Abstract
本邦では,2013年に第二世代抗精神病薬の持効性注射剤(LAI:long acting injection)であるpaliperidone LAIが上市された。統合失調症治療には薬物療法が必要不可欠であるため,LAIは治療上,重要な役割を担うことが期待される。しかし,実際には,医療従事者は患者がLAIという剤形を受け入れられないだろうという先入観を持っている場合が少なくなく,本邦ではLAIがあまり普及していない現状がある。そこで,我々は,paliperidone LAIを開始した95名のうち投与中止の32名および投与期間が6ヵ月未満の7名の患者を除き6ヵ月継続投与している統合失調症患者50名(risperidone LAIからの切り替え例70.0%,外来例84.0%)を対象とし,paliperidone LAI導入後の満足度調査を実施した。その結果,90.0%の患者が「満足している」と回答し,80.0%の患者が本剤を「今後も継続していきたい」と回答した。さらに,paliperidone LAI の満足度とDAI-10(服薬アドヒアランス)の間に正の相関が認められた。また,paliperidone LAI導入6ヵ月後のPANSSスコアは導入前のそれと比較して有意な差は認められず,少なくとも精神症状は維持されていた (導入前スコア78.3±11.6点, 導入後スコア79.7±13.5点, p=0.395)。以上のことから,paliperidone LAIは,患者満足度が高く,服薬アドヒアランスの維持・向上に優れていることが示唆された。 Key words : paliperidone long-acting injection, adherence, satisfaction, DAI-10, schizophrenia