医学のあゆみ
Volume 209, Issue 10, 2004
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6月第1土曜特集【関節リウマチ──基礎と臨床の最前線】
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関節リウマチ動物モデル:自然発症────SKGマウスとZAP-70異常
209巻10号(2004);View Description Hide DescriptionT細胞シグナル伝達分子Zap70遺伝子の点突然変異により,ヒトのRAに酷似した自己免疫性関節炎がマウスに自然発症する.このZap70遺伝子異常は,胸腺におけるT細胞の選択機構に異常を起こし,その結果,関節炎惹起性T細胞が産生される. -
関節炎とサイトカイン──動物モデルから得られた知見を中心として
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)は関節病変を主徴とする多発性・進行性の自己免疫疾患で,患者は人種にかかわりなく世界中に分布しており,日本では約70万人の患者がいるとみられている.また,RAは遺伝要因と環境要因により発症が規定される多因子疾患であり,さらに,複数の遺伝要因が関与していると考えられていること,病態には自己免疫反応や炎症反応といった他段階の事象が関与することなどから,原因や病態に関してはいまだに不明な点を多く残す.ところで,最近では抗TNF—α抗体やIL—1Ra,sIL—6レセプターに対する抗体の投与が有効 -
SNPを用いた関節リウマチ関連遺伝子解析の成果──3遺伝子の同定(PADI4、SLC22A4、RUNX1)
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)は全身の多関節の炎症と破壊とともに,全身多臓器のさまざまな症状を呈することを特徴とする,自己免疫疾患のひとつである.多くの家系解析などによりRAには遺伝因子が存在することがよく知られていたが,長年のRA関連遺伝子研究にもかかわらず,HLA—DRB遺伝子以外の関連遺伝子の同定に至らなかった.このように,不成功に終わった解析方法に代わり,SNPを用いたホールゲノム大規模ケースコントロール関連解析が平成12年(2000)度にスタートし,1 peptidylarginine deiminas -
関節リウマチの環境要因
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)の遺伝要因の同定が進行中であるが,将来的に遺伝子型を発症予防のための生活指導に役立てることが可能になる前提としては,環境要因を解明しておく必要がある.現状では生活習慣として喫煙が,とくに男性,閉経後の女性において,RA発症のリスクを有意に上昇させることが多くの研究により示されている.一方,環境要因としてのウイルス感染は,これまでEpstein—Barrウイルス,パルボウイルス,レトロウイルスなどの関与の可能性が活発に追求され,それぞれに注目すべき報告がなされているが,研究者間のコンセン -
滑膜細胞増殖と転写因子
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は関節における炎症,滑膜細胞の増殖,およびこれらに伴う関節破壊を中心とした病態を示す慢性の疾患である.現在までにRAの主病変のひとつである滑膜細胞の過増殖と活性化の分子機構を理解するためのさまざまなアプローチが行われてきた.NF—κBをはじめとしたいくつかの転写因子について,リウマチ滑膜細胞で転写亢進状態が存在し,RAの病態に深く関与していることが示されている.著者らは,内在のHAT活性を有し,さまざまな因子と結合して細胞内においてシグナルの統 -
破骨細胞活性化
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチの骨破壊には破骨細胞による骨吸収の異常な活性化が重要な役割を果たす.RANKL(receptoractivator of NF—κB ligand)は生理的な破骨細胞分化の誘導に必須のサイトカインであるだけでなく,関節リウマチ滑膜における破骨細胞分化の促進においても中心的な役割を果たす.リウマチ滑膜のT細胞は炎症性サイトカイン産生を介して滑膜線維芽細胞のRANKL発現を誘導し,自分自身もRANKLを発現する一方,RANKL作用を抑制するIFN—γ産生が低いために,破骨細胞分化を強く促進する.R -
滑膜細胞の細胞周期
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)は関節滑膜における炎症とその結果生じる滑膜増殖に特徴づけられる疾患である.増殖する滑膜線維芽細胞は一見,自律的増殖さえ可能な腫瘍細胞のようにみえる.滑膜細胞増殖の結果起こる滑膜増生はパンヌスとよばれる組織破壊性の肉芽を形成して関節組織を破壊し,重大な関節機能傷害を招く.従来の治療法は炎症を抑制しようとするものがほとんどであったが,著者らはさまざまな炎症経路が引き起こす滑膜細胞増殖,すなわち細胞周期進行を抑制することがもっとも効果的な治療法となりうると考えて,RA滑膜線維芽細胞の細胞周期 -
