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2009年 71巻2号
外科
ISSN
:
0016-593X
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特集【下部直腸癌の診断と治療—最近の進歩】
I.総論:下部直腸癌—— 大腸癌治療ガイドラインの解説
(小林宏寿)
p.
115–119(5)
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下部直腸癌に対する治療は,術後患者のQOL に直結する.そのため,病巣に対する正確な診断,適切な治療法の選択が必要不可欠である.また,下部直腸癌に対する手術手技は大腸外科としてもっとも技量を要するものである.本稿では下部直腸癌の治療につき,大腸癌治療ガイドラインにおける指針を概説する.
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II.下部直腸癌の診断
1.術前画像診断—— 超音波検査~CT~MRI
(小川真平)
p.
120–125(6)
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下部直腸癌治療方針決定のための術前画像診断の意義と,実際の画像診断として超音波検査,CT,MRI の診断のポイントや診断成績向上の工夫について解説した.早期癌の壁深達度診断としてpit patternからの診断や超音波内視鏡が,進行癌では経直腸超音波検査(TRUS),CT,MRI が行われている.リンパ節転移診断では,主にCT,MRI が行われているが,診断能向上の工夫としてmultidetector-row CT のmulti-planner reconstruction(MPR)画像,MRI の骨盤側壁矢状断像が有用である.癌の根治性を損なわない過不足のない至適な治療を行うためにも正確な病期診断が必要であり,精度の高い術前診断が求められる.
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2.術前画像診断—— PET/CT
(中島祥介)
p.
126–130(5)
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FDG-PET,PET/CT は,癌組織で亢進しているブドウ糖代謝イメージに基づき,短時間で全身検索できる画期的な診断モダリティである.直腸癌の術前・術後の診断において,転移・再発巣の検索に有用である.また狭窄病変口側の副病変検索,化学療法・放射線療法の効果判定・予後予測にも応用できる可能性がある.ただし微小病変の検出率が低いなどの弱点もあり,その活用には十分配慮する必要がある.
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III.下部直腸癌の治療
1.内視鏡治療
(石田文生)
p.
131–138(8)
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下部直腸癌の内視鏡切除の適応は他部位の大腸と同様であり,壁深達がsm1b までにとどまる早期大腸癌が内視鏡切除〔ポリペクトミー(EP),内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的分割粘膜切除術(EPMR)〕の適応で,一括切除が望ましいLST-NG-PD とnon-lifting sign 陽性のM 癌が内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応である.しかし,下部直腸癌はその解剖学的特徴から局所再発の治療は容易でなく,内視鏡による正確な形態学的診断,拡大観察・pit pattern 診断による深達度診断と病変の占居部位診断が重要である.
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2.局所切除術(従来法~MITAS~TEM)
(前田耕太郎)
p.
139–143(5)
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下部直腸癌に対する従来法の局所切除術とともに,近年行われている経肛門的な局所切除術であるminimally invasive transanal surgery(MITAS)やtransanal endoscopic microsurgery(TEM)の適応,特徴,手技,成績について概説した.新しい術式では,従来法で到達しえなかった高位の大きい腫瘍の切除が可能となっているが,それぞれの術式により利点と欠点があり,それらを熟知して適切な完全切除の術式を選択すべきである.リンパ節転移のない直腸癌では,適切な完全切除によって根治しうるが,より進行した癌ではどの局所術式でもある程度に再発があり,根治術の適応としてはさらに検討が必要である.
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3.腹腔鏡下手術
(福永正氣)
p.
144–150(7)
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下部直腸癌に対する腹腔鏡下手術は低侵襲性に加え,視野の不良な骨盤深部で良好な視認性と拡大視効果の有効性が期待されるが,標準手術として位置づけられていない.Total mesorectal excision の腹腔鏡下手術手技は精度の高い手技が確立しつつある.困難な低位吻合では工夫,改良がすすみ安全性が向上してきた.しかし質の高い長期成績から腫瘍学的安全性を証明するにはいまだ十分とはいえない.現時点で腹腔鏡下手術(LAP)を考慮する場合,安全性と根治性を第一に考え,LAP 手技に十分習熟したうえで慎重に適応を決定すべきである.
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4.低位前方切除
(西川晋右)
p.
151–156(6)
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下部直腸癌に対して積極的に低位前方切除術が行われるようになり,その適応拡大が図られている.その場合,癌の根治性と術後機能の両面から検討を加える必要がある.根治性を求めるためには,適正な肛門側断端(distal margin)までの距離や局所再発の危険因子に関する臨床的研究に基づいて,腫瘍の分化度,壁深達度,リンパ節転移の状況を見定めて方針を決定する必要がある.また,排便機能温存手術という概念の中で,機能的な限界がどこにあるのか,これらの問題を解決しながら本術式の適応を拡大すべきである.
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5.括約筋切除による肛門温存手術—— intersphincteric resection(ISR)~external sphincteric resection(ESR)
(赤木由人)
p.
