Volume 120,
Issue 1,
2017
-
特集【適正な輸液とは何か?】
-
-
特集のねらい
-
Source:
内科 120巻1号, 2-3 (2017);
View Description
Hide Description
-
Overview
-
Source:
内科 120巻1号, 5-11 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 輸液処方を組み立てる前に,まずその輸液が本当に必要なのかを考えなければならない.▪ 必要であれば何の目的で行うのか,つまり細胞外液量や細胞内液量の是正のための是正輸液なのか,それとも体液全体の維持のための維持輸液もしくは栄養補給のための栄養輸液なのかを明らかにしなければならない.▪ 0.9%生理食塩水や5%ブドウ糖液を輸液したときの体内分布がわかれば,是正輸液の考え方もたやすくなる.▪ さらに体液量や心機能や腎機能などを事前に評価することにより,安全な輸液療法を施行することができる.
-
Source:
内科 120巻1号, 13-17 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 輸液療法においては,体液量および電解質の異常,ビタミン・微量元素の異常,輸液に伴う合併症をモニタリングすることが重要である.▪ 輸液量のモニタリングとして身体所見,体重のチェックのほか,超音波検査などを行う.▪ 電解質異常のモニタリングとして適切な採血採尿での評価のほか,心電図モニターの装着を行う.▪ビタミン,微量元素欠乏は見逃されやすく,とくに長期間の末梢点滴時には注意する.
-
Source:
内科 120巻1号, 19-22 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 実践的な輸液教育の重要性はますます高まっており,輸液療法を組み立てる一連の思考過程を理解し,さらに言語化して伝える必要がある.▪ 輸液療法を開始する前に,そもそも輸液療法の適応があるのか,何を目的としているのか,ゴールをどのように設定するのかを検討する.そのために,輸液製剤のなかには塩分が何g,砂糖が何g 入っているのか,そして各症例にその量を投与してよいのかなど輸液内容を具体的にみえる化してみる.▪ そして,現在の輸液療法で病態が改善しているのか,悪化しているのかを確認するための指標(バイタルサイン,身体所見,体重,尿量,検査所見など)を設定し,適切にフォローする.
-
電解質・酸塩基平衡異常補正の輸液
-
Source:
内科 120巻1号, 23-30 (2017);
View Description
Hide Description
▪ Na 異常症はわれわれが最もよく直面する電解質異常である.▪ Na 異常はNa の絶対量が多い・少ないということではなく,Na 濃度がどうかを常に考える必要がある.▪ Na 異常症は浸透圧系の異常であり,自由水の異常である.自由水が多ければ低Na 血症になり,自由水が少なければ高Na 血症になる.▪ Na異常症の治療においては,過補正時の浸透圧性脱髄症候群(ODS)の合併のリスクがあり,常に過補正に留意する必要がある.▪ Na 異常症では過補正を予防するために治療介入でどの程度補正されるかを考えながら治療を行っていくことが重要になる.▪ ODS は症状発現が数日遅れることもあるので,翌日症状が大丈夫でも安心しないことを認識しておくことは重要である.
-
Source:
内科 120巻1号, 31-33 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 体内ではK の大部分は細胞内に存在し,血清K 濃度は ① 投与量,② 排泄量,③ 細胞内外の移動量に依存する.▪ したがってK 濃度の異常は上記 ①~③ のどこかの問題によって起こるので,そこを治療すればよい.▪ほかの電解質異常と同様に,是正に緊急性があるのかどうかの評価が重要である.
-
Source:
内科 120巻1号, 35-40 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 酸塩基平衡異常の治療は,原因となっている基礎疾患自体の治療が重要かつ根本的である.▪ 酸塩基平衡異常の増悪・維持因子となっている有効循環血漿量低下,K,Cl,Mg などの電解質異常の補正も重要である.▪ 代謝性アシドーシス・アルカローシスが高度かつ進行性で緊急性の高い場合,換気コントロールによる呼吸性代償の誘導やアルカリ・酸の投与などアシドーシス・アルカローシス自体への治療が考慮されるが,電解質異常,細胞外液量過剰,奇異性細胞内アシドーシスなど重篤な有害作用に注意が必要である.
