Volume 105,
Issue 5,
2010
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特集 【免疫性神経疾患―新たな治療戦略に向けて】
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内科 105巻5号, 748-750 (2010);
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この半世紀,免疫性神経疾患の病態解明,治療は著しく進歩した.早期診断が早期治療につながり,結果として後遺症を最小限に抑えることが可能となってきている.病態・病型の違いや病期により,以前より細かな治療が可能となった.免疫性神経疾患の患者は,初診時かかりつけ医や内科,整形外科,精神科を受診することが多く,その主訴も漠然としていることがある.このような場合,免疫性神経疾患の可能性も常に鑑別として頭に入れて置く必要がある.
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内科 105巻5号, 751-755 (2010);
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多発性硬化症の患者数は,わが国では欧米と比べて少ないが,徐々に増加している.視神経脊髄炎の病態解明に,わが国の研究者が大きく寄与した.Guillain-Barré 症候群や Fisher 症候群と抗ガングリオシド抗体について,わが国で世界をリードする成果が発表された.HTLV-1 関連脊髄症がわが国で見出され,病態解明が進められた.1990 年代以降,免疫性神経疾患の治療法は格段に進歩したが,わが国の研究者も大いに貢献した.わが国の免疫性神経疾患の診療および研究の進歩には,厚生労働省の免疫性神経疾患調査研究班および日本神経免疫学会の果たした役割が大きい.
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内科 105巻5号, 756-761 (2010);
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近年,Th17 細胞などの新たなリンパ球サブセットの発見により,免疫性疾患の病態解明が進んでいる.Th17 細胞は IL-17 を産生する CD4 陽性ヘルパー T 細胞のサブセットであり,多発性硬化症の動物モデル実験的自己免疫性脳脊髄炎において,病態への関与が証明されている.免疫学的特権部位とされてきた中枢神経系へのリンパ球の侵入機序についても,近年新たな知見が報告されており,多発性硬化症に代表される免疫性中枢神経疾患の病態機序の解明,新規治療法の開発につながる可能性がある.
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内科 105巻5号, 762-767 (2010);
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多発性硬化症(MS)の原因はいまだ不明である.MS の病態に免疫反応が関与することは病理学的にも確実である.しかしそれが MS の原因であるか否かについては結論が出ていない.MS の発病機序として自己免疫説とオリゴデンドログリオパチー説(いずれも仮説)がある.自己免疫説では自己反応性 T 細胞が主因で,脱髄は自己免疫による破壊と考える.オリゴデンドログリオパチー説ではオリゴデンドロサイトの細胞死が主因となり脱髄が生じ,免疫反応は変性髄鞘を除去するために二次的に生じていると考える.多くの MS 研究者が自己免疫説を支持していたが,オリゴデンドログリオパチー説の病理学的傍証が昨今提出され,MS の発病機序を巡って再び議論が生じている.
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内科 105巻5号, 768-772 (2010);
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多発性硬化症の神経症状や経過はさまざまで個人差の著しいことが特徴である.脱髄病巣の空間的/時間的多発性の確認と他疾患の鑑別で診断される.空間的/時間的多発性の確認には臨床症状に加えて MRI が有力である.再発期の治療,再発防止・進行抑制,対症療法,リハビリテーションが治療の柱である.長期予後の改善のためには早期診断・早期治療が重要である.
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内科 105巻5号, 773-777 (2010);
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視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)は視神経および脊髄を病変の主座とする中枢性炎症性疾患である.近年,NMO に特異的な自己抗体 NMO-IgG が発見された.NMO-IgG の対応抗原は,中枢神経系のアストロサイトの足突起に主に発現する水チャネル:アクアポリン 4(AQP4)である.NMO は AQP4 を介したアストロサイト障害を主体とする,中枢性自己免疫性疾患であり,根本的に多発性硬化症と異なる疾患である.NMO には免疫抑制を主体とした治療法が有用である.
