Volume 118,
Issue 4,
2016
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特集【腹痛を診る―非専門医に求められる初期診療】
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Editorial
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内科 118巻4号, 682-683 (2016);
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Special Article
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内科 118巻4号, 685-691 (2016);
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・腹痛の鑑別診断は多岐にわたり,要点をついた問診と身体診察が重要である.・ 問診は「OPQRST」と「AMPLE」を用いて迅速かつ網羅的に行う.「sudden onset」は緊急性を示唆する発症様式なので注意して診察する.・ 身体診察は「視診」,「聴診」,「打診」,「触診」の順序で行い,腹膜刺激徴候を見落とさないようにする.Carnett 徴候は腹痛の由来を同定するために有用である.・診断がつかない場合は「原因不明の腹痛」として慎重に経過観察する.
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内科 118巻4号, 693-698 (2016);
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・ 急性腹症ではまずA(気道),B(換気),C(循環)やバイタルサインの変調をチェックし,診療を進める(2 Step Methods).・ ABC やバイタルサインに変調をきたしている場合には,ABC の確保とともに,病歴や身体所見などから迅速に診断と治療を同時並行で進め,緊急の手術やIVR などが必要な病態か否かを判断する.・ これらに異常がない場合には,より詳細な問診,身体所見,検査から正確に診断・鑑別を行う.・ 超音波検査を用いたショックの鑑別,初期輸液,鎮痛,抗菌薬投与が初期診療ではとくに大切である.・腹痛が激しい場合には,診断前からacetaminophen の静脈投与を行う.
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各種検査の適応と意義
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内科 118巻4号, 699-706 (2016);
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・ 腹痛患者でも高齢者かつ脂質異常症など虚血性心疾患リスクのある患者では,胸痛を伴わない急性心筋梗塞を否定すべく心電図検査施行が望ましい.・ 通常尿検査は尿管結石の疑い例で行われるが,妊娠を完全に否定したい場合に尿中hCG 測定が有用である.・ 腹痛患者における貧血や炎症の程度と肝障害,腎障害の有無をみるために一般血液検査を行う.・ 疾患特異性の高い項目として,急性膵炎における血清リパーゼ,腸管虚血の重症度判定に乳酸値,心筋梗塞疑い例での心筋マーカー,急性右心不全による腹痛例でのBNP,腹腔内の重篤な感染症におけるプロカルシトニンなどの有用性が報告されている.・ 施行すべき検査を的確に選択するために,まず詳細な病歴聴取と腹部診察を行うことが肝要である.
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内科 118巻4号, 707-713 (2016);
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・ 腹部単純X 線(腹部X 線)は,腹痛を訴える患者の初期診療において,妊娠初期などの禁忌を除いては必ず撮影しておくべき検査である.それは採血,検尿・沈渣,超音波検査と並んでセットで行うと考えてもよい.・ 腹部X 線の撮影は診察のイメージと合わせるために基本的に臥位で撮影する.その理由は,立位ではガスは上方へ,充実臓器は下方へ偏移してしまうからである.決してniveau やfree air を評価するためではない.X 線画像は透視像であるということを意識して読影すべきである.・ 所見でgasless abdomen をみたら,必ずCT を撮影すべきである.加えて,便の貯留やガスの停滞および偏移がないかを確認する.・ 腹痛の場所は「点」ではなく「面」で考えるのがよい.画像所見の読影は,所見が腹痛の原因と見合うか,臨床推論を意識し,評価する.
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内科 118巻4号, 715-718 (2016);
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・ 本来は検査前に診断仮説を立てるべきであるが,困難な場合は少なくとも体性痛と内臓痛に分類しておく.・ トリアージとして“A3B4(Air,Ascites,Aorta and arteries,Bladder (urinary),Bilateralkidney,Biliary tract,Bowel)”を観察する.・消化管も積極的に観察することで多くの疾患が診断可能である.・ 超音波検査は非侵襲的なだけでなく,高い空間的・時間的分解能を有する優れた検査法であり,腹痛の診療において第一選択として位置付けられるべきである.
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内科 118巻4号, 721-727 (2016);
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・ 臨床診断で絞り込み,再構成画像やdynamic CT にて質的評価を行うと正確な画像診断が可能となる.・被曝がない点から,とくに小児や若年女性では超音波検査,MRI を活用する.・ CT の画像所見で注意すべき点は,空気,腹水,腹水以外の液貯留,脂肪の乱れ,腸管拡張,腸管壁肥厚,石灰化,結石,異物があげられる.・動脈性の出血や静脈閉塞は,臨床的に除外が必要な場合には造影が必須である.
