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癌と化学療法
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Abstract
いわゆる固形癌に対する基本的標準治療は切除術であるが,進行癌ではしばしば外科的手術のみでは治癒させることはできない。近年,進行固形癌に対して化学・放射線療法を加味した集学的治療が一般的になってきた。寛解導入化学療法(induction chemotherapy)の目的は,術前に化学療法によって原発性局在性の腫瘍の縮小を図って外科的手術を行いやすく,かつ根治的に切除できるようにすることであるが,進行癌の場合はdown stagingにもっていき切除可能とし,さらに化学・放射線療法などを追加することが考えられる。また,抗腫瘍効果の状況から次の治療戦略の構築に役立つであろう。induction chemotherapyに関しては,induction,primary,initial,basal,preoperative,そしてneoadjuvantなどが用いられているが,inductionが適当な用い方ではないだろうか。induction chemotherapyには大別してintra-arterial inductionchemotherapyとsystemic induction chemotherapyとがある。術前動注化学療法ではsystemic に比べて奏効率は20〜30%高いが,生存率は必ずしも延びなかった。動注方法には種々の方法があるが,煩雑でskilled な技術が必要で様々なリスクも多いために一般的には受け入れられず普及していないが,肝癌など一部の腫瘍に対しては試みられている。一方,systemic induction chemotherapyは抗癌剤の改良・進歩が著しく,StageⅡないしはStageⅢの進行癌症例に応用して外科的治療成績の向上がみられている。乳癌症例などでは術後の乳房温存率が高くなることが認められている。しかし,DFSあるいはOSの著明な改善は認められていない。だが,systemic induction chemotherapyにてpCR が得られた症例は著明にDFSの改善が認められている。したがって,術後に補助化学療法の必要性が認められ,術後化学療法を加えることによって延命効果が承認されている。そこで,今やprimary systemic therapyのためのpredictive markerの探索がgenomicあるいはproteomicになされている。これによって初めてpersonalized therapyが可能となり,不必要な薬剤も選別できるであろう。induction chemotherapyによる副作用は薬剤のタイプ・投与量・投与期間などで決まってくるので,十分に注意する必要がある。これからはadjuvant(術後補助化学療法)だけでなく,積極的に術前にinduction chemotherapyを行って抗腫瘍効果を上げて切除にもっていきRO operation をめざすことが大切であり,さらに術後にadjuvant chemotherapy を行うperioperativechemotherapyの時代になっていくのではないだろうか。
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