Abstract
ここ10年の間に統合失調症の薬物療法は,Evidence Based Medicineの潮流を受けて,新規抗精神病薬(新規薬)のefficacyを探るRandomized Controlled Trial(RCT)の結果が重要視されてきた。多くのRCTでは,従来型抗精神病薬(従来薬)の対照薬としてhaloperidolが選ばれたが,新規薬との優劣を検証する場合には,その用量設定が鍵となることが判明した。新規薬は,錐体外路症状,陰性症状,認知機能障害,再発予防やQuality of Lifeの向上などにおいて,ベネフィットが多いという当初の期待をこめた見解は,従来薬と比較した多数のefficacy試験でかなりの程度実証され,第一選択薬という不動の地位を確立したかに思われた。しかし,欧米の政府主導の大規模なeffectiveness試験の結果より,新規薬の効果面での明らかな優越性は疑問視され,薬剤による違いも大きくないことが判明した。その一方で,体重増加をはじめとした新規薬の副作用プロフィールが使い分けのポイントに浮上し,新規薬の治療効果を検証するためには,リスク/ベネフィットからの視点が不可欠になってきた。今後我々が新規薬の真の力量を知るためには,エビデンスの質と量を問いながら,冷静かつ総合的に見極めていく見識が必要となるだろう。 Key words :efficacy, effectiveness, new―generation antipsychotic, meta―analysis, relapse prevention