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2007年 69巻7号
外科
ISSN
:
0016-593X
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特集【外科的侵襲に対する生体反応の最新情報】
I.総論:1.侵襲時の生体反応
(深柄和彦)
p.
745–750(6)
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外科侵襲に対する生体反応は,従来,神経・内分泌系の反応とそれに伴う代謝変動を中心に研究されてきた.侵襲時の代謝の亢進は創傷治癒・免疫系活性化のために必要な反応で,これに対する栄養サポートは外科患者管理の中心を担う.近年は,侵襲時の生体反応はサイトカインなどのメディエーターの点から分子生物学的に解明されると同時に,全身性炎症反応症候群の概念でとらえられ,侵襲後の臓器不全発症予防に向けての研究がすすめられている.
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I.総論
2.生体反応の発動機序
(樽井武彦)
p.
751–756(6)
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さまざまな外科的侵襲は,神経内分泌反応とサイトカイン誘発反応という二つの経路から全身に伝えられる.これらは互いに影響し補い合って,生体の恒常性を保つために働いている.侵襲に対する生体反応はもともと生体防御に働くが,過剰な侵襲が加わり過剰反応が起れば臓器障害が生じる.外科医は侵襲学に精通し,患者に加えられる侵襲の種類・量とそれに対する生体反応を認識しコントロールすることにより,治療成績の向上に努める必要がある.
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3.外科的侵襲とサイトカイン—SIRS とCARS
(永田康浩)
p.
757–761(5)
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全身性炎症反応症候群(SIRS)は非特異的な全身性炎症反応であるが,その病態には炎症メディエーターであるサイトカインが深くかかわっている.生体は,外科的侵襲に対して炎症性サイトカインと,これに呼応して抗炎症サイトカインも産生する.この抗炎症サイトカインは免疫抑制へ向かう生体反応であり代償性抗炎症反応症候群(CARS)の病態にかかわっている.臨床的にはこのようなSIRS とCARS が,それぞれバランス,アンバランスとなり病態が推移し,アンバランスはやがて臓器不全から不可逆的な状態へと移行する.外科治療の目的は,両者がバランスのとれた状態(ホメオスタシス)に生体を保ち,維持することにある.
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II.各論
1.神経系の生体反応
(桂巻正)
p.
762–768(7)
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侵襲に対する生体の細胞間情報伝達システムは神経系,内分泌系,免疫系の三つの系が存在し,神経系により生体侵襲制御反応としてimmuno-to-brain communications という概念が注目されている.生体には自律神経,中枢神経によって炎症を感知し,生体反応を制御する反応経路があるが,その求心路としての迷走神経の重要性が判明し,アセチルコリンによる免疫細胞におけるサイトカイン産生抑制や脳内サイトカインを介した侵襲による生体反応とその制御法が解明されている.
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2.内分泌系の生体反応
(神波力也)
p.
769–772(4)
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外科的侵襲に対して生体では,神経系,内分泌系,免疫系が相互に作用し合いながら三位一体となって恒常性を維持している(immuno-neuro-endocrine system).外科的侵襲に対してさまざまなホルモン変動がみられるが,視床下部・下垂体・副腎・交感神経系の担う役割は大きい.今後,この恒常性維持機構のより詳細な解明が期待される.
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3.免疫系の生体反応
(有賀淳)
p.
773–777(5)
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外科的侵襲に対する免疫応答はおもに炎症性サイトカインの作用によって引き起される.組織損傷やストレス負荷により単球,マクロファージ,リンパ球,好中球,線維芽細胞などが刺激されてさまざまなサイトカインが産生され,全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ばれる症状が出現する.免疫能では,NK 活性の低下やリンパ球数の減少などが認められ,術後の感染症や悪性腫瘍の再発・転移のリスクファクターとなりうる.手術後の免疫低下を防止する目的で,術前からのimmunonutritionや各種免疫賦活薬の投与が試みられており,臨床試験による実証がすすめられている.われわれは手術直後から免疫細胞療法を実施し,術後の免疫力増強を試みており,悪性腫瘍の術後再発や転移を抑制する効果が期待される.
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4.代謝系の生体反応
(小山諭)
p.
778–787(10)
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生体では生体機能・恒常性を維持するために代謝活動が営まれ,代謝は同化と異化に分けられる.エネルギー代謝の基本は蛋白/アミノ酸・糖質・脂質おのおのの代謝系であり,クエン酸回路を中心にエネルギー産生を行っている.その他,水/電解質の代謝も体液保持,酸塩基平衡の調節などにも重要である.
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5.外科手術侵襲と生体循環器系の反応
(高橋洋介)
p.
