医学のあゆみ
Volume 209, Issue 12, 2004
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あゆみ 骨をつくる──細胞移植の基盤研究とバイオマテリアルによる臨床応用
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遺伝子導入によるヒト細胞寿命の延長
209巻12号(2004);View Description Hide Descriptionヒト組織幹細胞を体外で自由に殖やすことができれば細胞移植療法の可能性は大きく広がる.しかし,実際にヒト細胞を培養すると一定期間分裂した後分裂を停止し無限に増殖することはできない.この培養皿上での分裂可能回数を規定している機構にはテロメア依存性のものとテロメア非依存性の2つがある.テロメア依存性のものはテロメア短小化によりチェックポイント機構が働き増殖が停止するもので,狭義の分裂寿命(replicativesenescence)とよばれる.しかし,皮膚線維芽細胞を除くほとんどの正常ヒト細胞の培養皿上での分裂 -
臨床応用をめざした間葉系幹細胞の基礎と治療実験
209巻12号(2004);View Description Hide Description間葉系幹細胞とは骨髄間質に存在し,骨,軟骨,脂肪などの複数の組織を形成する細胞に分化可能な細胞であり,再生医療おける細胞源として臨床応用への試みが進められている.しかし,間葉系幹細胞の本態および間葉系幹細胞から最終分化細胞に至る過程についてはいまだ不明の点が多い.真の間葉系幹細胞を同定し,その分化過程を遺伝子レベルで理解することが臨床応用に向けて必須の事項であり,また臨床サイドからどのような臨床病態が間葉系幹細胞を用いた再生医療を必要としているのかを見極めることも非常に重要な点である. -
バイオマテリアルへの細胞播種,細胞分化誘導
209巻12号(2004);View Description Hide Description生体外で組織を再構築するためには細胞ソースを適切な三次元培養担体に均一に播種する必要があるが,そのためには三次元培養担体の内部微細構造を最適設計し,さらにそれに沿った微細構造構築が必要である.しかしながら,現時点では的確な方法としては実現されていない.その基盤技術の確立のための中間的なステップとして,PLGAメッシュ・コラーゲンマイクロスポンジ複合シートのように生分解性高分子のメッシュにコラーゲンマイクロスポンジを複合化させたものを用いる方法がある.この培養担体は,厚みが200μmであることと,コラーゲン -
間葉系細胞とバイオマテリアルを用いた臨床応用の検討──ヒト間葉系細胞を用いての骨再生医療
209巻12号(2004);View Description Hide Description種々の細胞を用いて臓器・組織を構築する細胞へと分化させた後,生体外でその臓器・組織を再構築できれば,種々疾患にこの生体外で再構築された臓器・組織を用いることが可能となる.まさに,この方法は臓器・組織移植を回避できうる技術となりうる.著者らは,患者自身の骨髄に含まれる間葉系幹細胞を増殖した後,この幹細胞による骨組織(再生培養骨)を生体外で構築することを行い,この培養骨を用いての再生医療を開始している.この構築された組織を移植に用いるには,適当な培養担体,すなわちバイオマテリアルを必要とする.本稿では,間葉系 -
骨形成とMsx2──幹細胞誘導の試み
209巻12号(2004);View Description Hide Description高齢者の骨粗鬆症や骨折,骨欠損を対象とした細胞移植による再生治療において,自家移植を基本と考えた場合,その種となる幹細胞数の減少が問題となる.そこで,骨・軟骨の形態形成に重要な働きがあるMsx2の脱分化誘導作用に着目し,分化した細胞から多分化能を有する間葉系幹細胞の誘導への試みと蛋白質導入法(protein transduction)の応用について概説する. -
骨粗鬆症と骨──ビタミンD受容体欠損マウス由来細胞株を用いた検討
209巻12号(2004);View Description Hide Description閉経後の骨粗鬆症患者の動物モデルとして広く用いられている卵巣摘除ラットに活性型ビタミンDを投与すると,骨代謝亢進に伴う骨量の減少および骨髄内の脂肪細胞の増加を抑制することが観察された.一方,温度感受性SV40T遺伝子を導入したマウスとビタミンD受容体(VDR)遺伝子欠損マウスとの交配マウスから条件的不死化細胞株を樹立し,ビタミンDのVDRを介する細胞分化に及ぼす影響を検討したところ,VDR欠損細胞では脂肪化が亢進していること,さらに,1,25(OH)2D3がVDR依存性に骨髄間質細胞の脂肪細胞への分化を抑 -
テトラスパニンが制御する複合体形成と細胞機能
209巻12号(2004);View Description Hide Description細胞膜には細胞の機能を調節するための,さまざまな膜蛋白質が存在する.それらの膜蛋白質は細胞骨格に裏打ちされたり特定の膜領域に集積したり,また,他の膜蛋白質や膜内外の蛋白質と会合することにより細胞接着,シグナル伝達,細胞増殖などを制御している.このような機能の異なる蛋白質の会合に必要な因子のひとつとしてテトラスパニン(tetraspanin)があげられる.ここではテトラスパニンの生体内における役割とその機能について考察する. -
骨再生・形状システムの構築──生分解性ハイブリッドシートを用いて
209巻12号(2004);View Description Hide Description骨の再生医療に対し発生学,材料工学,細胞生物学の発展に伴い,あらたな試みがはじまっている.対象となる骨粗鬆症,骨再生能低下の原因は,閉経後婦人,寝たきり手術後安静,老化,宇宙といった無重力状態,またダイエットと多岐にわたる.腫瘍の術後骨欠損や,骨形成不全症など先天性の骨疾患に対する機能再建の必要性も増している.これらの社会的問題に対し骨組織の再生,維持は,国民の健康,医療,福祉の向上,政策医療の観点からも急務であり,欠くことのできない問題となっている.そのなかで,“骨をつくる”という課題に対し生分解性ポリ
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TOPICS
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連載
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- ジェンダーと医学・医療
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8.摂食障害とジェンダー
209巻12号(2004);View Description Hide Description摂食異常症の代表疾患である神経性食欲不振症と神経性過食症はともに近年増加傾向をとり,多くは若い女性に発症することから,ジェンダーの視点より注目される.神経性食欲不振症は17世紀に記載があり,わが国でも江戸時代の文献にみられ,女性の成長や成熟と深くかかわっていることがうかがえる.多くの例でダイエットが発症のきっかけになっているようにみえるが,精神的な要素が本質的な病因である.下垂体からの性腺刺激ホルモンの低下による無月経・性腺機能低下症は精神的ストレスなどのほかに,ヤセによる二次的な影響も関与し,脂肪細胞か