内科
Volume 108, Issue 1, 2011
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特集 【心不全治療の新展開―外科医との共働による新たな治療戦略】
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<Editorial> 重症心不全治療にパラダイムシフトはあるか?
108巻1号(2011);View Description Hide Description2011 年 4 月より 2 機種の体内植え込み型補助人工心臓(VAD)が保険償還された.その受け皿である心臓移植の件数も改正臓器移植法施行後,少なくとも年間 50 例ペースになった.VAD の QOL が向上し,移植へのブリッジの可能性も高まれば,VADの適応が拡大することは必然であるが,too early でも too late でもない最適な適応時期を判断することが内科医に求められる.しかし,内科的治療が本当に限界であるかを見極めることも内科医にとってきわめて重要な課題である.パラダイムシフトは,もうすぐそこまできている.外科医との collaboration が必要不可欠となった時代をこれから経験するであろう. -
<Special Article> 心不全診療の基本
108巻1号(2011);View Description Hide Description心不全とは原因のいかんによらず,送血ポンプとしての心臓が障害され,その結果主要臓器への血流供給が絶対的または相対的に低下した状態と定義される.心不全の病態生理と疫学を理解し,個々の患者において原因心疾患,心機能障害の程度,運動耐容能,神経体液性因子,不整脈の合併を評価する.上記 5 因子の定量的把握に基づく総合評価により,患者予後の推定と治療効果のアセスメントが可能となる. -
<Special Article> 循環器内科医による心不全治療の新しい展開
108巻1号(2011);View Description Hide Description心不全治療においては症状を改善する急性期治療に加えて,予後改善を目指した慢性期の治療も重要である.急性期治療においては Clinical Scenario を理解し,適切な初期治療を開始する.慢性期治療ではエビデンスの確立された薬物を中心に併用療法を積極的に行う.carperitide(hANP)や tolvaptan,eplerenone などの新しい薬剤の使用機会も増加している.CRT などのデバイス治療や心臓移植や補助人工心臓など外科的治療も含めた非薬物治療も病態に応じて選択される. -
<Special Article> 心臓外科医による心不全治療の新しい展開
108巻1号(2011);View Description Hide Description重症心不全に対する治療は,補助人工心臓か心臓移植しかなく,われわれは本邦における臨床成績を報告し,その臨床的有用性を実証してきた.最近,補助人工心臓による治療は進歩し,より小型で耐久性に優れた第二,第三世代の定常流補助人工心臓による臨床応用が始まっている.心臓移植はすでに確立された治療法であり,深刻なドナー不足のため,移植を受けるにいたらない患者も多いが,末期心不全治療において心移植の果たす役割は大きい.一方,再生医療は,自己細胞を用いた治療がようやく始まり,わが国発の細胞シート法などが成果をあげ始めている.今後は多様な治療法が組み合わされ,重症心不全の治療成績が向上していくことが期待される. -
≪心不全診断と治療における新しい概念≫ 急性心不全の診断と治療
108巻1号(2011);View Description Hide Description急性心不全診断は,心不全症状・徴候,胸部 X 線による心拡大,肺うっ血の評価と B 型ナトリウム利尿ペプチド値,心臓超音波検査で診断する.急性心不全の病態把握・治療は,超急性期,入院期,退院前期の 3 つの時期に分けて考える.各時期にあった病態を把握する.超急性期:クリニカルシナリオ(CS)入院期・退院前期:Stevenson/Nohria 分類,必要なら Forrester 分類病態に応じた治療をする. CS により超急性期治療を決定.基本治療は以下に示す.CS1:血管拡張薬,CS2:利尿薬,CS3:必要に応じて強心薬 Stevenson/Nohria 分類で治療の修正をする.治療による患者の改善度をしっかり評価する. -
≪心不全診断と治療における新しい概念≫ 慢性心不全の薬物治療
108巻1号(2011);View Description Hide Description慢性心不全の主要な病態は,左室のリモデリングと神経体液性因子の亢進である.このモデルの妥当性は,ACE 阻害薬やβ遮断薬が慢性心不全患者の予後を改善するという大規模臨床試験によって実証された.β遮断薬の具体的な使用法は確立してはいないが,禁忌がない限り投与すべきである.有症状の症例ではジギタリスや利尿薬を至適量投与する.慢性心不全では腎機能障害や貧血などの合併症を伴うことが多く,合併症に対する治療も重要である.現在は post-β blocker の時代に突入しており,数多くの新しい慢性心不全治療薬の研究開発が進行中である. -
≪心不全診断と治療における新しい概念≫ 駆出率の低下していない心不全の治療
