内科
Volume 117, Issue 1, 2016
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特集 【目指せ! 肥満症のトータルケア―減量に苦戦する患者について考える】
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- Editorial
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- Special Article
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肥満症の病態・診断・治療
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満と肥満症は違う.肥満症とは肥満に起因する疾患を合併し,放置すると心・脳血管疾患やがんを発症し,健康寿命を短縮する危険な病態である.しかし,種々の合併する疾患は減量することで改善するので,積極的に治療すべき疾患である.・ 肥満,メタボリックシンドロームは,生活習慣病や心血管疾患のリスク状態と考えられる病態である.・ 肥満,メタボリックシンドロームは,主に予防の対象であり,肥満症は治療の対象となる.・ 肥満,メタボリックシンドローム,肥満症への対応は,各医療職種の連携が重要で,チーム医療として行うべきである. - 肥満症の疫学
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日本における肥満症の現状と対策
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 食生活や自家用車の普及などの生活習慣の変化によって,今や肥満症は世界の流行病として位置づけられている.現状では,全世界の10 億人は過体重,3 億人は肥満といわれている.・ わが国においては,中年男性と高齢者の肥満の増加が懸念されている.肥満は糖尿病や高血圧,脂質異常症などの生活習慣病を引き起こすため,超高齢化社会を迎えるわが国において,肥満率の改善は公衆衛生上の大きな課題である.・ 日本人の肥満・肥満症は欧米と比べ特徴が異なり,肥満の評価はBMI だけではなく,内臓脂肪などのほかの代謝マーカーなどを総合的に評価する必要がある.・ 国をあげた対策として,2008 年から特定健康診査・特定保健指導が開始された.国民を肥満による健康障害から守り,健康長寿を目指す取り組みが行われている. -
胎内環境と肥満の関係
117巻1号(2016);View Description Hide Description・胎生期の低栄養が生活習慣病発症のリスクとなる疫学的事実がある.・ DOHaD という,胎生期や出生後の発達期の環境因子が成人後の疾患発症リスクに影響を及ぼすとする概念が注目されている.・ やせの女性の増加と低出生体重児の増加が問題となっており,適正体重についての教育が必要である.・欧米では妊婦の過体重による児の生活習慣病が問題となっている.・胎内環境の重要性を認識し,わが国独自の調査を行う必要がある. -
小児肥満症の管理と問題点:親子で肥満治療に取り組む
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 小児肥満症は,原発性肥満症としてその成因に関連した疫学的分類は将来治療法の開発を基に細分化されるであろうが,現状ではやはり世代別の生活習慣の形成を考慮した対応が基本である.・ とくに,子どもの貧困率とも関連して,高度肥満症では子どもの成育環境の問題も近年クローズアップされてきている.・ このような背景と成人肥満症へのトランジションをどのようにするかも,成人病の予後との関連から重要な問題となる. - 肥満のもたらす健康障害
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耐糖能異常・2 型糖尿病
117巻1号(2016);View Description Hide Description・肥満は耐糖能異常・2 型糖尿病の主要な危険因子である.・ 食事や運動習慣の適正化を中心とした介入によって糖尿病発症を長期にわたって有意に抑制できる.・ 種々の薬剤が糖尿病発症リスクを低下させることが示されているが,生活習慣改善が基本である.・ metformin は肥満を合併した糖尿病患者における合併症抑制エビデンスが豊富であり,体重増加・低血糖をきたさないため,薬物療法における第一選択薬である.・ 肥満症治療手術による糖尿病発症のリスク低下や寛解が実証されているが,長期的な安全性が不明であるため現時点では推奨度は低い. -
脂質異常症・高尿酸血症・痛風
