内科
Volume 100, Issue 6, 2007
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特集 【100 巻記念号 腫瘍内科診療データファイル】
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- ≪悪性腫瘍(がん)診療を取り巻く環境を知る≫
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わが国のがんの推移と現状
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionわが国の戦後におけるがんの死亡率は,主に高齢化の影響で粗死亡率は男女とも一貫して増加し続けている.一方,がんの年齢調整死亡率は,男性では 1990年代まで増加し,その後減少傾向にあり,女性では戦後減少傾向が続いている.罹患率においても,粗罹患率は男女とも 1970年代から一貫して増加しているが,年齢調整罹患率では 1990年代まで増加しその後ゆるやかに減少している.2005年の部位別がん粗死亡率は,肺,胃,大腸,肝臓,膵臓の順,2001年の部位別がん粗罹患率(全国推計値)は胃,大腸,肺,乳房,肝臓の順に高い.1993~1996年診断例のがんの 5年相対生存率は男性 45%,女性 55% である. -
がん検診の現状
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionわが国では,古くから全国的にがん検診が行われてきているが,がん検診の受診率は全国的にみると依然 10~20% 程度にとどまっている.がん検診の目的は定期的にがん検診を受診することにより,がんを早期に発見し,根治療法を受けて,がんで死なないように(がん死亡を予防)することである.がん検診の死亡率低下効果を高めるためには,がん検診受診率を大幅に上昇させること,精度の高い(とくに発見感度が高く,偽陽性率が低い)がん検診法を開発し,普及する必要がある.がん検診のさらなる普及により,5部位(胃,大腸,肺,乳房,子宮)のがん検診の受診率がすべて 30%(50%)に達した場合には,全がん死亡の約 9%(約 15%)の予防が可能と推計された. -
画像診断の進歩
100巻6号(2007);View Description Hide Description現在がん診療には不可欠となっている画像診断の最近の進歩について,各モダリティー別に概略した.最近の X 線 CT の進歩は検出器の多列化である.多断面での高空間分解能画像が高速で得られ,三次元画像の画質も飛躍的に向上した.MRI はパラレルイメージングの登場によりさらに高速化した.拡散強調画像は病変を造影剤なしにコントラストよく描出することが可能である.近い将来経静脈性の MRI 用リンパ節造影剤(USPIO)の登場が待たれる.PET は CT との一体型装置 PET/CT の登場で有用性が向上した.3D 画像や治療効果判定などへの応用が始まっており,新しい薬剤の開発も期待される.エコーはデジタル化やハーモニックイメージングによって画像の向上が著しい.最近は第二世代の造影剤が登場し,肝臓以外への応用も期待されている. -
インフォームドコンセント
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionインフォームドコンセント(IC)は GCP においては「被験者の治験への参加の意思決定と関連する,治験に関するあらゆる角度からの説明が十分なされた後に,被験者がこれを理解し,自由な意思によって治験への参加に同意し,書面によってそのことを確認すること」である.IC の基盤は「患者の自律性の尊重」である. -
疼痛コントロール
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionがん患者が何らかの痛みを訴える頻度は高く,がんの痛みに対しては QOL の向上を含めた早急な対策が必要であり,専門病棟でなくどこででもできる治療法として WHO が提唱するがん性疼痛治療法に則った治療を行わなくてはならない.WHO 方式でとれない痛みに関しては鎮痛補助薬を併用したり,神経ブロック等の適応も考慮し取り入れていく必要性がある.がん性疼痛治療の質の更なる向上のためには,患者・医療者双方の緩和医療に関する偏見をなくす努力として,WHO 方式は最低でも知っておかなくてはならない.本稿では,がん疼痛管理の総論と基本について述べる. -
精神的サポート
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionがんと心の問題を専門的に扱う領域として,サイコオンコロジー(精神腫瘍学)という学際的な学問分野が生まれた.サイコオンコロジーの大きな目的の一つは,がんが患者・家族の心理面に与える影響を明らかにして,苦痛を和らげることにある.先行研究の結果から,積極的なケアが望まれる精神症状はおおむね 30~40% 程度のがん患者に認められることが示されている.一方で,医療の現場では,がん患者の精神症状は,看過されがちであることが繰り返し報告されている.わが国においても,近年,がん患者に対して適切な精神的ケアを提供することの重要性が認識されつつあり,サイコオンコロジーの臨床実践および均てん化への機運が高まっている. -
臨床試験