-
輸液ライン確保・維持の実際
-
Source:
内科 120巻1号, 41-45 (2017);
View Description
Hide Description
▪輸液を開始するには,末梢静脈ルートが必要である.▪いわゆる「点滴をとる」ことは若手医師がまず身に付けなければならない技術である.▪ほとんどの患者ではルート確保は容易であるが,症例によっては困難なケースもある.▪中心静脈ルートは,末梢静脈路確保が困難であったり,長期間の輸液療法に使用する.▪穿刺時に致命的な合併症を起こす可能性もある.▪適応をよく考え,必ず指導医の指導の下に行うことが必須である.
-
Source:
内科 120巻1号, 47-50 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 血管内カテーテル留置中に発熱,刺入部の圧痛,腫脹などを認める場合,カテーテル関連血流感染症(CRBSI)を疑う.▪ 治療を開始する前に必ず血液培養2 セットを採取し,そのうえでカテーテル先端の培養を提出する.▪ 通常は医療関連感染になるため耐性菌の関与を考慮し,重症度やリスク因子などの臨床状況と耐性菌の検出状況を踏まえて,とくにMRSA を含めたグラム陽性球菌,グラム陰性桿菌を念頭に経験的治療を行う.▪ CRBSI の予防のため,カテーテルの留置部位の選択を適切に行い,中心静脈カテーテルの挿入時は無菌操作を遵守する.▪ 留置後の定期交換は不要だが,毎日継続の必要性を評価したうえで,不要なら抜去する.
-
各疾患の輸液
-
Source:
内科 120巻1号, 51-56 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 腎不全においては体液・電解質とも恒常性の維持が難しく,輸液療法に最も注意が必要な疾患の一つである.輸液の目的を的確に捉え,内容を調整する必要がある.▪ 急性腎障害(AKI)・慢性腎不全患者を問わず,腎不全患者では容易に脱水・溢水となりうるため,体液量評価と電解質のモニタリングが重要となる.とくにAKI の場合は乏尿期・利尿期のいずれの段階にいるのかを常に意識する.▪ 栄養輸液の際は中心静脈栄養を基本とし,低栄養状態からのrefeeding syndrome に注意する.
-
Source:
内科 120巻1号, 57-59 (2017);
View Description
Hide Description
▪透析患者への治療は今やcommon なことである.▪透析患者の特徴は,脱水になる可能性が低く,溢水や高K になりやすいことである.▪透析治療中に高カロリー輸液(IDPN)を施行することができる.
-
Source:
内科 120巻1号, 61-64 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 急性心不全の分類にはForrester 分類,Nohria‒Stevenson 分類,クリニカルシナリオ(CS)などがあり,これらの分類は治療方針の決定とともに,輸液処方を組み立てる際にも有用である.▪ Forrester 分類やNohria‒Stevenson 分類は左心不全を念頭に置いた分類であり,右心不全の輸液については別途考える必要がある.▪ 慢性心不全の患者は通常体液量過剰の状態にある.このため,輸液を行う際には塩分を制限し,輸液量も1 日1,500 mL 程度までに留める.▪心不全患者に輸液を行う際にはビタミンや微量元素にも注意を払うことが必要である.
-
Source:
内科 120巻1号, 65-69 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 慢性肝不全症例では有効循環血漿量が低下していることが多く,輸液が必要になる場合でも水制限・Na 制限が基本となる.▪ 浮腫・腹水のコントロールを要するときは,さらに抗アルドステロン薬・ループ利尿薬・バソプレシン拮抗薬などの利尿薬を使用する.▪ 血管内の膠質浸透圧を増加させるためにアルブミン製剤を用いることもあるが,あらかじめ必要量を予測して漫然と投与しないことが肝要である.▪ 肝性脳症を呈する場合には,特殊組成アミノ酸製剤を使うこともあるが,その注意点についても理解しておく必要がある.
-
Source:
内科 120巻1号, 71-74 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 糖尿病患者にブドウ糖を含む輸液を行う際には,血糖値の簡易検査を繰り返し,必要に応じてインスリンのスライディングスケールを併用することが望ましい.▪ 糖尿病性ケトアシドーシス,高血糖高浸透圧症候群に対しては,適切な輸液とインスリン持続静脈内注入を行う必要がある.▪血糖変動のみならず血清Na 値やK 値をモニタリングして,適宜補充量を変更する.▪ 急激な血糖降下や電解質の補正,浸透圧の変化によって脳浮腫や浸透圧性脱随症候群,または横紋筋融解症などを合併する可能性があり注意を要する.
