内科
Volume 122, Issue 5, 2018
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特集【在宅医療を始める! 実践する! 連携する!】
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- 総論
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在宅医療で何をみるか
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅医療では患者の生活環境など多くの臨床情報が得られる.医師は生活の視点で患者を捉え,診療に活かすべきである.▪ まず,患者をみる際には,状態変化時に備えたベースラインの身体診察,身体機能として実際に動いて(歩いて)いる様子,飲食をしている様子をみる.そして,患者の“人となり”,“何を大切にされておられるか”をみることができればなおよい.▪ 次に,生活(療養)環境として,療養部屋や居間,必要に応じてそれ以外のトイレ・風呂などの様子,具体的な介護環境をみる.また,他職種の記録もみるようにしたい.▪ 以上を,患者のプライバシーに配慮し,その必要性を患者やその家族へ説明し同意を得たうえで,少しずつみるようにする. - Overview
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診療所の医師が在宅医療を行う意義
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 診療所の医師は,患者との信頼関係を継続的に結びやすい.そして在宅医療を行うことは,その人の家族や社会背景を知り,今までの人生を知り,将来の夢を知り,真にその人のQOL に迫ることを可能にする.▪ そして地域の資源を知り,関わる人々を支えることが,地域全体を「最後まで過ごしたい場所で過ごせる」町へと変えていくことができる.▪ 患者のQOL を軸に病院の専門医と連携しながら,新たな医療の形を切り開く力が,診療所と在宅医療にはある. -
地域医師会と在宅医療
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 医師会は日本,都道府県,郡市区医師会の三層構造になっており,それぞれ在宅医療の推進に向けた事業を行っている.▪ 介護保険の在宅医療・介護連携推進事業など地域(郡市区)医師会に対する地域包括ケアシステム構築への期待が大きい.▪ 日本医師会は在宅医療を行う「かかりつけ医」の質を高めるための研修や認定,都道府県医師会は,地域(郡市区)医師会の在宅医療推進活動を補完するような事業を行っている.▪ 在宅医療の体制には,① 退院支援,② 日常の療養支援,③ 急変時の対応,④ 看取り,があり,24 時間365 日体制(夜間・休日対応)を築く必要がある.そのために連携型の機能強化型在宅支援診療所,継続診療加算など政策誘導がされてきた.▪ 診療所間のグループ診療は患者情報の共有のみならず,医師の価値観の共有や公平性の配慮が必要となる.▪ かかりつけ医の在宅医療を推進するためにためにも地域(郡市区)医師会の調整役,黒子としての役割が期待されている. - 在宅医療のコツ
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在宅医療導入時のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅医療導入時には大きく3 パターンのゲートがあり,おのおののポイントがある.▪ 患者・家族はさまざま.正解のないオーダメイドの在宅医療をともに築き上げていく過程が重要.▪ 共通するポイントは,患者家族がそれまで営んできた生活・ものがたりを大切に土足で踏み込まないことである.▪患者家族の不安を払拭する方法は,丁寧な説明と信頼できる関係性づくりである. -
在宅患者の急な状態変化時に外来診療と在宅医療を両立するコツ ソロプラクティスの診療所を念頭に
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 急な状態変化が「予測できる急性増悪」であるか「予測不可能な状態変化」であるかにより対応は異なる.▪ 急な状態変化をできるだけ防ぎ,変化が小さなうちから事前の対策をとっておくようにする.▪外来中などで医師が対応不可能な際,訪問看護師の役割はきわめて大きい.▪常に主治医が対応できなくても,連携を通じて地域の在宅医療への貢献が可能である. -
療養環境をアセスメントするコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 国際生活機能分類とは,人間と環境との相互作用を含めて,人間の健康状態を系統的,全人的に評価するツールであり,療養環境を評価する視点として重要である.▪ 川崎市の在宅リハビリテーションサービスでは,本人の身体・精神機能や活動だけでなく,家屋環境,家族の介助能力,経済力,生活上の好み,社会参加などを含めて総合的に評価したうえで,主に福祉用具・補装具の導入や住宅改修を行う.▪ 在宅医に求められるスキルとして,① 患者の生活機能を的確に評価する,② 患者の生活機能の予後予測を行う,③ 患者の家屋環境で,実際に患者に動作を行ってもらい,自分でも動作を行う,④ 他職種と連携する,が重要と考える. -
