Volume 208,
Issue 5,
2004
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1月第5土曜特集【分子標的薬】
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医学のあゆみ 208巻5号, 243-243 (2004);
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■癌・白血病
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医学のあゆみ 208巻5号, 245-250 (2004);
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トラスツズマブ(ハーセプチン)は,世界ではじめて固形腫瘍に対して臨床応用された分子標的治療薬である.トラスツズマブは乳癌の予後不良因子として知られるHER2受容体に特異的に結合することによって効果を発揮し,標的分子であるHER2の発現程度と治療効果には明確な相関が示されている.トラスツズマブは他の化学療法剤と併用することにより転移性乳癌患者の治療において高い奏効率と生存期間の延長が報告されており,HER2陽性の転移性乳癌における1st lineの治療薬とみなされるようになってきたが,術後補助化学療法とし
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医学のあゆみ 208巻5号, 251-258 (2004);
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メシル酸イマチニブは,Abl,c—kit,血小板増殖因子受容体(PDGF—R)などのチロシンキナーゼ蛋白のシグナル伝達を選択的に阻害する薬剤である.多能性造血幹細胞の腫瘍化を特徴とする血液がんの慢性骨髄性白血病(CML)の病因は第9番と第22染色体の相互転座でBcr—Abl融合遺伝子(Ph染色体)が形成され,細胞増殖を惹起することにあるといわれる.このBcr—Ablチロシンキナーゼの自己リン酸化をイマチニブは阻害する.未治療慢性期CMLでは400 mg/day経口連日投与で,95.3%の血液学的完全寛解,
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医学のあゆみ 208巻5号, 259-263 (2004);
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Rituximab(リツキシマブ)は抗CD20抗体で,ほとんどのB細胞性悪性リンパ腫の細胞膜表面に発現するCD20に結合して効果を発揮する薬剤である.Rituximab単独療法では,再発期の低悪性度リンパ腫の約半数に対して効果がみられる.また,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象とした臨床試験の結果,rituximab併用CHOP療法は,これまで標準治療とされてきたCHOP療法に勝ることが示されている.このように,rituximabはさまざまな場面での応用が期待されており,今後,悪性リンパ腫の多数を占める
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医学のあゆみ 208巻5号, 264-270 (2004);
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近年,クロマチン研究,転写因子研究は,アセチル化・脱アセチル化機構の解明により新しい局面を迎えた.白血病化機構においても,成因となる転写因子群遺伝子融合産物の機能をアセチル化・脱アセチル化メカニズムを通じて理解することが可能となりつつある.これら分子機構の解明の一方,ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤により,あらたな分子標的によるtranscription therapyという概念が白血病治療において開発されようとしている.HDAC阻害剤はアメリカを中心に精力的な臨床試験の段階にあり,単剤としては
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医学のあゆみ 208巻5号, 271-277 (2004);
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All—trans retinoic acid(ATRA)により急性前骨髄球性白血病(APL)は約90%の寛解を得ることができたが,治療前の白血球数(APL数)により層別化し,微小残存病変としてPML—RAR(mRNA)を指標する方向にある.化学療法との併用の有用性やCR後療法としての有用性も報告されている.再発難治APLに対してはAm80と亜砒酸の有効性が注目されている.Am80は分化誘導能が強く化学的にも安定しており,臨床研究においても再発APLにおいて約60%の寛解率をもつ.寛解導入や地固め・維持療
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■内分泌
