内科
Volume 106, Issue 3, 2010
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特集 【虚血性心疾患の最近の話題―虚血を見逃さない臨床から分子生物学まで】
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<Editorial> 虚血性心疾患の今後の展望
106巻3号(2010);View Description Hide Description生活習慣の欧米化に伴い,冠硬化性症は増加しているが,急性期治療が冠インターベンション・内科治療の進歩で,予後は大きく改善している.血行再建術は,薬剤溶出性ステントの導入やバイパス手術の発展でその適応は広がっている.一方,長期予後は冠危険因子が増加し,悪化傾向にある.そこで,軽い虚血から重症度の高い急性冠症候群まで日常臨床での診断のポイントと最近の虚血性心疾患の遺伝子・分子生物学的画像診断までを網羅し,現時点における虚血性心疾患のエビデンス,問題点,今後の課題などを列挙し,その解決法をそれぞれの専門の先生に概説していただいた. -
<Special Article> 狭心症の診断と検査の手順
106巻3号(2010);View Description Hide Description胸痛などの胸部症状を訴える患者に対して,安定狭心症は重要な鑑別疾患である.検査の手順を箇条書きで示すと次のようになる.1)病歴・安静時心電図から不安定狭心症などの急性疾患を除外する.2)トレッドミル法による運動負荷心電図検査を行う.3)中等度リスク群では核医学検査(負荷 SPECT)か冠動脈 CT を追加する. 4)以上の検査で低リスク群と判断されれば経過観察で十分である.5)高リスク群に対しては冠動脈血行再建術も念頭に置いて,侵襲的カテーテル検査を行う.以上の診断プロセスで非侵襲的診断法は疾患の除外ばかりではなく,冠動脈血行再建術の適応決定のための重要な評価項目を調べることでもあるので,これを忘れてはならない. -
<Special Article> 循環器医に必要なエビデンスとガイドラインの必要性―心筋梗塞の二次予防を例に
106巻3号(2010);View Description Hide Description求めるべきエビデンスは,臨床上の疑問によって異なる.治療/予防の疑問では,ランダム化比較試験,またはそのメタ分析を探す.診断の疑問では感度・特異度を検討した研究を探す.予後の疑問では,コホート研究を探す.副作用の疑問では,症例報告から観察研究まで幅広く検索する.ガイドラインは批判的吟味の対象となる一情報源にすぎない.ガイドラインを読む際,治療効果ばかりでなく,コストや副作用についても詳細に読み込む必要がある.研究する側に立った場合,ランダム化比較試験以外の臨床研究も重要である. -
<Special Article> 冠動脈インターベンションの問題点と今後の展望
106巻3号(2010);View Description Hide Description冠動脈インターベンション(PCI)において,再狭窄を解決するために薬物溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)が導入され成果をあげている.ステント血栓症は欧米に比して日本人では頻度は低いが,DES 植込み後 3 年以上においても一定の発生リスクが継続していることは,欧米のデータと同様である.動脈硬化の進展した病態,具体的には 3 枝疾患においては CABG と比較して DES を使用した PCI においても限界が存在する.遅発性の標的病変再血行再建(TLR)の増加,いわゆる late catch-up 現象の存在が示唆される. -
≪急性冠症候群の課題≫ 急性心筋梗塞診断におけるバイオマーカーと心電図の重要性
106巻3号(2010);View Description Hide Description臨床上の心筋虚血所見(病歴,心電図所見)に一致して心筋壊死が確認された場合に急性心筋梗塞と診断される.心筋トロポニンは急性心筋梗塞の診断にもっとも有用な心筋マーカーである.超急性期は心筋マーカーの上昇を認めないことも少なくなく,症状と心電図所見から診断する.しかし,発症早期ほど心電図診断も難しい.高感度トロポニンにより急性心筋梗塞の超急性期における診断精度が向上する可能性がある.症状から急性心筋梗塞を疑う場合,軽度の心電図変化も見逃さないようにする.一見,明らかな心電図変化がないようでも以前の心電図や時間をあけて取り直した心電図と比較することで診断できる場合がある. -