関節リウマチにおけるケモカインの関与
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)の罹患関節滑膜組織にはT細胞,B細胞,マクロファージ様滑膜細胞,樹状細胞様滑膜細胞などの著明な炎症細胞浸潤がみられる.その炎症細胞浸潤には細胞遊走に関与するサイトカイン様物質,ケモカインが深く関与している.滑膜組織で産生されているケモカインと炎症細胞上に発現するケモカインレセプターにより選択された細胞が滑膜組織に浸潤・集簇していると考えられる.また,ケモカインは細胞浸潤のみならず,T細胞,滑膜細胞などの活性化,および滑膜組織での血管新生なども誘導することから,RAの病態形成に重要な役割 -
関節リウマチにおけるT細胞の関与
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチは種々の遺伝要因や環境要因のもと様々な細胞や分子が関与して病態が形成され,発症し持続すると考えられている.これらの過程にT細胞が重要な役割を担っていることは,主要組織適合性遺伝子複合体との関連や,関節病理,関節炎動物モデルの解析,T細胞を標的とした治療の結果などから示唆されている.今後,更により特異的な,T細胞の表面分子や機能,自己抗原認識などを標的とした副作用の少ない治療の開発が期待される. -
関節リウマチにおけるB細胞の関与──抗原特異的B細胞活性化
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)は関節滑膜を主座とする慢性の非感染性の炎症性疾患である.最近,抗CD20抗体(rituximab)がRAに有効であることが報告され,RAの病態形成におけるB細胞の重要性が認識されている.RAの炎症の主座である関節滑膜の病理像のひとつの特徴はリンパ球を中心とする単核球の浸潤で,定型的なRA滑膜はあたかもリンパ節を思わせるような組織像を呈する.これはリンパ節にみられる胚中心に似た構造(peudo—germinal center:p—GC)が形成されることによる.RAにおいては関節滑膜での抗 -
関節リウマチの早期診断は可能か──関節リウマチの早期診断
209巻10号(2004);View Description Hide Description生物学的製剤を含め,新規抗リウマチ薬が日本でも使用できることになり,RA治療において変革のときを迎えている.RAはACR1987年改訂分類基準で診断されるが,RAの早期診断には適さない.RAの臨床経過,とくに関節破壊の進行は個々の患者で異なるが,一般に発症早期ほど早い.この理由から,RA治療の面からも早期診断と臨床経過の予測が重要視されている.関節炎発症早期にRAを診断する血清学的検査としては赤沈,CRP,MMP—3,骨代謝マーカーと自己抗体があげられる.自己抗体では古くからリウマトイド因子(RF)が測定 -
関節リウマチの予後予測因子
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)に対する強力な抗リウマチ療法が実施されるようになったが,このような治療法の適応となるハイリスク群の特定のために,疾病予後の予測が重要になりつつある.現在まで多くの予後予測因子が検討されてきたが,リウマトイド因子陽性例,初診時にX線的骨破壊がある,HLA—DR4のshared epitopeを有するなどが骨破壊の進展と強く相関し,有望な予後予測因子である.そのほか女性,高齢発症,初診時までの罹病期間が長い,初診時の疾患活動性が高い,CRP高値,赤沈値高値,抗CCP抗体陽性,血清MMP—3 -
関節リウマチ治療における選択的COX-2阻害薬の功罪
209巻10号(2004);View Description Hide Description非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は最近のガイドラインではRAの補助的な治療薬であるが,疼痛に対してはよく使われている.選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)—2阻害薬は新しく発見された理論に基づいて開発された新規のNSAIDsである.これらの臨床的有効性は従来薬のNSAIDsとほとんど同等であるが,重症消化管障害は有意に少なく,安全性は高いと考えられている.しかし,最近の大規模臨床試験により心血管系の副作用は増加する可能性が示されている.一方,選択的COX—2阻害薬を含めたNSAIDsにはCOX阻害以外 -
抗リウマチ薬──最近の動向
