Volume 210,
Issue 5,
2004
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7月第1土曜特集【消化性潰瘍UPDATE】
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医学のあゆみ 210巻5号, 311-314 (2004);
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■潰瘍形成のパラダイム
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医学のあゆみ 210巻5号, 317-320 (2004);
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消化性潰瘍の形成機序を考えるうえで,ストレスの意義はpost—Hp eraの現在,むしろ再評価されつつある.その伝達系のひとつである胃粘膜内の自律,壁在神経の分布およびその活性の変化を明らかにすることは,Reilly現象を介しての微小循環障害をもたらすうえで,重要な観点である.胃粘膜内では,広義のコリン作動性神経が主体をなし,その活性亢進が微小循環系に影響することが組織化学的検討から明らかとなり,共存する消化管ホルモンとの協調作用の意義が示唆される.一方,慢性再発性潰瘍においては,その発生母地となる再生組
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医学のあゆみ 210巻5号, 321-325 (2004);
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臨床的な見地からすると,H.pyloriといえば消化性潰瘍が結びつく.これはおもにH.pylori除菌療法が消化性潰瘍の再発予防に非常に有効であり,初発・再発を問わず,本菌の除菌療法が消化性潰瘍に対して,わが国を含め世界中の多くの国で認可されているという理由からであろう.しかし,H.pyloriが感染した胃十二指腸粘膜から,潰瘍という組織欠損が生じるさまを解明したわけではない.確率的に除菌したほうが次回,潰瘍が起こりにくいという根拠だけで治療している.潰瘍形成の本質は炎症だけでなく,組織傷害が成立しなけれ
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医学のあゆみ 210巻5号, 326-330 (2004);
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消化性潰瘍の主要な病因として,Helicobacter pylor(i H.pylori)感染,非ステロイド性抗炎症薬(non—steroidalanti—inflammatory drugs:NSAIDs)があげられる.近年,一般人口におけるH.pylori感染陽性率が低下する一方,消炎鎮痛,抗血小板作用などを有するNSAIDsは,高齢化社会の到来とともにその使用頻度は増加すると予測される.一方,NSAIDsの主要な副作用として上部消化管粘膜傷害が重要な問題となる.NSAIDsはおもに胃酸に依存した直接
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医学のあゆみ 210巻5号, 331-335 (2004);
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攻撃因子と防御因子のアンバランスから潰瘍が形成されるShay&Sunの潰瘍バランス説が長く信じられてきた.しかし,基礎酸分泌,刺激酸分泌をみても胃潰瘍では正酸あるいは低酸であり,十二指腸潰瘍では過酸であり,その差違は説明できない.またこれらを標的とした治療でも潰瘍再発は抑制できず自然史は変えられない.今日,胃潰瘍,十二指腸潰瘍の2大要因はH.pylori感染と非ステロイド系抗炎症剤服用である.胃潰瘍におけるH.pylori感染率は70〜80%,十二指腸潰瘍では90〜95%であり,2大要因の寄与度は異なって
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■ガイドライン
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医学のあゆみ 210巻5号, 338-342 (2004);
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平成12年(2000)度から『胃潰瘍診療ガイドライン』の作成が開始され,平成15年(2003)4月に『EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン』が発表された.今回作成された『胃潰瘍診療ガイドライン』はEBM(evidencebased medicine)の手法に基づいて作成された,消化管領域ではわが国初のガイドラインと思われる.今回,著者らは“胃潰瘍初期治療(非除菌)の薬剤選択,併用療法の意義”という課題を担当する機会を得た.作成の過程で,とくにわが国におけるこれまでの文献のつくられ方に大きな問題があったこと
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医学のあゆみ 210巻5号, 343-347 (2004);
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胃潰瘍診療ガイドラインが厚生労働省研究班より報告され,実地診療現場で波紋を広げている.いわゆるevidence—based medicineをもとに完成したガイドラインで,専門家がよく知る多くの外国文献から作成されており,内容は科学的である.その意味でまったく問題ないが,治癒率だけに焦点を当ててevidenceを紹介しているため,もっとも有効なもの以外はみな有効でないともとれる記述もみられ,実地臨床現場で混乱を生じている.とりわけ非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)による潰瘍予防と治療に関するステートメ
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医学のあゆみ 210巻5号, 348-354 (2004);
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『EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン』が2003年4月に出版された.本ガイドライン流布本における出血性胃潰瘍,H.pylori除菌療法,NSAID胃潰瘍,さらには維持療法についての治療指針は現場にそぐわない部分はあるものの,実地医家にとっては胃潰瘍診療に際しおおいに参考となるもので,一定の成果を上げている.しかし,“非除菌療法”の項目において防御因子増強薬に対する評価・位置づけがあまりにも過小評価されていることに関しては大きな波紋をよんでいる.過小評価の原因は,文献検索システムの不備によるエビデンスの抽
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■潰瘍病態の分子標的
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医学のあゆみ 210巻5号, 356-360 (2004);
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酸分泌にはヒスタミン,アセチルコリン,ガストリンなどの酸分泌刺激因子と,ソマトスタチンやプロスタグランジンなどの酸分泌抑制因子がかかわっている.最近ではH.pylori感染によって酸分泌に変化をきたすことが明らかとなり,ガストリンやソマトスタチンによる酸分泌調節機構だけでなく,IL—1β,TNF—αなどのサイトカインの発現による酸分泌への影響が示唆されている.
