外科
Volume 77, Issue 7, 2015
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特集 【体腔鏡下上部消化管手術】
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- Ⅰ.体腔鏡下食道癌手術
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1.側臥位でのリンパ節郭清
77巻7号(2015);View Description Hide Description食道癌根治術の約30%が胸腔鏡で行われている.近年ではsolo-surgeryとして行える腹臥位が普及しているが,われわれは通常開胸と同じ解剖学的位置関係で施行できる左側臥位で行っている.鏡視下手術では触覚に劣る反面,カメラ近接による拡大視によって微細解剖を明らかとし,正しい解剖層に沿って剝離,郭清ができる利点がある.解剖層を正しく保つ剝離が低侵襲にも寄与する.適応を遵守し安全で精度の落ちない郭清を心がけることが肝要である. -
2.腹臥位でのリンパ節郭清──腹臥位胸腔鏡下食道切除術
77巻7号(2015);View Description Hide Description胸腔鏡では,内視鏡を近接させ解剖構造を拡大視観察することにより,安全で根治性が高い手術が可能となる.腹臥位ではsolo surgeryに近い手術が可能であるが,助手を含めたチームで手術を行うことで,安定した術野のもと安全で根治性が高い手術が恒常的に行える.2015年春,現在筆者が行っている腹臥位による胸腔鏡下食道切除術を中下縦隔と上縦隔に分け,術野展開と手順を中心に概説した. -
3.再建法
77巻7号(2015);View Description Hide Description食道癌に対する体腔鏡下手術は,本邦で導入されてから約20年が経過した.左側臥位・腹臥位による体位の違いによるアプローチ法を中心に,各施設で種々の工夫がなされている.しかしながら,再建法では大きな変更がない.依然として頸部食道胃管吻合が多いのが現状でもある.本稿では,もっとも代表的な胸骨後ルート胃管再建による頸部食道胃管吻合における手技のポイントと,われわれの工夫について報告する. -
4.合併症と対策
77巻7号(2015);View Description Hide Description食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術が広く行われてきているが,開胸手術同様その侵襲は依然として高度であり,術後合併症の発生も避けられない.術前のリスク評価と,リハビリテーションや栄養療法を含めた術前介入,術前画像によるシミュレーションなどを導入することにより合併症発生を予防することに加え,合併症発症時には多くの治療モダリティを駆使して治療にあたることが重要であると考える. - Ⅱ.腹腔鏡下胃癌手術──リンパ節郭清のポイントと再建法
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1.幽門保存胃切除術
77巻7号(2015);View Description Hide Description腹腔鏡下幽門保存胃切除術(laparoscopic pylorus preservinggastrectomy:LPPG)は低侵襲と機能温存の両方を可能とする術式として注目されている.本稿ではLPPGにおけるリンパ節郭清のポイントとして,①幽門下動静脈温存No.6,②右胃動静脈温存No.5, 8a,③迷走神経腹腔枝温存No.7, 9,④迷走神経肝枝温存No.1各々のリンパ節郭清の手技と要点,および当科で導入した完全体腔鏡下再建法につき報告する. -
2.噴門側胃切除術──上川法再建,空腸間置再建
77巻7号(2015);View Description Hide Description腹腔鏡下噴門側胃切除後の再建法について詳述した.当院の基本方針は,腹部食道が残存する症例には上川らが開発した上川法再建を,食道をある程度切除する症例には空腸間置再建を行っている.上川法再建はやや煩雑ではあるが,強力に逆流を防止する,噴門側胃切除後の再建法としてはきわめて優れた再建法であり,当院の基本術式となっている.空腸間置再建は胃全摘の応用であり,やや高位の吻合になっても対応可能である.残胃の貯留能も期待できる再建法であり,逆流防止効果も高い.ポイントは間置空腸を長くしすぎないことであり,嚥下時のうっ滞を予防することができる. -
3.幽門側胃切除術──Billroth-Ⅰ法
