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蛋白質の原子レベル構造がクライオ電顕イメージでみえた― Google 基本技術であるベイズモデルが変える生物情報の世界
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JPY
Abstract
・コンピュータ能力の急速な進歩により,水に溶けた蛋白質の動く様子をシミュレーションできるようになり,2013年のノーベル化学賞は分子動力学に贈られた.これまで経験に頼ってきた薬の開発が,理論的な設計により大きく変わろうとしている.ところが,シミュレーションをするには3Å 以下の原子レベルの結晶構造の情報が必須である.標的となる蛋白質の結晶ができなかったり,結晶化できても解像度の悪いことが薬設計のボトルネックとなっている.・この問題に応える技術が開発された.『Science』の2015 年6 月5 号にNIH のSubramaniam らが,クライオ電顕での多数のイメージの解析から,2.2Å の解像度でβガラクトシダーゼと阻害剤の結合構造が解けたと報告した.彼らは昨年(2014),『Nature』にグルタミン酸受容体のopen とclose の構造を7Å でみえたと報告したばかりだ.こうした電顕でみる像の解像度の急速な進歩により,結晶がなくても標的の蛋白質と薬の結合が原子レベルでみえるようになってきた.・この解像度の急激な進歩は,電子ビームによる解像度の向上というよりは,ベイズ統計を用いたマシンラーニングのアルゴリム,Relion の開発による.ベイズ統計は18 世紀の発案以来,原理的には面白いが,現実的には計算が膨大になりすぎ実用性がないとされてきた.その後,第二次大戦中のイギリスのチューリングのドイツ暗号解読から急速に進歩し,Google の検索エンジンや,迷惑メールの選別など,あやふやなビッグデータから実際に有用性の高い機械学習のメソッドとして急速に広がっている.・Subramaniam は著者らに対して,ベイズ統計の応用において,HIV1 ウイルスの電顕像からアインシュタインの顔でも過剰に再構成(オーバーフィッティング)してしまう問題を指摘し,三次元の蛋白質を二次元に投射するときに起こる情報量の減少を意識した検証アルゴリズム(FSC)の重要性を強調している.ヒトや動植物,微生物,ウイルスのゲノム解読から多数の分子標的の蛋白質が明らかになるなかで,医学薬学者も計算科学,とくにマシンラーニングがベイズ統計を時代の中心におしあげている実情を理解する必要がある.天動説のようなフィッシャー統計から地動説のようなベイズ統計へ科学が動いている.
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