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医学のあゆみ 208巻5号, 279-284 (2004);
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アルドステロンは血圧を上昇させるのみならず,心臓や腎に作用し臓器障害を引き起こすことが,動物実験や臨床研究から明らかにされてきた.近年開発された選択的アルドステロンブロッカーであるエプレレノンは,従来の降圧薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体ブロッカー,Ca拮抗薬と同等の降圧効果を有し,大規模臨床研究から重症心不全に対する有用性が確立され,さらに高血圧症に伴う心肥大や腎機能障害の予防に有効であることが報告されている.エプレレノンは,降圧作用以外に血管内皮機能の改善,抗酸化スト
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医学のあゆみ 208巻5号, 285-290 (2004);
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細胞外カルシウムイオン(Ca2+)の感知機構の本体であるカルシウム受容体(CaR)に作用し,細胞外Ca2+に対する感受性をアロステリックに増強する化合物をcalcimimeticsと称する.Calcimimeticsは副甲状腺CaRに作用し,副甲状腺ホルモン(PTH)分泌を強力に抑制する薬理作用を有するため,過剰なPTH分泌亢進状態に特徴づけられた疾患である原発性ならびに慢性腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として開発されている.慢性腎不全ラットを用いた基礎試験ではPTH分泌抑制,副甲状腺過形成
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医学のあゆみ 208巻5号, 291-296 (2004);
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成長ホルモン(GH)とGH結合蛋白(GHBP,GH受容体の細胞外ドメイン)の結合複合体の結晶をX線解析した結果,GHの1分子とGHBPの2分子が結合するが,その結合はランダムに起こるのではなく,まずGH分子の三次構造上サイト1とよばれる部位がひとつのGHBPと結合し,ついでGH分子のサイト2とよばれる部位がもうひとつ別のGHBPと結合することが明らかとなった.同様のことは細胞表面に発現しているGH受容体(GHR)にも起こり,このGHRの二量体化がGH情報を細胞に伝える最初のステップである.GHR拮抗薬を開
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医学のあゆみ 208巻5号, 297-301 (2004);
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甲状腺ホルモン作用は多岐にわたる.甲状腺機能低下症ではすべての作用が不足し,甲状腺ホルモン投与によりこれらが解消される.一方,甲状腺機能低下症のない患者に甲状腺ホルモン作用を利用した治療が試みられている.たとえば,高脂血症や肥満,心不全に対する治療,甲状腺腫瘍や癌に対するTSH抑制療法である.しかし,このような患者に十分な甲状腺ホルモンを投与すると目的以外のホルモン作用が過剰となる.そこで,目的の甲状腺ホルモン作用のみを有するアゴニストの開発研究が進んでいる.そのようなアゴニストの作用機序として,1臓器
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■代謝
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医学のあゆみ 208巻5号, 302-306 (2004);
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GIPは,食物摂取により消化管から分泌され,糖濃度依存的に膵からインスリンを分泌させるホルモンである.GIPの機能を確かめるためにGIP受容体欠損マウスを作製し解析を行ったところ,軽い耐糖能異常はみられたが,意外なことに高脂肪食を与えてもこのマウスはまったく肥満しなかった.この作用を確認するために,肥満モデルであるob/obマウスのGIP受容体を欠損させると,ob/obマウスと比べ体重が約23%抑制され,脂肪量も約27%減少し,空腹時血糖値と耐糖能も改善していた.そこで今度は,高脂肪食を与えた野生型マウス
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医学のあゆみ 208巻5号, 307-312 (2004);
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リガンド応答性の核内受容体型転写因子であるPPARγは脂肪組織にもっとも多く発現しており,脂肪蓄積の主調節因子である.その活性の部分的な抑制は脂肪細胞の小型化をもたらし,インスリン感受性ホルモンであるアディポネクチンを増加させ,インスリン抵抗性惹起分子であるTNF—α,レジスチン,FFAを低下させてインスリン抵抗性・生活習慣病を改善させる.普遍的に発現しているPPARδの機能は長らく不明であったが,その活性化は骨格筋などで脂肪酸燃焼促進に作用し,抗肥満効果を発揮しうることが明らかとなってきた.肝に多く発現