157–162(6)
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直腸切断術が標準的な手術法として考えられてきた,腫瘍下縁が肛門管にかかるような直腸・肛門管腺癌に対し,経肛門的に肛門括約筋を切除し,結腸肛門吻合により肛門の温存を図るintersphincteric resection(ISR)・external sphincteric resection(ESR)という新しい術式について概説した.本術式は根治性,機能温存という相反する要望を満たす術式の一つになりうると考えられ,今後,直腸切断術は減少するものと期待できる.しかし,解剖学的な知識と高度な技術を要するものであり,症例の選択と括約筋切除の術中判断は慎重でなければならない.
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6.直腸切断術
(高橋慶一)
p.
163–168(6)
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内括約筋を合併切除して肛門を温存する内括約筋切除術の症例が増え,下部直腸癌に対する直腸切断術が行われる頻度は,近年減ってきている.しかし,直腸切断術ではじめて根治性の得られる症例があることも事実であり,下部直腸癌手術の標準術式として修得すべき手術である.もっとも一般的な腹会陰式直腸切断術について,どこがむずかしいか,どこがわかりにくいかについて指摘し,さらに自律神経温存の方法と側方郭清の実際について概説した.
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7.他臓器合併切除
(齋藤典男)
p.
169–175(7)
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下部直腸進行癌で隣接臓器への浸潤が疑われる場合,主な臓器が尿管,膀胱,精嚢,前立腺,子宮,腟などである.女性では子宮や腟が存在するため,骨盤内臓全摘術(TPE)が必要となることはまれであるが,男性では尿管,膀胱浸潤例の一部を除きTPE の適応とされてきた.しかし本術式は術後の機能障害に直結するため,可能であれば排便路または排尿路の一方を温存する傾向にある.本稿では,可能な限り犠牲を少なくする手術を紹介する.
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8.骨盤内臓全摘術
(山田一隆)
p.
176–181(6)
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直腸癌に対する骨盤内臓全摘術(TPE)は,進行直腸癌と局所再発に対して行われ,肛門括約筋を温存するSP-PE,仙骨を合併切除するTPES も行われる.当施設で行われた骨盤内臓全摘術75 例において,手術時間,出血量,合併症率などは比較的良好な結果であり,在院死は認めなかった.また,治癒切除における5 年生存率は,原発性直腸癌で66.8%,局所再発で33.6%であった.以上より,同術式は適正な適応基準のもとで高い根治性を有する手術法として推奨される.
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9.術前放射線化学療法
(須並英二)
p.
182–187(6)
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直腸癌治療に際しては,局所制御の観点から全直腸間膜切除(TME)あるいはTSME(tumor-specific mesorectal excision)に加え,欧米では術前化学放射線療法がすすめられているが,日本では側方郭清が施行されることが多い.本稿では,術前放射線化学療法の治療成績,問題点について述べた.より奏効率の高い併用化学療法レジメンの検討,放射線化学療法の感受性を高精度に予測しテーラーメイド治療を実践することによる副作用の低減,括約筋温存や局所切除などさまざまな形態での縮小手術実現などが今後の課題である.
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10.術後補助化学療法
(野田雅史)
p.
188–193(6)
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進行下部直腸癌に対する治療方針は,日本と欧米では大きく異なっている.欧米では,術前化学放射線療法が行われているが,本邦では術前化学放射線療法をせず,全直腸間膜切除(TME)+自律神経温存側方郭清がほぼ標準治療となっている.日本における術後補助化学療法は1970 年代半ばから行われていたが,エビデンスとして有用なのはNSAS-CC や5 つのランダム化比較試験のメタアナリシスから示されたUFT のみであった.現在,新たな標準治療確立のため,ACTS-RC,その他の大規模臨床試験が進行中であり,これらの結果が期待される.
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連載
画像Q&A
(小寺由人)
p.
194–196(3)
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連載/外科医のための臨床研究講座(10)
臨床研究をスコア化にて評価しよう—— Is RCT a really“reliable clinical trial”?
(海道利実)
p.
197–202(6)
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臨床と研究
微小な腹膜転移を伴う4 型・大型3 型胃癌の予後と治療戦略
(吉川貴己)
p.
203–207(5)
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症例
腕神経叢・腋窩神経血管束周囲に生じた巨大リンパ管腫の1 例
(井田夕紀子)
p.
208–211(4)
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腹膜播種によりイレウスを呈した浸潤性乳管癌の1 例
(石井辰明)
p.
212–215(4)
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十二指腸進展をきたした陥凹性表層拡大型胃癌(深達度m)の1 例
(信久徹治)
p.
216–219(4)
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横行結腸癌術後にanesthesia mumps を生じた1 例
(澤田雄宇)
p.
220–223(4)
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破裂をきたした腹壁瘢痕ヘルニアの1 例
(矢崎伸樹)
p.
224–226(3)
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