内科
Volume 99, Issue 1, 2007
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特集 【メタボリックシンドローム―どう診断し,どう対処するか】
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<Editorial> 診療室におけるメタボリックシンドロームへのアプローチ
99巻1号(2007);View Description Hide Description糖尿病,動脈硬化性疾患のハイリスクグループとして最近大きな問題になっているのが,メタボリックシンドロームである.メタボリックシンドロームの構成因子は,肥満,高血圧,高脂血症,高血糖であるが,その重要性は,それぞれはほんの少しずつの異常値であっても,集積した場合にきわめて大きなリスクとなることである.診療室にメタボリックシンドロームが疑われる患者が受診した際には,指摘された項目がこの中の一つだけであったとしても,メタボリックシンドロームの存在を念頭に置き,他の構成因子についての評価を行い,介入方法を検討することが大切である. -
<Special Article> 動脈硬化性疾患のリスク病態,メタボリックシンドローム―Adipo Do It!への取り組み
99巻1号(2007);View Description Hide Description心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患は,働き盛りの人々を突然襲い,死を免れたとしても大きな障害を残す.現在,世界的な問題となっているのは,飽食,運動不足を背景に,高血糖,高血圧,高脂血症を合併する病態である.各学会で定められた基準異常を二つ以上保有している人があれば,ウエスト測定という明確かつ簡便な方法で内臓脂肪蓄積の可能性を判断し,これを減少させることによって,最終的に動脈硬化性疾患の予防に繋げることを目標とする.同様の精神で,世界基準も統一された.リスクは連続的なので基準値の線引きよりも,個々に保健指導が有効か否かを判断する総合的な臨床力が問われる.もっとも重要なことは,飽食,運動不足から内臓脂肪蓄積,検査異常を経て,心筋梗塞や脳卒中など生命に関わる疾患まで繋がる病態という科学的な説明を行い,自発的なライフスタイルの変革をもたらすことである. -
<Special Article> 糖尿病リスクとしてのメタボリックシンドローム
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionメタボリックシンドローム症例では,糖尿病発症のリスクが 3~7倍高くなる.メタボリックシンドローム症例の心血管疾患の管理には,空腹時血糖より食後血糖を重視すべきである.メタボリックシンドローム診断基準に,インスリン抵抗性を組み入れるかどうかを検討する必要がある.メタボリックシンドローム症例において,糖尿病の新規発症,大血管障害の発症をエンドポイントに設定した前向き臨床研究を行うことが必要である. -
《メタボリックシンドロームの病態と診断》 高脂血症
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionメタボリックシンドロームは,エネルギーバランスの破綻を介し,内臓肥満とインスリン抵抗性を上流病態として,動脈硬化リスクの重積することにより動脈硬化性疾患を発症,進展する.その包括的な管理により動脈硬化症,ならびに糖尿病を予防することが目標であるが,高脂血症はその重要な管理項目である.日本の診断基準における高脂血症の項目は,TG≧150 mg/dl or 治療中,HDL<40 mg/dl or 治療中 のいずれか,または両方である.通常の動脈硬化症診療ガイドライン同様,メタボリックシンドロームにおいても,LDLコレステロールを第一の管理目標とすべきである.高 TG 血症の場合,non-HDL コレステロール(TC-HDL コレステロール)が第二の管理目標として考慮される.治療は,食事療法,運動療法による生活習慣の改善が基本となる.薬物療法を開始する場合は,LDL コレステロールの管理についてはスタチン,さらに高 TG 血症,低 HDL 血症についてはフィブラート系薬が考慮される. -
《メタボリックシンドロームの病態と診断》 高血圧
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionメタボリックシンドロームから生じる血圧上昇の機序としてインスリン抵抗性,交感神経系,レニン-アンジオテンシン系,アディポサイトカインの関与が報告されている.食塩感受性や喫煙なども血圧に影響を与えるため,血圧高値はメタボリックシンドロームの構成要素の中でもっとも独立性が高い.血圧高値は,メタボリックシンドロームの構成要素の中でもっとも心血管疾患に関与しており,最重要項目である.診断は外来随時血圧に基づき,130/85 mmHg 以上,もしくは降圧薬内服中ということでなされる.今後は 24時間自由行動下血圧や家庭血圧からの血圧評価も重要になってくるものと思われ,診断基準の策定が望まれる. -
《メタボリックシンドロームの病態と診断》 耐糖能障害/2型糖尿病
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionメタボリックシンドロームにおける耐糖能障害/2型糖尿病は,内臓脂肪蓄積により生じたインスリン抵抗性を膵β細胞が代償できなくなった状態であり,非常に幅の広い領域を含んでいる.さまざまな臨床指標を用いて,インスリン分泌/インスリン抵抗性を推測していく.心血管病のリスクとして食後高血糖をどのように捉えるべきか,メタボリックシンドロームとの異同について検討を要する.現在のメタボリックシンドロームの診断基準に関して議論はあるが,今後育てていくべき概念であろう. -