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionがんの治療開発では,新治療は第Ⅰ相~第Ⅲ相へとスクリーニングされながら最終的に現在の標準治療に代わりうるかどうかを評価される.開発の相(フェーズ)によって,被験者がさらされるリスクやデータ管理の難易度などは異なっており,臨床試験は開発フェーズに適した組織で実施されなければならない.治験と研究者主導臨床試験では規制要件が大きく異なっている.被験者の安全を確保し被るリスクを妥当なものとするためには,各種倫理ガイドラインの要件を満たし,科学的かつ倫理的な試験を実施する必要がある. - ≪化学療法・放射線療法≫
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抗がん薬の作用機序
100巻6号(2007);View Description Hide Description抗がん薬は毒ガスによる白血球減少を契機に開発がはじまり,そのような作用のある薬が捜された.毒ガス類似のアルキル化薬,核酸代謝拮抗薬を経て,植物アルカロイド,抗がん抗生物質,白金化合物などが開発されたが,これら化学療法薬は殺細胞的作用でがん細胞を殺し,骨髄抑制などの副作用は付き物であった.前世紀の後四半世紀にがんは遺伝子の病気であることや細胞増殖に関する分子機構が明らかにされ,これらの分子を標的とする分子標的療法が,画期的な治療成績をあげるようになった.21世紀の抗がん薬は分子標的薬が中心となるであろうが,あくまでも,がんの原因となっている分子に対する特異的な分子標的薬を開発すべきであろう. -
多剤併用化学療法の原理
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionヒトの固形癌は S 字状の Gompertz の増殖曲線に従って増殖する.Norton-Simon のモデルによると腫瘍の再増殖を抑えるには投与間隔を短縮した dose dense chemotherapy がよく,その実践には交替療法ではなく,sequential therapy がよい.併用療法での薬剤の選択時には,2 剤とも抗腫瘍効果を示し,化学構造や作用機序が異なり,非交叉耐性であり,相乗効果が期待でき,可能な限り副作用が重複しないことを考慮する必要がある.最大耐量の予測について Korn & Simon 両博士の考案した tolerable-dose diagram を用いて解説した. -
化学療法耐性化の機序とその対策―造血器腫瘍を中心として
100巻6号(2007);View Description Hide Description抗がん薬耐性機序の主なものとして,ABC トランスポーターの発現,細胞質内解毒機構の亢進,アポトーシスの低下,DNA 修復活性の亢進などがある.P 糖蛋白は ABC トランスポーターの代表的な蛋白であるが,これが発現している白血病症例は,寛解率が低く生存期間が短縮しており,予後不良因子である.薬剤耐性に対する対策は克服薬を用いることである.P 糖蛋白に対する MS-209 やcyclosporin A,アポトーシスの低下に対する Bcl-2 アンチオリゴヌクレオチドなどは,白血病治療成績を向上させる.薬剤耐性遺伝子の一塩基多型は治療効果,毒性ともに,影響を及ぼすことが明らかになってきている. -
化学療法の副作用とその対策
100巻6号(2007);View Description Hide Description癌化学療法の治療成績の向上には,十分な支持療法・副作用対策が必須である.白血球(好中球)減少は,感染症発症のリスクを伴う.顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤をはじめとする白血球増殖因子と抗菌薬・抗真菌薬のエビデンスに基づいた適切な使用が必要である.悪心・嘔吐は,使用する抗癌薬の惹起する悪心・嘔吐のリスクによって,5HT3受容体拮抗薬や副腎皮質ホルモン薬を適切に使用する.今後使用可能になる NK1受容体拮抗薬による遅延性嘔吐の抑制は,癌患者の QOL 向上と治療計画の完遂に貢献すると考えられる.肺毒性・心毒性・神経毒性・皮膚障害に対しては確立した治療法はないが,用量依存性に毒性が発現する薬剤では一定の総投与量を遵守する. -
高齢者や臓器障害時の化学療法―とくに肝機能・腎機能障害について
100巻6号(2007);View Description Hide Description臓器障害がある場合には,効果と副作用を比べ,抗がん薬が必要かどうかを判断する.多くの抗がん薬は,代謝経路,排泄経路,排泄時間が明らかにされている.腎機能,肝機能障害時には薬物の体内動態をよく調べ,影響の少ない薬剤を選択する.個人差が大きいので,1回目の投与は添付文書に従い投与し,次回は効果,副作用をみたうえで,投与量,投与間隔を決定する.高齢というだけで減量しなければならない薬剤は少ない.しかし,多くの高齢者は CCrの低下,肝血流量の低下,血清蛋白低下などがある.その程度に従い,投与量,投与間隔を決定する. -
放射線療法と合併症対策