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 脂質異常症・高尿酸血症は,いずれも「肥満症診断基準2011」において,11 個ある肥満関連疾患の1 つとされている.・ 肥満症における脂質代謝異常は,高TG 血症,低HDL‒C 血症を主体とし,動脈硬化性疾患の危険因子となる.・ 肥満症における高尿酸血症は,尿酸排泄低下を主体とし,高血圧症や慢性腎臓病といった疾患の危険因子となる.・ 治療の基本はいずれも生活習慣の改善による肥満の改善であるが,併存疾患などのため介入が必要な場合には,病態に応じた治療薬を選択し治療を行う必要がある. -
高血圧・冠動脈疾患・脳梗塞
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満関連高血圧は,交感神経活性の変化,インスリン抵抗性の増強など,さまざまな病態が複合して病態が形成されている.・ 肥満症患者の高血圧は,心血管イベントとより強く関連するnon‒dipper となりやすくなることに留意が必要である.・ 肥満は高血圧,脂質異常などのリスクの集積をもたらし,脳・心血管イベントを惹起するが,本邦においては,BMI 増加が独立した危険因子として存在している可能性を示唆する報告もある. -
肥満関連腎臓病
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 糖尿病性腎症の末期腎不全への進行を抑制しきれていない現状を踏まえると,より早期の肥満関連腎症の病態生理の理解はきわめて重要である.・ 肥満関連腎症の病態生理として,① 腎血行動態による機序,② アディポサイトカイン分泌異常による機序,③ 合併する高血圧,高脂血症,耐糖能異常など増悪因子による機序,④ 新たな概念である尿細管糸球体連関による機序,などがある.・ 肥満関連腎症の病態生理を十分に理解し,早期からの治療介入,および治療介入を可能にする微量アルブミン尿に代わる早期診断マーカーの確立が重要である. -
非アルコール性脂肪性肝疾患
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 近年,肥満人口の増加とともに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の有病者数も増加している.・ NAFLD/NASH は肥満や脂質代謝異常,高血圧,高血糖といった生活習慣病を背景に発症し,進行すると肝硬変や肝がんをきたしうる病態である.・ しかし,多くは無症状であり,トランスアミナーゼの上昇も軽度であるため,積極的に腹部エコーを行わない限り日常診療でNAFLD/NASH を見つけ出すことは困難である.・ NAFLD/NASH の予後改善のためには,日常診療に潜むNAFLD/NASH を拾い上げ,早期に治療介入することが重要であり,そのためにはかかりつけ医と肝臓専門医との密接な連携が望まれる. -
睡眠障害
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満と睡眠障害は現代社会における大きな問題であり,お互いに関係すると推測されている.実際に肥満者における睡眠障害,睡眠障害による肥満発症に関するデータが示されており,双方向に関連する可能性がある.・ 肥満者における睡眠障害としては,睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)が実臨床で頻度の高い問題である. -
整形外科的疾患
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 整形外科診療の対象となる運動器は,主として中胚葉起源であり,内胚葉起源の内臓に比して代謝がゆるやかであり,基本的に生命維持に関与しないうえ,外傷を除くと変性疾患以外の疾患に罹患することが少ない.・ したがって,今まで整形外科以外の科から関心をもたれることが多くなかったようであるが,超高齢社会が到来した現在,健康寿命の保持・延伸のために運動器の健康を保つことが重要であることが認識されつつある.・ 肥満は代謝障害(内部障害)と運動器の障害(外部障害)の接合点に位置していることから,その解消は二重の意味で効果的であり,このボーダーランドの研究の発展が将来に寄与するところ大であると考える. -
婦人科疾患
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満によって惹起されたエストロゲン(E)増加とインスリン抵抗性の増加(高インスリン)により,子宮内膜の増殖や,視床下部‒下垂体‒卵巣系の精妙な働きに支障をきたす.・閉経後の肥満女性で性器出血を認めたら,子宮内膜がんを疑う.・ 閉経前の肥満女性では,月経周期について問診し,月経周期の異常を認めたら,排卵障害や多囊胞性卵巣症候群(PCOS)を疑う.・ 妊娠により妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病,分娩時には遷延分娩や弛緩出血のリスクが高くなる.妊娠希望があれば,体重指導を厳重に行う. - 肥満の治療