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医学のあゆみ 210巻5号, 361-364 (2004);
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胃粘膜防御機構は胃を種々の外的傷害因子から守っている.本稿ではCOX—2の胃粘膜防御機構における役割を概説した.胃粘膜傷害時にはCOX—2発現が創傷治癒以前に発現し,治癒を促進する.とくに酸分泌抑制時にみられるガストリンの上昇はCOX—2発現に働き粘膜防御に働くことを明らかにした.さらに粘膜防御因子増強薬のCOX—2発現に対する影響を述べたが,本薬剤と酸分泌抑制薬の潰瘍治癒促進併用効果は今後の検討課題である.
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医学のあゆみ 210巻5号, 365-369 (2004);
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NOの胃粘膜に対する細胞障害性,組織傷害性について解説した.高濃度のNO曝露は胃粘膜細胞に細胞死(ネクローシス,アポトーシス)を誘導する.NOによるアポトーシスにはp53依存性経路が重要である.Helicobacterpylori感染粘膜では誘導型NO合成酵素(iNOS)が誘導され,胃粘膜局所でのNO産生の亢進がある.indomethacin胃粘膜傷害,門脈圧亢進症での胃粘膜脆弱性にもNOの関与が報告されている.NOによる胃粘膜傷害の分子機構を明らかにすることは,新規治療標的分子の解明につながる可能性があ
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医学のあゆみ 210巻5号, 370-373 (2004);
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H.pyloriが胃粘膜上皮細胞に接着すると,4型分泌機構がH.pyloriの細胞膜から上皮細胞膜へ針を指すように突き刺さり,その内腔を通してCagAがH.pyloriから胃粘膜上皮細胞内へと注入される.上皮細胞内に注入されたCagAは上皮内でチロシンリン酸化を受け,チロシンリン酸化されたCagAが細胞の増殖や分化に重要な役割を担うSHP—2と結合する.したがって,cag PAIをもつH.pyloriの感染はヒト上皮細胞のシグナル伝達系を刺激し,細胞の分化や増殖に影響を及ぼすと考えられる.また,CagAの
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医学のあゆみ 210巻5号, 374-378 (2004);
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非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は胃に潰瘍性病変を誘発する.その形態的特徴は,浅く不整形で多発傾向があり,とくに好発部位を有さず,周辺粘膜にびらん性変化を認める.潰瘍底に関しては白苔の舌状はみ出しや2段がまえを呈するという特徴を有する.実験的には胃潰瘍の治癒に伴って認められる肉芽形成,成熟,収縮,吸収のなかで,線維芽細胞は増殖,細胞外基質合成,筋線維芽細胞への分化,アポトーシスといった動態を示すが,NSAIDs処置は線維芽細胞の早期の増殖や後期のアポトーシスを抑制することなどを介してその動態に影響し
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医学のあゆみ 210巻5号, 379-382 (2004);
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H.pyloriおよびNSAIDsはそれぞれ独立した胃粘膜障害因子である.障害機序は多岐にわたるが,最近,両者ともに白血球・内皮細胞の接着からはじまる炎症がその中心的役割を果たしていることが明らかとなってきた.両因子がともに存在する場合,単独の場合と比べて粘膜障害が軽減されるという報告もあるが,最近のメタアナリシスによりH.pylori感染とNSAIDsは消化性潰瘍の発生に対しては相加的あるいはそれ以上のリスクとなることが示された.NSAIDs使用が必要なH.pylori感染者に対する推奨すべき治療として
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医学のあゆみ 210巻5号, 383-386 (2004);
