Abstract
肝細胞癌の治療中に生じた静脈系腫瘍塞栓に対して, 放射線療法(リニアック)を施行し,その効果ならびに予後を検討した。平均年齢70歳,男性2例,女性1例。症例1:66歳, 男性。感染症なしの巨大肝細胞癌に対して門脈塞栓術施行後,体外循環下に肝切除。残肝再発, 肺転移に対してTAE 2回施行後, 呼吸困難出現, 左肝静脈より右心房に至る腫瘍塞栓を確認。肝動注療法ならびにTAE を施行するも症状改善がみられず, 放射線療法を40Gy施行。腫瘍が縮小し呼吸困難が消失し退院となった。5か月後肺炎にて死亡。症例2:74歳, 女性。C 型肝炎。多発のHCCで発見。TAEの後, 肝切除とMCT を施行。再発に対してTAE 3回とRF 施行後左乳癌発見時, 左肝静脈より下大静脈に至る腫瘍塞栓を確認。乳癌を手術, TAE 後放射線療法を48Gy腫瘍塞栓に施行。縮小をみる。4か月後肝不全ならびに肺水腫にて死亡するも腫瘍の増大はなし。症例3:79歳, 男性。多発のHCCで発見。TAEにて効果のない箇所を肝切除。再発に対してTAE 2回, RFA, MCT の際, 右心室に孤立性腫瘍栓を確認。放射線療法を50Gy行う。腫瘍の縮小あり, その後門脈腫瘍栓の出現, 肺転移, 骨転移, 大腸癌の合併があるも現在生存中である。肝細胞癌静脈系の腫瘍塞栓の制御には放射線療法が有用となる可能性が示唆された。