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内科 118巻4号, 729-733 (2016);
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・腹痛の原因となる上下部消化管疾患の多くは,診断に内視鏡検査が有用である.・ 便秘を伴う腹痛の場合には,大腸内視鏡の前に腹部X 線や腹部造影CT により腸閉塞がみられないかを確認する.・大腸内視鏡のための下剤などの前処置は慎重に検討する.・ 内視鏡的止血術や内視鏡的大腸ステント留置術,内視鏡的捻転整復術,内視鏡的胆道ドレナージなどの内視鏡治療が有用な疾患も多数みられる.・ 内視鏡検査・治療はある程度の侵襲があるため,患者のバイタルサインをモニタリングしながら施行する.
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疾患各論
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内科 118巻4号, 735-741 (2016);
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・ 専門科を問わず,日常臨床において,もっとも診察する機会が多い主訴は,腹痛といえる.・ 腹痛の初期診療を行うにあたって,知っておくべき上部消化管疾患として,Boerhaave症候群,食道アカラシア,胃食道逆流症(GERD),胃・十二指腸潰瘍,アニサキス症,上腸間膜動脈症候群があげられる.
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内科 118巻4号, 743-747 (2016);
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・腸閉塞の腹痛は,臍周囲の間欠性の疝痛(蠕動痛)である.・絞扼性腸閉塞では,限局した持続性の腹痛や圧痛がある.・腸閉塞の初期対応は,十分な輸液と経鼻胃管の挿入である.・頻度が高いのは,腸管癒着・ヘルニア・大腸がんである.・腹部X 線は,臥位で骨盤まで撮影して閉塞部位を判断する.・迷ったときは,造影CT で腸管虚血の有無をチェックする.・絞扼性腸閉塞や外科的腸閉塞は,早めに外科医に相談する.・日常診療では,腸閉塞とイレウス(腸管麻痺)を区別する.
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内科 118巻4号, 749-752 (2016);
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・ 腸間膜動脈閉塞症は腸間膜動脈の急性閉塞に伴い,広範な腸管虚血・壊死を生じるきわめて予後不良な疾患である.急激な腹痛で発症し,壊死の進行によりショック,腹膜刺激症状をきたす.早期診断がなされれば,IVR による治療が奏効することもあるが,時間経過が長い場合は外科的治療となる.・ 虚血性腸炎は主幹動脈に明らかな器質的閉塞を伴わない,腸管粘膜の血流障害に起因する腸管の区域性炎症である.突然の腹痛・下痢・血便で発症し,多くは一過性で可逆的であるが,腸管壊死にいたった場合は外科的治療となる.・ 非閉塞性腸間膜虚血症は腸間膜血管主幹部に器質的な閉塞を伴わないにもかかわらず,分節状,非連続性に腸管血流障害をきたす.早期には特徴的な症候はないが,時間経過により,虚血の進行で腹部症状をきたす.早期にはIVR が奏効することもあるものの,多くは外科的治療となる.
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内科 118巻4号, 753-756 (2016);
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・腹痛診療は“考える消化器内科診断学”ともいわれる1).・ 診断に関連のある症状とそうでない症状(pertinent positive/negative)を意識した病歴聴取と,病歴から得られた仮説を検証する身体診察が基本である.・丁寧な腹部診察は,それ自体が患者を癒やす効果もある.
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内科 118巻4号, 759-763 (2016);
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・肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるが痛みを生じるのは肝細胞がん破裂と肝膿瘍である.・原因不明の高熱であれば鑑別として肝膿瘍も考慮する.・CT で描出されない胆石があり,腹部超音波を併用するべし.・ 急性胆囊炎,胆管炎は緊急ドレナージが必要となり,重症化することがあるため早期に消化器内科医へ紹介する.・総胆管結石では腹痛,黄疸,発熱などの症状が消長することがある.・黄疸の初期症状として,患者は尿の濃染に気づくことが多い.・ 膵炎の背部痛は仰臥位で寝られないことが多く,横向きになり膝を胸につけるような姿勢をとる(胸膝位)と痛みが軽快することがポイント.
