内科
Volume 114, Issue 4, 2014
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特集 【消化器がん診療の最前線―適切な診療を行うためのエッセンス】
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- Editorial
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- Special Article
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消化器がんの予防と検診:その現状と課題
114巻4号(2014);View Description Hide Description・消化器がんは,日本人のがん罹患・死亡の約半数を占める.・年齢調整死亡率は,胃がんと女性の食道がんが戦後一貫して減少傾向,膵臓がんが上昇傾向にあるが,その他の部位は,戦後増加していたのが1990 年代半ばごろより横ばいから減少傾向にある.・喫煙はすべての消化器がん,飲酒は胃がんを除くがん,肥満は大腸・肝臓・膵臓のがんの共通したリスク要因である.・塩分(胃),赤肉・加工肉(大腸),身体活動量不足(結腸),野菜・果物摂取不足(食道,胃)などは,特定部位の消化器がんのリスク要因である.・Helicobacter pylori 菌(胃)や肝炎ウイルス(肝臓)などの持続感染をほぼ原因とするがんは,感染予防や細菌・ウイルスの除去が発がん予防に有効である.・胃X 線による胃がん検診,便鮮血検査による大腸がん検診は,死亡率減少効果が期待されるため厚生労働省が推奨するがん検診である. -
消化器がん診療の新たな展開
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 消化器がん領域,とくに胃がんや大腸がんにおいて,新たな分子標的治療薬が開発され,臨床応用されている.・ がん腫による区分ではなく,分子生物学的特徴を考慮し,治療開発が行われるようになってきている.・今後,さらなる分子生物学的な解析が進むにつれて,同一がん腫のなかでもより効果の高い患者に絞った個別化医療の発展が期待される. - がん診療にあたるまでの準備
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最新知見の調べ方
114巻4号(2014);View Description Hide Description・情報収集にあたっては,「利用できるものはすべて利用する」,「情報源の特徴(利点・欠点)について理解して利用する」という考え方で行う.・情報収集にかけられる時間は有限であり,時間をかけずに正確な最新の情報を得るためには,それぞれの情報源の特徴を理解し,情報を効率よく取捨選択する必要がある.・すべての情報について,① 著者の権威・信頼性(authority),② 正確性・確かさ(accuracy),③ 客観性(objectivity),④ 現時性・新しさ(currency)を確認・評価することが重要である. -
抗がん剤治療を学ぶうえで役立つ教育セミナー・ウェブサイト・推薦図書
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 胃がん,大腸がん,肝がん,膵がんと多くの消化器がんが,死亡統計の上位にある現状において,消化器がんの抗がん剤治療は重要な位置を占めている.・ 一方で,ひとえに消化器がんといっても,部位別に治療方法は異なっており,日々,その方法も進歩している.・ われわれは,部位別に治療の特性を理解するとともに常にその最新情報を取得し,適切な治療を行うことを心がける必要がある.・本稿では,教育セミナー,ウェブサイト,推薦図書をいくつか紹介するとともに,抗がん剤治療の考え方について説明する. -
臨床試験の正しい解釈の仕方
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 近年,臨床試験デザインの多様化により,臨床試験の結果を適切に解釈しようとする際に,高度な統計学的知識を必要とする場面も増えている.・ ここでは,近ごろ,統計学的な観点からよく議論されるトピックスとして,以下について解説を行う. ① 代わりのエンドポイント(surrogate endpoint) ② 非劣性試験(non‒inferiority trial) ③ intention‒to‒treat (ITT)解析 ④ サブグループ解析(subgroup analysis)と多重性 - 消化器がん診療各論
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胸部食道がん
114巻4号(2014);View Description Hide Description・食道がんの診断・治療戦略は多岐にわたり,専門性がきわめて高い.・まずは高齢,喫煙,飲酒,フラッシャーなどのハイリスクを中心に早期発見を心がける.・治療体系はステージ別に異なっており,造影CT で速やかにステージングを行うことが大切である.・ Stage 0 は内視鏡治療,StageⅠA では手術単独,StageⅠB/Ⅱ/Ⅲ(T4 は除く)は術前化学療法+手術,Stage Ⅲ(T4)は化学放射線療法,Stage Ⅳは化学療法が各標準的治療となっており,化学療法に関しては5‒FU+cisplatin のレジメンを用いることが一般的である. -
切除不能・進行再発胃がん
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ HER2 陽性胃がんに対する標準的一次化学療法は,フッ化ピリミジン系薬剤+cisplatin+trastuzumab である.・ HER2 陰性胃がんではフッ化ピリミジン系薬剤+cisplatin を行うが,docetaxel を加えた3 剤併用療法の有効性を現在検証中である.・胃がんの二次化学療法の意義が世界的にも認められた.・抗VEGFR2 抗体のramucirumab が近い将来,承認される見込みである. -