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Helicobacter pyloriは慢性胃炎患者の胃粘膜より分離培養されたグラム陰性の桿菌である.H.pyloriは胃潰瘍,十二指腸潰瘍の患者からも高率に検出される.一方,H.pylori陰性の潰瘍頻度は1.9〜5.1%程度と報告されている.H.pylori陰性の十二指腸潰瘍の病態については,酸分泌の亢進,食後のガストリン反応,および胃排出の亢進が推定されている.消化性潰瘍はいったん治療を中断すると容易に再発がみられるために,酸分泌抑制薬による維持療法が必要であった.本菌の除菌により潰瘍の再発が防止さ
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医学のあゆみ 210巻5号, 387-391 (2004);
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消化性潰瘍の二大合併症は出血と穿孔である.消化性潰瘍の治療は,H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害剤(PPI)など強力な胃酸分泌抑制剤やH.pylori除菌療法により大多数で問題解決している.このように,合併症を伴わない消化性潰瘍の入院は激減している一方,出血や穿孔で緊急入院となる消化性潰瘍症例はこの10年間,不変かむしろ増大している.NSAIDs潰瘍とH.pylori潰瘍では病態発生機序が異なるが,PPIなどの胃酸分泌抑制剤もH.pylori感染の有無によって効果が結果的に異なることから,出血性潰瘍にお
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医学のあゆみ 210巻5号, 392-395 (2004);
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H.pylori感染は消化性潰瘍の発生や再発にかかわる主要原因であることが知られている.H.pylori以外のファクターとして従来より喫煙との関連が重要視されている.つまり,喫煙はおもに粘膜血流の減少により粘膜防御因子を減弱させ,消化性潰瘍の発生・治癒の遷延化・易再発などの弊害をもたらすと考えられている.喫煙が消化性潰瘍に及ぼす弊害の程度や消化性潰瘍の発生機序にかかわる因子に喫煙がどのように影響しているのか,胃酸,ペプシン分泌,消化管運動,粘膜血流,プロスタグランジン,フリーラジカル,およびH.pylor
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医学のあゆみ 210巻5号, 396-400 (2004);
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消化性潰瘍の治癒は,一度生じた組織欠損の修復という意味では皮膚における外傷などの場合とほぼ同様な機構で生じるものと考えられている.損傷発生に伴う好中球やマクロファージなどを主体とした炎症反応,コラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞外基質の蓄積,血管新生などの一連の反応が進み,形成された肉芽組織の収縮により損傷面積は縮小し,続いて上皮の再生および進展により損傷部が覆われる.潰瘍治癒の質(quality of ulcer healing:QOUH)の向上には,細胞外基質の秩序だった構築および血管新生による成熟
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■診断をめぐる最近の進歩
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医学のあゆみ 210巻5号, 403-407 (2004);
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日本では過去にX線または内視鏡の画像を分析して,とくに胃潰瘍の性状,すなわち難治性なのかどうか判定して治療の参考にしていた.ところがH.pylori時代になって,除菌治療で消化性潰瘍の大半は問題なく治癒するので,内視鏡検査を繰り返して胃潰瘍個々の治癒の状況を評価する意味は乏しくなった.現在は,胃潰瘍の診療において内視鏡検査は,除菌治療で軽快する慢性胃潰瘍かどうか,そして胃癌かどうかの鑑別診断だけでよいのかもしれない.とくに重要な消化性潰瘍を合併した早期胃癌の診断では,悪性サイクルの概念に基づいて慎重な診断
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医学のあゆみ 210巻5号, 408-411 (2004);