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医学のあゆみ 208巻5号, 313-317 (2004);
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AMPキナーゼは,細胞内エネルギー量の低下(AMP/ATP比の上昇)を感知して活性化するセリン・スレオニンリン酸化酵素である.骨格筋収縮や低酸素などのさまざまなストレス刺激がAMPキナーゼを活性化することは古くから知られていたが,インスリン感受性増強作用を有するホルモンであるレプチンやアディポネクチン,さらには抗糖尿病薬として使用されているチアゾリジン誘導体やメトホルミンまでもが本酵素を活性化することが最近明らかとなった.AMPキナーゼの活性化は骨格筋や肝での脂肪酸β酸化を促進し,細胞内脂肪含量を減少させ
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医学のあゆみ 208巻5号, 318-322 (2004);
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β3アドレナリン受容体(β3—AR)は,白色脂肪組織と褐色脂肪組織にのみ存在するやせるための受容体である.この受容体のアゴニスト(β3アゴニスト)は白色脂肪組織の脂肪分解と褐色脂肪組織の熱産生に貢献し,抗肥満薬になると期待されている.とくに,本剤の投与は褐色脂肪組織の熱産生に貢献する脱共役蛋白質1(uncoupling protein 1:UCP1)を活性化するだけでなく,白色脂肪組織や骨格筋にもUCP1を出現させ,β3—ARをup—regulationするため,長期にわたる投与は強い効果を期待できそうで
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医学のあゆみ 208巻5号, 323-329 (2004);
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動脈硬化症の危険因子として高コレステロール血症をはじめとする高脂血症が重要であることは論を待たない.初期病変を担う脂肪斑には脂質を貯め込んだマクロファージが泡沫細胞として集簇しており,動脈硬化,とくに粥状硬化は脂質代謝の病態であるという認識が強い.一方,Russel Rossのresponse to injury説をはじめとして,炎症細胞やサイトカインの関与や動脈硬化巣細胞での種々の炎症関連遺伝子の活性化など,動脈硬化症を慢性炎症疾患としてとらえられる側面もある.核内受容体LXRは酸化ステロール受容体とし
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■免疫
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医学のあゆみ 208巻5号, 330-335 (2004);
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関節リウマチやCastleman病などの難治性病態におけるinterleukin—6(IL—6)の役割が明らかになってきたことから,IL—6に対する分子標的治療が考案された.遺伝子組換え技術によりヒトでの抗原性を減らしたヒト化抗IL—6受容体抗体,MRA,はマウス抗体とは異なり反復使用を行っても中和抗体が出現しにくく効果が減弱しない.MRAは,関節リウマチやCastleman病,Crohn病などの慢性炎症症状を著明に改善することが臨床試験で明らかになってきた.現在,国内外を問わず幅広く臨床試験が行われてい
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医学のあゆみ 208巻5号, 336-342 (2004);
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分子生物学の進歩の結果,関節リウマチ(RA)のびらん性関節炎をはじめとした種々の炎症性病態に,代表的な炎症性サイトカインであるtumor necrosis facto(r TNF)—αが深く関与していることが明らかとなり,これが20世紀末にRAに対する抗TNF—α抗体療法として結実した.この画期的治療の登場により,RAの治療目標が関節痛の緩和や機能低下の進行遅延から関節炎の寛解へと大きく方向転換している.また,難治性の炎症性腸疾患や脊椎関節炎,血管炎などを含めた多くの膠原病・リウマチ性疾患やその他の慢性炎
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医学のあゆみ 208巻5号, 343-347 (2004);
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骨ホメオスタシスは骨形成と骨吸収のバランスの元に保たれており,骨粗鬆症は相対的に吸収が形成を上回った状態である.骨吸収をつかさどる中心的な細胞である破骨細胞の分化・活性化には,TNFファミリーであるRANKLが重要な役割を果たしている.本稿では,RANKLをターゲットにした新しい骨粗鬆症治療法について紹介したい.
