Volume 210,
Issue 10,
2004
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9月第1土曜特集【気管支喘息】
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医学のあゆみ 210巻10号, 795-797 (2004);
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医学のあゆみ 210巻10号, 798-803 (2004);
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気管支喘息は他のアレルギー疾患とともに世界的に増加してきている.現在のわが国の有病率は年代によって異なり,もっとも低い20歳代で4%台,もっとも高い乳幼児で15%弱,全体で7.5%程度と推定される.わが国の喘息死は横ばい状態であるが,若い年代では若干増加傾向で,世界的にみても,ある程度以上は喘息死が低下しなくなることが共通の現象となっている.さまざまな因子が発症に関与するといわれる.環境衛生仮説はそのなかでも疫学的研究結果も多く,支持される結果が多数得られている.乳幼児のRSV感染も喘息発症との関連で研究
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医学のあゆみ 210巻10号, 804-808 (2004);
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下気道アレルギーの代表ともいえる気管支喘息は,長い間,単なる気管支平滑筋の収縮を病態の本質とする可逆性疾患と考えられてきた.しかし近年,実はこの気管支平滑筋収縮を生じさせる原因が好酸球の浸潤などを主体とする気道炎症に基づくものであることが明らかとなり,治療の主体も気管支拡張剤から吸入ステロイドを中心とする抗炎症剤に移行し,これを国際的に啓蒙するための治療ガイドラインも作成されるようになった.しかし,気道の炎症に引き続き,気道粘膜の多様な組織を変化させ気道の閉塞をもたらす気道のリモデリング(remodeli
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■気管支喘息の臨床
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医学のあゆみ 210巻10号, 811-814 (2004);
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喘息は繰り返し起こる咳,喘鳴,呼吸困難で特徴づけられる疾患であり,自然または治療による可逆性を示す.喘鳴を示す発作症状で受診する場合,診断は容易であるが,非典型的な症状を示す場合も多く,詳細な問診を要する.呼吸困難発作には誘因が存在する場合が多く,冷気,感冒,ストレスなどがある.時間的には明け方に症状出現が多い.気道炎症はこれら臨床症状を惹起する原因として主要なものであるが,臨床的なマーカーにはまだ乏しいのが現状である.鑑別診断には気道閉塞を示す他の要因を除外することが必須である.
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医学のあゆみ 210巻10号, 815-819 (2004);
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気管支喘息の病態生理学的特徴は気道平滑筋の収縮などによる気道径の減少であり,気道の閉塞性障害とよばれる.喘息の閉塞性障害は慢性閉塞性肺疾患と比べ可逆性があり,喘鳴,咳,呼吸困難などの症状はこの可逆的閉塞性障害に由来している.この閉塞性障害はスパイロメトリーで一秒量および一秒率の低下として測定され,フローボリウム曲線でもV・50およびV・25が低下する.β刺激剤吸入後は一秒量が15%以上改善する.そのほか,気道収縮のため気道抵抗は上昇し,残気量,全肺気量などが上昇するが,肺拡散機能は変わらない.血液ガスは軽
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医学のあゆみ 210巻10号, 821-826 (2004);
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咳喘息(cough variant asthma)とは咳嗽が唯一の症状であり,喘鳴や呼吸困難発作がなく呼吸機能も正常なため喘息とは診断できないが,β2交感神経刺激薬(β2刺激薬)やテオフィリンなどの気管支拡張薬によって咳嗽が軽快する病態である.咳喘息はアトピー咳嗽,副鼻腔気管支症候群と並んで,わが国における慢性咳嗽の3大原因疾患として重要である.咳喘息の基本病態は生理学的には気道過敏性の軽度亢進であり,病理学的には喘息と同様に,中枢気道から末梢気道までの好酸球性気道炎症である.咳喘息患者の約30%の患者が
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医学のあゆみ 210巻10号, 827-832 (2004);
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アスピリン喘息は,アラキドン酸シクロオキシゲナーゼ阻害をトリガーにして発症すると考えられている.したがって,アスピリンだけではなく,ほぼすべての非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によって喘息発作が誘発される.本症の頻度は成人の通年性喘息の約10%と推定され,鼻・副鼻腔の合併症をもつ症例が多い.確定診断のためには詳細な病歴の聴取とともに負荷試験が必要である.誘発物質を避ける以外に特異的な治療はないが,ガイドラインに則した吸入ステロイド薬を主体とする治療によって,良好なコントロールを得ることが可能である.
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医学のあゆみ 210巻10号, 833-839 (2004);
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小児の気管支喘息はおよそ90%以上がアトピー型であり,病因にアレルギー反応が強く関与している.近年はそのアレルギー反応に引き続く炎症と組織障害が小児においても病態生理上重要であると考えられている.日本小児アレルギー学会では『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2002』(JPGL2002)を作成し,気管支喘息の正確な診断とそれに基づく治療に関し年齢別の取組み方を提示している.本稿ではそれらに基づき,小児の特性と治療管理上の注意を概説する.