100巻6号(2007);View Description Hide Description放射線治療はさまざまな腫瘍に対し根治的な目的あるいは緩和的な目的で幅広く使われているが,さまざまな程度の有害事象がつきものである.一般的に腫瘍制御率は線量を増加することで高まることから腫瘍制御の観点からはできるだけ高線量を照射したいが,一方で有害事象発生率が高まることから線量をいくらでも上げることができないのが実情である.放射線治療の副作用は急性期と晩期に大きく分けることができる.急性期障害は照射開始後比較的早期に現れるのに対し,晩期障害は照射終了後数ヵ月から数年後に現れる.そしてどちらの障害も閾値以上の線量を照射されることで現れてくることが知られている.放射線による副作用について考えるとき,いくつかの例外はあるが,基本的に放射線障害は照射野内に起こるのが一般的であるため,放射線障害が疑われる状況に直面した医師は放射線科のカルテを参照し,照射野内に問題の部位が入っているかを確かめることが推奨される.また,上述したように放射線障害には閾値が存在するため,障害が疑われている部位が閾値を超える照射を受けているか,また障害が現れてしかるべき時期にあるのかも考慮するとさらに正確な評価が可能となる. - ≪疾患からみる各種癌の診断・治療≫
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脳・頭頸部 脳腫瘍
100巻6号(2007);View Description Hide Description代表的な悪性脳腫瘍の画像診断および病理診断,治療法,治療成績について簡潔に述べた.とくに乏突起膠腫では遺伝子解析が重要であり,1番染色体短腕と 19番染色体長腕の欠失が予後因子と認識されている.退形成性星細胞腫や膠芽腫の化学療法は,従来 nimustine などの注射剤が中心であったが,temozolomide という新しい内服薬が登場した.注射剤と比較して骨髄抑制が軽く,その治療効果も証明されている.膠芽腫などでは,ここ数十年,治療成績が伸びていない.放射線治療は,腫瘍局所に 60 Gy まで照射するのが標準であるが,ホウ素中性子捕捉療法の改良が行われ,局所に 140 Gy 相当の線量を安全に照射することが可能となっている.悪性脳腫瘍の治療には集学的治療が必要であるが,高齢者では全身状態に応じた個別の治療計画を立てるべきである. -
脳・頭頸部 頭頸部癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description頭頸部癌の原因として生活習慣や感染などの関与があり,罹患率の減少には一次予防が重要である.多数の臓器の集合する部位で,原疾患や治療に関連した機能障害が生じやすいため,治療の全経過を通じて管理がむずかしい.対象となるがん以外の病態にも注意を払う必要がある.部位,亜部位によって治療戦略は異なる.局所コントロールが,QOL や生存に大きく影響する.手術,放射線治療,化学療法を用いた集学的治療が,多職種の参加によるチーム医療で実施される.頭頸部癌の初回治療に組み込まれる化学療法は,導入化学療法と化学放射線療法がある.転移・再発例に対する化学療法の主目的は症状緩和レベルであり,生存期間延長への寄与は乏しい. -
脳・頭頸部 甲状腺癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description甲状腺癌は組織学的に乳頭癌,濾胞癌,未分化癌および髄様癌に分類され,組織型ごとに臨床的特徴が大きく異なる.病期分類は組織型,年齢で異なる特徴がある.いずれの癌においても化学療法は効果のないことが多く,治療の第一選択となることはほとんどない.無症候性微小乳頭癌のように生涯無害で経過する癌も存在する反面,未分化癌はいまだ効果的治療法がなく,予後不良である. -
呼吸器 小細胞肺癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description肺癌の約 15% を占める小細胞肺癌は増殖速度が速く,早期から遠隔転移することが多い一方,化学療法・放射線療法に対する感受性が高いのが特徴である.治療方針は,病期(限局型,進展型)に応じて組み立てる.進展型に対する標準的化学療法は,4コースの cisplatin・etoposide 併用療法(PE 療法),または cisplatin・irinotecan hydrochloride 併用療法である.限局型では胸部放射線療法の追加により局所制御効果・生存率が向上することが示されており,4コースの PE 療法に,総線量 45 Gy の加速多分割照射を早期に同時併用する方法が標準である.さらに初回治療で完全寛解(CR)または CR に近い効果が得られた場合は,予防的全脳照射を行うことが勧められる. -
呼吸器 非小細胞肺癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description非小細胞肺癌の実地医療では年齢中央値が 70歳を超え,多くは進行癌である現状を診断と治療において考慮しておく.多列検出器型 CT の普及によって,すりガラス陰影や微小結節が検出されるようになった.末梢型早期肺癌像を十分に認識し,経過観察と診断をすることが重要である.治療にあたって,標準的治療のエビデンスは全身状態良好(PS 0~1)な症例を対象とした臨床試験の結果であることを認識しておく.とくに高齢者肺癌を除く日本からのエビデンスは,PS 良好な 70歳以下を対象としていることに注意を要する.病期によって術後化学療法の有用性が示唆されているが,本邦では抗悪性腫瘍薬の種類,投与量,安全性,併用薬の選択などの問題点があり,標準的治療として定着していないのが実状である.全身状態良好な非高齢者の初回化学療法では,cisplatin の有用性が示されている.gefitinib をはじめとするチロシンキナーゼ阻害薬の使用にあたっては,危険因子と患者の利益を十分に考慮して投与すべきである. -
呼吸器 胸膜中皮腫