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医学のあゆみ 208巻5号, 349-354 (2004);
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全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする全身性自己免疫疾患の発症過程には,免疫寛容の破綻に伴う自己反応性T細胞の活性化が関与する.B細胞はT細胞に対する抗原提示細胞として,また,T細胞依存性に自己抗体を産生する細胞として病態形成に関与する.CD20はB細胞特異的抗原であり,リツキシマブを用いたCD20抗体療法はB細胞リンパ腫を対象に保険収載される.欧米では造血系自己免疫疾患,SLEや関節リウマチ(RA)に対してもリツキシマブが試用され,認容性と効果が報告されている.著者らは難治性SLEに対してリツキ
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医学のあゆみ 208巻5号, 355-361 (2004);
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現在までに多くの補助刺激分子が同定され,これらの分子が,いつ,どこで,どのようなときに,どの細胞と相互作用し,その結果,どのような免疫反応が起こるかについて,しだいに明らかになってきた.補助刺激分子はキラーT細胞やヘルパーT細胞などの免疫エフェクターT細胞だけでなく,制御性T細胞の分化・活性化にも関与していることも,近年明らかにされつつある.また補助刺激分子は,癌,自己免疫疾患,移植,アレルギー性疾患などのさまざまな疾患の発症と病態の進行にかかわっているため,これらの分子を効果的に制御することで,免疫疾患
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医学のあゆみ 208巻5号, 363-366 (2004);
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関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は関節滑膜を病変の主座とする自己免疫性疾患である.近年の分子生物学の進歩により,TNF(tumor necrosis factor)—αの活性を阻害するモノクローナル抗体やリコンビナント受容体蛋白が開発された.TNF—αを分子標的にした,これらの生物学的製剤はRAに対して優れた臨床効果を発揮することが明らかにされた.TNF—αの細胞内シグナル伝達にはNF—κBやMAPKカスケードが重要である.NF—κBやMAPKカスケードは免疫疾患のみならず,
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■感染症
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医学のあゆみ 208巻5号, 367-371 (2004);
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インフルエンザは毎年のように流行がみられるウイルス感染症である.従来,予防にワクチンが用いられてきたがその効果は完全ではなく,抗インフルエンザ薬の開発が望まれていた.多くの研究者の努力の結果,今世紀に入りインフルエンザウイルスの複製に必須の酵素ノイラミニダーゼに対する阻害薬zanamivir,oseltamivirが開発され,上市されるに至った.ノイラミニダーゼを標的にした治療薬の登場で,インフルエンザ感染症は人間の力でコントロールできる時代になったと考えられる.
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■循環器
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医学のあゆみ 208巻5号, 372-376 (2004);
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心不全の原因のひとつとして,Ca2+ハンドリング異常が注目されている.とくにCa2+ATPase(SERCA)とリアノジン受容体(RyR)の異常を補正することは,心不全治療の新しいターゲットとなりうると期待されている.SERCAにおいてはその機能と心機能はよく相関することから,SERCAの過剰発現やSERCAの抑制蛋白であるホスホランバンの抑制などが試みられている.RyRに関しては最近,β遮断薬が心不全に奏効するメカニズムとして,PKAを介したRyRの過リン酸化を抑制するためであることが報告された.さらに
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医学のあゆみ 208巻5号, 377-381 (2004);
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エンドセリン(ET)は強力な血管収縮作用と同時に,心血管系のさまざまな細胞に対して直接,または他の成長因子や活性物質と協調して間接的に増殖作用を示す.これらのことから,ET—1は高血圧や肺高血圧,血管リモデリング(血管の狭窄や動脈硬化),急性・慢性腎不全,慢性心不全などの各種慢性循環器疾患と深いかかわりをもつことが示唆されてきた.ET—1が慢性循環器疾患の病因または悪化因子として働いているなら,その作用を遮断する薬物は治療薬となりうることが予想され,ETの生合成阻害薬や受容体拮抗薬の開発に多くの注目が注が