≪急性冠症候群の課題≫ 不安定狭心症における緊急冠動脈インターベンションの適応と待てる症例
106巻3号(2010);View Description Hide Description不安定狭心症は臨床症状から診断される病名であるが,その誘因はさまざまである.この中では急性冠症候群に伴うものが多いが,二次性の心筋虚血あるいは冠攣縮をその原因とするものも少なくない.一方,超急性期の薬剤介入が PCI の成績に寄与するという報告や冠動脈 CT の普及から,従来のような超急性期の血行再建を念頭に置いたカテーテル検査の意義が再び注目されている.本症の急性期目標は心筋障害を最小限にすることである. -
≪急性冠症候群の課題≫ 重症急性心筋梗塞例での救命および脳保護から低体温療法の意義は
106巻3号(2010);View Description Hide Description重症心筋梗塞治療の課題は,重症ポンプ不全例と心肺停止蘇生後症例に対する治療である.BLS,AED の普及に伴い,心肺停止蘇生後の患者は増加している.急性心筋梗塞に伴う心肺停止の蘇生後では再灌流療法の適応があるが,神経学的予後不良の場合もある.低体温療法は再灌流療法との併用を含め,心肺停止蘇生後の急性心筋梗塞患者の生命予後と神経学的予後を改善できる可能性がある.とくに 4℃生理食塩水の点滴による早期導入は期待できる方法であるが,冷却方法,冷却温度,持続時間と復温方法,合併症管理などの標準化は今後の研究が必要である. -
≪急性冠症候群の課題≫ 不安定プラークの画像診断はどこまできたか,安定化のための薬物介入試験の現況
106巻3号(2010);View Description Hide Description血管内超音波(IVUS)や光干渉断層撮影(OCT),血管内視鏡,冠動脈 CTは,不安定プラークを同定できる可能性がある.冠動脈イメージングで得られたプラークの容積や脂質成分量,線維性被膜の厚さ,色調,CT 値などは,将来の心血管イベントと関連がある.スタチンによる脂質低下療法は,不安定プラークを安定化させることができる.スタチンは冠動脈プラーク容積を退縮させ,アテローマの線維性被膜を厚くする.冠動脈イメージングは,プラーク安定化療法の心血管イベント予防に対する効果判定に役立つ可能性がある. -
≪急性冠症候群の課題≫ 包括的心臓リハビリテーションの必要性,運動強度と退院後指導
106巻3号(2010);View Description Hide Description急性冠症候群に対するカテーテル治療は局所治療であり,長期予後の改善には薬物治療に加え,運動療法,食事指導,生活指導,ストレス管理など,包括的な介入が必要である.包括的心臓リハビリテーションの予後改善効果はさまざまなエビデンスが報告されており,心筋梗塞では心血管系死亡が 20~25%減少するとされる.かつては禁忌とされていた重症左室機能障害例においても予後改善効果が期待できることがわかってきた.心臓リハビリテーションを始めるうえでは,左室ポンプ機能,心筋虚血,不整脈,運動耐容能の 4 つの点から患者情報を評価し,適切な運動処方を用い,十分な安全管理のもとで行う必要がある.運動は有酸素運動が主体となるが,適切なレジスタンストレーニングも安全で有効とされる. -
≪冠動脈インターベンションの課題と展望≫ 冠動脈インターベンションの適応はどうあるべきか
106巻3号(2010);View Description Hide Description・経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に用いられるデバイスの発達は目覚しく、エビデンスの集積による治療指針の確立がデバイスの発達のスピードに追いつけないため up to date なガイドラインの策定がむずかしい。・特に薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES) の登場とその急速な普及により、冠動脈疾患に対する治療全体が大きく様変わりしている。・心筋梗塞症例、左主幹部病変・多岐病変など、これまで off-label(適応外)使用とされていた病態にまで、DESを用いたPCIの適応は拡大している。・個々の症例に対する治療法の選択の際には、最新のエビデンスに基づき、循環器内科・心臓外科が協力して慎重に最良の治療法を検討することが必要である。 -
≪冠動脈インターベンションの課題と展望≫ 糖尿病症例,血液透析症例の血行再建治療選択は冠動脈インターベンションか冠動脈バイパス術か
