Abstract
2013年,APAにより約20年ぶりにDSM-5が発表された。認知症領域における診断カテゴリーの見直しがなされ,神経認知障害(Neurocognitive Disorder)という総称となり,さらにせん妄,認知症(Major Neurocognitive Disorder),軽度認知障害(Mild Neurocognitive Disorder)の3つに大別された。認知症診断に記憶障害は必須ではなくなり,「複合的注意,実行機能,学習と記憶,言語,知覚−運動,社会認知」の6つの主要認知領域における機能障害の重症度による評価となった。DSM-5では遺伝子検査や脳画像所見も認知症診断の確からしさの項目として取り入れられた。バイオマーカーを用いて,臨床症状を呈する前の段階での認知症診断を検討する流れであり,薬物療法においてはDIAN,API,A4 studyなどpreclinical ADを対象とした大規模な早期薬剤介入試験が米国を中心に行われ,世界の注目を集めている。発症前段階での薬物介入の結果が有望なものであれば,将来のAD治療にとって大きな躍進となるのではないかと期待される。 Key words : DSM-5, dementia, Alzheimer’s disease, diagnosis, pharmacotherapy