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内科 118巻4号, 765-767 (2016);
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・ 患者は側腹部痛も下腹部痛も,外陰部痛さえ「お腹が痛い」と訴えがちで,丁寧な問診を要する.・ 泌尿器科疾患は後腹膜臓器と外陰部臓器のため,問診で腹腔内臓器疾患とは鑑別しやすい.・ 唯一,機能的に致死的になりうる腎不全に対しては,適切な治療が困難でも血液透析で対応可能である.・ 急速に致死的になる病態として重症感染症と外傷性出血,とくに閉塞性腎盂腎炎と腎外傷に注意する.・ 初期対応を誤ると,機能障害が後遺するので,腎外傷や陰囊内容の異常については早期に泌尿器科医に相談する.とくに精索捻転については緊急性を要する.・ 腹痛などが治まっても,水腎症や尿閉が続く場合は不可逆的な機能障害となるので注意を要する.
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内科 118巻4号, 769-772 (2016);
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・ 女性の腹痛では問診で月経歴を詳しく確認するとともに,まず妊娠の可能性を否定することが重要であり,尿hCG 検査での確認が望ましい.・ 超音波検査はなるべく膀胱を充満した状態で行い,子宮周囲の出血や卵巣腫瘍の評価により,緊急手術の可能性が高い子宮外妊娠と卵巣腫瘍茎捻転を抽出する.・ 生殖機能温存のために,軽症,早期であっても婦人科専門医へのコンサルトが必要である.
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内科 118巻4号, 773-776 (2016);
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・ 急性心筋梗塞,腹部大動脈瘤破裂,大動脈解離,肺動脈塞栓症の4 つは,「救急外来でショック状態になり死にいたること」がある「超緊急疾患」とされる急性腹症である.・ 脾腫をきたす疾患は脾臓の被膜の伸展による腹痛を,脾動脈塞栓症による脾梗塞では壊死に伴う腹痛をきたす.・ 鉛中毒,ポルフィリア症,糖尿病性およびアルコール性ケトアシドーシス,家族性地中海熱は神経障害などを介し腹痛をきたす.・ 尿膜管遺残症への感染・腹膜血腫・腹壁の帯状疱疹,胸腰椎疾患も腹痛の原因となる.
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特殊な状況(病態)への対応
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内科 118巻4号, 777-780 (2016);
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・ 小児の腹痛は,ほとんどは良性のものであるが,緊急性のある疾患(腸重積症,絞扼性イレウス,虫垂炎,精巣捻転症など)が忘れたころにやってくる.・ 小児は,腹痛時に「おなかが痛い」と訴えるとは限らず,「不機嫌」などで表現される.原因として,腹部疾患以外(鼠径ヘルニア,心筋炎,IgA 血管炎)も念頭に置くことが肝要である.・ 緊急性のある疾患では,腹部X 線でのガス像減少,エコーでのtarget sign などが重要なポイントである.
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内科 118巻4号, 783-788 (2016);
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・ 高齢者はADL や認知機能の低下などから受診が遅れがちであり,身体所見も典型的ではなく,急性病態を見逃しやすい.また,全身の予備能力が低く,急性病態が起こると重症化することが多い.・ 高齢者の腹痛診察では腹部臓器だけでなく,全身をくまなく診察すべきである.重症化してからの治療はリスクが高いので,緊急度を考え,安易な経過観察を行わず,CT などの画像検査を活用して素早く診断し,できるだけ早く治療方針を決定することが重要である.・ 外科手術などの治療介入を行った場合は,術後の集中治療管理まで確実に行う必要がある.一方で,救命不可能な場合,早期の緩和医療への移行なども検討すべきである.
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座談会
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内科 118巻4号, 791-799 (2016);
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連載
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内科 118巻4号, 801-803 (2016);
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内科 118巻4号, 804-812 (2016);
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内科 118巻4号, 813-815 (2016);
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内科 118巻4号, 817-822 (2016);
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内科 118巻4号, 823-826 (2016);
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ペニシリン系との大きな違いは Enterococcus spp(. 腸球菌)には無効なことである.セフェム系は第一から第四世代まで1 薬剤ずつ,そして第二世代と第三世代の変わり者を把握する.カルバペネム系はきわめて広い抗菌スペクトラムをもつが,乱用して思考停止に陥らないようにする.
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投稿
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症例
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内科 118巻4号, 829-832 (2016);
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内科 118巻4号, 833-836 (2016);
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内科 118巻4号, 837-839 (2016);
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内科 118巻4号, 841-843 (2016);
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Photo Report
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内科 118巻4号, 816-816 (2016);
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内科 118巻4号, 827-827 (2016);
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Book Review
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内科 118巻4号, 719-719 (2016);
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内科 118巻4号, 757-757 (2016);
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内科 118巻4号, 781-781 (2016);
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内科 118巻4号, 789-789 (2016);
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