106巻3号(2010);View Description Hide Description・糖尿病は,虚血性心疾患の確立された危険因子である.薬剤溶出性ステントの出現により,PCI 後の再狭窄率は低下したものの,予後に関しては非糖尿病患者と比較し不良である.・糖尿病患者では,冠動脈病変が左主幹部や多枝病変の場合には,これまでのところ PCI と比較し CABG の予後が良好であるとされている.・慢性腎臓病,とくに透析患者でも PCI 後の予後は不良である.また,薬剤溶出性ステントの再狭窄率はきわめて高い.とくに,全身の動脈硬化が進行している患者にその傾向が認められる.・透析患者では,PCI と CABG を比較・検討した大規模試験はないが,後ろ向きの観察研究では,PCI と比較し CABG の予後が良好であるとされる.・糖尿病患者,透析患者とも血行再建後は,さらなる生活習慣の介入と,薬物による補充療法がきわめて重要である. -
≪冠動脈インターベンションの課題と展望≫ 薬剤溶出性ステント植込み後の抗血小板療法はいつまで続けるか
106巻3号(2010);View Description Hide Description・薬剤溶出性ステントでは内膜の修復遅延のために,ベアメタルステントより,長期にわたる抗血小板療法が必要である.・ACC/AHA/SCAI の 2007 年のガイドラインでは薬剤溶出性ステント留置後の抗血小板療法の投与期間は出血のリスクがなければ,Cypher ステント,TAXUS ステント,ともに 1 年間が推奨されている.・薬剤溶出性ステントでは,1 年以後の超遅発性のステント血栓症が絶対値は非常に低いものの,数年持続して発症する.・新しい世代の薬剤溶出性ステントとして,Endeavor ステント,XienceⅤ/Promus ステントが現在使用可能となっているが,ステント血栓症の頻度が従来の薬剤溶出性ステントよりも低い可能性があり,また抗血小板療法の期間についても,異なる可能性がある.・抗血小板薬の中止はステント血栓症の強い予測因子であるが,とくに6ヵ月以内の中止では,ステント血栓症のリスクが高くなる.・aspirin とチエノピリジン系薬剤との 2 剤による抗血小板療法を 1 年以上継続することの利点が最近の無作為比較試験で確認されなかったが,最終的な結論を得るためには,さらなる多数例での検討が必要と思われる. -
≪冠動脈インターベンションの課題と展望≫ 造影剤腎症予防―腎機能悪化をくいとめるための方法
106巻3号(2010);View Description Hide Description・冠動脈インターベンション(PCI)後の腎機能障害の原因の中で造影剤起因性腎症(CIN)は頻度が他と比較して多く,臨床上重要である.・自験例ではあるが,血清クレアチニン値の 0.5 mg/dl 以上の上昇で定義される CIN は 46 人(4.0%),25% 以上の上昇で定義される CIN は160 人(13.8%)に観察された.・CIN 発症に関しては,とくに糸球体濾過率 30 ml/min/1.73 m2未満で要注意である.・CIN 発症の予防法として,PCI 前後の生食補液,低ないし等浸透圧性造影剤の使用,なるべく少ない量の造影剤使用,造影剤使用間隔をあける,および腎機能悪化薬剤の中止等がある.・わが国では極力少ない造影剤使用で PCI を施行しようとする MINICONの試みがある. -
≪冠動脈インターベンションの課題と展望≫ 予後予測因子としての血管内皮機能の臨床的意義と改善のための薬物治療
106巻3号(2010);View Description Hide Description・内皮機能障害が持続すると,内皮依存性血管拡張反応が減弱し,血管収縮,血栓,炎症などを惹起し,心血管病を発症させる.・内皮機能の低下が心血管イベントの独立した危険因子であることが数多く報告されている.・危険因子の是正以外にもスタチン,ACE 阻害薬,AⅡ受容体拮抗薬などが内皮機能改善作用を有することが明らかにされている.これらの薬物投与はプラークの安定化や新規病変を抑制することにより PCI 後の患者の心血管イベント発症予防につながる.・再狭窄の問題がほぼ解決された DES の時代となり,心血管イベントを抑制するエビデンスをもつ薬物を積極的に使用することは,PCI 後の予後改善に重要な意味をもつと思われる. -
≪冠動脈インターベンションの課題と展望≫ 心拍動下,心停止下冠動脈バイパス術の利点と欠点―日本人はどちらを選択すべきか
