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JPY
Abstract
細胞がん化の第一標的がDNAであることを示す証拠は多い。たとえば,網膜芽細胞腫(RB)や家族性大腸ポリポーシス(FAP)などは原因遺伝子が特定されており,その遺伝子の突然変異が発がんの直接原因であることが明確に示されている。しかし,それらの患者のがん発症頻度は10 万人に数名程度と極めてまれな事象である。ところが,ヒトの半数はがんになる。突然変異頻度と発がん頻度が桁違いに違うという事実からだけでも,大部分の細胞がん化が単独の遺伝子変異で生じている可能性は極めて少ないことを示唆する。それどころか,現在,発がん機構としていちばん信じられている「発がんは複数の突然変異が積み重なって進行する」という「多段階発がん機構」では説明できない。一度に複数のがん関連遺伝子が同時に変化するのだろうか。ヒトゲノム解析プロジェクトの結果,ヒトの全遺伝子数は意外に少なく,およそ25,000遺伝子であることがわかった。そのうちの約10%,数にしておよそ2,500遺伝子が細胞増殖や血管新生など,何らかの意味でがん形質発現に関係する遺伝子であると予想されている。そして,1 Gy放射線の被曝で誘導される一般的な遺伝子の突然変異率は,およそ10−5程度であるのに反し,細胞がん化頻度は3×10−2と桁違いに大きく,1 Gy の放射線はがんに関連する2,500 遺伝子のすべてが同時に突然変異を起こさねばならないことになる。しかし,これまでそうしたことが起きていることを示唆する結果はない。これらのことからも放射線発がんは,突然変異を経る経路以外に発現頻度が極めて高い経路が存在すると考えるのが極めて自然である。ここでは放射線発がん機構に関して,私が40 年余りの研究で得た成果から導きだした「突然変異を経由しない発がん経路」の実体について解説する。
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