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内科 105巻5号, 778-782 (2010);
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NMO-IgG(抗 AQP4 抗体)の発見により,MS と NMO の免疫病態が異なる疾患であることが明らかとなった.両者の鑑別には,両者の臨床的特徴を理解するとともに抗 AQP4 抗体の測定が有用である.NMO の急性増悪期にはステロイドパルス治療が行われるが,無効であったり効果が不十分な場合には血液浄化療法が有効である.NMO では再発予防治療が重要で,経口 prednisolone 単独や azathioprineとの併用療法が行われることが多い.これらの治療が無効の場合は,さらに強力な免疫抑制治療が行われる.
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内科 105巻5号, 783-786 (2010);
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急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は,感染や予防接種に関連して発症し,脱髄や炎症が示唆される多症候性で単相性の脳脊髄炎である.経過・予後の違いから,多発性硬化症(MS)を示唆する初回のエピソードである clinically isolated syndrome(CIS)との鑑別が重要である.ADEM では,意識の変容や行動異常などの脳症症状が特徴的で,CIS/MS に比べて頭痛,髄膜刺激症状,髄液細胞増多の頻度が高く,MRI 病変は広範囲,境界不鮮明で,両側深部灰白質にも出現しやすい.ADEM の診断には MRI がきわめて有用で,急性期の治療としてステロイド大量点滴静注療法を行う.
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内科 105巻5号, 787-792 (2010);
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Guillain-Barré 症候群,Fisher 症候群と Campylobacter jejuni(C.jejuni )感染との疫学的関係が証明されている.C. jejuni 腸炎後 Guillain-Barré 症候群では IgG 抗 GM1,抗 GD1a 抗体が,Fisher 症候群では IgG 抗 GQ1b 抗体が高頻度に検出される.C. jejuni 菌体表面に発現するリポオリゴ糖とヒト末W 神経構成成分ガングリオシドとのあいだに分子相同性が存在する.C. jejuni のシアル酸転移酵素遺伝子の多型により GM1,GD1a 様リポオリゴ糖や GQ1b 様リポオリゴ糖が生合成され,抗 GM1,抗 GD1a,抗 GQ1b 抗体の産生が誘導される.
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内科 105巻5号, 793-796 (2010);
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Guillain-Barré 症候群(GBS)の年間発症率は 10 万人あたり 1~2 人である.全国で年間約 2,000 人の発症があり,生涯に罹患する頻度は1,000 人あたり 1 人とまれな疾患ではない.先行感染,急性四肢麻痺,腱反射消失が診断のキーワードである.GBS は古典的脱髄型と軸索型の二大病型に大別され,日本における両者の比率はほぼ 1:1 である.軸索型では抗ガングリオシド抗体が陽性となる.免疫グロブリン大量静注療法と血漿交換療法の有用性が確立されている.重症例では呼吸管理,気道管理,血圧・脈拍変動の対処,肺塞栓の予防などの対症療法が重要であり,集中治療室でのモニターが望ましい.Fisher 症候群は外眼筋麻痺,運動失調,腱反射消失を三徴とする.抗GQ1b 抗体が陽性となる.自然経過での回復が良好であるため,免疫治療を要さない.ただし数%で GBS の合併がみられ,免疫治療の適応となる.
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内科 105巻5号, 797-800 (2010);
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慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)は,液性免疫と細胞性免疫の両者が関与する自己免疫性末 W神経疾患である.ミエリン抗原,とくに P0 蛋白に対する血中抗体の関与が想定されているが,標的抗原は依然として不明である.CIDP 患者の末梢神経には制御性 T 細胞の浸潤がみられるが,炎症を終息させる役割を果たしているのか,病態を悪化させているのかは明らかにされていない.CIDP は病因的,症候的,電気生理学的いずれにおいても heterogeneousな病態を包括する概念であり,今後は CIDP を適切な方法でサブグループ化したうえで,CIDP の病態に迫る試みが必要である.
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内科 105巻5号, 801-805 (2010);
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2009 年 9 月,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)は公費負担の指定難病に認定された.診断基準として,ヨーロッパ連合神経学会(European Federation ofNeurological Societies:EFNS)と末W 神経学会(Peripheral NerveSociety:PNS)との作業部会から提唱されたコンセンサスガイドラインが,実践的に使用しやすい.治療は,即効性と簡便性から免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)を第一選択とする.寛解を維持するため,IVIg 後に副腎皮質ステロイド薬を速やかに追加する.副腎皮質ステロイド薬では寛解を維持できない難治例では,ciclosporinに切り換える.