ケアマネージャーとの連携のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅医療の実践は,地域包括ケアの実践につながる.▪ 地域包括ケアとは,「自分らしい暮らしを最期まで続けられるように,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるケア」のことである.▪ 在宅医療を実践する医師は,医療の視点で対応をすべき課題と生活や介護の視点で対応すべき課題について向き合うことが求められる.▪ 在宅患者の抱える生活や介護に関する課題は,ケアマネージャーをはじめとするさまざまな職種の方との連携を通じて,解決する姿勢が重要である.▪ 医師は,質の高い在宅医療の実践のために,ケアマネージャーについて理解し,チーム医療の実践を心掛けることが求められる. -
訪問看護師との連携のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 訪問看護は地域包括ケアシステムの要であり,訪問看護師との連携を疎かにすると質の高い在宅医療は提供できない.そのため,在宅医療を担う医師は,訪問看護師がもつ専門性やその役割を十分に認識し,お互いを尊重した関係性を構築しなければならない.▪ 訪問看護師とよりよい連携を目指すうえで,適切な訪問看護指示書の記載はもちろんのこと,「顔のみえる関係性の構築」や「状況に応じた適切な情報共有」「24 時間対応における連携」が重要な要素になると考える. -
薬剤師との連携のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 高齢者では薬物有害事象の発生が多い.要因として,加齢変化に基づく薬物感受性の増大や服用薬剤数の増加が重要である.▪ 薬剤師の自宅訪問によって,服薬アドヒアランス改善や,薬剤の重複や副作用の減少などの効果が認められる.医師・薬剤師以外にも,家族やケアスタッフが服薬管理上の問題に気づいていることがある.▪ 連携の方法は,地域や現場によってさまざまである.医師‒薬剤師間のみでなく,ケアマネージャー・介護士・看護師・そして本人や家族も参加できると,より望ましい連携となる.▪ 在宅医療において薬剤師の自宅訪問は非常に有用だが,薬局の負担は小さくないことに注意が必要である.居住系施設では,種類によって介護保険や医療保険が使えないことがある. -
訪問リハビリテーションとの連携のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 訪問リハビリテーションを行う際は,事業所ごとに利用可能な保険制度や保険上の取り扱いが異なる.▪ 訪問リハビリテーションを行うには,医師の指示が必要であり,それぞれ指示の出し方や必要書類が異なる.また,主治医と指示医の属する事業所によっても,診療の有無や情報提供の有無が異なり,それぞれに合った方法で実施することが必要となる.▪ セラピストの役割には,活動や社会参加に対してのアプローチを行うことがあげられる.これは地域包括ケアシステムにおいて重要な役割といえる.▪ 医師の役割は,明確化されており,リハビリテーションにおける目的・方向性や留意事項などの指示を行うことやリハビリテーション計画の本人・家族への説明などがあげられる. -
栄養士との連携のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 訪問栄養指導は実際の食事場面を確認しながら指導を行うことができ,非常に有用である.▪ 管理栄養士のイメージ,特別食の歴史,制度上の問題,などからなかなか広まらない制度となっている.▪「 管理栄養士=制限食の指導をする職種」ではない.そのことを,しっかり認識して管理栄養士と連携をしていくことがまずは重要となる. - 在宅医療のスキル
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がん疼痛緩和・オピオイドを中心に
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅緩和ケアは今後さらに必要とされる.▪ 常に患者の痛みを知り,原因を探りながら適切な治療を探ることが在宅ではとくに必要である.▪WHO 方式がん疼痛治療法を中心に,がん疼痛緩和の基本的な方法を記載した.▪がん疼痛の主軸となるオピオイドの特徴・使い方・注意点をまとめた.▪オピオイド以外の鎮痛方法も考慮し,選択肢に入れる必要がある. -
在宅医療における輸液(とくに終末期について)
