Abstract
Clozapineと電気けいれん療法の導入のタイミングはどう考えるべきだろうか。当院では2012年9月末までにclozapineの使用は47例,うち電気けいれん療法を併用したものは17例であった。また両者を用いた事例では,すべてでclozapine導入前に電気けいれん療法を行っており,その内訳をみると,2例では忍容性不良で維持ECTを行ってきたものの,幻覚妄想状態の再燃が維持電気けいれん療法では予防できなくなったものであった。そして残りの15例ではclozapineへの変薬を円滑に行うためであった。当院の経験からは,忍容性不良の問題から維持電気けいれん療法により安定を維持するほかなかった患者が,clozapineの導入により,維持電気けいれん療法から離脱することができていた。また慢性緊張病状態で,昏迷状態が持続し,電気けいれん療法でも部分回復にとどまった1例が,clozapineにより,さらに回復し,幻覚妄想は持続するものの自身の身の回りのことはでき,院内では適応に問題がないまでに回復した。また自傷他害が切迫しており変薬時の減薬が困難な事例,強い拒絶症・敵意,幻覚妄想に圧倒されており治療関係が作りにくい事例には,電気けいれん療法にて1段階回復させたうえで,clozapineへ変薬することが有効であった。重篤な病態であるときには電気けいれん療法で,切迫した状態をなるべく短い期間でとおりぬけることが患者関係を円滑なものにしていた。そして電気けいれん療法では部分反応例がclozapineにてさらに回復する可能性があると考えられた。 Key words : clozapine, electro-convulsive therapy, treatment-resistant schizophrenia, clozapine augmentation