106巻3号(2010);View Description Hide Description・1990 年代,人工心肺使用による合併症の頻度を低下できるとの期待から,心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)が行われるようになった.・当初,人工心肺を使用する従来の冠動脈バイパス術(CABG)に対する,OPCAB の優位性が数多く報告された.しかし最近,無作為化試験等に,とくに長期予後において否定的な報告もみられるようになった.・無作為化試験の結果や,OPCAB 経験の豊富な施設からの報告の検討から,OPCAB は,手術リスクの高い症例においてとくに有効性が高いと考えられる.一方,リスクの低い群においては,OPCAB と CABG には短期予後の有意差はなく,かつ長期については CABG の予後がよりよい可能性がある.この結果を考慮したうえで,術式の検討を行う必要があると考える. -
≪二次予防における最新のエビデンス≫ 糖尿病予後改善のための治療と心血管イベント予測因子
106巻3号(2010);View Description Hide Description・心筋梗塞の既往のない糖尿病患者が冠動脈疾患で死亡する割合は,心筋梗塞の既往のある非糖尿病患者が再び心筋梗塞を発症して死に至った割合と同程度である.・大血管障害は耐糖能障害(IGT)のときからすでに生じており,大血管疾患の発症・進展を予防するうえで,空腹時血糖や HbA1cのみならず,食後の高血糖の是正も重要である.・心血管イベントの抑制には,個々の症例の状態を踏まえて重症低血糖の発症に注意しながら治療戦略を立てる必要がある. -
≪二次予防における最新のエビデンス≫ 予後改善のための降圧治療
106巻3号(2010);View Description Hide Description・降圧治療による心血管イベント抑制効果は,降圧薬の違いによる差よりも血圧を降下させることにより得られる効果のほうが大きい.・心筋梗塞後の高血圧治療は RA 系阻害薬,β遮断薬を中心とし,降圧目標値は 130/80 mmHg 未満である.・狭心症合併高血圧の血圧治療は,β遮断薬,長時間作用型 Ca 拮抗薬を中心に行うが,冠動脈攣縮が関与している狭心症の血圧治療は Ca 拮抗薬を第一選択とし,140/90 mmHg を目標に慎重に降圧を図る.・低左心機能や心不全合併高血圧の治療は,利尿薬,β遮断薬,RA 系阻害薬を第一選択とし,降圧が不十分な場合に長時間作用型 Ca 拮抗薬を加える.・冠動脈疾患発症後の予後改善は,血圧治療だけでなく,糖代謝や脂質異常の是正,肥満の改善,運動や禁煙など日常生活の修正も同時に行う必要がある. -
≪二次予防における最新のエビデンス≫ メタボリックシンドロームと虚血性心疾患
106巻3号(2010);View Description Hide Description・メタボリックシンドロームは既知の高コレステロール血症とは別に,虚血性心疾患の発症リスクとして認知されている.・わが国では男性の 2 人に 1 人,女性では 5 人に 1 人がメタボリックシンドローム,もしくは予備軍と考えられる.・その危険度は当教室の研究結果によると男性では 1.63 倍,女性では3.28 倍であった.・虚血性心疾患の二次予防においては,メタボリックシンドロームの認識,管理に加えて,合併する動脈硬化性疾患の診断,治療が重要である. -
≪二次予防における最新のエビデンス≫ LDL-C はどこまで下げるべきか― 一次予防と二次予防の差
106巻3号(2010);View Description Hide Description・冠動脈疾患に対するスタチンの効果は,一次予防,二次予防ともに有効であることが報告されている.・二次予防における世界の潮流は,the lower,the better であるが,LDLコレステロール(LDL-C)低下療法の今後の課題として①LDL-C 以外の残存する血管リスクが存在する.②本邦では LDL-C 値が 100 mg/dl 以下でイベントが抑制されるかどうかの大規模臨床研究は存在しない.③LDL-C 値を 100 mg/dl 以下にするとき,ストロングスタチン単剤か,ezetimibe などの他の薬剤との併用か. などがあげられる. -
≪トピックス≫ プラーク退縮のエビデンス