108巻1号(2011);View Description Hide Description左室駆出率が保たれているにもかかわらず心不全となる症例を heartfailure with preserved(normal)ejection fraction(HFpEF)と呼ぶ.HFpEF は高血圧症例に多く,拡張機能障害,とくに左室スティフネス亢進が重要な役割を果たしていると考えられる.心エコーにおいて拡張機能を評価するときは,左室流入血流速波形と組織ドプラ法を組み合わせる.HFpEF の急性期治療は安静,酸素投与,血管拡張薬,利尿薬を基本とする.HFpEF の慢性期治療は,確立されたものはなく,高血圧症例の場合,まず的確な降圧が必要である. -
≪心不全診断と治療における新しい概念≫ 心不全におけるバイオマーカーの治療的意義
108巻1号(2011);View Description Hide Descriptionバイオマーカーは採血のみで結果が得られ,①診断,②予後予測,③治療効果判定において客観的な評価が可能である.心不全において BNP,NT-proBNP はガイドラインでも測定が推奨されているバイオマーカーである.注意点として,バイオマーカーだけで診断,予後評価するのではなく,症状とほかの検査所見を組み合わせて総合的に判断することが大切である.近年,心不全において心筋トロポニン T または I が BNP,NT-proBNPとは独立した予後予測指標であることも報告されている.直接,微小心筋障害を反映していると思われるこれらのマーカーであるが,低値まで正確な高感度測定系を用いれば,治療効果判定や,心不全にいたるリスク段階での微小心筋障害の検出も可能である. -
≪心不全診断と治療における新しい概念≫ 心不全における疾病管理
108巻1号(2011);View Description Hide Description心不全患者の再入院率は高く,心不全増悪予防に向けた医療体制の確立が急務の課題である.多角的アプローチを用いた心不全疾病管理プログラムが再入院率や死亡率を低減し,quality of life(QOL)を改善させることが示されている.効果的な心不全疾病管理の鍵は,チーム医療とセルフケア教育である.心不全疾病管理のアウトカム指標としては,再入院や死亡のみならず,QOL や治療アドヒアランス(セルフケア)も重要である.抑うつを併存する心不全患者は多く,抑うつは重要な予後規定因子である.心不全疾病管理においては,抑うつの管理も重要である. -
≪心不全に対する非薬物治療の新展開≫ 心臓再同期療法の新しいエビデンス
108巻1号(2011);View Description Hide Description心臓再同期療法(CRT)は心不全の治療として確立された治療である.CRT は当初,NYHAIII度,IVの重症心不全を対象としていたが,近年の臨床試験では NYHAI度,II度の軽症心不全にも効果があることが示された.約 30% のノンレスポンダーが存在する.レスポンダーの判定には NYHA クラス,心機能,reverse remodelingなどが指標とされている.AV delay,VV delay の至適化についてはまだ確立された見解はない.CRT-D/CRT-P の選択は患者の病態に応じて慎重に選択する. -
≪心不全に対する非薬物治療の新展開≫ 遠隔モニタリングデバイス
108巻1号(2011);View Description Hide Descriptionモニタリング機能を搭載したデバイスを患者に植込み,中継器を患者の自宅に設置することで,患者情報を遠隔地でモニタリングすることができる.モニタリングできる指標には,心拍数・不整脈・ペーシング率などの調律性指標以外にも,患者活動度・心拍変動・胸郭インピーダンスなどがある.また体重・血圧・肺動脈圧・右室圧・左房圧などのモニタリング技術も開発中である.これらの指標をモニタリングすることで心不全悪化を予知できる可能性がある. -
≪心不全に対する非薬物治療の新展開≫ 心不全に対する呼吸管理療法―NPPV・Bi-level PAP・CPAP・ASV
108巻1号(2011);View Description Hide Description急性心原性肺水腫に対しては,積極的に非侵襲的陽圧呼吸療法(NPPV)を行うべきである.睡眠呼吸障害治療の第一選択は陽圧呼吸療法である.とくに,閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療の第一選択は,持続気道陽圧(CPAP)である.一方,中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療法として,サーボ制御圧感知型人工呼吸器(ASV)が有用である. -
≪心不全に対する非薬物治療の新展開≫ 心不全に合併する不整脈の非薬物治療
108巻1号(2011);View Description Hide Description狭義の抗不整脈薬には,心不全に合併する不整脈に対して生命予後向上をもたらす効果はない.心不全合併心房細動に対しては,カテーテルアブレーション,ablate &pace 療法という 2 つの非薬物治療がある.心不全合併心室頻拍・心室細動に対して植込み型除細動器もしくは心臓再同期療法(CRT)は唯一生命予後の向上をもたらす治療ツールである.心不全患者において,心房細動に対する非薬物治療,あるいは心室性不整脈に対するカテーテルアブレーションの選択は個別の症例ごとに選択すべきである. -