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胃潰瘍の超音波内視鏡(EUS)診断によって陥凹のみの組織欠損だけでなく,周囲胃壁肥厚も含めた幅広い組織学的変化を示していることを生体内で観察できるようになった.胃潰瘍のEUS像を定量化することで薬剤間の治療効果や難治・再発の予測を客観的な数値で現すことができるようになった.とくにプロトンポンプ阻害剤は表面のみでなく潰瘍内部も急速に治癒することが定量的に証明された.胃潰瘍瘢痕の治癒をEUSで観察し,潰瘍が浅く潰瘍エコーの小さな状態は再発率が低いことが証明されたが,H.pyloriの除菌によってかならずしも内
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医学のあゆみ 210巻5号, 412-415 (2004);
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消化管粘膜の微細循環を非侵襲的に評価する方法として,体外式超音波を応用した手法について述べる.造影剤(レボビスト)を静注し,低音圧で画面をモニターしながら間欠的(2〜4秒間隔)で通常音圧のスキャンを1〜3パルス送受信することにより,低音圧モニターの間,超音波ビームにより壊されることなく微小血管内に到達したレボビストが一気に破壊され,強い信号が得られる(フラッシュエコーイメージング).これにより胃潰瘍の治癒機転における微細循環動態の変化やその役割,NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)の胃粘膜血流に及ぼ
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医学のあゆみ 210巻5号, 416-419 (2004);
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日本ヘリコバクター学会が2003年2月にH.pylori感染の診断と治療のガイドライン改訂版を発表した.そのなかの感染診断と除菌判定にも書かれているが,「PPIなど,H.pyloriに対する静菌作用を有する薬剤が投与されている場合,除菌前・後の感染診断の実施に当たっては,当該静菌作用を有する薬剤投与中止または終了後4週以降に行う」と注意している.しかし,現時点において静菌作用を有する薬剤で明確な臨床データが示されているのはPPIとH2ブロッカーの一部であり,日本でよく使用されている防御因子増強剤については
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医学のあゆみ 210巻5号, 420-423 (2004);
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古くから細菌と抗生物質の戦いは終わりがない.新しい抗生物質が出現すれば,またあらたにその耐性菌が出現する.この耐性獲得は薬剤によって異なり,H.pyloriはアモキシシリン(AMPC)やテトラサイクリン,ミノマイシンに対しては耐性となりづらいが,クラリスロマイシン(CAM),メトロニダゾールに対しては容易に耐性化してしまう.このCAMは保険適用されたレジメンの一剤であり,除菌失敗例では高率にCAM耐性菌となり,またCAM耐性菌はCAMを含む通常の除菌法では除菌が難しく,臨床上たいへん重要な問題である.この
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医学のあゆみ 210巻5号, 424-426 (2004);
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胃潰瘍と胃癌の鑑別診断はしばしば困難であることが多い.活動性の胃潰瘍は辺縁不整で,浮腫を伴い周囲に隆起を呈することなどがあげられ,II型の胃癌と鑑別が困難なことがある.また,III+IIc,IIc+III型早期癌においては,活動期の潰瘍には癌の領域(癌性びらん)が小さく鑑別困難な症例が存在する.さらに,良性びらんと小胃癌,微小胃癌との鑑別も困難であることがある.本稿では,このような胃潰瘍と胃癌の鑑別診断が困難であった症例に関して鑑別診断を述べたい.
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■治療をめぐる最近の進歩
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医学のあゆみ 210巻5号, 429-434 (2004);
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H.pylori除菌によらない消化性潰瘍の治療法を概説した.十二指腸潰瘍ではPPIがfirst choiceとなるが,胃潰瘍では症例によってH2拮抗剤とPPIを使い分け,粘膜防御因子強化剤の併用が再発防止の手段となりうることを述べた.難治例への対応についても記載した.
