Abstract
癌細胞の増殖能は非常に強く, 宿主の免疫反応や抗癌剤治療に対して抵抗性を示す。今回われわれは, 根治的前立腺摘出術を施行した前治療を受けていない前立腺癌患者10例に対し, human leukocyte antigen(HLA)クラス I , multi-drug resistance 1(MDR 1), androgen receptor(AR)の発現を検討した。前立腺癌細胞におけるHLA クラス I , MDR 1, ARの発現率は平均でそれぞれ41, 35, 74%だった。さらに, 個々の症例でHLA クラス I , MDR 1の二重染色を行った。HLAクラス I(+)/MDR(+), HLA クラス I(+)/MDR(−), HLA クラス I (−)/MDR(+), HLA クラス I(−)/MDR(−)のそれぞれの比率は平均で13, 29, 22, 38%であった。同様にHLA クラス I , AR で二重染色を施行したところ2例の症例を除き(HLA クラス I(−)/AR(+)の癌細胞が優位であった)同様な結果が得られた。これらの結果, 未治療の前立腺癌細胞においても幅広い遺伝子の変異により, 宿主免疫能からの回避や抗癌剤治療やホルモン療法に対する治療抵抗性を獲得していることが示された。