外科
Volume 77, Issue 4, 2015
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特集【食道胃接合部癌のすべて】
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1.食道胃接合部癌の疫学──世界と日本
77巻4号(2015);View Description Hide Descriptionわが国ではHelicobacter pylori感染の減少で胃液分泌が多い人が増加するため,食道胃接合部癌は将来の増加が予想される.癌登録事業による厳重な監視が必要である.リスク要因には,喫煙,肥満,低身長がある.逆流性食道炎やBarrett食道を経る例がほとんどであれば,胃液逆流防止による一次予防や,対象をしぼった二次予防など,効果的な予防が可能である.この点を明らかにしていくことが,予防の構築に不可欠である. -
2.食道胃接合部の新しい定義
77巻4号(2015);View Description Hide Description食道胃接合部癌の定義としては,Siewertの分類と西の分類が用いられることが多いが,いずれも食道胃接合部の定義が明確ではない.食道胃接合部の定義は『食道癌取扱い規約』(第10版)で明文化されたが,筋層による決定がむずかしいことから,日本胃癌学会,日本食道学会合同のワーキンググループによる検討が行われ,2013年に新しい診断基準が作成されている.その基準ならびに食道胃接合部癌の定義について解説した. -
3.食道胃接合部癌のリンパ節転移と術式選択
77巻4号(2015);View Description Hide Description食道胃接合部癌は,食道と胃の境界領域に位置するという解剖学的特殊性のために,食道癌として扱うべきか胃癌として扱うべきか議論がある.これまでの報告では,No.4sb, 4d, 5, 6といった幽門側胃の壁在リンパ節への転移頻度が低く,予防的リンパ節郭清を目的とした胃全摘の必要性は限定的である.特にリンパ節転移個数の多い症例は,高頻度に再発死亡し予後不良であることが知られており,外科手術による局所コントロールには限界がある. -
4.食道胃接合部癌の切除断端距離
77巻4号(2015);View Description Hide Description食道胃接合部癌に対するアプローチや術式を考慮する際には,適切なリンパ節郭清範囲と同様に適切な断端距離を確保することが重要である.近位側断端,遠位側断端,剥離断端と3種類の断端があり,いずれも重要である.特に近位側断端は欧米では10 cm以上必要といわれているが,われわれの検討では経食道裂孔的な下部食道胃全摘においては,標本上2 cm(in vivoでは3 cm)の近位側断端距離があれば十分ではないかと考えられた. -
5.食道胃接合部癌の内視鏡治療
77巻4号(2015);View Description Hide Description食道胃接合部癌の増加や内視鏡治療技術の発展に伴い,食道胃接合部癌に対して内視鏡治療を行う機会は増えているが,治療の適応や治癒基準について明確なコンセンサスは得られていないのが現状である.自験例において,『胃癌治療ガイドライン』に準じて内視鏡治療の適応を決定し治癒判定を行ったところ,治癒基準を満たす症例では良好な成績が得られた.内視鏡治療は食道胃接合部癌に対しても有用と考えられるが,治療の適応・治癒基準を確立させるためには,多施設で症例を集積し,より詳細な検討を行うことが必要である. -
6.食道胃接合部癌のセンチネルリンパ節
77巻4号(2015);View Description Hide Description近年食道胃接合部癌(AEG)は先進国を中心に増加を認めている.AEGは縦隔と腹部の境界に存在するため,いずれにもリンパ節転移の可能性が考えられる.食道癌に準じて縦隔リンパ節郭清が行われることもあるが,その侵襲性ゆえに一定した手術術式の見解がないのが現状である.外科手術の低侵襲化の取り組みとして,消化器癌領域でもセンチネルリンパ節(SN)理論の検証が行われており,胃癌ではその有用性が報告されている.AEGにおけるSN生検の有用性に関してはいまだ確立されていないが,本稿では自験例のAEGに対するSN生検の結果と最近の知見をもとに,AEGに対するSN生検の有用性や今後の展望について検証した. -
7.食道胃接合部癌の縦隔郭清
77巻4号(2015);View Description Hide Description食道胃接合部癌は,腹腔内だけでなく縦隔内のリンパ節にも高率に転移を生じるが,縦隔リンパ節を郭清するためのアプローチ法としては主に3種類ある.これらの優劣を比較するランダム化比較試験が国内外で実施された結果,SiewertⅠ型の腺癌に対しては右開胸アプローチ,食道浸潤長が3 cm以内のSiewertⅡ・Ⅲ型の腺癌に対しては,開腹経裂孔アプローチが標準的と考えられている.また,国内8施設での後ろ向き研究の結果では,扁平上皮癌や食道浸潤長が3 cmを超える腺癌は,上・中縦隔リンパ節への転移や再発が比較的高率であった.食道胃接合部癌に対する至適郭清範囲を調べるため,日本胃癌学会・日本食道学会合同の多施設共同前向き試験が現在進行中である. -
8.食道胃接合部癌の腹部リンパ節郭清――「起点」,「受け」,「底」の概念を用いて
77巻4号(2015);View Description Hide Description日本食道学会と日本胃癌学会が合同で「食道胃接合部癌に対する縦隔リンパ節および大動脈周囲リンパ節の郭清効果を検討する介入研究」を開始した.本研究に準拠した食道胃接合部癌に対する腹部リンパ節郭清の要点を,「起点」,「受け」,「底」の概念を用いて解説した. -
9.食道胃接合部癌の内視鏡下手術
77巻4号(2015);View Description Hide Description頸胸境界部や食道胃接合部など境界部に発生する癌は,頻度が低いうえ境界線を境に双方の癌腫の特徴を有しているため,診断と治療方針の確立が困難である.食道胃接合部癌は欧米を中心に治療成績が先行し報告されているが,本邦における手術を中心とした集学的治療法の確立が必要である.当院では,食道に主座をおく癌腫は組織型に関係なく3領域郭清を行い,リンパ節転移状況を調査してきた.当院で行っている食道胃接合部癌に対する胸腔鏡による食道切除と腹腔鏡による大動脈周囲リンパ節郭清を含めた胃管再建術を解説する. -
10.食道胃接合部癌の術前術後補助療法
77巻4号(2015);View Description Hide Description食生活習慣の欧米化により,本邦においても食道胃接合部癌が増加している.食道胃接合部癌に特化した標準的な術前術後補助療法は,国内外を問わず確立していない.欧米,アジアおよび本邦における胃癌に対する臨床試験の治療成績をレビューし,食道胃接合部癌に対する術前術後補助療法を検討した.現状ではS-1内服による術後補助療法が妥当と考えるが,今後アジアを中心とした国際共同臨床試験による治療開発が必要である. -
11.食道胃接合部癌の姑息治療
77巻4号(2015);View Description Hide Description食道胃接合部の切除不能進行癌による食物通過障害,出血,疼痛に対して,姑息的治療として従来,緩和手術や減量手術,バイパス手術,ステント挿入などが行われてきた.近年,扁平上皮癌だけでなく腺癌に対しても,化学療法や化学放射線治療の効果が期待できるようになってきた.組織学的薬剤感受性予測,転移部位を含む進行状態,患者の全身状態や環境を十分考慮した個別治療選択が肝要で,栄養不良に対する栄養療法も同時に行う必要がある.
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