外科
Volume 77, Issue 1, 2015
Volumes & issues:
-
特集 【StageⅣ 大腸癌に対する外科的治療戦略】
-
-
1.ガイドラインでみるStageⅣ 大腸癌の治療戦略
77巻1号(2015);View Description Hide DescriptionStageⅣ大腸癌は延命のみならず,時に根治が見込める数少ない消化器癌である.StageⅣ大腸癌の治療原則として,すべての病変を遺残なく切除できる場合には外科的切除が推奨される.集学的治療によるエビデンスの蓄積に伴い,2014 年に4 年ぶりに『大腸癌治療ガイドライン』の改訂が行われ,それぞれの転移先ごとの治療ガイドラインが示されている.本稿では,『大腸癌治療ガイドライン』からみたStage Ⅳ大腸癌の治療に関して概説する. -
2.StageⅣ 大腸癌根治的切除例の予後
77巻1号(2015);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対するもっとも効果の高い治療は外科的切除であり,治癒切除ができれば35 〜58 %の5年生存率が期待できる.大腸癌研究会プロジェクト研究で行われた多施設集計では,肺転移に対する肺切除例の5 年生存率は46. 7 %,累積5 年無再発生存率は33. 7 %であり,非切除例の5 年生存率は3. 9 %であった.肝・肺同時性転移例に関する外科的切除の報告は少ないが,根治切除後の5年生存率は20 %程度認められる.また腹膜播種に対しては,同時切除による予後の改善や長期生存例が報告されている.このように,StageⅣ大腸癌の肝転移,肺転移および限局性腹膜播種(P1,P2)は,切除が可能ならば積極的な切除により予後延長が期待される. -
3.StageⅣ 大腸癌に対する原発巣切除とリンパ節郭清の意義
77巻1号(2015);View Description Hide DescriptionStageⅣ大腸癌に対する治療方針は,近年の新規抗癌薬や分子標的薬の登場で化学療法の治療成績が向上し,原発巣と遠隔転移巣両者をコントロールできる時代に入ってきたため,原発巣を切除するか,またどのタイミングで切除するかは意見の分かれるところである.StageⅣ大腸癌に対する治療戦略の中で,原発巣切除とリンパ節郭清の意義について現時点での見解を解説する. -
4.StageⅣ 大腸癌の腹腔鏡下原発巣切除の意義
77巻1号(2015);View Description Hide Description根治切除不能StageⅣ大腸癌に対しては,原発切除の意義に関しても腹腔鏡下手術の意義に関しても,前向きランダム化比較試験(RCT)の結果は出ていない.これまでの観察研究では,StageⅣ大腸癌に対する主病巣切除について,腹腔鏡下手術の短期成績は良好であり,長期成績も開腹手術に劣らないという結果にほぼ一致している.原発巣および転移巣の状態,施設の状況,術者の技量を考慮したうえで,Stage Ⅳ大腸癌に対する腹腔鏡下原発巣切除は有用な治療選択肢になりうる. -
5.肝転移に対する外科的治療戦略
77巻1号(2015);View Description Hide Description大腸癌肝転移の外科治療は唯一治癒が期待できる治療であり,切除可能なら切除をすべきである.近年の全身化学療法の進歩,肝切除の進歩に伴い,肝転移に対する切除適応は拡大されている.それに伴い,肝切除を先行するliver first の考えも出てきた.二期的肝切除も積極的に行われるようになったが,門脈塞栓術に伴う肝転移増大の問題も新たに生じた.さらなる予後向上のため,残肝再発予防のための化学療法も導入されたが,周術期全身化学療法については現時点では生存率の著しい改善はみられていない. -
6.肺転移に対する外科的治療戦略