切除不能・進行再発大腸がん
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 5‒FU をはじめとしてさまざまな抗がん剤やレジメンが開発され,切除不能・進行再発大腸がん生存期間中央値は30 ヵ月に及ぶまでになった.・数多くのレジメンから,症例ごとに治療目標,バイオマーカー,患者因子を検討したうえで最適なレジメンを選択する.・新薬の開発だけでなく,治療効果を予測するバイオマーカーの研究も積極的に行われている. -
腹部原発軟部肉腫(GIST 含む)
114巻4号(2014);View Description Hide Description・軟部肉腫とは,軟部組織から発生する悪性腫瘍の総称である.・ 発症頻度は10 万人当たり2 人と,非常にまれな腫瘍であり,専門家と連携して治療を行うべき腫瘍である.・ 腹部原発軟部肉腫としては消化管や後腹膜発生が多く,肉腫のなかでも予後不良である.・ 腹部原発軟部肉腫の組織型としては,GIST,平滑筋肉腫,脂肪肉腫の発生頻度が多い.・ GIST は切除可能例では根治的外科切除を行い,切除不能・転移再発例にはimatinibの治療効果が高い.・ GIST 以外の軟部肉腫は,切除可能例では根治的切除を行い,切除不能・転移再発例には病状安定を目的として化学療法を検討する.・ GIST 以外の軟部肉腫に対する化学療法は単剤治療が標準的であり,とくにdoxorubicinを中心とした治療が行われる.・国立がん研究センターでは,希少がんセンターを立ち上げ,肉腫に対する診療基盤を整備している. -
神経内分泌腫瘍(消化管および膵)
114巻4号(2014);View Description Hide Description・神経内分泌腫瘍(NET)は,内分泌細胞や神経細胞から発症する腫瘍の総称である.以前はカルチノイドと呼ばれてきたが,2010 年のWHO 分類によりNET の範疇に入れられ,カルチノイドという用語はカルチノイド徴候のみに用いる.・ NET の診断には正確な組織診断が重要であり,2010 年に改訂されたWHO 分類で判定する.・ Ki‒67 指数により高分化型のNET G1/G2 と低分化型のNEC G3 に大別され,治療方針も異なる.・ NET では,腫瘍の機能性,深達度,転移の有無を正確に評価し,腫瘍の分化度および悪性度に合わせた治療が必要であり,最近発行された「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン」が有用である. -
肝がん
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 肝がん治療に関して,肝動脈化学塞栓療法(TACE)不応の判断,およびその後のsorafenib,肝動注化学療法(HAIC)の位置付けがいまだ定まっていない.・T ACE において,新規塞栓物質による DEB‒TACE やマイクロバルーンを用いた B‒TACE などの選択肢が増えてきている.・ cisplatin(アイエーコール)を用いたHAIC にsorafenib またはfluorouracil(5‒FU)の併用による上乗せ効果が検討されている. -
胆膵がん
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 膵がんは5 年生存率が7.1%と難治性のがんであり,罹患者数も徐々に増加傾向である.・ 腫瘤形成性膵炎や一部の神経内分泌腫瘍などは画像上,膵がんとの鑑別が困難であり,可能な限り病理診断を行うべきである.・ 膵がん術後補助化学療法においてはtegafur・oteracil・gimeracil(S‒1)のgemcitabine(GEM)に対する優越性が示され,標準治療となっている.・ 遠隔転移を有する膵がんに対する5‒FU・irinotecan・oxaliplatin・calcium folinate(ロイコボリン)併用(FOLFIRINOX)療法とGEM+nab‒paclitaxel は,GEM 単剤に対して有意に上回る延命効果を示した.・進行胆道がんに対するGEM+cisplatin(GC)療法がGEM 単剤に対して有意に上回る延命効果を示した. - よりよい診療を行うために
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放射線療法(照射,IVR)
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 放射線療法は,手術療法や薬物療法に並ぶがん治療の中心を構成する3 本柱の一つである.放射線療法は,根治療法にも緩和療法にも用いられ,目的に応じて総線量や治療期間および適応が異なる.放射線療法の適応を十分に理解し,最適なタイミングで患者さんに提供することが肝要である.・ interventional radiology(IVR)はCT や超音波などの画像誘導下に行われる処置であり,全身麻酔を前提に行われる外科的治療に比べ低侵襲である.・日本国内9 ヵ所に設置され,今後新たに数ヵ所で施設が建設あるいは計画されている陽子線治療について,通常の放射線療法との違いを簡潔に記載する. -
臓器障害例に対する治療
114巻4号(2014);View Description Hide Description・多くの抗がん剤は肝臓もしくは腎臓で代謝されるため,肝腎機能障害が存在する場合には適切な用量調節が必要とされる.・肝腎機能障害が化学療法の代謝とクリアランスに与える影響は予測しづらい.・用量調節時には,肝腎機能障害の原因と程度に加えて,基礎疾患,PS,化学療法による感染症や合併症のリスク,その他毒性の潜在的リスク,がんのタイプ,治療強度の重要性,治療の目的(治癒,緩和)を考慮する必要性がある.・過度の減量は治療強度の低下を招き,不十分な減量は,過度の毒性を招く.・消化器がん患者への主要な化学療法における推奨用量調節と注意事項を示す. -
著効例へのアプローチ手術すべきか? 手術すべきではないか?
