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薬理と治療
- Authors: 久保田 潔1, 小出大介1, 古閑 晃1, 景山 茂2, 植田真一郎2, 木村通男3, 豊田 建3, 大橋靖雄4, 大津 洋4, 青木事成5, 小宮山 靖5, 庄本幸司6, 平河 威7, 篠田英範8, 佐藤嗣道9
Abstract
Standardized Structured Medical record Information eXchange(SS-MIX)は 2006 年に厚生労働省標準的医療情報交換推進事業として開始されたプロジェクトである。病院情報システムから HL7 形式で出力される処方,臨床検査の結果,診断,患者情報のデータを受信・蓄積するためのソフトウエアは無償で提供されている。我々は SS-MIX 標準ストレージの市販後調査や臨床研究への利用を推奨する。提言は以下の 7 つから構成される。[1]調査や臨床研究において,SS-MIX 標準ストレージの薬や臨床検査の結果に関する情報は電子的調査票に直接取り込むことができ,研究者は高い精度と粒度の情報を得ることができる。[2]SS-MIX 標準ストレージは地震や突然のネットワーク障害などの災害時において診療に必須の最低限の情報を提供することができ,医療情報の喪失を最小限にとどめるためのツールとして機能しうる。[3]SS-MIX 標準ストレージは,ストレージ内の情報の効率的取得とともに,ある薬を特定期間非使用後に開始した“new users”の特定を可能とし,良質の薬剤疫学研究を実施するために利用することができる。“newusers”デザインはバイアスのない結果を得るためにはしばしば必須である。[4]製薬企業が規制にしたがって市販後の調査を実施する際に,SS-MIX 標準ストレージはデータの迅速で効率的な収集を促し,時宜にかなったリスク最小化のための方策を講ずることを可能とする。また,SS-MIX 標準ストレージによって,複数のタイプの研究デザインの利用やデータの質の向上が期待される。[5]SS-MIX 標準ストレージは,リスク最小化計画実施前後の処方パターンや問題となる有害事象の発生を比較することによるリスク最小化計画の評価にも利用可能である。[6]臨床試験の計画にあたって,SS-MIX 標準ストレージは適格患者数の推定に用いることができる。疾患や薬物治療の特徴を知るための断面研究に用いることもできる。さらに,冠動脈造影を実施した患者,薬の新規使用者や稀少疾患患者のコホート特定が可能である。そのようなコホートを用いて,コホート内の症例対照研究,ファーマコゲノミックス研究,治療法の有効性/有用性を比較する研究が可能になる。[7]SS-MIX 標準ストレージは,将来いくつかの条件が満たされれば臨床研究における正規のデータソースとして利用することができる。たとえば,標準化したデータ構造規格(例:Clinical Data Interchange StandardsConsortium(CDISC))の利活用,およびコンピュータ化システムバリデーション(Computerized System Validation,CSV)に関する取扱いについて,産官学での合意形成ができること,である。
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