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医学のあゆみ 208巻5号, 382-387 (2004);
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Na+/Ca2+交換体は,その名のごとくNa+とCa2+を交換輸送する膜トランスポーターである.この輸送体は通常,細胞膜を介するNa+の濃度勾配に従ってCa2+を細胞外へ汲み出す役割を担っているが,細胞内にNa+が蓄積する病態時には,逆に細胞外からCa2+を流入させる.以前から,このCa2+流入が種々臓器の虚血再灌流障害にかかわることが推定されている.最近,Na+/Ca2+交換体を特異的に阻害するNCX阻害薬が開発され,またNCX遺伝子改変マウスを用いた研究が可能になり,この輸送体が虚血再灌流障害時のCa
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医学のあゆみ 208巻5号, 388-392 (2004);
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ATP感受性K+(KATP)チャネルは,膜2回貫通型の内向き整流K+チャネルメンバーであるKir6.1あるいはKir6.2の四量体からなるポア部分と,その調節蛋白であるスルホニルウレア受容体が合わさり機能する.Kir6.1あるいはKir6.2のノックアウトマウスの機能解析から,心筋細胞および血管平滑筋細胞の細胞膜に存在するKATPチャネルのポア成分とその病態生理学的役割が明らかとなった.心筋細胞膜のKATPチャネルはKir6.2とSUR2Aから構成され,その活性化は虚血心筋保護に重要な役割を果たす.ミトコ
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医学のあゆみ 208巻5号, 393-395 (2004);
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血栓塞栓症に対する有効な治療法の開発は高齢化社会の到来でますます重要となってきている.このうち動脈血栓は血小板凝集が中心的役割を果たすが,これに対しては有効な薬剤が開発され,一定の効果を収めている.ところが,フィブリン形成が中心的役割を果たす静脈血栓に関しては,ワーファリン,ヘパリンほか古典的薬剤がなおかつ主流で,第二世代の抗凝固剤の開発が待ち望まれてきていた.最近になりいくつかの抗トロンビン剤,そして抗Xa剤が開発され,臨床応用に入りつつある.このうち,抗Xa剤は,出血傾向が軽いこと,有効にトロンビン生
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医学のあゆみ 208巻5号, 396-400 (2004);
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従来,糖尿病,高脂血症,高血圧の合併症である動脈硬化症に対しては,壊死層の切除などにより症状の改善が行われてきた.近年,癌研究の進展に伴い血管新生,脈管形成の研究が盛んに行われるようになり,その形成機序が明らかになりつつある.最近ではこの発生機序を利用することで血管を再生することにより,四肢末端の壊死層の改善や切断個所の縮小化を目的とする治療が行われるようになってきた.まさに,再生医療の第一歩が踏み出されたわけである.本稿では,血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell:EP
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■呼吸器
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医学のあゆみ 208巻5号, 401-406 (2004);
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抗腫瘍薬としてすでに臨床使用されている分子標的治療薬のなかで,EGF受容体チロシンキナーゼ(EGFR—TKI)やPDGF受容体チロシンキナーゼ(PDGFR—TKI)など,肺線維症治療に有用である可能性がある薬剤について検討が進められている.In vitroでこれらの薬剤は,それぞれのリガンド刺激による線維芽細胞増殖を抑制した.また,両薬剤はマウスモデルでブレオマイシンによる肺線維化を著明に抑制した.一方で,EGFR—TKIでは肺非小細胞癌に対する臨床使用において,副作用として急性肺傷害や間質性肺炎が認めら
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医学のあゆみ 208巻5号, 408-411 (2004);
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Transforming growth factor—β(TGF—β)は多彩な機能をもつサイトカインとして知られており,肺においても喘息の難治化要因である気道のリモデリング病変,肺線維症や肺高血圧症など,多くの疾患に関与している.TGF—βの主要なシグナル伝達経路はSmad経路であり,Smad分子がTGF—β受容体によって活性化され,核内に移行し,さまざまな転写因子,転写調節因子と相互作用する結果,標的遺伝子の活性化・不活性化が決定される.最近,喘息の気道リモデリングにおいて,Smad経路が気道リモデリン