《メタボリックシンドロームの病態と診断》 肥満/脂肪肝
99巻1号(2007);View Description Hide Description肥満症とは,肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか,臨床的にその合併が予測される場合で,医学的に減量を必要とする病態をいい,疾患単位として取り扱う.内臓脂肪の蓄積は,皮下脂肪の蓄積に比して,糖尿病,高脂血症,高血圧,虚血性心疾患などとの関連がより深いと考えられている.脂肪肝は,インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームと深い関連がある.非アルコール性脂肪肝は,単なる脂肪肝から,非アルコール性脂肪肝炎,線維化,肝硬変,末期肝不全にいたる幅広い病態を呈する.肥満や脂肪肝においては,その病態を把握することが重要である. -
《メタボリックシンドロームの管理の実際》 高脂血症
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionメタボリックシンドロームは脂質代謝異常症を起こしやすい病態にあり,他の危険因子と相まって冠動脈疾患の危険度を増している.脂質代謝異常症治療の目標は,主として動脈硬化性疾患の予防であることを認識させ,血清脂質への注意を喚起し,長期にわたる治療への動機付けが重要である.薬物療法を盲信し,基本となるライフスタイルの改善をないがしろにしてはならない.薬物療法を行うにあたり,食事療法・運動療法および肥満の是正が不可欠である.目先の血清脂質の値だけにとらわれず,影に潜む病態の認識と根本的な治療がきわめて重要である. -
《メタボリックシンドロームの管理の実際》 高血圧
99巻1号(2007);View Description Hide Description内臓脂肪型肥満やインスリン抵抗性と,高血圧,糖・脂質代謝異常などはしばしば合併し,メタボリックシンドロームは動脈硬化性疾患を発症,進展させる.これらの病態の共通基盤となるインスリン抵抗性を除去することを念頭に置き,メタボリックシンドロームの患者においては糖質や脂質の過剰摂取を避け,かつ適度の運動をして体重を減らすことが有効かつ重要な治療となる.男女ともウエスト径 85cm 未満,および標準体重(BMI 22 kg/m 2)を目指すべきだが,3~5kg の減量でも代謝状態はかなりよくなる場合が多い.薬物治療に際しても,インスリン抵抗性を改善し,糖・脂質代謝を悪化させないレニン-アンジオテンシン系抑制薬や Ca 拮抗薬を中心とした降圧治療を行うことが勧告されている. -
《メタボリックシンドロームの管理の実際》 耐糖能異常/糖尿病
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionインスリン抵抗性が根源と考えられる糖・脂質代謝異常症が,動脈硬化症の発症基盤として重要視されるようになり,1999年,世界保健機関(WHO)よりメタボリックシンドロームという統一名称が提唱された.メタボリックシンドロームにみられる耐糖能異常の特徴はインスリン抵抗性と,その結果生じる高血糖である.メタボリックシンドロームの病態基盤であるインスリン抵抗性と食後高血糖が血管内皮細胞傷害を惹起することに加え,高血圧,高脂血症などの危険因子が相加的に作用し,心血管イベントの発症リスクが高まると考えられる.日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準が策定されたが,今後さらなる検討を要する. -
《メタボリックシンドロームの管理の実際》 喫煙
99巻1号(2007);View Description Hide Description喫煙は癌,肺疾患,消化器疾患などと強く関連するだけではなく,冠動脈疾患・脳血管疾患,閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患の独立した強い危険因子でもある.メタボリックシンドロームでは動脈硬化易発症性が強いので,禁煙は重要である.禁煙のための補助療法としてニコチンガム,ニコチンパッチは有効である.禁煙によって,冠動脈疾患の発症リスクは減少する. -
《メタボリックシンドロームの管理の実際》 肥満/脂肪肝
99巻1号(2007);View Description Hide Description最近,脂肪肝がインスリン抵抗性やメタボリックシンドロームの発症メカニズムの一部である可能性が示唆されている.筆者らの検討により,食事療法(カロリー摂取,脂肪摂取量の減少)による軽度の体重減少は主に肝臓の細胞内脂質を改善し,また,運動療法(軽度の運動量の増加)は主に骨格筋の細胞内脂質,インスリン抵抗性を改善することが明らかとなった.そして,これらの変化は,メタボリックシンドロームの改善と強く関連していた.肝臓は,糖代謝のみならず脂質代謝においても大きな役割を担っているため,メタボリックシンドロームの治療標的臓器として大変重要であると考えられる.今後,細胞内脂肪蓄積とメタボリックシンドロームに関するさらなる研究が望まれる. -
《知っておくべき代謝疾患に関するエビデンス》 高脂血症