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内科 105巻5号, 807-811 (2010);
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重症筋無力症(MG)は自己抗体の種類によって,①抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性 MG,②抗筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体陽性 MG,そして,③前記の抗体が検出されない double seronegativeMG に分類される.抗 AChR 抗体はそのほとんどが IgG サブクラス 1 に属し,補体介在性に運動終板を破壊する.その結果,AChR 量が減少することによってMG 症状を起こす.抗 MuSK 抗体のサブクラスは IgG4 が主体で補体介在性運動終板破壊がない神経筋接合部病理像が示されたが,その病態機序や胸腺の関与は不明のままである.抗 AChR 抗体陽性 MG の中で胸腺腫を伴う MG と胸腺過形成を伴う若年発症 MG では異なる発症機序が推測されているが,いずれの場合も胸腺内で自己抗原への感作が成立し,その後の免疫学的プロセスにAChR 抗原の供給源として筋様細胞(myoid cell)が関わっていることが明らかになってきている.
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内科 105巻5号, 812-815 (2010);
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重症筋無力症の臨床症状の特徴は,運動の反復に伴い骨格筋の筋力が低下し(易疲労性),休息により改善すること,夕方に症状が変動すること(日内変動),日によって症状が変動すること(日差変動)である.検査としては edrophonium(テンシロン)試験,Harvey-Masland(反復刺激)試験,単一筋線維筋電図,抗アセチルコリン受容体抗体や抗MuSK 抗体の測定および胸部 CT などが必要である.治療の中心は拡大胸腺摘除術,抗コリンエステラーゼ薬,ステロイド薬,免疫抑制薬,血液浄化療法,ガンマグロブリン大量静注療法であり,病型や病勢,患者背景などに応じて単独または組み合わせて用いられている.
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内科 105巻5号, 816-823 (2010);
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ステロイドホルモンはほとんどすべての細胞に発現する糖質コルチコイド受容体に結合し,核内へ移行後 glucocorticoid-responsive elemen(t GRE)領域を有する遺伝子の転写を誘導して糖,脂質,骨などの代謝調節機能を発揮する.そのため Cushing 様症状だけにとどまらず,長期投与患者においては易感染症,高血圧,高脂血症,糖尿病,骨粗鬆症など,副作用は必発である.また,投与のさじ加減は主治医の経験にゆだねられており,本稿ではステロイドホルモンの基礎知識,免疫性神経疾患に対しての実践的な使用法について述べる.
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内科 105巻5号, 824-827 (2010);
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免疫性神経疾患においてステロイド薬の効果が不十分であったり,副作用により減量が必要な場合に免疫抑制薬が使用される.現在,免疫性神経疾患で保険適用が承認されているのは,重症筋無力症(MG)に対する tacrolimus hydrate と ciclosporin のみである.その他,cyclophosphamide に代表されるアルキル化薬,azathioprine,methotrexate などの代謝拮抗薬も有効性が報告されている.また近年,fingolimod や rituximab など新たな作用機序の薬剤も試みられており,今後の動向が注目される.免疫抑制薬は薬剤特有の副作用があるため,利点と欠点を十分に検討したうえで使用する必要がある.
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内科 105巻5号, 828-833 (2010);
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MS,NMO,MG,GBS をはじめとする各種免疫性神経疾患に対する血液浄化療法は,高い治療効果を有する.免疫性神経疾患に対する血液浄化療法の主な作用機序は,①血漿中の病因物質の除去,②体外免疫調節機能である.もっとも頻度の多い副作用は施行中の血圧低下であるが,対象疾患によって出現頻度が異なる.
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内科 105巻5号, 835-838 (2010);
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IVIg は,GBS 急性期,CIDP・MMN 増悪時の治療の第一選択となっている.また,Churg-Strauss 症候群における末 W 神経障害への有効性も確立された.作用機序としては,Fc レセプターの飽和,補体結合抑制,抗イディオタイプ抗体作用,自己抗体の異化亢進,炎症性サイトカイン・ケモカインへの抑制効果,T リンパ球への作用などが考えられている.副作用は投与初期の頭痛・筋痛・発熱など比較的軽微なものが多いが,高齢者などでは血液粘稠度上昇による虚血性血管障害にも注意を要する.また,IgA 欠損症ではアナフィラキシーを起こす可能性があり,投与前に免疫グロブリンの定量を行うのが望ましい.