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■消化器
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医学のあゆみ 208巻5号, 413-416 (2004);
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ポリエチレングリコール(PEG)を結合させることによってインターフェロン(IFN)の血中濃度が一定に保たれるようになり,抗ウイルス作用が増強されるのみならず,悪寒・発熱などの副作用が軽減された.IFNが蛋白融解や免疫による除去が低下するため長時間作用することが示され,治療中のC型肝炎ウイルス(HCV)動態の解析から,PEG—IFNによって持続的な抗ウイルス作用が発揮されることが証明された.抗ウイルス作用増強のためには,IFNによって誘導されるRNA—dependent protein kinase,MxA
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医学のあゆみ 208巻5号, 417-422 (2004);
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従来C型肝炎ウイルス(HCV)に対する治療としてインターフェロン(IFN)投与が行われていたが,核酸アナログであるリバビリンの併用により療法の開始後その治療成績は格段に向上した.しかし,リバビリンのHCVに対する作用機序は十分に理解されておらず,IFNとの併用でなぜ成績が向上するかも明らかでない.HCVの細胞内増殖モデルであるレプリコンシステムを用いた解析では,リバビリンに弱いHCV増殖抑制効果があることがわかった.さらに,IFNとリバビリンを併用すると抗ウイルス効果を相乗的に高めることがわかった.今後,
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医学のあゆみ 208巻5号, 423-427 (2004);
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肝が傷害を受けると,普段は類洞内に潜んでいる伊東細胞(星細胞;hepatic stellate cell:HSC)が増勢し,自らTGF—βと間質分解酵素を産生して創傷治癒機転として健常組織を破壊し,組織リモデリングを行ってしまう.この際,細胞外マトリックスが類洞内に貯留するため,肝実質細胞(傷害も受けているが)と門脈の交通が阻害され,肝機能低下が助長される.この過程にはいくつものサイトカインが関係していると考えられるが,変異型TGF—β受容体を導入してTGF—βの作用を特異的に阻害すると,驚いたことに線維
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医学のあゆみ 208巻5号, 428-432 (2004);
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酸分泌抑制薬は,酸関連疾患(消化性潰瘍,逆流性食道炎)の治療において従来より中心的な役割を担っている薬剤である.胃酸は壁細胞のプロトンポンプ(H+/K+—ATPase)を介して分泌されているが,プロトンポンプ阻害薬(PPI)はこのH+/K+—ATPaseを分子標的とした薬剤であり,酸分泌抑制薬としてはもっとも強力なものである.弱塩基化合物であるPPIは壁細胞の分泌細管内腔に集積し,活性型に変化してH+/K+—ATPaseの細胞外ドメインにあるシステイン残基と共有結合し,不可逆的にH+/K+—ATPaseの
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医学のあゆみ 208巻5号, 433-437 (2004);
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炎症性腸疾患における酸化ストレスの関与が明らかとなりつつあり,最近になって抗酸化作用を有する薬剤や活性化白血球除去の臨床応用が試みられつつある.ガス状メディエーターである一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)についての知見は十分ではないが,炎症性腸疾患の腸管局所においては誘導型NO合成酵素(iNOS)や誘導型ヘムオキシゲナーゼ(heme oxygenase:HO—1)の発現が誘導される.iNOSやHO—1の役割ならびに産生されるNOやCOの作用についての詳細は解明されていないが,炎症性腸疾患に対する新たな
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医学のあゆみ 208巻5号, 438-442 (2004);
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消化管粘膜下腫瘍でもっとも多いgastrointestinal stromal tumo(r GIST)はKIT蛋白質を発現し,消化管間葉系細胞がc—kitやPDGF—Rα遺伝子変異により増殖能を獲得し腫瘍化したものである.KITやPDGF—RαのATP結合部位をターゲットとした分子標的治療薬イマチニブは,切除不能進行再発GISTに対して高い奏効率と良好な認容性を示した.現在でも切除可能GISTの第一選択は外科的切除である.切除不能進行例や再発例にはイマチニブが第一選択となっているが,継続投与により耐性の