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionこれまで,わが国において,五つの大規模臨床試験が行われている。早期に行われた三つの試験は,デザインにおいてやや問題があり,高脂血症治療により心血管系疾患が減少することは示唆されたが,証明するまでにはいたらなかった。しかし,最近発表になった MEGA Study および JELIS においては,冠動脈疾患が対照群に比べて有意に減少することが証明されている。したがって,冠動脈疾患が少ないわが国においても,高脂血症を治療すべきであるというエビデンスが得られたということができる。 -
《知っておくべき代謝疾患に関するエビデンス》 高血圧
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionメタボリックシンドロームの主要構成因子である高血圧に対する薬物療法において,メタボリックシンドロームの重要な共通背景因子であるインスリン抵抗性に配慮した降圧薬を選択することが重要となる.高血圧に対する多くの大規模臨床試験が行われている.インスリン抵抗性改善は,糖尿病の新規発症抑制について VALUE,SCOPE,LIFE,CAPPP,HOPE,INSIGHT,ASCOT-BPLA にて,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),アンジオテンシン変換酵素( ACE) 阻害薬,長時間作用型 Ca 拮抗薬において明らかにされている.降圧薬の選択では,メタボリックシンドロームを合併するものは当然であるが,腹部肥満などのリスクを有するものでは,インスリン抵抗性を改善する降圧薬が勧められる. -
《知っておくべき代謝疾患に関するエビデンス》 耐糖能異常
99巻1号(2007);View Description Hide Description糖尿病の発症予防を目指して,耐糖能異常(IGT)や空腹時高血糖(IFG)を対象としたさまざまな大規模介入研究が立案・実施されるようになった.アジア人では,ブドウ糖負荷試験(OGTT)2 時間後血糖値のみが上昇する IGT の割合が,IFG より高い.IGT は,心血管疾患による死亡の危険因子であり,昨今,重要な介入対象として注目されている.大規模臨床試験の DPS と DPP は,糖尿病の発症予防に,生活習慣への介入がきわめて効果的であることを明確に示した.最近 DREAM trial が,チアゾリジン誘導体(TZD)による介入も糖尿病の発症予防に有効であることを示した.薬剤による介入を,糖尿病発症予防における第一選択の一つとすべきか否かについては,慎重な議論が必要である. -
《知っておくべき代謝疾患に関するエビデンス》 糖尿病
99巻1号(2007);View Description Hide DescriptionPPARγアゴニストの pioglitazone を用いた大規模試験 PROactive が,2005年に発表された.PROactive は,血糖降下薬が大血管イベントの発症を抑制できることを前向きに証明したはじめての試験で,2型糖尿病のハイリスク患者において,pioglitazone が「総死亡+非致死性心筋梗塞+脳卒中」の発症を減少させることが明らかになった.また,pioglitazone がインスリン治療への移行を減少させることも示された.PROactive でもっとも注目すべきは,糖尿病,高血圧,高脂血症に対して最適の治療を行ったうえで,唯一 pioglitazone を使用するか否かの一点のみを両群で変えて行った比較試験で,客観性が高く,もっとも信頼できるハードエンドポイントに差が出たということであろう. -
《トピックス》 J-DOIT
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionわが国の糖尿病とその合併症の増加をふまえ,厚生労働省が立ち上げたのが糖尿病予防のための戦略研究(J-DOIT)である.J-DOIT 1 は糖尿病発症予防,J-DOIT 2 は糖尿病治療中断予防,J-DOIT 3 は糖尿病合併症予防を目指す研究である.J-DOIT 3 は心血管イベントの高リスクの 2型糖尿病 3 , 000人を従来療法群と強化療法群に分け,強化療法群では危険因子をエビデンスのある薬剤を用い厳格な目標に向けコントロールすることにより,心血管イベントをはじめとした合併症抑制をねらう.合併症抑制に向けた糖尿病の治療のエビデンス確立につながる研究結果が期待される. -
《トピックス》 糖尿病とうつ病
99巻1号(2007);View Description Hide Description糖尿病患者には高い頻度で うつ病が生じる.成人患者における頻度は約 15% であり,一般人口有病率の 3倍となる.うつ病は,血糖コントロールと密接に関係している.うつ病の主要症状は,抑うつ気分,広範な興味・関心の喪失などである.うつ病のスクリーニングにはいくつかの方法があり,診断は操作的方法によって行われる.うつ病の初期治療は,精神科以外の医療者が行うことができる.治療方法は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による薬物療法と,支持的精神療法が中心になる.この方法によって うつ病が改善しないとき,自殺の危険が強いときなどには,精神科医への紹介が必要となる. -
《トピックス》 アディポサイトカインと腫瘍
99巻1号(2007);View Description Hide Description肥満者では,脂肪細胞から分泌されるさまざまなアディポサイトカインが異常分泌しており,肥満に伴う多様な合併症とともに,腫瘍発症にも関与する可能性が考えられる.肥満者では,レプチン抵抗性が生じ高レプチン血症が持続するが,レプチンは摂食・エネルギー調節作用のみならず,神経内分泌調節,血球系・免疫系調節,炎症亢進作用や血管内皮細胞増殖の促進作用などがあり,発癌に関与する可能性が報告されている.反対にアディポネクチンは,インスリン感受性増強作用,抗動脈硬化作用,抗炎症作用を有し,乳癌や子宮内膜癌,さらには肝発癌を抑制する可能性が示されてきた.最近,肥満病態の脂肪組織中においてマクロファージの浸潤を伴う慢性炎症が高度に認められることが明らかになり,肥満-炎症-癌免疫系の関連が注目されている. -