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医学のあゆみ 210巻10号, 840-845 (2004);
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高齢者気管支喘息患者では,罹病期間の長期化に伴い気道の可逆性が失われ,非発作時でも気道内腔が狭小化しており,気道抵抗が上昇している.このような状態では,発作時には呼吸状態は容易に悪化し,重篤な発作に陥りやすい.また,高齢者喘息患者ではその他の合併症を有することも多く,もともと心肺機能の低下を認め喘息発作時には低酸素血症によりさらに全身状態が悪化しやすい.喘息発作の新しい早期診断法として,高齢者でもベッドサイドで容易に施行できる呼気中一酸化炭素濃度測定法が有用である.高齢者喘息の治療法として,病態の本質であ
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医学のあゆみ 210巻10号, 846-850 (2004);
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喘息治療のガイドラインは診療を画一化しようとするものではなく,あくまでも参考となる指針である.わが国の成人喘息の治療ガイドラインは,EBMにより支持されている.各薬剤の特性を念頭に安全で有効なステップに応じた治療を施行する.急性発作時の治療ではリリーバーである気管支拡張薬と全身的なステロイド薬の投与が中心となる.テオフィリン投与では血中濃度をモニターし,ステロイド薬の静注ではアスピリン喘息の有無に注意を払う.長期管理ではコントローラーを継続投与する.基本となるのは吸入ステロイド薬で,ステップに応じて低用量
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医学のあゆみ 210巻10号, 851-855 (2004);
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喘息の長期管理・治療の目標は,発作がなく健常人と同等の日常生活を送れ,正常に近い呼吸機能を保ち,治療薬による副作用がないこと,喘息死を回避することであり,その達成には患者教育と適切な薬物療法が必要である.成人喘息の寛解頻度は10%前後と低く,喘息は気道炎症に基づく慢性疾患であるとの認識が必要であり,日常生活ではアレルゲンなどの喘息増悪因子を可能なかぎり回避するよう指導する.抗喘息薬は,持続型喘息で長期に毎日使用する長期管理薬と,発作時に用いる短時間作用性β2刺激薬などの発作治療薬に大別される.長期管理薬の
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医学のあゆみ 210巻10号, 856-859 (2004);
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気管支喘息は増悪を早期に把握して十分な治療を行うことが,重症化を防ぐという面と医療費削減の両方の面から重要である.日本は患者の医療機関の早期受診を実現することにより,喘息にかかる医療費を欧米の半分に抑えている.喘息患者の自覚症状はしばしば本当の喘息の重症度と比例しないので,ピークフローメーターによるピークフローモニタリングが肝要である.また,ピークフローメーターにより気道防御能としての咳の運動的側面(カフピークフロー)を評価することができる.しかし,ピークフローメーターは,新生児,乳幼児,超高齢者には使用
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医学のあゆみ 210巻10号, 860-864 (2004);
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気管支喘息重症発作の治療と管理について概説した.呼吸困難と喘鳴を主訴として来院した患者について,まず鑑別診断と重症度の臨床的な判定法について触れる.ついで治療薬として用いられるβ刺激剤や酸素,ステロイド,テオフィリンの使用方法と使用上の注意すべき点を指摘し,さらに理学療法や非侵襲的陽圧換気法(NIPPV)について触れた後,人工換気による管理方法について述べる.
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■気管支喘息の研究
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医学のあゆみ 210巻10号, 867-870 (2004);
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気管支喘息発症の危険因子のひとつに遺伝的要因があることは以前より知られている.喘息における気道炎症はおもにTh2免疫反応の亢進により惹起され持続するが,近年の喘息関連遺伝子の解析で,interleukin(IL)—4,IL—13などのいわゆるTh2サイトカインの遺伝子やIL—4受容体,高親和性IgE受容体などの遺伝子の多型が,気管支喘息の発症・重症化に関与していることが明らかにされつつある.これらの検討が,将来の喘息に対する遺伝子治療の臨床応用につながることが期待されている.
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医学のあゆみ 210巻10号, 871-877 (2004);
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脂質メディエーターとは細胞膜のリン脂質由来の生理活性をもつ脂質の総称で,これらは特異的な受容体に作用することによって活性を示す.リン脂質は,グリセロール骨格を有するグリセロリン脂質と,スフィンゴシン骨格を有するスフィンゴリン脂質に分類されるが,気管支喘息に関連する脂質メディエーターの報告は,グリセロリン脂質とその代謝産物を扱ったものがほとんどである.本稿では,グリセロリン脂質の代謝産物であるロイコトリエン(LT)と血小板活性化因子(PAF)を中心に,これら脂質メディエーターの受容体や代謝酵素と気管支喘息と
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医学のあゆみ 210巻10号, 879-882 (2004);
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喘息は抗原特異的なTh2細胞の活性化を伴う気道の慢性炎症性疾患と考えられている.しかし,最近の喘息研究の進展に伴い,単純にTh1/Th2バランスの異常といった観点からのみで喘息病態をとらえることは困難になってきている.さらに喘息の病態においては,アトピー型の気道炎症に加え,外界からの刺激に対する気道の感受性亢進や創傷治癒の異常といった気道自体の問題が重要であると考えられるようになってきた.リンパ球や好酸球,マスト細胞などの炎症細胞と気道上皮細胞,気管支平滑筋細胞や線維芽細胞などの肺を構成する細胞間の絶え間
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医学のあゆみ 210巻10号, 883-888 (2004);
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気管支喘息の薬物療法は吸入ステロイドを中心とした抗炎症療法に加え,β2刺激剤,テオフィリン徐放剤,抗ロイコトリエン剤の併用で成熟期に入ったと考えられるが,一部の難治症例に対して,またより副作用の少なく治療効果の高い薬剤を求めて開発が進められている.標的とする分子ごとに分類すると,1サイトカイン制御薬,2ケモカイン制御薬,3 IgE制御薬,4細胞接着分子制御薬,5 PDE4阻害薬,6タキキニン受容体拮抗薬があげられる.なかでもサイトカイン制御薬として可溶性IL—4受容体は内因性のIL—4活性を阻