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 終末期であっても,食欲不振の原因を考え,介入できる治療(薬剤性など)や感染症(結核など)の可能性を考える.▪ 輸液しないことで生じる利益(口腔や咽頭の分泌液減少,浮腫や腹水の減少など)を考慮に入れ,慎重に輸液の適応を考える.▪ 輸液継続・中止など重要な患者・家族との話し合いは,必ず訪問看護をはじめとする多職種で行う.▪ 患者・家族の不安,苦しみをできる限り表出してもらい,それを医療者や家族同士で共有する. -
在宅看取り
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅看取りは在宅ホスピスケアの過程であり,目的ではない.▪ 在宅ホスピスケアは多職種からなるチームで行い,患者だけでなく家族全体をケアする.▪ 末期がんにおいては,ある程度正確に予後を予測できる.適切なタイミングで家族に予後を伝え,その時期に対応したケアを心がける. - 在宅における臨床のコツ
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在宅でがんをみるコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅医療が再度重要視されてきている現在において,在宅医療で重症かつ多様な疾患をみることが増えている.がん患者の診療はその中心といっても過言ではない.▪ 在宅医が必ずしも,がん専門医である必要はない.在宅医ならではの在宅での支え方があり,それは病院とは異なる.▪ 医療,介護を最大限に活用することで,今まで難しかった患者も在宅療養を行うことができるようになってきている.▪ ここでは,在宅で在宅への導入の仕方,病院間連携や,多職種連携,家族指導などを中心に述べ,がん患者を診療する際の手助けとなればと思う. -
在宅で認知症をみるコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 認知症の自然経過について,家族や関係者と共有をする.▪ケアマネージャーや多職種で連携し,家族の負担に配慮する.▪Alzheimer 型認知症の重度~末期には身体疾患への対応が重要となる.▪人生の最終段階における意思決定支援について配慮が必要である. -
在宅で慢性呼吸不全をみるコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 慢性呼吸不全の在宅医療においては,診断学の基本,ワクチンによる予防医学的アプローチ,モルヒネを含めた薬剤管理・リハビリテーション・栄養管理とそれらに関連した専門職との多職種連携,適切な在宅酸素療法,アドバンス・ケア・プランニングが重要である. -
在宅で慢性心不全をみるコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 慢性心不全は増悪・改善を繰り返しながら病状が進行していく.▪ 在宅でこのような患者をみていくためには常に先を見据えながら関わることが大切である.▪ 医師だけで患者の在宅生活を維持することは非常に難しいため,日々の関わりや医療的ケアを多職種で連携していくことが患者のQOLにも寄与していくだけでなく医療者と患者との関係性の向上にもつながると考える. -
在宅で慢性腎臓病をみるコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 慢性腎臓病(CKD)は高齢者で有病率が高く,在宅の現場では遭遇率が高い.▪CKD の治療戦略では,末期腎不全(ESRD)への進行抑制が最重要課題である.▪末期腎不全(ESRD)では「適切な時期に」腎代替療法について説明を行う.▪ESRD での治療方法は腎代替療法か保存的治療の選択がほとんどである.▪ 意思決定支援を必要とする患者を同定し,患者・家族だけでなく,多職種を巻き込んで十分な話し合いを行うことが重要である.▪終末期では,症状緩和を十分に行い,QOL を最適化することが目標となる.▪ 終末期でみられる症状としては,疼痛,呼吸困難,せん妄,倦怠感,ミオクローヌスや痙攣,嘔気・嘔吐,皮膚瘙痒,睡眠障害などがある. -
在宅で褥瘡をみるコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 病院で行う褥瘡ケアをそのまま在宅で行うのは難しい.たとえば2 時間おきの体位交換や1 日複数回の褥瘡処置を家族が行うと,家族が疲弊し在宅療養が破綻する.▪ 法制度上ヘルパーは褥瘡処置を行うことができないし,訪問看護が1 日複数回訪問するのは金銭面やマンパワーから難しいことが多い.▪ 在宅での褥瘡ケアは家族が中心となって行うことが多いため,家族の疲弊や事情を考慮したケアを展開することがポイントとなる.▪ 在宅における創へのアプローチは専門家でも意見が分かれている.たとえば創に対する消毒は行わない方向で統一されているが,創感染時に消毒薬を使用するか否かについては意見が分かれている.▪ エビデンスが十分集積されておらず,どちらが正しいか判断できない状況にある.本稿ではどちらも紹介し,医療者がそれぞれの状況を踏まえそれぞれの意見を選択していただきたい. -
