整形外科
Volume 70, Issue 7, 2019
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論説
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経験と考察
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臨床室
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臨床所見と経時的なMRI 画像変化により確定診断にいたった脊髄梗塞の1 例
70巻7号(2019);View Description Hide Description脊髄梗塞は急性発症する両下肢麻痺の原因となるが,発生頻度は低く,病態に関しては不明な点が多い1).発生頻度は脳梗塞発症の約1%程度であり2),そのうち二次的に発生した脊髄虚血の症例を除いた特発性脊髄梗塞は28~74%であるといわれている3~5).過去の報告では脊髄梗塞の原因として大動脈解離,大血管手術の合併症,アテローム性動脈硬化,心原性塞栓,凝固異常,脊椎疾患,外傷性,薬剤性など多数の原因があげられているが6),大血管疾患による二次的発生以外の原因は特定することが困難ともいわれている1).本稿では大血管疾患による二次的発生の脊髄梗塞を除いたものを特発性脊髄梗塞と定義する.今回われわれは臨床所見とMRI の経時的画像変化により特発性脊髄梗塞の診断にいたった症例を提示し,脊髄梗塞の診断に関して文献的考察を加えて報告する. -
有痛性変形性肩鎖関節症に対して鏡視下鎖骨遠位端切除術を行った1 例
70巻7号(2019);View Description Hide Description有痛性変形性肩鎖関節症は比較的まれな疾患であり,治療法は保存的治療無効時には鎖骨遠位端切除術とされている.われわれは,鏡視下に本術式を施行した1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する. -
母指中手骨基部骨端線損傷に対して鋼線連結型創外固定器を用いて治療した1 例
70巻7号(2019);View Description Hide Description一般的に小児の骨端線損傷を伴う指節骨骨折でも,自家矯正能力があることから保存的治療を行うことが多い1).母指中手骨骨折においても,O’Brien 分類でA,B型では保存的治療が行われるが,整復位保持のために手関節含めギプス固定が必要となる.また,C,D 型では正確な整復位が必要であること,不安定であり経皮的鋼線固定が必要であることがいわれている1).しかし,骨端線損傷を伴ったこれらの骨折に対し鋼線固定を行う場合,鋼線が骨端線を貫く必要があり,骨端線損傷により骨端線早期閉鎖と成長障害を起こす危険性を伴う.そこでわれわれは,母指中手骨基部骨端線損傷に対して,骨端線を温存し整復位保持と経皮的に強固な固定が得られ,早期可動域訓練が可能である自由度が高い鋼線連結型創外固定器JuNction を用いて治療を行い良好な経過を得たので報告する. -
大腿骨外側顆osteonecrosis-like syndrome に対して骨移植術を施行した2 例
70巻7号(2019);View Description Hide Description大腿骨内側顆骨壊死(osteonecrosis:ON)は周知された疾患であるが,大腿骨外側顆ではまれである.大腿骨外側顆のON は,2008 年にOhdera ら1)が報告し,女性に多いわけではなく,骨粗鬆症のない中年にも起こり,疼痛も強くなく,夜間痛が多いわけでもないことなどから,内側顆ON とは異なる病態のようであり,外反変形が強いと進行し人工膝単顆置換術(UKA)になりやすいとしている.われわれは,大腿骨外側顆のosteonecrosis-like syndrome に対して骨移植術を施行した2 例を経験したので報告する. -
膝蓋骨脱臼術後の再建内側膝蓋大腿靱帯の過緊張により内側膝蓋大腿靱帯再々建術を要した1 例
70巻7号(2019);View Description Hide Description内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)再建術において,特に再建靱帯の大腿骨固定位置は重要である.われわれは,大腿骨固定位置が遠位であったことにより再建靱帯の過緊張を引き起こしMPFL 再々建術を要した症例を経験したので報告する. -
ターニケットを使用した関節鏡手術により脛骨・腓骨神経麻痺を生じた小児の1 例
70巻7号(2019);View Description Hide Description四肢の手術において無血野を確保することは非常に重要であり,そのために整形外科においてはターニケットが使用されることが多い.その際の合併症として神経麻痺がある.Middleton ら1)によれば,その発生頻度は上肢では1/5,000 回(0.02%),下肢では1/13,000 回(0.008%)と非常にまれとされる.また,その多くが長時間の使用により障害をきたしている.われわれは,約1 時間での使用により完全脛骨・腓骨神経麻痺を生じた症例を経験したので報告する. -
顔面粉砕開放骨折にIlizarov 創外固定,大腿骨粉砕開放骨折にモノチューブ創外固定とMasquelet法で治療した全身多発骨折の1 例
70巻7号(2019);View Description Hide Description顔面粉砕開放骨折に対しIlizarov 創外固定法を用い,大腿骨粉砕開放骨折に対しモノチューブ創外固定器とMasquelet 法を併用して治療した全身多発骨折の1 例を経験したため報告する.
