医学のあゆみ
Volume 211, Issue 5, 2004
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10月第1土曜特集【痛みシグナルの制御機構と最新治療エビデンス】
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- ■疼痛の生理機構と分子メカニズム
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痛み受容器の神経生理と炎症時の変化
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionカプサイシン受容体(TRPV1)の発見以来,痛み(侵害)受容器の働き方が分子レベルまである程度理解できるようになった.終末部にはTRPV1をはじめ,熱または冷却に感受性のあるチャネルや機械受容チャネル,炎症メディエーターに対する受容体分子が存在する.熱や機械受容チャネルが刺激により開くことによって終末部の脱分極が生じ,これがある大きさになると活動電位を生じ,痛み情報が中枢へ伝えられる.炎症時には熱や機械刺激に対して強く痛みを感じるようになるが(痛覚過敏),その機構のひとつがこれらのトランスデューサーチャネ -
慢性疼痛発現における電位依存性Naチャネルの役割──最近の研究の展望
211巻5号(2004);View Description Hide Description電位依存性Naチャネル(Naチャネル)は末梢および中枢神経系における神経細胞の興奮を直接担っている膜蛋白質である.Naチャネルの機能的変調は多くの場合,神経細胞の過剰な興奮を引き起こし,てんかん,不整脈,運動機能失調などの疾患の大きな原因のひとつとなっている.炎症性疼痛や神経因性疼痛などに代表される慢性疼痛の病態生理においても,その背景に神経細胞の過剰興奮が存在し,Naチャネルが慢性疼痛の発現や進展に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある.とりわけフグ毒・テトロドトキシンに対する感受性を欠如し -
オピオイド鎮痛の分子メカニズム──オピオイド受容体複合体形成と受容体間相互作用
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionオピオイド受容体(μ,δ,κ)が複合体を形成することによって,リガンド結合特性や細胞応答における多様性が増すことがわかってきた.今後のオピオイド薬理学はμ,δ,κ受容体だけではなく,κ—δ複合体あるいはμ—δ複合体の存在も考慮に入れる必要があり,疼痛治療におけるオピオイド使用法にも新しい考え方が導入されるかもしれない. -
セロトニン受容体サブタイプと慢性痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description炎症など末梢組織損傷時に放出されるセロトニン(5HT)は齧歯類では肥満細胞,血小板,ヒトでは血小板がおもな供給源である.急性炎症のみならず慢性炎症状態でも局所組織でのセロトニン濃度が上昇していることが示されており,慢性疼痛において末梢組織のセロトニンが何らかの役割を演じていることが推測できる.セロトニンは末梢では痛みを増強し,中枢では下行抑制系により痛みを抑制すると考えられているが,末梢,中枢神経において発現する種々の5HT受容体サブタイプによって異なる作用を示すことが示唆されている.中枢および末梢におけ -
ノシセプチンの疼痛制御
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionオピオイド受容体と相同性にあるオーファン受容体の内因性リガンドであるノシセプチンはオピオイドペプチドのダイノルフィンAと構造が似ている.しかし,従来のオピオイドペプチドとは異なり,鎮痛作用のみならず発痛作用にも関与している.用量に応じてそのシフトが生じ,ノシセプチンの産生がひとつの鍵を握っている.ノシセプチンは前駆体蛋白からのプロセッシングによって産生される.生きたままの細胞における蛋白のプロセッシングモニター系の確立,ノシセプチンの痛覚制御に関する最近の知見について概説する. -
プロスタグランジンと疼痛修飾──新規鎮痛薬の開発に向けて
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionプロスタグランジン(PG)類は疼痛修飾に重要な役割を演じ,PG生合成の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するアスピリン様薬は古くから鎮痛薬として用いられてきた.アスピリン様薬の副作用軽減をめざし,COXアイソザイムおよびPG受容体の疼痛修飾における役割の解析が進められている.炎症性疼痛では炎症部位と脊髄後角でCOX—2の発現が増大し,選択的COX—2阻害薬が新規鎮痛薬として有望であるが,その他の疼痛に関しては有用性を支持する証拠は多くない.COX—1遺伝子の選択的スプライシングにより産生さ -
ATP・アデノシンの疼痛受容における役割−−ATPを介するミクログリア活性化と神経因性疼痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description細胞外に放出されたATPおよびその代謝物アデノシンは,ATP受容体あるいはアデノシン受容体を介して痛みに深く関与する.ATP受容体はイオンチャネル型受容体のP2Xファミリー(7種類)とG蛋白質共役型受容体のP2Yファミリー(9種類)に大別され,痛み刺激を受ける皮膚,痛み刺激を受けて活動電位を引き起こし,脊髄まで伝達する後根神経節(DRG)ニューロン,DRGニューロンの入力先である脊髄後角ニューロン,さらに上位中枢神経系,そして脊髄内グリア細胞に発現して痛みの発生や変調にかかわっていると考えられる.最近,神 -