106巻3号(2010);View Description Hide Description・欧米で行われた ASTEROID 試験や日本人を対象にした ESTABLISH試験・JAPAN-ACS 試験・COSMOS 試験・TWINS 試験では,いずれもスタチンによる脂質低下療法が冠動脈プラーク体積の退縮を示す結果となった.・2 型糖尿病患者を対象とした PERISCOPE 試験では,インスリン抵抗性改善薬がインスリン分泌促進薬に比較して,冠動脈硬化の進行を抑制したことが示された.・プラーク体積の退縮の臨床的・組織学的意義については不明な点が多く,今後の解明が待たれる. -
≪トピックス≫ 非心臓手術時の心臓リスクの評価法
106巻3号(2010);View Description Hide Description・周術期の心筋梗塞は不安定プラークの破裂による血栓性閉塞と,心筋酸素の需要と供給のアンバランスによる心筋虚血が原因である.・周術期の心筋梗塞は無症候性であるが遠隔期の予後に影響を及ぼす.・術前の冠動脈造影検査の適応は非手術時と同様である.・周術期のβ遮断薬療法は非心臓手術時の合併症発生リスクの高い患者の心血管イベントを低減させる.・非心臓手術前の血行再建術の有効性はすべての症例で確立していない.・前向き無作為比較試験では術前 PCI の有効性を明らかにすることはできず,術前 PCI の適応は限定された症例である.・術前 PCI のリスクは緊急手術例,とくに末梢血管疾患例で高率となる.・ステント植込み 6 週間以内の非心臓手術はステント血栓症のリスクを増大させ主要心血管事故を引き起こす.・術前に PCI を施行するか否かは複雑な問題であり,循環器科医,心臓外科医,非心臓手術施行外科医,麻酔科医の他職種チームで協議して決定されるべきである. -
≪トピックス≫ 動脈硬化進展における molecular imaging の現状と今後の臨床応用・展望
106巻3号(2010);View Description Hide Description・動脈硬化プラークの破綻に引き続く血栓形成と,それによる血管閉塞によって生じる病態が重要視されている.血栓閉塞が発生する前に診断し,予防することが求められているが,従来の運動負荷や血管造影は,無症状の不安定プラークをスクリーニングする手段として必ずしも有効ではない.・そこで,新しい画像診断法としての molecular imaging が注目されている.これは動脈硬化プラークの不安定化と破綻に関わるさまざまなbiological process を,最新鋭の画像診断技術を用いて可視化する技術であり,無症状の不安定プラークをスクリーニングするだけでなく,新しい治療法へのヒント・新たな病態の理解に関する情報をフィードバックすることも期待される. -
≪トピックス≫ 心筋梗塞の遺伝的リスクファクター
106巻3号(2010);View Description Hide Description・心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患の発症には,環境因子と遺伝的要因が複雑に関係していると考えられる.・世界ではじめて一塩基多型を用いた心筋梗塞の全ゲノム関連解析を施行し,リンホトキシン-αが疾患関連分子であることを同定した.また,この一連のカスケードを分子生物,ゲノム疫学的手法により精査することにより,さらなる炎症関連分子群が疾患に関係することを見出してきた.・疾患の遺伝的要因を知ることは根本的な疾患発症のメカニズムを解明できるのみならず,将来的には遺伝的要因と環境要因の有無を組み合わせることにより,虚血性心疾患の発症,再発の予知・予防に役立てることができると考えられる. -
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診断力をみがく イメージトレーニング
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内科医に役立つ皮膚科の知識
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診療controversy―medical decision makingのために
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Cerebral microbleeds 合併脳梗塞への抗血栓療法:積極的な立場から