急性期対応のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 訪問診療中の患者における急性期対応で最も頻度が高いのは,感染症への対応である.▪ 在宅において現場で診断を行うことは容易ではなく.診断を確定することよりも,治療選択の判断・入院の判断をどのように行うかが重要である.▪在宅医療における入院に関する意思決定には,医学的側面以外も重視する必要がある. - 在宅医が病院医師と連携するコツ
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在宅医と病院医師の連携のコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅医と病院医師の連携には,入院中の退院支援が欠かせない.▪診療情報提供書を工夫して書くことで,在宅側が助かる.▪在宅側から積極的に出向くことで,連携がスムースになる. -
患者を在宅につなげるコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 一にも二にも「在宅医との連携」.在宅医を味方につけよ.▪急性期病態での入院こそ,ポリファーマシー改善のチャンスである.▪ 退院して早期にまた戻ってくる人をいかに減らすかを考えるのが,急性期病院の使命である. - トピックス
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主治医移行・ケア移行時の注意とコツ
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 高齢化に伴い疾病の慢性化・複雑化が進み,医療・ケアの分業化と細分化が進行した.▪ 医療・保健・介護職間の連携の重要性は高まり,とりわけ療養場所の変化に伴うケア移行時の連携に関して知見が蓄積してきている.▪ ケア移行時の情報移行は不十分なことが多く,そのため患者に多くの不利益が生じている.▪ 在宅医療では,急性期病院への入退院時に問題が起きることが多く,通常の診療情報提供のみならず,介護情報,生活環境情報,advance care planning の状況などについても併せて提供することが望ましい▪ これらの情報は他職種の協力を得て事前に情報を取得し整理しておくことが必要である. -
在宅医療を受けていた患者の救急診療と死亡診断
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ 在宅医療を受けている患者の急変時に重要なことは,主治医と常に連絡がとれる体制を構築すること,advance care planning(ACP)を意識して普段から患者・家族がどのようなケアを望むか十分に話し合っておくことである. -
在宅医療におけるアドバンス・ケア・プランニング
122巻5号(2018);View Description Hide Description▪ みずからが望む人生の最終段階における医療・ケアについて,患者自身が前もって考え,医療・ケアチームなどと繰り返し話し合い,共有する取り組みを「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼ぶ.▪ 在宅医療を受けている患者は基本的にACP の対象者である.代理意思決定者を含む家族や在宅医療に関わる多職種とコミュニケーションを行うことが重要である. - 座談会
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連載
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未来は明るい!明日を担う女性医師の活躍:第6回 活躍する女性医師をサポートする上司に聞く/連載「未来は明るい!明日を担う女性医師の活躍」を終えるにあたって
122巻5号(2018);View Description Hide Description -
呼吸器内科×○○科で語る!Comorbidity 患者さんの診かた:第15 回 在宅酸素療法中にペースメーカー装着となった患者さん
122巻5号(2018);View Description Hide Description -
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プライマリーケア医のがんの診かた~かかりつけ患者さんのがんと共にたたかうために~:第6回 見落としてはいけない! かかりつけ患者さんのがんを疑う症状・症候 その②
122巻5号(2018);View Description Hide Description
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Book Review
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