100巻6号(2007);View Description Hide Description日本のアスベスト輸入量のピークは 1970年代半ばであり,平均 40年とされる潜伏期間を考えると,今後も本邦における中皮腫罹患,および死亡は増加すると予想される.手術療法が生存延長,および症状改善に寄与するとする確立したエビデンスはない.2007年 1月に pemetrexed(アリムタ)と cisplatin の併用療法が,わが国としてははじめて本疾患に保険適用をもつ抗癌薬として承認され,その有用性が期待されている.血管新生阻害薬を中心とする分子標的治療薬の導入が,期待されている. -
消化管 食道癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description食道癌の標準的治療は外科的手術療法であるが,化学療法,放射線療法などの非外科的治療の実績も増大している.中でも化学放射線療法は,後ろ向きの検討ながら,外科的手術療法に匹敵するような成績を示すようになった.しかし,食道癌は症例数が限られ,新たな標準治療を確立するために十分な大規模比較試験の実施が困難である.また,本邦と海外においては治療方針や治療成績の相違を認め,グローバルな標準治療の確立という課題には問題が多い.このような背景のもと,海外の臨床成績をそのまま単純に本邦に外挿するには疑問が生ずるため,本稿では本邦における臨床試験のエビデンスを基本として,内科的治療を中心に食道癌治療について述べることとする. -
消化管 胃癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description国内の切除不能な進行再発胃癌に対する一次治療の標準治療は,tegafur・gimeracil・oteracil potassium 配合(TS-1)+cisplatin(CDDP)併用療法であると考えられるようになった.二次治療は,まだ十分なエビデンスが確立されていない.そのため臨床では,胃癌の進行に伴う全身状態の悪化や臓器機能障害を加味して,エビデンスの高い治療から選択していく必要がある.国内の術後補助化学療法の標準治療は,stageⅡ/Ⅲ症例においては TS-1 の術後 1年間の内服であると考えられるようになった. -
消化管 小腸腫瘍
100巻6号(2007);View Description Hide Description小腸腫瘍のうち,小腸癌,悪性リンパ腫,gastrointestinal stromal tumo(r GIST),ならびにカルチノイドの診断と治療について概説した.いずれの腫瘍も,限局例であれば外科的切除が原則である.癌は予後不良であり,術後に fluorourac(il 5-FU)と leukovorin(LV)を主体とした化学療法を行う.悪性リンパ腫は,病変の範囲,組織型と病期に応じて,CHOP 療法または RCHOP療法などの化学療法を追加する.GIST では,転移・再発例に対して imatinib を投与する.リンパ腫と GIST は胃原発例より予後不良である.カルチノイドは転移率が高いが,他の 3腫瘍より予後良好である.各腫瘍に特徴的な肉眼所見を理解して,適切な画像診断を行うことが重要である. -
消化管 大腸癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description大腸癌の死亡数は年々増加傾向にあり,近い将来,消化器癌の第 1 位を占めると予想される.治療においては,10年前までは手術が治療の中心であり,化学療法の効果は限定的なものであった.しかし,ここ数年での大腸癌における化学療法の進歩は目覚ましく,5-fluorourac(il 5-FU)/leucovorin(LV)に oxaliplatin や irinotecan hydrochloride(CPT-11)を併用するFOLFOX 療法,FOLFIRI 療法はもちろん,分子標的薬剤である bevacizumab が本邦でも今年 6月に認可され,今後ますます生存期間の延長や QOL が改善されると期待される.しかし,海外にて有効性が認められている薬の承認までに,依然として大きなタイムラグがあり,課題となっている. -
肝・胆・膵 肝細胞癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description肝細胞癌の診断は,背景の慢性肝疾患と画像診断,腫瘍マーカーより診断する.肝細胞癌の治療には,①肝切除,②肝移植,③経皮的局所療法,④肝動脈塞栓療法が確立されており,化学療法と放射線療法はいまだ確立されていない.治療法の選択には,癌の進行度と肝予備能の両者を考慮しなければならない.進行肝細胞癌に対して化学療法が行われるが,標準的な治療方法はなく,本邦では,インターフェロン併用 fluorourac(il 5-FU)肝動注や,低用量 cisplatin 併用 5-FU 肝動注が行われることが多い.肝動注には,抗癌薬以外のカテーテル留置に伴う合併症がある.放射線療法は,研究段階の治療である. -
肝・胆・膵 胆管癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description胆管癌の診断は,腹部超音波のほか,multidetector-row CT(MDCT)や magnetic resonance cholangiopancreatography(MRCP),超音波内視鏡,管腔内超音波,胆道鏡など多種類の modality を駆使することで,詳細な診断が可能となっている.胆管癌治療の基本は手術であり,その可否を追求する姿勢が大切である.非切除胆管癌に対する抗腫瘍療法については,いまだ標準的治療法が確立されていない.抗癌剤治療のほか,放射線治療や photodynamic therapy(PDT)など,さまざまな治療が試みられている.胆管癌治療でもっとも重要なことは,胆道合併症の管理である.的確なドレナージテクニックなしに,抗腫瘍療法の施行は不可能である. -
