Abstract
Brexpiprazole(BRX)は,aripiprazole(APZ)に比べドパミンD2 受容体に対する 固有活性が小さく,セロトニン5HT1A⊘2A 受容体への親和性が高いことから,APZで問題に なることがあったアカシジア,不眠などの有害事象の発生リスクならびにこれらによる用 量不足のための効果不十分の改善が期待できる。さらに,APZと同様,ヒスタミンH1 受 容体やムスカリンM1 受容体に対する親和性が低いことから,過鎮静や認知機能障害,体 重増加などの副作用が少ない。BRXへの切り替えは,先行研究や自験例の検討から,上 乗せ後前薬漸減法が適切と考えられた。BRXの薬理学的特性から,多種類の受容体に対 する親和性を有する鎮静系抗精神病薬からの切り替えはより慎重に行う必要がある。BRX への切り替えにより,アカシジア,過鎮静などの副作用の軽減,用量不足による効果不十 分の改善,抗うつ作用,抗不安作用の増強,睡眠改善効果がみられ,統合失調症維持期治 療における有用性が確認された。 臨床精神薬理 22:603-611, 2019 Key words :: brexpiprazole, serotonin-dopamine activity modulator , plateau cross-titration switching, dopamine partial agonist, aripiprazole