カプサイシン受容体の役割
211巻5号(2004);View Description Hide Description痛み伝達の分子メカニズムの解明は,1997年カプサイシン受容体がクローニングされたことにより急速に進められてきた.この受容体はトウガラシの主成分のカプサイシンのみならず,酸,熱といった実際に生体で痛みを惹起する刺激によって直接活性化されるので1),痛み受容の中心的な分子として注目されている.近年,組織形態学的・薬理学的・電気生理学的および分子生物学的研究から,カプサイシン受容体は組織損傷時の痛み発症にきわめて重要な役割を果たしていることが明らかとなった. -
痛覚伝達における炎症性サイトカインの役割
211巻5号(2004);View Description Hide Description皮膚からの痛覚伝達は後根神経節細胞を介して,その興奮が脊髄に伝えられる.この痛覚伝達には単にイオンチャネルの開口によるだけではなく,G蛋白共役型受容体をはじめ多くの受容体が複雑に関与していることが知られている.炎症局所においてはマクロファージ,単球などの炎症細胞からさまざまな炎症性サイトカインが放出される.後根神経節細胞は数多くのサイトカイン受容体を発現しており,それらの下流にはさまざまな情報伝達系が存在すると考えられている.これまで,炎症性サイトカインは後根神経節細胞の末梢側の神経線維に作用し,脊髄後角 -
オレキシンと痛み──とくに脊髄侵害刺激伝達におけるオレキシンの役割
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionオレキシン(orexin)は1998年に視床下部より発見された神経ペプチドであり,摂食や睡眠に関係した機能を有していることが報告された.Orexinにはorexin—Aとorexin—Bの2種類のペプチドが存在する.Orexin—Aはorexin—1,orexin—2受容体に作用し,orexin—Bはorexin—2受容体のみに作用することが知られている.その後の研究によりオレキシンが視床下部から脊髄後角のC線維を直接神経支配していることが知られ,また脊髄後根神経節でオレキシンが発現していることが報告され -
侵害受容ニューロンにおけるMAPKの活性化と痛み
211巻5号(2004);View Description Hide Description海馬でのシナプス長期増強と非常に類似した神経系の可塑性によって,慢性痛の病態の一側面を説明できるようになっているが,その発症メカニズムは非常に複雑であり,いまだ不明な点が多い.この数年間で,MAPKをはじめとする細胞内情報伝達系の活性化が痛みの発生やそれに伴う可塑的な変化に重要な役割を担っていることが明らかになりつつある.MAPK,とくにERKの活性化は蛋白質のリン酸化といった早期における神経系の可塑的変化だけではなく,遺伝子発現レベルでの制御といったlong termにおける可塑的変化にも関与している. -
痛覚伝達路の可塑性と神経栄養因子
211巻5号(2004);View Description Hide Description中枢性痛覚過敏の発生機序としてさまざまな可塑的変化が報告され,その発生には神経栄養因子の関与が示唆されている.最近の海馬を用いた研究から,脳由来神経栄養因子(BDNF)がシナプス伝達効率の調節を行う重要な因子として注目されている.すなわち,長期増強(LTP)はTrkB—IgGによって阻止されること1),また,BDNFノックアウトマウスではLTPが誘起されない2)などのデータである.一方,炎症モデルではNGF産生が増大し,後根神経節でBDNF産生を促す3).BDNFは脊髄に分泌され,炎症に伴う痛覚過敏の発生 -
神経因性疼痛誘発因子としてのリゾホスファチジン酸
211巻5号(2004);View Description Hide Description慢性疼痛は急性疼痛の延長したものでなく,異なるメカニズムをもったそれ自体が病気となる疼痛疾患である.本稿では慢性疼痛疾患に共通する形態変化である脱髄に着目し,神経傷害時に産生されるリゾホスファチジン酸(LPA)が脱髄をはじめとする一連の神経因性疼痛病態を示すことを明らかにした.これらには疼痛過敏応答とアロディニアが含まれ,疼痛過敏に関連する遺伝子(Ca2+チャネル)や脊髄での増感作用に関与するPKCγの発現上昇が含まれる.一方で,神経傷害やLPA投与により誘発される,こうしたすべての分子機構は,その受容体 - ■複雑な痛みの機構:ニューロパッシクペイン・侵害受容性疼痛・疾患特有
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CRPSの病態とニューロパシックペイン
211巻5号(2004);View Description Hide Description神経を中心とする組織の損傷によって知覚神経,自律神経,運動神経および免疫系などに病的な変化が起こり,それが慢性的な痛みとさまざまな付随する症状を引き起こす場合をCRPS(complex regional pain syndrome)と称する.この症候群は症状および発症機転の特徴からさらに2つに分けられ,従来RSD(reflex sympatheticdystrophy)とよばれていたものをタイプI,カウザルギーとよばれていたものをタイプIIとする.カウザルギーでは末梢神経が直接的に傷害された既往があり,局 -
痛みと交感神経活動──痛みに対する交感神経系の関与