≪心不全に対する非薬物治療の新展開≫ 慢性心不全患者に対する運動療法
108巻1号(2011);View Description Hide Description慢性心不全治療には多面的アプローチが必要であり,運動療法は非常に有効な治療法である.運動療法は慢性心不全の運動耐容能を改善するばかりでなく,生命予後を改善する.重症心機能障害を有する慢性心不全患者でも適正な運動療法は比較的安全に行える.高齢者や左室補助装置装着患者も運動療法の適応である.慢性心不全において重要な点は運動療法だけでなく,学習指導やカウンセリングなどの包括的な心臓リハビリテーションを同時に行うことである.慢性心不全患者は基礎疾患,重症度,合併疾患が一様でないので,そのときどきでの臨床所見や運動負荷試験に基づいて,運動メニューを決めることが重要である. -
≪心不全に対する非薬物治療の新展開≫ 経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)
108巻1号(2011);View Description Hide Description大動脈弁狭窄症(AS)は,症状が出現すると予後は不良である.無症状でも重症 AS は予後不良との報告がある.狭窄症自体には,薬物治療は無力である.侵襲的治療として経皮的バルーン形成術はあるが,現在は弁置換術が治療の基本である.経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)は,国内で治験が進行中である.欧米からの報告では,高齢の重症 AS に対して TAVI の有効性が報告されている.将来,国内で TAVI が正式に認められると症例によっては第一選択になる可能性がある.ただし,対象が高齢の重症 AS であるので,適応は慎重に検討されるべきである.TAVI によって,AS の治療のパラダイムシフトが起こる可能性がある. -
≪心不全に対する外科治療の新展開≫ 左室形成術・僧帽弁手術
108巻1号(2011);View Description Hide Description本邦における人工心臓治療は植込み型人工心臓の認可で新しい時代が期待される.また本邦における心臓移植は絶対数は少ないものの,現在までのところすぐれた遠隔成績が得られている.左室形成術,僧帽弁手術は,適応,さまざまな術式の比較評価,長期予後などいまだ検討の余地が多く残されている.しかし,著明な低心機能例でも術後症状が改善することが多く経験され,心拡大,とくに球形の左室拡張を伴った僧帽弁逆流を呈する虚血性心筋症あるいは非虚血性心筋症に対して,左室の容積減少,機能・形態の改善が得られる.そのため,少なくとも植込み型人工心臓,心臓移植の前段階の重症心不全に対する有効な外科的アプローチの一つと考えられる. -
≪心不全に対する外科治療の新展開≫ 植込み型補助人工心臓
108巻1号(2011);View Description Hide Description内科的治療に抵抗性で心臓移植適応と考えられる重症心不全患者は補助人工心臓(LVAS)の適応を考慮する.本年 3 月より国産植込み型補助人工心臓が承認・保険償還され,全国の植込み実施認定施設にて使用できるようになり,装置装着患者の退院,外来管理が可能となった.心臓移植が極端に少なく長期間の補助が必要とされる本邦において,今後植込み型 LVAS は一層重要な役割を担っていくものと思われる. -
≪心不全に対する外科治療の新展開≫ 心臓移植の現状と展望
108巻1号(2011);View Description Hide Description臓器移植法に基づき 1999 年 2 月から本年 3 月までに 96 例の心臓移植が実施された.2006 年選定心臓移植実施施設での実施が健康保険で認められた.2010 年 7 月改正臓器移植法実施後,家族同意での臓器提供が可能となり提供数が増加し,15 歳未満の臓器提供も可能となり小児心臓移植が行えるようになった.わが国の心臓移植適応判定は,各施設検討会に加え,日本循環器学会心臓移植委員会適応検討小委員会の 2 段階審査で行われる.待機例は,補助人工心臓(LVAS)装着例が多く,2011 年 3 月より 2 種の植込み型 LVAS が保険償還されるようになった.わが国施行例で 10 年以上の生存例が 8 例あり,累積生存率は 1 年97.7%と,国際レジストリーより良好な成績である. -
≪心不全に対する外科治療の新展開≫ 心臓移植後の免疫抑制治療
108巻1号(2011);View Description Hide Description2010 年 7 月 17 日の改正臓器移植法施行により,成人心臓移植件数は著増し,小児に対しても道は開かれた.今後わが国において心臟移植後の管理がこれまで以上に注目されてくる.心臓移植後は,まさに拒絶反応との戦い,つまり免疫抑制治療である.1980 年に ciclosporin が心臓移植に使用されてから今日の心臓移植の興隆ははじまり,その後わが国で開発された tacrolimus とともに,現在は,カルシニューリン阻害薬(ciclosporin と tacrolimus)に,核酸合成阻害薬(mycophenolate mofetil)とステロイド使用の三薬併用療法が主体である.近年は急性拒絶反応や感染症等の急性期問題から慢性期問題(移植心冠動脈病変,悪性腫瘍,腎機能障害,等)に注目点が移っている.慢性期の問題には proliferation signal inhibitor である mTOR 阻害薬の everolimus が期待される. -