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創意と工夫
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連載
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最新原著レビュー:踵腓靱帯再建術時の初期固定張力が足関節キネマティクス・制動性・再建靱帯張力に与える影響
70巻7号(2019);View Description Hide Description目 的:足関節外側靱帯再建術の初期固定張力が足関節のバイオメカニクスに及ぼす影響は明らかにされていない.本研究の目的は,踵腓靱帯再建術の初期固定張力が足関節キネマティクス,制動性,再建靱帯にかかる張力に及ぼす影響を検討することである. 対象および方法:未固定凍結人体標本の足関節(n=12)を用いて,正常,踵腓靱帯切離,踵腓靱帯再建(初期固定張力10 N,30 N,50 N,70 N)の各条件で6 自由度ロボットシステムによる関節力学試験を行った.底屈30°から背屈15°までの他動底背屈運動と背屈15°,0°,底屈15°,底屈30°における前後方60 N,内がえし外がえし1.7 Nm,内外旋1.7Nm の負荷試験を行い,足関節の三次元的運動と再建靱帯にかかる張力を記録した. 結 果:初期固定張力30 N 以上の再建術では,正常足関節と比較して,踵骨のキネマティクスは有意に後方,外がえし変位を認めた.また初期固定張力の上昇に伴い,再建靱帯張力は増大した. 考 察:初期固定張力30 N 以上の踵腓靱帯再建術では,正常と異なるキネマティクス,過制動,過剰な再建靱帯張力が認められた.本研究により,生理的足関節を模倣するためには,過剰な初期固定張力は避けるべきと考えられた. -
最新原著レビュー:腰椎変性すべりを伴う腰部脊柱管狭窄症に対する低侵襲脊椎除圧術は安定性を維持し脊椎固定術の必要性を回避する可能性がある
70巻7号(2019);View Description Hide Description背 景:腰椎変性すべり症に対する手術的治療は,主に不安定性進行に伴う症状悪化から固定術の併用を推奨している.しかしながら,われわれの山村地域住民における15 年の縦断コホート研究では,すべりの有病率は年齢とともに増加するが,そのすべりの進行程度は経年的に減少することを報告した.また,日常診療で経験する変性すべりは,Meyerding分類gradeⅡまでであり,それ以上のすべりを経験することはない.これらのことから,すべりはある時期に進行するが,その時期を過ぎると変性変化とともに安定化に向かうものと考えられる.本研究では,不安定性を有する腰椎変性すべり症に対する内視鏡下除圧術の臨床成績を検討した. 対象および方法:対象は,2003~2010 年に10°以上の変性側弯を除くL3 またはL4 の変性すべりに伴う腰部脊柱管狭窄症で,手術的治療を要した全例に内視鏡下椎弓形成術(MEL)を施行した302(男126,女176)例(年齢68.9 歳)であった.症例は,術前単純X 線側面像で%slip が20%以上かつ前後屈で5%以上または後方開大5°以上の定義で不安定性の有無に分けられ,術後2 年以上の追跡調査が行われた.調査項目は,日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOA スコア)[29 点満点],JOA 改善率,腰痛visualanalogue scale(VAS),成績不良例であり,不安定性の有無別に統計学的検討を行った(p<0.05). 結 果:追跡調査は245(男102,女143)例(平均年齢68.1 歳)に可能であり,その追跡期間は平均43.0 ヵ月であった.%slip は全体で術前17.1%,調査時17.7%であり,不安定性群でもすべりの進行はなかった(p>0.05).対象例全体のJOA 改善率は,64.8%であり,不安定性の有無別で有意差はなかった(p>0.05).また,不安定性あり群では,37%で経年的に椎間高の減少とともにすべりの安定化がみられた.全体に下肢痛は改善していたが,不安定性あり群では腰痛が有意に遺残していた(p>0.05). 結 論:不安定性を有する腰椎変性すべり症に対するMEL の中長期臨床成績は,全体で良好に保たれ,不安定性腰椎は経年的に安定化していた.しかし,腰痛遺残に腰椎不安定性が関与していた.
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