肝・胆・膵 胆嚢癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description胆嚢癌の臨床症状としてもっとも多いものは右上腹部痛であるが,早期胆嚢癌の特有な症状はほとんどなく,検診や他の疾患でのスクリーニング検査が発見の契機となることが多い.胆嚢癌の決め手となる risk factor は少ない.しかし,膵・胆管合流異常では,高率に胆嚢癌の発生が認められている.胆嚢癌において根治が期待できる治療法は切除手術であり,切除が第一選択の治療法である.非切除治療としては主に全身化学療法が行われるが,無作為化比較試験に基づく標準治療は確立していない.現在のところ,gemcitabine(GEM),tegafur・gimeracil・oteracil potassium 配合(TS-1)などが使用可能であり,今後,無作為化比較試験による検証が必要である.化学療法の有害事象として,とくに胆管炎の併発に注意を払う必要がある. -
肝・胆・膵 乳頭部癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description乳頭部癌の拾い上げには超音波検査(US),上部消化管内視鏡検査(EGD)が有用であり,二次検査としては超音波内視鏡検査(EUS)が有用である.進展度診断は治療選択に重要な因子であり,EUS および管腔内超音波検査(IDUS)が有用な診断法である.腺腫に対する内視鏡的乳頭切除は有用な治療法であり,より安全な手技が確立されつつある.乳頭部癌の根治的治療は,膵頭十二指腸切除術または幽門輪温存膵頭切除である.腺腫内癌や早期癌に対する内視鏡乳頭切除および縮小手術における治療法の確立については,今後の検討を要する.化学療法は gemcitabine,tegafur・gimeracil・oteracil potassium 配合(TS-1)が承認され,これらを中心とした治療が勧められる. -
肝・胆・膵 膵癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description膵癌患者の予後を改善させるためには,2cm 以下の小膵癌の拾い上げを確実に行うことが重要であるが,大多数を占める切除不能進行膵癌や術後再発に対する有効な治療法を確立させることも重要である.膵に関係する血液検査や超音波検査(US)で異常を認めた場合,造影 CT や磁気共鳴胆道膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP)で検査を行う.診断不確定の場合は超音波内視鏡検査(EUS),内視鏡的逆行性膵管造影法(endoscopic retrograde pancreatography:ERP),ポジトロン断層法(positron emission tomography:PET)などを行う.なお未確定の場合は US,CT,EUS 下に細胞診や組織診を行う.切除不能膵癌に対する第一選択薬は gemcitabine であるが,tegafur・gimeracil・oteracil potassium 配合(TS-1)の使用や,gemcitabine と他の薬剤との併用比較試験にて,新しい治療法の開発が期待される. -
腎・泌尿器 腎臓癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description腎臓癌は 50歳以後に多い悪性腫瘍で,国内に約 1万例の発症があり六つの病理型に分類される.主なものは淡明細胞型腎癌,乳頭型腎癌であり,90% を占める.近年は他疾患の画像検査や,健診で発見される腫瘍径の小さい偶発癌が多く,ほとんどは無症状である.しかし,依然として血尿や転移で発見される進行癌が 20~30% 存在する.治療法としては主に外科的な切除が行われる.進行癌に対してはインターフェロンや IL-2によるサイトカイン療法が行われるが,今後は分子標的治療薬による抗血管新生因子療法が主流になると考えられる.StageⅡまでの腎臓癌の 5年生存率は比較的よいが,転移をもつ進行癌では 30% 程度と非常にわるい. -
腎・泌尿器 副腎腫瘍
100巻6号(2007);View Description Hide Description副腎腫瘍は腫瘍学の観点から,内分泌活性を有する良性腫瘍と悪性腫瘍とに大別される.内分泌活性を有する良性腫瘍としては,原発性アルドステロン症,Cushing 症候群,褐色細胞腫がある.悪性腫瘍としては副腎皮質癌と悪性褐色細胞腫がある.診断には CT,MRI,血管造影,シンチグラフィが行われる.治療は手術療法が原則であり,化学療法や放射線治療は奏効しにくい.副腎皮質癌は,進行が急速であり予後不良である.一方,悪性褐色細胞腫は進行が緩徐であることも多い.副腎皮質癌も悪性褐色細胞腫も組織学的に良性との鑑別が困難であり,経験のある病理医による診断が望ましい.Ki-67 による染色性が鑑別の一助となる. -