≪トピックス≫ 肺高血圧症の治療 up to date
108巻1号(2011);View Description Hide Description肺高血圧症は肺血管の内膜肥厚などの器質的病変を伴う,きわめて予後のわるい疾患である.以前は治療法が確立していなかったが,近年プロスタグランジン製剤やエンドセリン受容体拮抗薬,ホスホジエステラーゼ阻害薬などが開発され徐々に予後も改善してきた.これらの薬剤の作用機序や有効性,副作用や使用する際に注意すべき点を述べる.Rho キナーゼ阻害薬や可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬やチロシンキナーゼ阻害薬などの新たな薬剤が開発・臨床研究中である.これらの薬剤の特徴と作用機序に関して概説する. -
≪トピックス≫ 心不全における免疫の関与と免疫吸着療法
108巻1号(2011);View Description Hide Description自己免疫異常が拡張型心筋症を生じさせることが,基礎的に明らかになっている.拡張型心筋症患者では,大部分の症例で何らかの抗心筋自己抗体を有する.左心補助人工心臓の装着例でも,抗心筋自己抗体が有意に検出される.心不全アフェレシス治療の標的は,心抑制性抗体だと想定されている.治験前研究によれば,拡張型心筋症でも免疫吸着療法は安全に施行可能である.治験結果により,免疫異常が心不全の病因に関与するか明らかになる可能性がある. -
≪トピックス≫ 心不全に対する再生医療――幹細胞移植・細胞シート
108巻1号(2011);View Description Hide Description急性心筋梗塞に対する体性幹細胞移植による臨床研究が数多く行われ,systematic review も複数報告され,少ないながらも心機能の回復が認められた.組織工学の中で,scaffold を要しない細胞シートは大きな変革をもたらした.角膜を含めて,すでに商品化に向けて大きな一歩を踏み出している.細胞移植という方法論による治療法は,ドナー細胞としては骨格筋芽細胞・骨髄由来間葉系幹細胞・脂肪由来幹細胞・心筋幹細胞などが主に使用され,急性心筋梗塞から重症心不全まで,幅広い疾患に対して臨床研究が行われている.左室補助人工心臓装着患者への再生医療を併施する治療は,大きなポテンシャルを有しており,われわれは心筋幹細胞移植との統合治療を計画している. -
≪トピックス≫ 生理学的なモデルに基づいた循環動態の制御
108巻1号(2011);View Description Hide Description心臓および循環はきわめて数理的に制御されていて,そのシステム異常が心不全である.したがって,心拍出量曲線と静脈還流平面の平衡点として心拍出量と左右の心房圧が規定される『心拍出量の数理モデル』である「拡張 Guytonモデル」を用いることにより,心拍出量曲線・静脈還流平面・血管抵抗を正常値に負帰還制御して動脈圧・心拍出量・左房圧を正常化する「心不全自動治療システム」を構築することが可能である.各種心不全治療薬の薬理作用が動特性を含め体系的にライブラリー化されれば,さらに急性心不全治療の自動化・標準化の道が拓ける. -
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診断力をみがく イメージトレーニング
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比較で学ぶ病理診断 ミニマル・エッセンシャル
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臨床ノート:症例から学ぶピットフォール
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View Spot
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Research最前線
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Photo Report
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症例
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急性副腎不全に対して hydrocortisone の補充を開始し,その後 GH補充療法を追加した septo-optic-pituitary dysplasia の 1 例
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Book Review
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