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食事療法
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 低炭水化物食の減量効果に対する有用性を示すエビデンスが報告されているが,効果は2 年未満に限られており,脂質エネルギー摂取比率の増加による冠動脈疾患リスク上昇,臨床試験の脱落率が高いなどの問題点がある.・ 冠動脈疾患リスク上昇,食事療法の継続性,日本人の嗜好を考えると,現在のところ炭水化物エネルギー摂取比率は50~60%が妥当と考える.・ 特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品は,疾患への影響がなければ,患者の使用を認めてもよい.・ 機能性表示食品は,安全性・機能性の根拠が十分でないとの意見もあり,患者の使用については検討が必要である.・ 肥満の食事療法では,管理栄養士による繰り返しの栄養指導,肥満関連遺伝子多型測定による治療の動機付けが有用である. -
運動療法
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 食事療法の工夫と減量目標の設定によって,1,000~2,000 kcal/週程度の活動量が必要となる.・ 心血管病の既往・自覚症状があれば多段階運動負荷試験を施行する.Ⅲ度高血圧はまず服薬でコントロールし,中強度の運動から開始する.・1,000 kcal/週は速足のウォーキング150 分/週に相当する.・体重維持のための運動量(2,000 kcal/週)は,高強度の運動で継続している者が多い.・日常の活動量を増やすことや,座位時間を減らすことも重要である.・ 運動の条件を細かく規定すると継続が難しくなる.患者の主体的な選択を促し,運動それ自体の楽しさや遊びの要素,進歩による有能感,他者との関わりを強調して,運動継続を図る. -
行動療法・心理療法・チーム医療
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満は,糖尿病や高血圧症,脂質異常などの健康障害につながるため,早期からの予防と治療が大切である.・ 肥満症治療においては,食事療法と運動療法が主な治療法になるが,あわせてそれらを実践に移す行動療法も重要である.行動療法にはさまざまな手法が用いられるが,代表的な治療技法として,食行動質問紙表,グラフ化体重日記,30 回咀嚼法がある.・ このような肥満症治療を進めるうえでは,看護師や栄養士など他の職種との連携を含めたチーム医療も重要である. -
薬物療法
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満症治療薬は,肥満症患者に対し,食事療法や運動療法の後に使用が検討される薬剤となる.・ これまで多くの肥満症治療薬が開発されたが,さまざまな副作用があり,開発中止・販売中止にいたっている.実際に肥満症治療薬として現在本邦で採用されているのはmazindol であるが,副作用の面から使用がかなり制限されている.・ また,脂肪吸収抑制薬のcetilistat はある程度の減量効果が認められているが,消化器症状が比較的多く認められ,まだ保険収載されていない.・ ほかにもlorcaserin やtopiramate など開発されている薬剤があるが,本邦では製造承認にいたっていない. -
外科療法
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 現在,世界で主に施行されている肥満外科手術はRoux‒en‒Y 胃バイパス術,腹腔鏡下調節性胃バンディング術,スリーブ状胃切除術であり,わが国ではスリーブバイパス術も施行されている.・ 2013 年には世界で46.8 万例の肥満外科手術が行われ,その95%以上は腹腔鏡下手術であった.・ 先進国といわれる国々では年間5,000 例以上施行しているが,わが国では年間200~250 例程度である.・ わが国ではスリーブ状胃切除術が主な術式であり,2014 年に保険収載され,その適応はBMI 35 kg/m2以上で,糖尿病,高血圧または脂質異常症の1 つ以上を合併している患者とされている. - 肥満研究最前線
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食欲のメカニズム