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医学のあゆみ 210巻5号, 435-439 (2004);
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消化性潰瘍の治療は寛解療法と維持療法に分けられる.H2ブロッカーやPPIなど,強力な酸分泌抑制剤の開発でほとんどの潰瘍がいったん治癒するようになり,治療の目標は再発防止に移った.再発抑制のため維持療法が広く行われてきたが,H.pyloriと再発の関係が明らかとなり,除菌に成功すれば潰瘍の再発はきわめて低率であることが広く知られるようになった.本稿ではH.pylori時代の維持療法について概説する.報告された維持療法の累積再発率は1年間に約20%であり,ほとんどがH.pylori陽性潰瘍であること,数多くの
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医学のあゆみ 210巻5号, 440-443 (2004);
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Helicobacter pylori(H.pylori)除菌治療が保険適応となった現在も,突然発症する消化性潰瘍穿孔の予防は困難である.穿孔例に手術を行う場合に,腹腔鏡下大網充填術が第一選択となる.大網充填術の比較的多い合併症は大きな穿孔症例や食物残T を大量に認める症例などでのリークや腹腔内膿瘍である.これを防ぐために,確実に大網を充填する手技の工夫と大量の(10,000 ml)洗浄を行っている.確実に充填する工夫は,術中内視鏡から門馬の鉗子を腹腔内に出し,これに大網を把持させて十二指腸内(胃内)に引
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医学のあゆみ 210巻5号, 444-448 (2004);
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H.pyloriが発見され,消化性潰瘍の80〜90%に同菌の感染が認められ,その除菌によって治癒し,再発が著減することが明らかになって以来,ストレスと消化性潰瘍の関係はあまり語られなくなってきた.しかし少ないとはいえ,非H.pylori非NSAIDs潰瘍および除菌後再発潰瘍は潰瘍全体の2〜10%前後に存在し,これらはストレス起因性と考えられることが多い.また,寒冷拘束ストレスによる実験胃潰瘍の研究で,thyrotropin—releasing hormone(TRH)を延髄大槽内や迷走神経背側運動核に注入
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医学のあゆみ 210巻5号, 449-454 (2004);
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消化性潰瘍治療の目標は短期的には症状緩和と潰瘍治癒で,長期的には再発予防である.新しい薬物の開発,Helicobacter pylor(i H.pylori)の発見,内視鏡的治療の進歩によって消化性潰瘍の治療法は変化してきた.消化性潰瘍治療の中心は薬物療法であり,潰瘍治癒に対しては酸分泌抑制薬の投与,再発予防にはH.pylori除菌を行い,外科的治療は内視鏡的にコントロールできない大量出血,穿孔,狭窄に対して行われているのが現状である.科学的根拠に基づく胃潰瘍診療ガイドラインの策定に関する研究班(班長:菅
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医学のあゆみ 210巻5号, 455-459 (2004);
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H.pylori除菌治療法の現状について述べた.現在,わが国における除菌治療薬の保険適応として,プロトンポンプ阻害剤(PPI)+クラリスロマイシン(CAM)+アモキシシリン(AMPC)のレジメが認定されている.この治療法によって約80%が除菌に成功し,潰瘍の再発を著明に抑制している.しかし,近年CAM耐性菌が増加していること,一次除菌失敗例が増加することにより,CAMを含まない除菌法が必要となっている.とくに,CAMの代りにメトロニダゾールの使用を考慮していくことが急務である.除菌後の問題点として逆流性食
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医学のあゆみ 210巻5号, 460-464 (2004);
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医学のあゆみ 210巻5号, 465-469 (2004);
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防御因子増強薬の現代的意義について潰瘍治療の質(QOUH),除菌療法,NSAID惹起性胃粘膜傷害,除菌後の治療の観点から述べる.1 QOUHとは,胃潰瘍再発を局所での異常が主な病態であると考え,潰瘍瘢痕部の組織学的成熟度に基づいた概念である,2防御因子増強薬はQOUHを高め,良好なQOUHに導くことで胃潰瘍再発を防止できる,3防御因子増強薬はH.pyloriに対して補助的な作用を有するものの,除菌療法への上乗せ効果は期待できない,4防御因子増強薬(プロスタグランジン製剤)はNSAID惹起性胃潰瘍の
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医学のあゆみ 210巻5号, 470-474 (2004);
