Abstract
本論では,医療観察法における医療の同意に関してとくに注意して評価されるべき事項として(1)同意能力と同意/非同意の意思の評価,(2)同意動機の背景の評価,(3)当該医療の利益と不利益性の評価をあげた。さらに,(1)については(1a)精神機能の障害が同意能力にどのように影響しているのか評価すること,(1b)非同意や同意の意思表示がなされない場合に,それを安易に精神症状のためであるとか,不合理な考え方であると評価していないか確認すること,(1c)同意の意思表示がなされた場合に,それを安易に有効な同意と捉えていないかを確認すること,(2)については,(2a)同意の意思表示があったとき,その同意動機について任意性の視点から丁寧に確認すること,(2b)同意動機の背景については,治療の汎化といった臨床的視点からも確認すること,(3)については(3a)当該医療を行う場合/行わない場合の対象者(患者)本人にとっての利益と不利益を評価すること,(3b)当該医療を行う場合/行わない場合の社会や第三者にとっての利益と不利益を評価すること,(3c)上記(3a)(3b)のバランスについても評価することをポイントとしてあげた。また,同法の入院処遇ガイドラインで定められた,多職種チームによる会議,治療評価会議,病棟運営会議,病棟倫理会議,外部評価会議などによって透明性が担保されていること,一方でそれらの会議の形骸化を防ぐことが最も重要な課題であることを指摘した。 Key words : informed consent, compulsory treatment, audit system, forensic ward