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診断力をみがく イメージトレーニング
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診療 controversy― medical decision making のために
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Sjögren 症候群に対するステロイド療法の妥当性は?:積極的な立場から
99巻1号(2007);View Description Hide DescriptionSjögren 症候群は,全身の外分泌腺機能低下による乾燥症状を特徴とする,原因不明の自己免疫疾患である.CD 4 陽性 T 細胞や B 細胞が病態形成に深く関わっていることを考えると,ステロイド療法による改善が期待できる.実際,ステロイド療法により涙腺・唾液腺機能や組織所見が改善したとする報告が複数存在する.外分泌腺の再生能を考慮すると,とくに腺破壊が軽度である症例に有効である可能性が高く,ステロイド療法は今後積極的に検討されるべき治療法である. -
Sjögren 症候群に対するステロイド療法の妥当性は?:慎重な立場から
99巻1号(2007);View Description Hide Description自己免疫性慢性炎症性疾患である Sjögren 症候群の病態からすれば,抗炎症作用および免疫抑制作用をもつ副腎皮質ステロイド薬は治療薬となりうる.しかしながら,乾燥症状をはじめとしてその病態は一様でなく,すべての症例や合併症が画一的にステロイド療法の適応と考えることは妥当ではない.他の膠原病と異なり,Sjögren 症候群では依然として投薬量や治療期間があいまいな病態が多いという問題が存在する.治療対象となる病変がステロイド療法に反応すると考えられる場合に,可及的少量かつ短期間使用するという原則は守られるべきである.本症候群に対し,単に自己免疫疾患という理由で安易にステロイド治療を行うことは慎むべきであり,病態,利点および欠点,予後などを十分考慮して使用すべきである.
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目でみるバイオサイエンス
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目でみる症例
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コンサルテーション・スキル
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第 1 回 コンサルテーション・スキルとは何か?
99巻1号(2007);View Description Hide Descriptionコンサルテーション・スキルとは,単に臨床医としてではない,「コンサルタント」として振る舞うスキルである.コミュニケーション・スキルは重要である.しかし,もっとも必要なのは,あなたのプロとしての専門性である.
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ドイツ医学導入とわが国の医学教育
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View Spot
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TOPICS
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臨床ノート:症例から学ぶピットフォール
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Research 最前線
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Photo Report
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症例
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ペースメーカー症候群による右心不全を合併した intravascular large B-cell lymphoma の 1 例(剖検所見における検討)
99巻1号(2007);View Description Hide Description -
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Book Review
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Clinical Problem-Solving Collection Ⅱ from The New England Journal of Medicine
99巻1号(2007);View Description Hide Description -
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