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■神経
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医学のあゆみ 208巻5号, 443-448 (2004);
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Alzheimer病は代表的な老年期痴呆症であり,その罹患率は80歳人口の約10%,85歳では約20%にものぼることから,高齢化社会を迎え医学的克服に対する要請は大きい.その脳病変は,海馬から大脳皮質の広範な領域に及ぶニューロンの脱落に加え,細胞外へのアミロイド沈着を伴う老人斑とニューロン細胞体の神経原線維タングルの出現を特徴とする.それら異常構造の主要構成蛋白はそれぞれβアミロイド(β—amyloid:Aβ)および過剰リン酸化タウであることが明らかにされ,それらの知見と家族性病型の原因遺伝子同定とが相ま
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医学のあゆみ 208巻5号, 449-453 (2004);
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NKT細胞はT細胞受容体α鎖に可変性のないinvariant鎖(マウスではVα14Jα281,ヒトではVα24JαQ)を発現し,多型性のないCD1d分子により提示された糖脂質を抗原として認識するユニークなリンパ球である.T細胞受容体を介した刺激によりIL—4,IFN—γを短時間で大量に産生することから,その免疫調節機能が注目されている.自己免疫疾患においてはα—ガラクトシルセラミドやその誘導体であるOCHなどの糖脂質を用いて,NKT細胞を刺激する治療法が注目されている.多発性硬化症のモデルである実験的自己
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医学のあゆみ 208巻5号, 454-459 (2004);
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球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は,アンドロゲン受容体(AR)遺伝子内のCAGリピートが伸長してポリグルタミン鎖が異常に延長した変異ARが産生されることによって,運動ニューロンなどが特異的に機能障害および変性死に陥る疾患である.SBMAでは変異ARがおもに核内に蓄積して細胞を傷害すると考えられている.これまでは根本的治療が確立されていなかったが,SBMAの培養細胞モデルやモデルマウスに対し抗アンドロゲン療法が劇的に有効であることや分子シャペロンを高発現させることでも治療効果が示され,その臨床応用が期待される.
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医学のあゆみ 208巻5号, 460-462 (2004);
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Alzheimer病は老人斑,神経原線維変化,顕著な神経細胞死を病理学的特徴とする進行性痴呆疾患である.アミロイドβは前駆体であるamyloid precursor proteinから切り出される老人斑の主要構成成分であり,アミロイドβの除去は有力な治療戦略のひとつと考えられている.アミロイドβ除去の有力な手段として免疫療法が提唱され,その背景にあるメカニズムとしてアミロイドβの免疫により産生された抗体が脳に入って老人斑のアミロイドβに結合し,ミクログリアによるアミロイドβの貪食を促進するという仮説が提唱
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医学のあゆみ 208巻5号, 463-468 (2004);
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プリオン病は致死的な伝播性の脳疾患であり,現時点では確立した有効な治療法はない.その感染因子プリオンの主要構成成分であるプリオン蛋白(PrP)は宿主の染色体遺伝子によってコードされており,おもに中枢神経系で,少量ではリンパ系組織などに発現している.プリオン病の発症過程において,宿主の正常型のPrP(PrPC)がプロテアーゼ抵抗性で感染型のPrP(PrPSc)に高次構造(コンフォメーション)を転換することが,病態の中心をなすことが知られている.このPrPの高次構造転換過程をターゲットとして,プリオン病の予防
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医学のあゆみ 208巻5号, 469-473 (2004);
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今日までに得られた脳神経系に関する知見を総動員して脳の機能修復・再建に結びつけようとする努力が近年めざましい.その結果,個々の神経細胞の分子治療により神経回路網損傷や神経変性による脳高次機能低下から回復する,という夢のシナリオが実現可能なレベルまで徐々に到達しつつある.本稿ではその一例として神経再生と神経変性防止のためのあらたな創薬標的として最近急速に注目を浴びつつあるROCKインヒビターを取り上げる.まず,そもそもROCKが中枢神経系の神経形態構築においてどのような役割を果たすのかについて最近の知見を紹