腎・泌尿器 膀胱癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description膀胱移行上皮癌の約 80% は,初診時には乳頭状で粘膜内か粘膜下に留まる表在癌で,多くは内視鏡的治療で生命予後はきわめて良好であるが,高率に尿路内への異所性再発を認める.膀胱内再発予防を目的として,抗癌薬や BCG の膀胱内注入が行われる.一方,多くの浸潤性膀胱癌は,初診時より進行性の膀胱癌として発見される.浸潤性膀胱癌の多くは,非乳頭状で結節性,びらん形成,スキルス様など多彩な形態をとる.浸潤性膀胱癌に対して膀胱全摘除を行っても予後は不良で,肺,骨,リンパ節,肝などへの転移をきたしやすい.周術期や再発症例に対して,CDDP を主とした多剤併用療法が行われる. -
腎・泌尿器 前立腺癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description前立腺癌の診断に関しては前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)の測定と直腸診が重要で,確定診断として針生検を施行する.骨やリンパ節に転移しやすい.治療に関しては,限局性の場合には手術療法や放射線療法が用いられる.転移を認める場合には,全身療法として内分泌療法が用いられる.内分泌療法として今日もっとも多く用いられているのは,LH-RH agonist である.内分泌療法の近接効果は良好であるが,アンドロゲン耐性となると再燃をきたす.抗癌薬は従来,前立腺癌に対しほとんど無効とされていたが,近年,ホルモン抵抗性前立腺癌に対しタキサン系を中心とした抗癌薬の有用性が報告されている. -
腎・泌尿器 精巣腫瘍
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptioncisplatin(CDDP)の登場以後,精巣腫瘍に対する治療成績は集学的治療によって画期的に向上している.リスク分類(IGCCC)(Table 1)に従って,治療戦略を考える.導入化学療法の標準的レジメンは,BEP 療法である.予後不良群に対する治療成績に著しい改善はみられておらず,全体としてみると進行性であっても治療成績(根治率)のよい精巣胚細胞腫瘍ではあるが,社会的啓発と引き続き新しい治療方法の開発が期待される. -
女性生殖器 子宮頸癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description早期頸癌に対しては手術治療がいまだにもっとも重要な位置を占めている.頸癌の手術は,進行期と患者が治療に対して望む事柄によって決定される.初期病変に対しては,妊孕能を温存する治療が可能である.CIN3(高度異形成,上皮内癌)に対しては,円錐切除術もしくはレーザー蒸散が用いられる.Ⅰa1 期に対しては妊孕能温存希望の有無,リンパ節転移リスク因子すなわち脈管侵襲の有無によって単純子宮全摘術,あるいは円錐切除術または円錐切除術+骨盤リンパ節郭清が選択される.Ⅰa2 期には,準広汎子宮全摘術が用いられる.最近は若年女性のⅠa2期および腫瘍径の小さなⅠb 期(<2 cm)に対して,妊孕能を温存する広汎子宮頸部摘出術(radical trachelectomy)が治療選択肢として受け入れられつつある.Ⅰb-Ⅱa 期に対して,広汎子宮全摘術と放射線治療は同等の成績を示す.Ⅱb 期に対して,欧米では放射線治療(cisplatin 併用が推奨されている)が用いられ,わが国では多くの場合広汎子宮全摘術が用いられる.わが国で一般的に用いられる広汎子宮全摘術は,欧米の TypeⅢと呼ばれる広汎子宮全摘術よりも根治性の高い術式である.広汎子宮全摘術と放射線治療はどちらも根治的治療法として選択されるものであり,合併症の面からも安易に両者を組み合わせるべきではなく,術後補助放射線治療は厳密に適応を検討しなければならない.Ⅲ,Ⅳ期には放射線治療が用いられる.進行・再発頸癌に対して化学療法の有用性はさらに検討されるべきである. -
女性生殖器 子宮体癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description本邦における子宮体癌の罹患数は急増しており,原因としては生活習慣,環境の欧米化,女性のライフスタイルや食生活の変化などが主な要因と考えられ,今後も増加傾向が持続すると考えられる.子宮体癌の約 60% は,子宮体部に限局した早期癌で予後も良好である.しかし,進行・再発症例の予後はわるく,子宮体癌の治療成績の向上には術前・術中の予後因子に基づいた手術療法と,的確な術後療法の選択が必要となる.本稿では子宮体癌の診断法および治療法を概説するとともに,とくに化学療法の最近の動向について詳述する.また,近年増加傾向にある若年子宮体癌に対する,妊孕性温存を目的としたホルモン療法についても取り上げて紹介する. -
女性生殖器 卵巣癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description卵巣癌は近年増加傾向にある.排卵による上皮の破綻・修復,肥満,子宮内膜症等が,発症の危険因子となる.画像検査と腫瘍マーカー等で術前診断を進める.初回手術にて病理組織・進行期が確定する.残存腫瘍径が重要な予後因子のため,最大限の腫瘍減量を目指す.標準的な化学療法は paclitaxe(l 175 mg/m2,3hr)と carboplatin(AUC5-6)の併用療法である.腹腔内化学療法や,molecular biology に基づく組織亜型別の治療法(抗癌薬,分子標的薬)の検討などが進行中である.再発癌は,薬剤感受性(TFI≧6ヵ月)では初回レジメンに準じ,薬剤抵抗性(TFI<6ヵ月)では初回治療薬と交差耐性を有さない薬剤を選択する.胚細胞性悪性腫瘍は若年層に好発する.妊孕性温存手術と術後化学療法(BEP 療法)が標準的である. -