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現在,一般の臨床現場において,胃酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害剤(PPI)とヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)は幅広く用いられているが,両者の胃酸分泌抑制機序および効果の違いや特徴を熟知する必要がある.逆流性食道炎をはじめとするGERDや消化性潰瘍に対する治療面では,PPIの有用性が勝ることが明らかとなっている.しかし,酸分泌抑制力が強いPPIにも夜間の効果が減弱するnocturnal acid breakthrough(NAB)といった現象を認める際には,H2ブロッカーが必要となる.また
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医学のあゆみ 210巻5号, 475-479 (2004);
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NSAIDはシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害によるプロスタグランジン(PG)産生低下や直接的な細胞障害などにより胃粘膜傷害をきたすことは以前から知られていたが,その予防的治療は抗潰瘍薬を用いて経験的に行われてきた.しかし近年,抗潰瘍薬に加えあらたに開発された選択的COX—2阻害薬の有効性や,Helicobacterpylor(i HP)感染の影響をめぐるNSAID潰瘍予防に関する大規模臨床試験が欧米を中心に精力的に行われ,プロトンポンプ阻害薬(PPI),PG製剤による予防効果および選択的COX—2阻害薬
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医学のあゆみ 210巻5号, 480-484 (2004);
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消化性潰瘍患者,とくに十二指腸潰瘍患者では約10%に胃食道逆流症(GERD)の合併がみられる.一方,H.pyloriとGERDの関係についてはH.pyloriがGERDに防御的に作用し,H.pylori除菌後にGERDが増悪するという報告がある反面,逆に胸やけなどの症状が改善するという報告もみられる.著者らがこれまで除菌治療を行った約1,500例の消化性潰瘍患者の観察では,除菌療法開始前にすでにGERDの合併を認めた患者では除菌治療後にGERDは悪化するのではなく,逆流性食道炎の内視鏡所見がむしろ改善する
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医学のあゆみ 210巻5号, 485-489 (2004);
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Dieulafoy潰瘍は,おもに胃体上部に発生する微小な粘膜下層までの粘膜欠損で,粘膜筋板付近を爬行する太い血管が浸食されることにより大出血をきたす.炎症を伴う通常の消化性潰瘍と異なり,一般に炎症所見を欠く.当初は動脈瘤や動脈硬化,血管異形成などが原因と考えられてきたが,現在は否定的であり,先天的に拡張した粘膜下の太い血管が原因と考えられている.内視鏡検査が普及する以前は,突然の大量出血をきたして発症した患者は緊急開腹術によって診断されるか,死後の剖検で明らかになるのが通例であった.治療も胃全摘あるいは部
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医学のあゆみ 210巻5号, 490-494 (2004);
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Zollinger—Ellison症候群とは,膵,十二指腸に発生するガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)である.ガストリンの過剰産生によって胃酸分泌が亢進し,腹痛,下痢,嘔気などの症状とともに,難治性の胃十二指腸潰瘍を繰り返す疾患である.Zollinger—Ellison症候群の約75%はMENI型に合併し,MENI型遺伝子(menin)の変異が発症にかかわっていると考えられている.腫瘍は小さく多発性で局在診断が困難なことがあるが,選択的動脈内セクレチン注入試験は腫瘍の存在する領域を知るのに有用である.ガ
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医学のあゆみ 210巻5号, 495-499 (2004);
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高齢者では潰瘍の発生リスクが高いのみならず,出血や穿孔に代表される合併症のリスクや生命予後に対するリスクが高い.これには身体機能の低下や各種慢性疾患(関節疾患,循環器疾患など)の合併,H.pylori感染や加齢による胃機能(胃酸分泌,胃粘膜血流,胃粘液分泌,重炭酸分泌など)の変化,とくに胃粘膜防御能の低下がかかわっていると考えられる.さらに,低用量アスピリンや非ステロイド系消炎鎮痛薬,ビスホスフォネートなどは高齢者で使用頻度が高まるが,これらによる薬剤性潰瘍の発症リスクも高くなる.したがって,高齢者は消化
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医学のあゆみ 210巻5号, 500-504 (2004);
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そもそも“医は仁術”という考え方が強かった日本の医療において,費用の問題が取りざたされるようになったのは比較的最近のことである.医療技術の臨床的な効果とそれに伴うさまざまな費用を定量化し,効果と費用を総合的に判断しようとする技術評価(technology assessment)のなかでも,薬剤を分析対象とした薬剤経済学(ファーマコエコノミクス)とよばれる分野が近年盛んになってきている.海外のいくつかの国においては薬剤経済学による評価が公的な医療費配分に関する問題に応用されている.この考え方は特定の集団(お