Abstract
Escitalopramは従来のSSRIに比べ,より選択的にセロトニン再取込み阻害作用を持つ。今回,従来のSSRI(fluvoxamine,sertraline),NaSSA(mirtazapine),SNRI(duloxe-tine)などが十分量投与されたが無効で,三環系抗うつ薬(amitriptyline)では尿閉などの副作用が出現し,前医で電気けいれん療法を推奨されていた全般性不安障害を伴う大うつ病性障害に,escitalopramの付加療法が著効した60歳女性の症例を経験した。初診時,抑うつ気分,意欲低下,希死念慮に加え,強い不安・焦燥,筋緊張を認めた。Quetiapineを主剤とした薬物治療を行い,10週の入院治療で不安・焦燥,抑うつは軽度改善したが,外来治療中に再び抑うつ,不安,筋緊張が高まった。Escitalopram 10mgを付加投与し,20mgまで漸増したところ約4週間で急速にすべての症状が消退した。Escitalopram投与後6ヵ月を経た現在も寛解状態を維持している。高齢者・初老期のうつ病にはしばしば不安障害が併存し,治療抵抗性が高いと考えられるが,escitalopramは不安の強い大うつ病性障害の1つの選択肢となる薬剤であると考えられた。 Key words : escitalopram, general anxiety disorder, depression in elderly, augmentation