乳癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description乳癌は日本人女性において罹患率のもっとも高い悪性腫瘍である.手術療法・放射線療法などの局所治療だけでなく,全身療法としての薬物療法を加えた集学的な治療戦略が重要である.薬物療法にはホルモン療法・化学療法・抗体療法があり,腫瘍の生物学的特性によって選択される.術後薬物療法の目標は治癒であり,再発リスクに基づいて治療方針が決定される.転移性乳癌の治療の目標は,症状の緩和・QOL の向上・延命である.ホルモン感受性がある場合は,可能な限りホルモン療法から開始する.化学療法におけるキードラッグは,アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤である.HER2 陽性例には trastuzumab 単独,または化学療法との併用療法を選択する. -
血液 急性骨髄性白血病
100巻6号(2007);View Description Hide Description急性骨髄性白血病(AML)の分類は,FAB 分類から WHO 分類へと移行しつつある.AML の診断には依然として形態・細胞化学検査が重要であるが,免疫学的検査,染色体検査,分子遺伝学的検査の重要性が高まっている.治療は寛解導入療法に引き続き寛解後療法が行われていて,さまざまな工夫と治療研究がなされてきて,エビデンスの積み重ねがなされているものの,まだ満足すべき治療成績が得られているとはいえない.同種造血幹細胞移植も重要な治療オプションであり,若年者で予後良好群以外には,HLA一致同胞ドナーが得られる場合に第一寛解期での移植が勧められる.化学療法についても移植療法についても,まだまだ解決すべき課題が残されている. -
血液 急性前骨髄球性白血病
100巻6号(2007);View Description Hide Description急性前骨髄球性白血病(APL)の大部分は,(t 15;17)由来の PML-RARα 陽性である.APL 細胞は,豊富な顆粒や Auer 小体からなる独特の細胞形態を呈する.APL は,化学療法の初期に播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)による脳出血などの早期死亡が多かった.PML -RARα を標的とする全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid:ATRA)は APL 細胞を分化させ,DIC を増強せずに高率に寛解をもたらす.併用する化学療法が APL の予後を決定する.APL には一定の非寛解例と再発例がある.再発例に有効な亜ヒ酸や CD33 抗体を初期治療に組み込むことが,今後の APL 治療の課題である. -
血液 急性リンパ性白血病
100巻6号(2007);View Description Hide DescriptionALL は小児白血病の 80%,成人白血病の 20% を占める.成人 ALL 寛解率は 70~90% と高率であるが,再発率が高いため長期生存率は 30% 程度にとどまる.ハイリスク患者においては第一寛解期における同種移植が推奨されるが,スタンダードリスク患者においては同種移植の化学療法に対する優位性は明らかでない.Ph 陽性 ALL は予後不良因子の一つと考えられていたが,imatinib の開発により治療成績の向上が認められている. -
血液 慢性リンパ球性白血病
100巻6号(2007);View Description Hide Description小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病(SLL/CLL)は,本邦での患者数は少ないが,治癒を目指すことが困難な難治性疾患である.SLL/CLL の分子生物学的な予後因子の解明が進んでおり,治療反応性との関連も指摘されている.プリンアナログである fludarabine は SLL/CLL 治療の第一選択として考えられており,アルキル化薬やモノクローナル抗体との併用にて有効性を得ている.alemtuzumab は,CD52 に対するキメラ型ヒト化モノクローナル抗体であり,本邦での保険適用はないが,SLL/CLL に対する新規薬剤として期待されている. -
血液 慢性骨髄性白血病
100巻6号(2007);View Description Hide Description慢性骨髄性白血病(CML)は,フィラデルフィア(Ph)染色体によって産生される BCR/ABL 融合蛋白質が原因となって発症する疾患であり,その診断にも Ph 染色体の証明が必要である.自然経過では,数年間の慢性期を経て急性転化を生じて死にいたる.慢性期患者の標準治療は,特異的チロシンキナーゼ阻害薬 imatinib の投与であり,約80% の患者に Ph 染色体が消失する細胞遺伝学的完全寛解が得られる.imatinib 投与中は有害事象や有効性を定期的に評価し,可能な限り imatinib を目標とする量で投与することが重要である.imatinib に対する耐性化が認められた場合や移行期,急性転化期に進行した場合には,第二世代のチロシンキナーゼ阻害薬や造血幹細胞移植を検討する. -
血液 ホジキンリンパ腫