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 食欲やエネルギー消費は視床下部を中心とした中枢神経と,脂肪組織や消化管などの末梢臓器により複雑かつ巧妙に調節されている.しかし,ヒトではエネルギーバランスとは無関係な摂食行動がみられることもあり,肥満につながっている.・ 中枢と末梢に発現している多数の摂食亢進または摂食抑制物質は血流,迷走神経,神経回路網などを介して相互作用しており,そのメカニズムを応用した抗肥満薬の開発が進められ,一部は実用化している. -
腸内細菌と肥満
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 分子生物学的アプローチの進歩により,腸内細菌と肥満との関係が次第に明らかになってきた.・ そのメカニズムとして,短鎖脂肪酸などの代謝産物を介した体重調整機能が注目されている.しかし,腸内細菌の種類は膨大で,その成り立ちとありようは複雑である.また,個人差も大きく,環境による一定の変動も存在する.・ 今後は,その複雑な生態系と,その先にある体重調節・肥満に向かうメカニズムの解明が待たれる.・ また,具体的な肥満対策のために,プロバイオティクスやプレバイオティクスの腸内細菌に対する関与の詳細をより明らかにする必要がある. -
肥満とエピゲノム
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満に伴う2 型糖尿病,高血圧,高脂血症,冠動脈疾患といった生活習慣病やがんなどの多因子疾患の解明は21 世紀の生物医学の大きな課題である.・これらの疾患は遺伝的素因とともに環境因子も大きく関与する.・ 環境変化などの外来刺激によるDNA やヒストンのメチル化などの化学修飾がエピゲノムとして記録され,細胞分裂を繰り返しても保存される一個体の記憶システムを形成している.・ エピゲノムは,塩基配列を変えずに遺伝子発現を変える「環境への適応機構」として重要であり,生活習慣病の発症に深く関与していると考えられている.・ 環境や栄養などが,ゲノムを後天的に修飾するエピゲノムを介して,臓器に記憶され,糖尿病などの生活習慣病発症のしやすさや予後の進展を決定する可能性が明らかにされつつある. - トピックス
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肥満とがん:日本人のエビデンス
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満は,食道(腺がん),大腸,肝臓,膵臓,腎臓,乳房(閉経後),子宮体部などの多くの部位のがんのリスクを上げる.・日本人においても,大腸,乳房,肝臓のがんに関するエビデンスが揃っている.・やせにおいてリスクが増加するがんもある.・ 米国人約90 万人のコホート研究では,70%以上を占めるBMI 25 以上において,がん死亡リスクとの直線的関連が示されている.・ 日本の7 コホート研究の中高年約35 万人のプール解析では,何らかのがんによる死亡リスクは,BMI 23 以上25 未満と比較して,2~3%を占める30~40 のグループにおいて約30%の統計学的有意なリスクの増加が示されている.また,BMI 21未満におけるがんや総死亡リスクの増加も顕著である.・ 日本人のがん予防においては,欧米と比較して,肥満対策の効果は小さく,やせ対策も同時に行う必要がある. -
肥満パラドックス
117巻1号(2016);View Description Hide Description・ 肥満はさまざまな疾病の発症促進因子であるが,さまざまな疾病における予後調査では,BMI が高いほど予後がよいことがあり,これを肥満パラドックスという.・ 真に肥満が発症促進因子ながら予後改善因子であるという可能性もゼロではないが,一般には真に肥満が予後を改善するとは考えられていない.・ 低栄養は避けねばならないにしても,疾病をもつ肥満者の体重を減量させることは合理的であると考えられる. - 座談会
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あなたの プレゼン 誰も聞いてませんよ!~秘密の特訓編~:第6 回 ケースカンファレンス(第5 回のつづき)
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PATHO-Words講座 ~病理のことばを読み解こう~:Vol. 18 EUS—FNA 充実性膵病変の病理学的鑑別
117巻1号(2016);View Description Hide Description -
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Dr.徳田の英語論文 書き方のツボ ~臨床研究論文~:第8 回 ディスカッションを書く(後編):論文の主張を述べる4 つのポイント
117巻1号(2016);View Description Hide Description
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