Abstract
今後,不眠症治療を効率化(特に不眠症改善薬使用の適正化)し,さらに新規治療薬の開拓を促進するためには,まず不眠症患者の各臨床病期における症状を総合的に把握すること,自覚的な不眠感の症状全体の中での位置づけを明らかにすること,プラセボ効果を含めて治療薬がどこまで症状を抑制しうるのかという点についての目安を立てることが望まれる。本稿では,一般人口を対象とした調査の結果から,夜間の入眠障害ないし睡眠維持障害の評価だけでなく,抑うつ感をはじめとする抑うつ症状評価ならびにquality of life 評価の必要性を示した。また,薬剤の効果にはプラセボ効果の占める割合がかなり高いこと,臨床で汎用されるベンゾジアゼピン系薬剤によって短期間に不眠症状を抑制─正常化しうる症例は中等症水準までの症例に限られており,重症例に対応可能な薬物治療の開発ないし不眠のための認知行動療法併用の必要性を強調した。不眠治療においては,各種指標の意義を慎重に検討するとともに,各種治療薬の適応と限界を知ることが重要であると考えられた。 Key words : treatment drug for insomnia, quality of life, placebo effect, objective insomnia, paradoxical insomnia, predictor of effectiveness