100巻6号(2007);View Description Hide Descriptionホジキンリンパ腫(HL)はリンパ節腫大や縦隔腫瘤をきたしやすいリンパ腫で,病理組織学的に Reed Sternberg 細胞や Hodgkin 細胞を認めるのが特徴である.限局期 HL に対する標準的治療は,化学療法・放射線の併用療法である.化学療法としては ABVD 療法(予後不良因子のない場合 2コース,予後不良因子のある場合 4コース),放射線療法としては 30 Gy 程度の病変リンパ節領域照射が標準的で,90% 前後の患者で治癒が期待できる.進行期 HL に対する標準的治療は,ABVD 療法 6~8コースである.予後因子によるが40~85% の長期無病生存が期待できる.再発・治療抵抗性 HL では救援化学療法(ESHAP,ICE など)のあと,化学療法感受性の場合には大量化学療法・自家造血幹細胞移植を行う. -
血液 非ホジキンリンパ腫
100巻6号(2007);View Description Hide Description低悪性度群(濾胞性リンパ腫など)は,進行が緩徐で強力な治療を行わなくても長期間生存するが,治癒は期待できない.限局期の症例には放射線療法,進行期の B 細胞性リンパ腫には rituximab を併用した化学療法を行う.中・高悪性度群(びまん性大細胞型リンパ腫など)は,適切な治療を行うと治癒が期待できる.限局期の症例に対しては CHOP 療法 3コース+放射線療法,進行期には CHOP 療法を 6~8コース行う.B 細胞性では rituximab を併用した CHOP 療法を行う.高高悪性度群(リンパ芽球性リンパ腫,バーキットリンパ腫)は,悪性リンパ腫に準じた治療を行っても予後不良で,急性リンパ性白血病に準じた化学療法を行う. -
血液 多発性骨髄腫
100巻6号(2007);View Description Hide Description多発性骨髄腫の診断には,国際骨髄腫ワーキンググループの診断基準が用いられる.臓器障害を有する症候性骨髄腫は治療の対象となり,臓器障害のない症例は M 蛋白量と骨髄形質細胞比率により無症候性骨髄腫と MGUS に分けられる.治療は,65歳以上では MP による化学療法が主体となり,プラトーに達すれば中止する.65歳未満は自家造血幹細胞移植の適応を考慮し,VAD 療法が寛解導入に用いられる.thalidomide,bortezomib,lenalidomide の登場により,高齢者では MP とこれら新規薬剤の併用が,若年者においても新規薬剤が寛解導入に用いられ,治療成績の改善が期待されている. -
皮膚悪性腫瘍
100巻6号(2007);View Description Hide Description皮膚悪性腫瘍の中で頻度と悪性度から重要な悪性黒色腫(MM)と有棘細胞癌(SCC),基底細胞癌(BCC)を取り上げた.最近,日本においてこれら皮膚腫瘍の診療ガイドラインが作成,公開された.MM の臨床診断についてはダーモスコピーが有用であり,とくに日本人に多い足底のMM 早期病変と良性の母斑の鑑別に絶大な威力を発揮する.MM の外科的治療に関しては原発巣の縮小手術の方向が確立された.また,センチネルリンパ節生検が導入された.MM は化学療法に抵抗性であり,DTIC が標準薬とされるが,その効果は限られたものである.SCC はリンパ行性転移を生じうるが,BCC は転移を生じる危険性がない.このような SCC,BCC の生物学的特性に基づいて,両腫瘍の標準的治療指針が提案されている. -
骨・軟部腫瘍
100巻6号(2007);View Description Hide Description骨・軟部腫瘍の診断・治療は,近年大幅に進歩した.それに伴い,骨・軟部肉腫患者の予後や術後機能も,過去 20年で改善されている.それには,画像診断技術の進歩,化学療法の普及,切除縁の概念の普及,腫瘍切除後の再建技術の向上が大きな要因を占めている.術前化学療法により腫瘍の縮小化を図ることで患肢温存率も 90% 近くにまで上昇した.再建方法は,人工関節や生物学的な再建方法などさまざまな方法が行われているが,どの方法も利点と欠点を有する.近年は,形成外科医の協力のもとさらに高度な再建が行われている.しかし依然として軟部腫瘍は安易に切除されやすく,初期治療を誤ると,悪循環にはいる.骨・軟部腫瘍が治る時代になってきたからこそ,ますます初期対応は大切である.適当に切除するのではなく,画像等できちんと診断をつけて対応していただきたい.一方,転移性骨腫瘍症例に,根治をある程度考えた治療を行うか,あるいは姑息的な治療を行うかの判断が大切である. -
原発不明癌
100巻6号(2007);View Description Hide Description原発不明癌(cancer of unknown primary)は,臨床的に注意深い全身検索や経過観察を行っても原発巣が同定できない転移性の腫瘍を示し,さまざまな腫瘍が混在した不均一な疾患グループであり,全悪性固形腫瘍の 3~5% を占める.病理組織は 60% を腺癌が占める.特定の治療に反応し,長期生存が認められるサブグループが存在するため,サブグループの適切な診断が重要である.特定の治療を有しないサブグループに対して化学療法が中心に行われているが,標準的な化学療法レジメンは存在せず,プラチナ製剤とタキサン系薬剤の併用療法が汎用されており,奏効率 20~30%,生存期間中央値は 7~11ヵ月である.
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ドイツ医学導入とわが国の医学教育
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