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JPY
Abstract
しばしばわれわれスタッフは、筆者が取り上げている患者の気持ちや態度、行動、言動を「困った患者だ」「けしからん」「何とかならないものか」「早く解決できないものか」などと思いがちです。つい、身体医学的訓練を受けた治療者ほど、そう思います。「このような問題のある患者は何とかしないと」と。事実、身体医学はそうして患者の問題ひいては苦しみや痛み、障害などを軽減、救済、治療してきました。 しかし、筆者が指摘するとおり、われわれは急いではならないのです。「ああ、そうか。こんなふうにまでして、患者は今苦闘しているのだ。何とかしたいと心のなかで闘っているのだ」と理解できればしめたものです。むしろ、このような理解をよい機会に、われわれ治療者自身が自分の心のなかに「わいて出てきている」気持ちや感情を自分自身で「吟味する」ことが、ひいてはさらなる深い理解につながっていくものだろうと思います。 自分の心のなかに相手(患者)の心をみる、とでも言いましょうか。すぐに行動や治療(しばしば向精神薬の投与になりがちです)になるのではなく、「見守る」「待つ」「十分に時間をかける」ことを心がけたいものです。 精神医学的な問題については、治療者はけっして「万能」ではありません。自己の救済願望を満たそうとするあまり、かえって患者の心を傷つけることも起こりえます。「否定的」「ノー」「拒絶」ととらえることよりも、「今、たいへんなんだ」と思える能力を養いたいと思います。
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