788–791(4)
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高等動物において,内部環境に変化をもたらすような許容限界を超えた外部刺激を侵襲ストレスという.局所反応に加え侵襲の種類とは無関係に起る全身的な変化を生体反応といい,多くは生体の防御反応である.循環器系においては,神経・内分泌系の変動に呼応して血圧上昇,脈拍増加が生ずる.さらにサイトカイン産生に伴い心拍出量増加と末梢血管抵抗減弱をきたしhyperdynamic state となる.防御反応でありながら,反応が過剰となると全身性炎症反応症候群(SIRS)を合併し,さまざまな臓器障害が発生しうる.
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6.血液凝固系の生体反応
(沢井博純)
p.
792–796(5)
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外的侵襲に対し,生体は防御反応を起す.なかでも血液凝固線溶反応は,血管組織損傷に対する止血・創傷治癒という意義をもつ.しかし,高度な侵襲が加わった場合には,この生体防御反応が過剰に起ることによって生体の恒常性が破綻し,臓器障害〜多臓器不全へといたり生体を死の淵にさらすこととなる.不幸にも播種性血管内凝固症候群(DIC)〜多臓器不全を発症してしまった場合には,その病態・原因をよく理解し,厳重な計画の中で適切な治療を施行していく必要がある.
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7.異常環境下における生体反応
(山上裕機)
p.
797–802(6)
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異常環境の中でも,肝障害と糖尿病は臨床的にもっとも頻度が高く,また治療がむずかしい病態である.個々の症例ごとにサイトカインの産生が異なり,サイトカインの遺伝子多型が関与していることも念頭に置く必要がある.肝硬変では,侵襲後の高サイトカイン血症により好中球の活性化と微小循環障害が起り,併発しやすい感染症による高エンドトキシン血症により,さらなる好中球の活性化と微小循環障害が起る.糖尿病患者では,集中的なインスリン治療による血糖管理で手術侵襲に対する合併症と死亡率を低下させることができる.
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8.生体反応と臓器障害
(板本敏行)
p.
803–808(6)
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過度の侵襲に対する生体反応は,全身性の炎症反応が優位であれば全身性炎症反応症候群(SIRS),全身性の抗炎症反応が優位であれば代償性抗炎症反応症候群(CARS)となる.このバランスがどちらに大きく崩れても臓器障害へと移行する.さまざまな炎症性メディエーターと活性化した白血球,血小板,血管内皮細胞の相互作用によって起る血管内皮細胞障害,微小循環障害が臓器不全発生の主因となる.さらに凝固線溶系のバランスが破綻して播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発する.
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9.外科侵襲とホメオスタシス
(丹黒章)
p.
809–815(7)
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外科侵襲が加わると局所からサイトカインが分泌され,神経内分泌反応により呼吸,循環の賦活,水分電解質,エネルギーの保持とサイトカインネットワークによる生体防御反応が働く.通常はホメオスタシスによる回復へと向かう.侵襲が高度な場合や高齢や合併症によりホメオスタシスの効率が不良な場合には全身性炎症反応症候群(SIRS)と代償性抗炎症反応症候群(CARS)が発生しやすく,感染などのsecondattack により容易に臓器不全に移行する.患者の全身状態を考慮した低侵襲手術と巧みな術前後管理が必要である.
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10.手術後の回復過程
(石河隆敏)
p.
817–822(6)
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米国のMoore は侵襲学の発展に寄与した代表的外科医であり,術後回復過程を4相“injury”,“turning point”,“muscular strength”,“fat gain”に分類し,生体システムとして異化—同化への転換期を含む侵襲回復の概念をもたらした.術後の全身反応は神経・内分泌系シグナルに裏打ちされることで説明され,今日ではサイトカイン,レセプター,プロスタグランジンなどの各種メディエーターの関与が近年の分子生物学の発展とともに明らかとなってきた.こうした術後病態の解明からEBM に基づいた術後回復をサポートする低侵襲手術と積極的recovery program が提唱されつつある.
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連載/術中写真撮影入門—おもに肝胆膵外科(7)
心構え(2)
(神谷順一)
p.
823–832(10)
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連載/最新 癌の化学療法マニュアル(7)
胆嚢癌
(白井良夫)
p.
833–839(7)
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臨床と研究
大腸胃重複癌の臨床的検討
(水沼和之)
p.
840–844(5)
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臨床経験
腸管原発悪性リンパ腫11例の検討——胃リンパ腫と比較して
(南須原洋一)
p.
845–849(5)
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症例
食餌性イレウスの3例
(北村好史)
p.
850–854(5)
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イチゴにより食餌性イレウスをきたしたMeckel 憩室の1例
(鈴木崇久)
p.
855–857(3)
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汎発性腹膜炎をきたしたblind loop syndrome(BLS)の1 例
(笹屋高大)
p.
858–860(3)
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術後hungry bone syndrome が遷延した高齢者副甲状腺腫の1 例
(平松聖史)
p.
861–866(6)
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書評
臨床現場におけるアスピリン使用の実際——古くて新しい奥深い薬をいかに使用すべきか
(古森公浩)
p.
816–816(1)
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