるなかで,がんになる頻度は限られていることから,頸がん健診をうければいいのではという意見も聞かれた.・パピローマウイルスは感染後,頸部のSCJ 細胞という扁平な細胞と円柱状の細胞の境目の特殊な幹細胞のDNA に潜り込んで潜在的な感染となり,免疫を逃れる.細胞の分化につれ抗がん遺伝子であるP53 を抑制するE6 蛋白質,Rbを抑制するE7 蛋白質がつくられる増殖性の変化が起こる.組織診でCIN1,2 とよばれる頸部上皮内新生物になるが,この段階では進展することも消失することもある.・組織診で,高度異型またはCIN3 と評価されると前がん状態と考えられ手術適応になる.頸部の細胞を内視鏡で円錐切除するのが標準的な治療法であるが,若年者では早産になりやすくなる.高齢者では子宮体部のほうへ入り込んでいることもあり,子宮全摘が薦められることも多い.頸がんのゲノム解析からはさまざまなキナーゼなどの変異やウイルスDNA の挿入があり,治療標的を絞りにくい.前回までのピロリ菌やC 型肝炎ウイルス同様,幹細胞の増殖が増えるなかで,ランダムな変異が積み重なってがん化している可能性が強く,治療薬開発は難しい.・今日,小児に対するワクチン接種数は増加の一途をたどり,パピローマウイルスへのワクチンで17 種目である.母親は出産後に,煩雑なワクチン接種スケジュールを管理するために,スマホアプリをダウンロードするのが恒例となっているといい,ワクチンのビジネス化が懸念されている.パターナリズムでない,当事者の立場にたったワクチン問題への緻密な議論が求められる.
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