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 消化器がんでは,化学療法の進歩によって切除不能局所進行症例や遠隔転移症例で化学療法が著効する症例が散見され,それに伴い,それら著効例に手術療法を加えることが,生存期間の延長や治癒を得る方法として期待されている.・ 化学療法著効例への手術療法の効果が示されている大腸がんでさえ,依然,適応症例の検討は十分とはいえず,切除後の再発症例も少なくない.・多施設で協力した症例集積による切除適応の検討とともに,個々の症例に対して,他職種キャンサーボードでの十分な適応の検討が必要となる. -
各種支持療法の変化
114巻4号(2014);View Description Hide Description・化学療法の場は,入院から外来に移行してきている.・化学療法に伴うさまざまな有害事象に対して各種のガイドラインが策定され,日常診療の一助となっている.・化学療法の嘔吐対策は,基本的には5HT3受容体拮抗制吐薬とNK1受容体拮抗薬,ステロイドの投与を行う.・催吐性のリスクにより,制吐薬のレジメンは異なる.・骨髄抑制で留意すべき有害事象は,発熱性好中球減少症(FN)である.・FN に対しては,抗菌薬投与やG‒CSF 製剤で対応すべきである.・FN のリスク評価にはMASCC スコアが有用である.・化学療法の蓄積毒性の一つに末梢神経障害があげられる.・末梢神経障害は自覚症状しかない.・化学療法による末梢神経障害に対する根本的な治療法は,休薬しかない.・化学療法による末梢神経障害性疼痛には,duloxetine がある程度有効である.・アントラサイクリン系薬剤の血管外漏出にdexrazoxane が使用可能となった. -
各種症状緩和のコツ
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 悪性腹水の管理についてエビデンスの高いものはないが,利尿薬,腹水穿刺,腹腔‒静脈シャントなどが症状緩和目的に行われる.・ 消化管閉塞には外科的治療やステント治療を考慮するが,難しい例ではoctreotideが有用である.・腹膜播種の疼痛管理はfentanyl が使用しやすいが,パッチ製剤の大量使用でも緩和が得られない場合は他の鎮痛法への切り替えが必要である. -
バッドニュースの伝え方
114巻4号(2014);View Description Hide Description・バッドニュースを伝えるコミュニケーションは,通常のコミュニケーションより難しい.・日本人のがん患者の意向調査から,バッドニュースを伝える際のコミュニケーションスキルであるSHARE が開発された.・コミュニケーションスキルは学習可能である. -
代替療法,免疫療法,がん放置療法を考える
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ 多くの患者さんが,「わらにもすがる想い」で,エビデンスの確立していない療法に望みをかけている.・ その背景には,医療に対する過剰な期待,マスメディアのセンセーショナリズム,何か治療をしていなければいけないという強迫観念がある.・ 医療者は,エビデンスに基づく医療(EBM)の考え方を伝えつつ,どんな状況でも患者さんを支えるという姿勢を示し続けることが重要である.・ 近藤誠氏の「がん放置療法」は,がんのみならず,「がん患者」も放置してしまうことが問題である.・これらの問題を超えて,「がんを抱えながらも幸せに生きる」道を探る必要がある. - トピックス
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がん幹細胞を標的とした治療戦略
114巻4号(2014);View Description Hide Description・ がん幹細胞は,抗がん剤,放射線,分子標的などの治療に対する抵抗性,転移,再発といったがん患者の予後を決定づけるイベントに深く関与することが明らかになってきた.・ がんの根治を目指すためには,がん幹細胞を駆逐する治療の開発が必要となる.そのためには,それらがん幹細胞の特性が,どのような分子あるいはシグナルによって発現・維持されているかを明確にする必要がある.・本稿では,筆者らが現在行っているがん幹細胞の性状解析と,それに基づくがん幹細胞標的治療戦略について概説する. - 座談会
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連載
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Dr.徳田の英語論文 書き方のツボ ~症例報告編~:第9 回 DISCUSSION を書く症例報告の正当性を過去の先行報告と比較してまとめよう
114巻4号(2014);View Description Hide Description
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Book Review
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