-
Source:
内科 120巻1号, 75-79 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 高齢者における輸液療法を考えるうえで,最も重要なことは「何のために輸液をするのか?」ということである.輸液を開始するときに,いつまで続けるのかを考えておく.▪ 高齢者の体液量が適正かどうかを判断する際に,一つの指標を盲信してはいけない.多角的な視点から患者を経時的に観察する必要がある.▪ 温度,湿度が適切であれば,寝たきり高齢者の不感蒸泄はきわめて少ない.細胞外液を投与し続けると医原性の体液過剰,水電解質異常を引き起こす.▪ 急性期の末梢輸液療法が不適切であると,栄養指標が悪化し,回復に時間がかかる.高齢者が消耗しないようにエネルギー,栄養素を考慮した末梢輸液療法を心がける.▪ 高齢者にみられる水電解質異常は薬剤性のことが多い.無理に末梢輸液療法で補正しようとはせず,薬剤の中止,食事の調整などによる複合的な補正を試みる.
-
Source:
内科 120巻1号, 81-85 (2017);
View Description
Hide Description
▪ショックは早急に対処しなければ不可逆的,致命的になりうる病態である.▪ 最も多いのが敗血症性ショックであり,心原性ショック,循環血液量減少性ショックが続く.閉塞性ショックは少ないが,認識して特異的な治療を行うことが重要である.▪ ショックでは早期に酸素投与/換気(ventilate/oxygenate),細胞外液型輸液(infuse),血管収縮薬(pressor)投与(VIP)を行うべきである.輸液チャレンジは細胞外液500 mL を30 分で投与し,輸液反応性がなくなるまで繰り返すのが基本.心機能と腎機能,酸素化に留意しながら行う.▪ 原因が特定でき次第,特異的な治療を速やかに行う(敗血症に対する抗菌薬,ソースコントロールや重症肺塞栓に対する血栓溶解,消化管出血に対する内視鏡的止血など).▪ 安定したら速やかに細胞外液輸液を減量中止し,必要に応じて利尿薬も用いて「引きに」かかる.
-
Source:
内科 120巻1号, 87-90 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 造影剤腎症(CIN)は,ヨード造影剤投与後72 時間以内に血清Cr 値が前値より0.5 mg/dL 以上または25%以上増加した場合に定義される.▪ CIN のリスクファクターとして,検査前の腎機能障害,糖尿病性腎症,うっ血性心不全,脱水・低血圧,高齢,腎毒性物質(NSAIDs など)があげられる.▪ CIN 発症に対する予防法は輸液しかなく,等張性輸液として生理食塩水または重曹を造影前後に投与することが推奨されている.
-
Source:
内科 120巻1号, 91-95 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 従来の輸液管理は晶質液で積極的に脱水補正,導入時負荷,維持,サードスペース補充,出血に対する初期補充を行ってきた.▪ 最近は麻酔薬の変化,サードスペースの概念の変化,術後回復力強化の重視などが引き金となり,制限的輸液管理,目標指向型輸液管理へとシフトしつつある.▪ 目標指向型輸液管理は晶質液の投与制限,血圧,尿量以外の血行動態ゴールの設定および膠質液のボーラス投与の繰り返し(輸液チャレンジ)による血行動態ゴール達成で構成されている.
-
栄養輸液
-
Source:
内科 120巻1号, 97-101 (2017);
View Description
Hide Description
▪現在の医療のなかで本質が理解されないまま静脈栄養が軽視される傾向がある.▪ TPN キット製剤が広く用いられているが,その内容・組成を理解することは重要である.▪ 本来は,体重あたりでエネルギー,アミノ酸投与量を計算し,脂肪乳剤も投与し,1 日必要量として設定されている量のビタミン,微量元素を投与するべきである.▪ TPN を施行して効果が現れない,なぜ効果が出ていないのか,組成・投与量に問題ないのか,病態に適した処方となっているのかなどについて考えるべきである.