209巻10号(2004);View Description Hide Description抗リウマチ薬(DMARD)は疾患活動性制御と関節破壊進展抑制を目的とする関節リウマチ(RA)の根本療法である.抗リウマチ薬は,免疫系が強く関与して関節破壊が進行する発症3カ月以内の使用開始が勧告される.抗リウマチ薬の特徴には有効性や副作用における個人差,遅延性効果発現,二次無効などがあげられるが,疾患活動性,臓器障害,合併症に応じて個々の症例に最適な薬剤が選択される.わが国で保険収載されている約10の抗リウマチ薬のうち,国際的エビデンスが明確な薬剤はメトトレキサート(MTX),サラゾスルファピリジン(SA -
メトトレキサートの使い方と副作用への対処法
209巻10号(2004);View Description Hide Descriptionメトトレキサート(MTX)はACR改善率,骨破壊進行抑制効果,生活機能改善効果,生命予後改善効果のすべての点で優れているDAMRDであり,世界中でDMARDの標準薬,first line DAMRD,他のDMARDや生物学的製剤との併用療法におけるanchor DMARDと位置づけられている.MTXの治療効果は週15〜20 mgまでは用量依存性があるが,わが国では投与量の上限が週8 mgと低く制限されている.重篤な副作用として,骨髄障害,間質性肺炎,感染症,リンパ増殖性疾患,ウイルス性肝炎劇症化に注意が必 -
関節リウマチにおけるステロイドの使用法──適応と副作用予防
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)におけるステロイドの使用法は,リウマチ医にとっては永遠のテーマかもしれない.絶対的適応としては,血管炎やアミロイドーシス,活動性のある間質性肺炎の合併などの関節外症状,多剤抵抗性で疾患活動性が高い場合,あらゆる抗リウマチ薬にアレルギーがある場合,全身性エリテマトーデスなどの他の膠原病を合併した場合,手術時のステロイドカバーなどがあげられる.相対的適応としては,急激な発症あるいは再燃時に抗リウマチ薬の効果が現れるまでのブリッジングとしての使用,旅行や冠婚葬祭などでアドリブ的に使用する場合 -
TNF阻害療法の有用性と問題点──TNF阻害薬の適切な使用のために
209巻10号(2004);View Description Hide DescriptionTNFにはTNF—α,TNF—βの2種類があり,TNFを標的分子とした生物学的製剤をTNF阻害薬とよぶ.現在承認ずみ,あるいは臨床試験中のTNF阻害薬は,抗TNF—αモノクローナル抗体あるいは可溶性TNF受容体(TNFR)のいずれかに分類される.両者ともに強力な抗炎症作用および関節破壊抑制作用を有し,methotrexateに代表される既存の抗リウマチ薬に比較して高い有効性を示す.しかし,TNF阻害薬には重篤な副作用が知られており,なかでも結核を含む日和見感染にはとくに注意を要する.したがって,TNF阻害 -
IL-1阻害療法の有用性と問題点
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)の治療は21世紀に入り大きく変わってきた.従来の基礎療法にNSAIDs,DMARDを加えていくSmythのピラミッド治療戦略から,Wilskeらが提唱したステップダウンブリッジ療法が確立し,さらに,最近サイトカインをターゲットとした生物学的製剤が開発された.従来の治療では骨や関節破壊が予防できず,著しく生活の質が低下した生活を余儀なくされていたが,生物学的製剤の出現でRAの発病初期から炎症をコントロールでき,骨破壊を予防,治療可能となった.これらの抗サイトカイン療法に可溶型TNF受容体 -
IL-6阻害療法の有用性と問題点
209巻10号(2004);View Description Hide DescriptionIL—6は免疫応答や炎症反応の調節など生体防御にとって重要な役割を担うサイトカインである.一方で,代表的な自己免疫疾患のひとつである関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)においては患者の関節滑膜細胞やマクロファージから過剰に産生されるIL—6が,自己免疫反応を増強させるのみならず,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の産生を誘導し,パンヌス形成に必要な血管新生にかかわる.また,破骨細胞の活性化やマトリックス分解酵素の産生 -
関節リウマチの外科的治療のタイミング
209巻10号(2004);View Description Hide Description関節リウマチは多発性の慢性関節炎を主症状とする原因不明の疾患である.その治療は薬物療法を中心として全身の関節炎の寛解を目的として行われる.近年,MTXや生物学的製剤などの研究,開発,臨床経験より骨破壊の進行を抑制可能な薬剤が用いられるようになった.今後,リウマチの治療は大きく変わっていく可能性がある.しかし,すでに発症した関節破壊や関節の変形は薬物によって治療することは不可能である.近年,材質の向上,形態の研究開発,手術の進歩により約30年の歴史の基に長期的に耐えうる人工関節が開発され,用いられるようにな
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