Abstract
Escitalopramは,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に分類される抗うつ薬である。今回,高齢の大うつ病性障害患者に対するescitalopramの長期投与時の有効性および安全性を検討するため,65歳以上の患者を対象に52週間の非盲検可変用量長期投与試験を実施した。その結果,MADRSの合計点の変化量は,観察期24週時までは投与期間の延長に伴い各評価項目での改善が認められ,観察期24週時以降は52週時まで有効性が維持された(52週時のMADRS合計点の変化量:-15.3)。観察期の有害事象の程度はほとんどが軽度または中等度であり,重度の有害事象は1例にのみ認められた。死亡は1例(突然死,71歳女性)に認められた。「8週時まで」には認められず,「8週時超」に2例以上に認められた有害事象は,体位性めまい,アレルギー性鼻炎,歯痛および体重増加であったが,いずれも軽度であった。後観察期(投与終了後2週間)の有害事象の発現率は,23.8%(5/21例,8件)であった。本試験の結果,escitalopram 10~20mg/日の長期投与により,日本人の高齢患者での有効性の維持が期待できるものと考えられる。また,escitalopram 10~20mg/日の長期投与時の忍容性は認められたものと考えられる。 Key words : escitalopram, SSRI, depression, geriatric, long-term study