外科
Volume 77, Issue 2, 2015
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特集 【ERAS】
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- Ⅰ.総論
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1.ERASとは何か
77巻2号(2015);View Description Hide DescriptionERAS は,欧州から発信された周術期管理の革新である.エビデンスに基づいた対策をバンドルとし,合併症減少や術後在院期間短縮などの臨床的成果をあげている.この背景には,よりよい機能回復をめざす栄養療法,リハビリテーション医学の発展,鏡視下手術の発展に伴う低侵襲手術の発展,短時間作用型麻酔薬の開発,さらには医療の標準化をめざす時代の流れがあるものと思われる.今後も患者満足を維持した発展が望まれる. -
2.ERASにおける代謝,栄養管理の考え方
77巻2号(2015);View Description Hide DescriptionERASやfast-track surgeryにおいて,栄養管理は中心的なプロトコルである.推奨されているプロトコルは,機械的腸管前処置を行わない,絶食期間の短縮および術前炭水化物補水,経鼻胃管による減圧は不要,術中輸液,早期の食事再開,術後嘔気・嘔吐の予防など多岐にわたる.盲目的に導入するのではなく,術式や患者の状態に合わせて適切に導入する必要がある. -
3.ERASにおける麻酔科医の役割
77巻2号(2015);View Description Hide DescriptionERAS プロトコルにおいて,麻酔科医は患者の術後回復促進のために重要な役割を担う.特に,術後回復の阻害因子である疼痛,消化管機能不全および不動の三因子に対して,疼痛管理をはじめとしたさまざまな策を講じる.ERAS を軸に,術者と麻酔科医が情報および技術を共有することで,周術期管理を円滑化させ安全性や治療成績の向上につながるなどの相乗効果が期待できるものと考える.本稿では,ERAS における麻酔科医の役割を概説する. -
4.ERASと周術期チーム医療
77巻2号(2015);View Description Hide DescriptionERAS の実践のためには,医師だけでなく多職種のメディカルスタッフを交えたチーム医療の実践が不可欠である.当院ではERASプロトコルの多くを取り入れた周術期管理センター・ペリオ(perioperativemanagement center:PERIO)が周術期チーム医療を行っている.組織横断的に情報を共有しながら業務を行うことにより,安全・安心な周術期環境の提供が可能となっている. - Ⅱ.各論
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1.胸部食道癌手術におけるERAS
77巻2号(2015);View Description Hide Description胸部食道癌手術に対するERAS の適用は十分に確立しているとはいえない.われわれの検討からは,早期経腸栄養や早期離床などのERAS の概念の多くは,胸部食道癌手術においても適用は可能と考えられ,術後合併症を増やすことなく術後入院期間を短縮することが可能である.このプロトコルを他施設に導入したが,初回離床日や術後入院期間に関しては,新規導入施設では安全な運用のため長くなったが,術後合併症などに関しては同様のアウトカムであった.ERAS の各々の項目やプロトコルに関して,今後エビデンスとして確立することが求められる. -
2.胃癌手術におけるERAS
77巻2号(2015);View Description Hide Description胃癌手術の周術期管理にERASの概念を導入するにあたり,その過程と新しいクリニカルパスについて概説した.絶飲食期間をなくすため術前補水を採用し,術後1 日目から水分摂取を開始した.術前栄養不良例には完全静脈影響(total parenteral nutrition:TPN)ではなく経腸栄養を行うようにした.腹腔鏡手術を積極的に導入した.ドレーンはルーチンには不要と考えるが,留置する場合は閉鎖式吸引ドレーンとした.また,薬物による抗凝固療法を全例に実施するようにした.硬膜外麻酔カテーテルの抜去を1日早めることで膀胱留置カテーテルの抜去も早め,早期離床をうながした.ERAS は欧米のエビデンスに基づいて作成されているため,必ずしも日本人に当てはまらない部分もある.今後,日本のエビデンスに基づいた和製ERASの作成がまたれるところである. -
3.大腸癌手術におけるERAS
77巻2号(2015);View Description Hide Description周術期の“工夫のパッケージ”であるERAS の本質は,“ERAS という名のもとに”チーム医療としてさまざまな周術期管理を行うことにある.大腸癌手術に導入することで,術後合併症の発生率を増加させることなしに術後在院日数を約3 日間短縮させる効果があることが,海外から報告されている.ERAS はもともと開腹結腸手術を対象に考案されたが,腹腔鏡下大腸手術の周術期管理としても有用である.硬膜外麻酔の使用に関しては,開腹手術では推奨される一方で,腹腔鏡手術では今後議論が必要である.また近年,ERAS による医療コストの削減が報告されてきている. -
4.エビデンスに基づいた肝胆膵手術におけるERASプログラム
77巻2号(2015);View Description Hide Description術後回復能力強化プログラムとしてのERASプログラムの導入は,周術期管理の標準化・効率化を図ると同時に,術後合併症率の低減・安全性向上・入院期間短縮・コスト削減をめざすことがエンドポイントである.ERAS プログラムは開腹結腸直腸切除術の周術期管理に対して提唱されたが,現在は術後合併症の頻度が高い肝胆膵手術においても適応されている.その結果,術後合併症の減少および在院日数の短縮に貢献している.ERAS プログラムをさらに改善するためには,術後合併症率低減のための術式・周術期管理が何であるかをエビデンスに基づいて検討し,ERAS プログラムに組み入れていく必要がある. -
5.血管外科手術におけるERAS
77巻2号(2015);View Description Hide DescriptionERAS プロトコルは大腸外科で発展した術後早期回復プログラムであり,術後合併症の減少,入院期間の短縮,医療費削減を達成することができる.血管外科領域におけるERAS のデータは少なく,報告もきわめて少ない.血管外科領域では消化管の直接操作がない,全身血管病変のリスクなどがある,腸管虚血のリスクがある,出血量が多いなど,ほかの領域とは手技・病態・管理ともに異なる.よってERASプロトコルを血管領域にmodify して利用していくことが必要である. -
6.産婦人科手術におけるERAS
77巻2号(2015);View Description Hide Description術後嘔気改善目的に,当院婦人科腹腔鏡下手術患者に対してERAS プロトコルを参考に術後経口補水の導入を行い,その後のアンケートで検討を行った.術前経口補水は,ERASプロトコルを参考に2012年6月よりOS─1(大塚製薬社)500 ml とアルジネードウォーター(Nestle 社)250 ml を手術前日よりゆっくり飲水し,手術開始2 時間前に補水を終了とした.また,2013 年1月より患者アンケートを開始して,術前経口補水を開始する以前の症例と比較,検討した.結果は,術後経口補水を実施した群で,術後1日目の夕食時まで嘔気を訴えた患者数は有意に少なく,食事摂取が可能になった患者数は有意に多かった.本検討においても,術前経口補水が術後悪心,嘔吐を軽減させる可能性が示唆された.
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連載
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臨床と研究
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臨床経験
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症例
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多発性小腸gastrointestinal stromal tumor と膀胱癌を合併した神経線維腫症1 型の1 例
77巻2号(2015);View Description Hide Description -
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書評
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