77巻7号(2015);View Description Hide Description腹腔鏡下幽門側胃切除術は胃癌に対するもっとも基本的な腹腔鏡手術であるが,開腹手術と同等のリンパ節郭清と安全な再建が求められる.われわれは,郭清操作は適切な剝離層に沿って行うことが重要と考えており,一方,再建は簡便に行える体腔内吻合法であるデルタ吻合によるBillroth-Ⅰ法を第一選択としている.本稿では,当院の腹腔鏡下幽門側胃切除術の郭清手技のコンセプトとデルタ吻合の手技の実際について解説を行った. -
4.完全腹腔鏡下幽門側胃切除術とRoux-en-Y法再建
77巻7号(2015);View Description Hide Descriptionわれわれが行う完全腹腔鏡下幽門側胃切除術におけるリンパ節郭清のコンセプトは,「系統的胃間膜切除」と「内側アプローチ」である.このコンセプトは膵頭部,膵上縁のリンパ節郭清など,郭清すべきすべての領域で共通した剝離可能層をみつけて適切な郭清を行うことにつながる.完全体腔内Roux-en-Y法再建は体型の影響を受けにくく,残胃の大きさに左右されない包括的な再建法であるが,吻合の多さや縫合手技の煩雑さもある.針つき有棘糸の導入は体腔内縫合手技を容易にさせ,安全で確実な再建を促進すると思われる.これらの手技とコツを提示する. -
5.胃全摘術
77巻7号(2015);View Description Hide Description胃癌手術において,癌の根治性のために過不足のないリンパ節郭清と安全確実な再建は不可欠である.胃上部の進行胃癌に対しては,脾門部のリンパ節郭清をどのように行うかが注目されている.本稿では,当科で行っている進行癌に対する脾臓温存脾門部リンパ節郭清の方法について述べる.再建法は当科で行っているリニアステイプラーを用いたRoux-en-Y法について,その方法と特徴について述べる. - Ⅲ.その他
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1.食道アカラシア
77巻7号(2015);View Description Hide Description内視鏡的筋層切開術(POEM) は,従来は外科手術(腹腔鏡下Heller-Dorなど)で行っていた筋層切開を経口内視鏡的に行うものである.筋層切開の長さや方向も自由に設定できることから,食道アカラシアのみならず,これまで決定的な治療法がなかった食道運動機能障害(びまん性食道攣縮,nutcracker esophagus, jackhammer esophagusなど)においては,有用かつ唯一の治療法であると考えられる.当施設ではこれまでに915例に施行しており,成功率はEckardt scoreが最終的に3点以下あるいは改善度3点以上を成功の基準とした場合は97.5%であった.重篤な合併症をきたした症例は1例もない.また,POEM後の胃食道逆流症(GERD) は,有症状のものは15%,プロトンポンプ阻害薬(PPI)を内服した5%もコントロール良好であった.Nissen手術を必要とするような重症のGERDはなかった.現在,POEMは先進医療として厚生労働省に認定されている.今後,アカラシアおよび関連疾患に対する標準治療になると期待される. -
2.逆流性食道炎
77巻7号(2015);View Description Hide Description腹腔鏡下逆流防止手術の根幹は破綻した逆流防止機構の再建にあり,腹部食道の露出,胃穹窿部の授動,食道裂孔の縫縮,噴門形成術の4つの要素により構成される.噴門形成術の代表的な方法として,Nissen法(全周性)とToupet法(後方約3/4周性)の2種類があげられる.両者の比較では,逆流防止効果はほぼ同等で,術後の嚥下困難は同等かToupet法に少ないため,Toupet法のほうが優れているとの見解が優勢である. -
3.肥満外科手術
77巻7号(2015);View Description Hide Description現在わが国で施行されている腹腔鏡下肥満外科手術は,腹腔鏡下Roux-en-Y胃バイパス術,調節性胃バンディング術,スリーブ状胃切除術(LSG),スリーブバイパス術の4術式であり,LSGが主な術式である.いずれの肥満外科手術を施行しても,高率に肥満関連健康障害が改善ないしは治癒する.ただし,2型糖尿病に対する効果はLSGよりもバイパス系手術のほうが高いとされているが,LSGとバイパス系手術を選択する明確な基準はいまだ示されていない.
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臨床と研究
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症例
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書評
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