Abstract
抗精神病効果が期待できる用量へ短期間内に迅速に展開する急速増量法を用いて,慢性に経過している統合失調症患者12例を対象にquetiapine(以下QTPと略)を1週間以内に600mg/日以上へと増量するスイッチングを試みた。QTPへのスイッチング前後(直前,スイッチング開始後1,2,4,8週目)における精神症状はBrief Psychiatric Rating Scale(以下BPRSと略)を用いて評価した。その結果,BPRS総スコアはスイッチング前に比べてスイッチング後1週目を含む全ての評価時点で有意に低下した。またBPRS下位項目18項目のうち不自然な思考内容,概念の統合障害,幻覚による行動,猜疑心,衒奇症と不自然な姿勢の5項目を「陽性症状」,情動的引きこもり,運動減退,情動の平板化,非協調性の4項目を「陰性症状」としたクラスター分けをして検討すると,陽性症状5項目のうち「猜疑心」を除く4項目と陰性症状4項目の全てでBPRSスコアの有意な低下が認められた。以上の結果は,急速増量法を用いたQTPへのスイッチングが慢性に経過している統合失調症に対する有用な治療法の1つになる可能性を示唆している。 Key words :quetiapine, chronic schizophrenia, switching, rapid dose titration, initial target dose