106巻3号(2010);View Description Hide Description微小脳出血(cerebral microbleeds:CMBs)の出現頻度は,加齢,高血圧症,脳血管障害既往,大脳白質病変の程度などにより高まる.microbleeds(MBs)合併例の治療に関する高度なエビデンスの評価の結果,MBs 合併の脳梗塞超急性期例への慎重な静脈内または動脈内組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)投与は,現時点において許容されうることを示した.脳梗塞慢性期例では再発ハイリスク例に限って,非高齢者,血圧コントロール良好かつ安定,頭蓋内出血未既往,大脳白質病変を欠くか軽度,全身出血リスクや出血性素因を欠く,など多くの最低限必要な条件を満たす例を慎重に選び,十分な血圧コントロール下で,血栓止血学的モニタリングと T2*強調像を含む頭部MRI を定期的に行いつつ,常用量下限の抗血栓薬投与を行うことが現実的な対処と考えられる. -
Cerebral microbleeds 合併脳梗塞への抗血栓療法:消極的な立場から
106巻3号(2010);View Description Hide Descriptioncerebral microbleeds(CMBs)は,GRE T2*強調画像の小さな点状低信号で,微小出血やヘモジデリン沈着が示唆されるが,臨床病理学的検討は限られ,撮像法など定義は確定していない.血管脆弱性のバイオマーカーが求められる中,CMBs がsmall vessel disase のマーカーとなる可能性が注目されている.脳出血とラクナ梗塞は,高血圧をリスクとし,small vessel disease として共通した基盤を有することが推測されている.一方,皮質に分布する CMBs には,cerebral amyloid angiopathy(CAA)が含まれる可能性が示唆され,認知機能障害を有する高齢者脳梗塞の二次予防では,抗血栓療法の慎重な適応判定が望まれる. 脳梗塞二次予防で抗血栓薬服用中の患者での脳出血などの出血合併症は,一度起こると急性期血腫拡大進展リスクも高く,機能予後・生命予後とも不良なイベントになり,重要な課題である.この背景からも,脳梗塞再発予防における抗血栓療法による二次予防のメリットと,出血合併症リスクを症例ごとに評価するための EBM が求められている.「脳卒中ガイドライン 2009」でも,微小脳出血への言及があり,脳出血リスクを踏まえた十分な血圧管理の重要性が強調されている.血管イベント予防における 24 時間に及ぶ血圧管理の重要性が強調される中で,CMBs の存在は,血圧管理不良な状況を反映する可能性も注目されている. 脳の small vessel diseas の背景病理や脳出血の病態機序など,基本的な解明がなされていない現状で,ベッドサイドで血管脆弱性,血管内皮機能障害,易出血性(bleeding-prone)を評価する試みが集積される中で,尿中微量アルブミン,網膜血管,全身血管床と CMBs や白質病変が注目されてきた.現状では,CMBs の有無,分布,量によって抗血栓薬の適応判定根拠となるエビデンスレベルの高い EBM はないが,脳梗塞病型(ラクナ梗塞など)を踏まえ,十分な血圧管理下で,抗血栓薬の強度,種類,併用にも留意した,慎重な治療選択が望まれる.
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コンサルテーション・スキル
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臨床ノート:症例から学ぶピットフォール
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Research 最前線
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Photo Report
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症例
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c-myc 遺伝子再構成を呈した human herpesvirus-8 陰性primary effusion lymphoma 様リンパ腫の 1 例
106巻3号(2010);View Description Hide Description -
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Book Review
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