-
Source:
内科 120巻1号, 103-107 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 近年がん終末期に併発することが多いがん悪液質を定義して,3 つの時期に分けて有効な介入方法を探索する試みが行われているが,まだ有効な治療法は確立していない.▪ がん終末期の患者の利用が多い緩和ケア病棟では,高齢者一般病棟と比べて,死亡直前期の輸液量や栄養補給が少ない傾向がある.▪輸液量が少ないと気道分泌の出現頻度が減少する.▪ 予測される予後が1 ヵ月程度のがん患者に行った1,000 mL の輸液治療では,症状緩和の効果は限定的であり,輸液の有無による予後には有意な差がない.▪ がん終末期の輸液は,医療的な側面だけでなく,患者家族の心理社会的な側面も十分に考慮しながらその適応を考えていく.
-
Source:
内科 120巻1号, 109-113 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 慢性的な低栄養状態に,栄養療法(再栄養=refeed)として大量のブドウ糖が投与された際に発生する体液,電解質異常,また,これらに起因する心肺および神経系の異常をきたす一連の代謝性合併症の総称である.▪ 本症候群の発生を防ぐためには,リスクを有する低栄養患者を正確に把握し,再栄養開始時には糖質負荷は低濃度から緩徐に行い,循環,呼吸状態を含め,電解質を中心とした厳重なモニタリングを行いながら行う.ただし本症候群の発症を恐れて必要最小量を割ることのないようにしたい.▪ 本症候群は発生すると最悪の場合死にいたることもあるため,栄養療法に携わる医師はぜひ知っておく必要がある.
-
Source:
内科 120巻1号, 115-120 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 静脈栄養においては,糖質・アミノ酸・脂肪をバランスよく投与することが必要である.▪ 栄養の投与ルートとして消化管を優先するが,静脈栄養を必要に応じ,時機を逸せず行うことが重要である.▪ アミノ酸は蛋白質合成のために必要な栄養素であり,十分なエネルギー供給とともに投与されることが重要である.▪ 腎不全・肝不全の患者においては,窒素負荷の軽減を考慮し,病態に応じて適切なアミノ酸製剤を使用する.▪ 脂肪製剤は,糖質に偏らないエネルギー投与と必須脂肪酸欠乏の防止のために必要であり,投与速度と感染予防に留意して投与する.▪末梢静脈から輸液を行う場合も,静脈栄養の必要性を考慮する.
-
トピックス
-
Source:
内科 120巻1号, 121-123 (2017);
View Description
Hide Description
▪ 小児,とくに乳児は体内水分量の割合が高く,体重あたりの水分喪失量が大きいため,脱水に陥りやすい.▪脱水の評価を行い,経口補液療法が不可能または重症脱水の場合に経静脈輸液を行う.▪経静脈輸液を行う際は必ず電解質測定を行う.▪ 維持輸液はHolliday & Segar の式を利用して行うが,hospital‒acquired hyponatremia に留意する.▪ 等張液製剤,低張液製剤それぞれで起こりうる有害事象に留意し,体液・電解質管理を行うことが重要である.
-
Source:
内科 120巻1号, 125-127 (2017);
View Description
Hide Description
▪高齢者は脱水を起こしやすいが,その症状は乏しい.▪在宅での輸液は,高齢者の入院を減らすことを可能にできる.▪ 脱水の早期発見,早期治療が大切で,そのためには訪問看護師にどのように依頼するかが現場では重要である.▪ 1 号輸液が基本になるが,2 週間以上になるときには電解質チェックを行い,栄養面からの検討も必要となる.
-
座談会
-
Source:
内科 120巻1号, 129-138 (2017);
View Description
Hide Description
-
連載
-
-
Source:
内科 120巻1号, 141-146 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
内科 120巻1号, 147-151 (2017);
View Description
Hide Description
喀痰グラム染色が原因微生物の特定に重要な役割を担う. 市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎に分類される. それぞれ想定すべき原因微生物と対応が異なる.
-
Source:
内科 120巻1号, 153-157 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
内科 120巻1号, 159-163 (2017);
View Description
Hide Description
-
投稿
-
-
症例
-
Source:
内科 120巻1号, 165-170 (2017);
View Description
Hide Description
-
Book Review
-
-
Source:
内科 120巻1号, 70-70 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
内科 120巻1号, 96-96 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
内科 120巻1号, 152-152 (2017);
View Description
Hide Description