Abstract
Escitalopramは,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に分類される抗うつ薬である。今回,大うつ病性障害患者に対するescitalopramの長期投与時の有効性および安全性を検討するため,92例の被験者に対して52週間の非盲検可変用量長期投与試験を実施した。被験者の平均年齢は約36歳であり,全体の5分の3が女性であった。約半数の被験者が初めてのエピソードであり,最初の大うつ病エピソードの開始時の平均年齢は約31歳であった。また,観察期開始時のMADRS合計点の平均値は31.3点であり,中等度から重度の被験者が対象となった。その結果,MADRS合計点の変化量は,観察期24週時までは投与期間の延長に伴い各評価項目での改善が認められ,観察期24週時以降は52週時まで有効性が維持された(52週時のMADRS合計点の変化量:-20.1)。観察期の有害事象の発現率は94.6%(87/92例,555件)であった。程度はほとんどが軽度または中等度であり,重度な有害事象で複数件認められた事象はなかった。また,後観察期の有害事象の発現率は38.6%(34/88例,65件)であり,程度はいずれも軽度または中等度であった。「有害事象」による中止例について中止時期を検討した結果,中止時期に偏りは認められなかった。本試験の結果,escitalopram 10~20mg/日の長期投与により,有効性の維持が期待できるものと考えられる。また,escitalopram 10~20mg/日の長期投与時の安全性は認められたものと考えられる。 Key words : escitalopram, SSRI, depression, antidepressant, long-term study