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内科 105巻5号, 839-845 (2010);
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多発性硬化症(MS)は中枢神経の自己免疫性脱髄性疾患で,再発寛解を繰り返すうちに,二次進行性へと移行し,後遺症を残すことになり,患者の QOL を著しく低下させる.したがって,MS の治療目的は再発回数を減らし,症状進行を抑え,QOL を維持することにある.免疫調整薬である interferon-beta(IFN-β)は世界でもっとも使用されている MS の治療薬で,その治療効果として,①再発予防,②寛解期間の延長,③再発時の症状の軽減,④疾患の進行抑制,⑤MRI での病巣の減少,が証明されている.近年,より早期に IFN-βを開始することにより,臨床的に診断確実なMS への移行が抑制されており,早期治療の重要性が注目されている.
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内科 105巻5号, 846-851 (2010);
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近年,MRI の普及により血液脳関門の破綻が目にみえる形で呈示されるようになったことと,血液脳関門での炎症細胞浸潤を直接的にコントロールする薬物である natalizumab の出現により,自己免疫性神経疾患における血液脳関門についての関心は飛躍的に増したといってよい.本稿では,まず血液脳関門・血液神経関門の基本的な構造とその分子背景について簡単に言及したあとに,血液脳関門・血液神経関門の破綻と自己免疫性神経疾患の病態について,最近得られた知見を中心に概説する.血液脳関門・血液神経関門は単なる障壁ではない.神経系に対する物質透過を選択するシステムであり,また,新たな治療法の標的でもある.
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内科 105巻5号, 852-857 (2010);
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natalizumab,alemtuzumab,rituximab などの単クローン抗体は,いずれも現在の多発性硬化症(MS)標準薬である interferon beta(IFNβ)に比べ 2 倍以上の高い効果が示されているが,安全性に一定の課題がある.fingolimod,cladribine,fumarate はいずれも効果が高く,安全な経口薬として有望である.
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内科 105巻5号, 858-863 (2010);
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近年,VGKC,NMDA 受容体,AMPA 受容体,GABAB受容体など,神経細胞表面抗原に対する抗体を介して発症する新しいカテゴリーの自己免疫性脳炎が提唱されている.抗 Hu 抗体など抗細胞内抗原抗体を有する古典的な傍腫瘍性辺縁系脳炎は,治療抵抗性の T 細胞免疫介在性の病態と推測されているが,抗細胞膜表面抗原抗体を有する脳炎は治療反応性で,液性免疫介在性の病態と考えられている.本稿では,中でももっとも頻度の高い抗 NMDA 受容体脳炎に焦点を絞り,疾患概念,臨床症候,診断,病態,治療そして類縁疾患との異同について述べる.
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内科 105巻5号, 865-876 (2010);
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目でみる症例
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内科 105巻5号, 877-882 (2010);
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内科医に役立つ皮膚科の知識
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内科 105巻5号, 883-889 (2010);
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診断力をみがくイメージトレーニング
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内科 105巻5号, 891-894 (2010);
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コンサルテーション・スキル
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内科 105巻5号, 895-899 (2010);
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臨床ノート:症例から学ぶピットフォール
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内科 105巻5号, 901-902 (2010);
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TOPICS
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内科 105巻5号, 903-906 (2010);
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内科 105巻5号, 907-909 (2010);
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内科 105巻5号, 910-912 (2010);
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内科 105巻5号, 913-915 (2010);
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内科 105巻5号, 806-806 (2010);
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Photo Report
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内科 105巻5号, 890-890 (2010);
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内科 105巻5号, 900-900 (2010);
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症例
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内科 105巻5号, 916-918 (2010);
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内科 105巻5号, 919-922 (2010);
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内科 105巻5号, 923-925 (2010);
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内科 105巻5号, 926-928 (2010);
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内科 105巻5号, 929-932 (2010);
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Book Review
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内科 105巻5号, 834-834 (2010);
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内科 105巻5号, 864-864 (2010);
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