Abstract
乳癌肝転移例の予後は不良とされているが, 今回11例の自験5年生存例(転移診断時年齢35〜76歳)につき長期生存に寄与する因子を求めた。標準的治療とされる全身的化学療法のみで治療された例はなく, 全例にOK-432前投与肝動注養子免疫療法(以下, OK-AIT)が実施され, 他の局所療法として5例に肝切除, 2例に肝動注化学療法が併施されていた。11例中8例は初発肝転移例(初再発巣に肝を含む例), 3例は続発肝転移例(他部位再発に続発する肝転移)であり, 5年経過したAIT 実施全例128例中初発肝転移, 続発肝転移の5年生存率は各11.8%, 5%であった。ホルモン受容体(HR)は4例不明,6例陽性にて1例のみHR(−)かつHER2(+)であった。肝転移の予後, AIT の適応とHR, HER2の関連を知る目的で2001年以後の肝転移自験139例につき解析した。初発肝転移51例の50%生存期間(MST)は31か月, 5年生存率25%と予後は改善しており, 特にHR(+)HER2(−)例のMST 50か月(n=18)がHR(−)HER2(−)例の予後不良(MST 6か月, n=2)と対照的で注目された。なお, HER2(+)例のMST は27か月(n=31)であった。続発肝転移88例のMSTは11か月, 5年生存率は6%と限界があったが, MST はHR(+)HER2(−)>HER2(+)>HR(−)HER2(−)にて(各17, 13, 4か月)にて初発例と同傾向であった。ちなみにOK-AIT の奏効率は初発52%, 続発34%間に有意差はなかったが, HR(+), HR(−)間に有意差(p=0.0041)あり, HR(+)例52%, HR(−)例12%であった。なお, 過去の症例中, 初発肝転移例に肝切除, OK-AIT を併施した18例では5例に同時他部位転移があったものの56%の5年生存率が得られ,肝転移例を一律に予後不良と断ずるのは誤りと考えられた。