Abstract
双極性障害の薬物療法は,1948年にCadeがlithium carbonateの躁病に対する有効性について初めて報告し,lithiumは現在も気分障害の躁病エピソードや双極性障害の有効的な治療薬として最も使用される薬物の1つである。その後,バルプロ酸が,双極性障害の躁状態や躁うつ混合状態にlithiumと同等の有効性があるとの報告がなされた。ところで,日本国内においては,risperidoneが1996年に新規非定型抗精神病薬として登場し,その後,quetiapine,olanzapine,perospirone,aripiprazoleなどが次々に上梓された。1996年,clozapineが治療抵抗性の躁状態に対して有意に治療効果があったとの報告がなされた後,olanzapine,quetiapineやaripiprazoleにも双極性障害に対して有効性があるとの報告がなされた。現在では,双極性障害の単剤での治療や従来のlithium,carbamazepineやバルプロ酸などの薬剤とこれらの非定型抗精神病薬の併用療法が,双極性障害の治療の第一選択として推奨されている。今回,いくつかの症例をとおして,quetiapineのムードスタビライザーとしての位置づけについて考察する。 Key words : quetiapine, mood stabilizer, mood disorders