77巻1号(2015);View Description Hide DescriptionStage Ⅳ大腸癌肺転移に対する治療は,その宿主側因子と肺転移因子,原発巣因子を考慮して手術適応を決定する.しかし,単施設で経験するStage Ⅳ大腸癌肺転移の頻度は少なく,判断材料となるエビデンスが不足している.第78回大腸癌研究会でされた集積1, 179例のうち,StageⅣ大腸癌120例の5年生存率は51. 9 %,無再発生存率は24. 2 %で,異時性転移の67. 6 %,45. 5 %に比べて予後不良であった.予後因子を検討すると,原発巣が直腸,原発巣リンパ節転移あり,肺転移個数2個以上が独立した生存予後因子として抽出された.再発の危険因子は,男性および両葉転移が独立した再発危険因子であった.原発巣切除から肺切除までの期間は,一定の観察期間が有効である可能性が示唆された.切除不能例についても集学的治療を駆使してよりよい予後が得られるよう努力しなければならない. -
7.腹膜播種に対する外科的治療戦略
77巻1号(2015);View Description Hide Description腹膜播種は初発大腸癌の5 %前後に存在するきわめて予後不良な転移形式であり,TNM分類では腹膜播種があればもっとも進行度の高いStage ⅣB に分類される.しかし,切除が奏効して長期生存が得られる腹膜転移例も少なからず存在することが知られており,『大腸癌治療ガイドライン』では,限局性腹膜播種(P1,P2)に対しては,過大侵襲とならない範囲で原発巣と同時に切除することが推奨されている.腹膜播種に対する減量手術(CRS)+腹腔内温熱化学療法(HIPEC)併用療法,全身化学療法への期待は大きいが,いまだ検討の余地が多く残されている. -
8.StageⅣ 大腸癌に対するconversion therapy
77巻1号(2015);View Description Hide Description全身化学療法開始前には切除不能であった大腸癌転移巣が,化学療法の奏効により切除可能となることがある.これをconversiontherapy という.Conversion 後の長期生存は,化学療法単独例と比較して明らかに良好であるため,化学療法により肝切除が可能となれば積極的に切除を行うべきである.しかし,化学療法による肝毒性もあるので,手術を行う際には適切な休薬期間と術前リスク評価を行う必要がある. -
9.StageⅣ 大腸癌の複数転移臓器切除の是非──当科の大腸癌複数転移臓器に対するストラテジー
77巻1号(2015);View Description Hide Description大腸癌複数転移例の場合,当科の基本的な方針は,同時性でも異時性でも,基本的には原発巣→腹腔内転移(腹膜転移および遠隔リンパ節転移など)→腹腔外転移(肝転移および肺転移)の順で,積極的に外科切除を試みてきた.肺転移例と肝肺転移例を比較し,5年生存率は肺転移切除群69 %,肝肺転移切除群43 %であり,統計学的有意差(p=0. 029)を認めた.また肝肺転移切除群は,複数臓器への転移再発をきたす可能性が高かった.化学療法の進歩に伴い,切除不能な複数転移臓器でも切除可能な症例が増えてくると考えられ,今後はプロスペクティブな臨床試験が必要である. -
10.StageⅣ 大腸癌切除後の補助化学療法の意義
77巻1号(2015);View Description Hide Description大腸癌に対する化学療法の役割は大きな変化を遂げているが,切除可能なStage Ⅳ大腸癌に対する標準治療は現在のところ原発巣,転移巣の外科的治療である.本稿ではStage Ⅳ大腸癌における転移巣,なかでも肝転移切除後の補助化学療法を中心にその現状を概説した.転移巣切除後の補助療法は全身化学療法が生存率の延長に期待できそうであるが,安全性と効果の評価を目的とした前向きの臨床試験が必要である.
-
-
連載
-
-
-
臨床と研究
-
-
-
臨床経験
-
-
Multidetector-row CTを利用した経皮内視鏡的胃瘻造設術の術前評価法 ── CT gastro-colonography法の検討
77巻1号(2015);View Description Hide Description
-
-
症例
-
-
-
書評
-
-