Abstract
目的: 発熱性好中球減少症(febrile neutropenia: FN)の高リスク患者に対し,広域抗菌薬の予防投与を行うことで死亡イベントなどを減少させる報告がある。しかしFN 発症リスク別の抗菌薬予防投与について明確な基準がないなかで,臨床ではFN に対する抗菌薬予防投与が行われており,適正使用の実践が求められる。そこで,当院での外来化学療法施行後の広域抗菌薬処方状況を分析した。方法: 2011 年4 月1 日~2016 年3 月31 日に昭和大学病院外来腫瘍センターで初回化学療法を受けた患者930名を対象とし,患者背景,化学療法レジメンごとの広域抗菌薬処方状況を調査した。本研究は昭和大学医の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号: 2318)。結果:ガイドラインにおけるFN 発症高リスクレジメンでは9.1%(35/384)で広域抗菌薬が処方されていなかった。一方,低リスクレジメンでは52.7%(288/546)で広域抗菌薬が処方されていた。多変量解析では広域抗菌薬の処方に関連する因子として高リスクレジメン(OR: 2.05,p=0.009),年齢(+1 歳,OR: 0.98,p=0.002),女性(OR: 7.10,p<0.001),白血球数(+1.0×10 / 3mL,OR: 1.19,p=0.013),手術歴(OR: 23.19,p<0.001)があげられた。結論:当院における外来化学療法施行時の広域抗菌薬処方傾向が明らかとなった。高リスク患者の見極めを行い,今後も薬剤師による抗菌薬適正使用への介入が求められる。