211巻5号(2004);View Description Hide Description遠心性自律神経である交感神経も,痛みの発生・維持に大きく関与している.痛みの刺激は交感神経を興奮させる.知覚神経が痛みの刺激にさらされたり損傷されると,交感神経から分泌されるカテコラミンに対する反応性が亢進する.虚血,低温,そして低気圧は交感神経を介して痛覚過敏を起こす.交感神経の機能は基本的には遠心性であるが,この遠心性の神経インパルスがさまざまな機序で痛みの発生と維持に関与している.交感神経が関与する代表的慢性疼痛には神経因性疼痛の一部がその範疇に入る.本稿では痛みと交感神経の関係について述べる. - ■複雑な痛みの機構:ニューロパシックペイン・侵害受容性疼痛・疾患特有
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手術後痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description手術後の痛みを除くことは,患者の予後やQOLの面から重要であることは明白である.手術後痛は手術操作による組織損傷およびそれに伴う炎症反応性の痛みである.組織損傷部位においては種々の疼痛関連化学メディエーターの放出により,いわゆる“chemical mediator soup”が形成され,炎症反応の強化や侵害受容器が活性化される.さらに,この疼痛情報の中枢神経系への持続的入力により疼痛情報伝達の変化(可塑性)が生じ,痛覚過敏,アロディニアが出現する.体表手術後痛モデルが考案されて以来,術後痛に関する基礎的研 - ■複雑な痛みの機構:ニューロパッシクペイン・侵害受容性疼痛・疾患特有
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筋・骨格系の痛み
211巻5号(2004);View Description Hide Description筋や骨,関節などを含めた深部感覚は鈍い痛みが多く,局在がはっきりしないことが多い.これは,痛みが鋭く,局在がはっきりしている皮膚の痛みとは異なった特徴を有する.その背景には痛みの刺激自体が異なることや同時に痛覚受容器が異なることがあり,それが痛みの発生とその伝達・認知に違いを起こすものと考えられる.一方で,痛みの悪循環に陥るメカニズムとしての脊髄後角細胞や一次求心性線維における感作メカニズムなどについては皮膚の痛みの場合と類似点が多い.臨床でみられる筋骨格系の痛みに関してみると,急性の関節炎から慢性の痛み -
線維筋痛症
211巻5号(2004);View Description Hide Description線維筋痛症(fibromyalgia:FM),あるいは線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome:FMS)は体幹部の特異的な圧痛点を有し,多彩な身体的・機能的・精神的な症状を呈する比較的新しい疾患概念である.FMSは広範囲に疼痛が出現し慢性的に増悪する疾患で,アメリカにおける有病率は2〜4%といわれ,女性が男性の約4倍を占めると報告されているが,わが国では2003年から実態調査が開始されたばかりである.FMS患者には一般にNSAIDsやオピオイドはあまり効果的ではなく,三環系抗うつ薬や他の -
視床痛と幻肢痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description視床痛や幻肢痛は体性感覚系の経路が障害されたことによって起こる求心路遮断痛の代表的なものである.視床痛は中枢性に,幻肢痛は末梢性に,それぞれ求心路が遮断された結果起こる病態である.確実に効果が得られる治療法はないが,現状では脳脊髄に対する神経刺激療法がもっとも有効な方法とされている.視床痛については大脳皮質運動領野の刺激(MCS)を用いることが多い.報告によって効果にはかなり差があるが,長期的な効果が得られるのは全体のおよそ50%と考えられる.ただし,皮質脊髄路の機能が温存されている症例ではより良好な効果 -
手術後の慢性痛──特徴と対策
211巻5号(2004);View Description Hide Description術後痛は一般的には急性痛と考えられているが,まれに術後数カ月を経過しても疼痛が持続し,日常生活に支障をきたす人が存在する.このような病態を手術後慢性痛といい,neuropathic painが主体であり,その疼痛は持続性自発痛,発作性疼痛,allodynia,hyperpathia,hyperalgesiaなどを特徴とする.さらに,慢性痛としての心因性要素が加わることにより抑うつ,不安,不眠,活動性の低下,薬物依存などの症状を呈し,その病態をよりいっそう複雑・難解にしている.代表的な疾患として開胸術後痛, -
ペインイメージング──イメージング手法を用いた痛覚認知のメカニズムの研究
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionヒトの脳内痛覚認知機構についてポジトロン断層撮影(PET),機能的磁気共鳴画像(fMRI),脳波(EEG)および脳磁図(MEG)を用いたこれまでの研究を要約し,今後の問題点について考察する.Aδ線維刺激による方法(first pain関連)ではPETおよびfMRIでは主として刺激対側半球の視床,第一次感覚野(SI),第二次感覚野(SII)から島にかけての領域(SII—島)および帯状回(とくに前部),また刺激同側半球の視床,SII—島および帯状回の賦活が観察された.MEGでは対側半球のSI,両側半球のSII -
痛みの評価法と治療効果
211巻5号(2004);View Description Hide Description痛みの治療効果を正しく把握するには個々の患者の訴えている痛みの適切な評価が不可欠である.患者の痛み訴えが多元的であるので,その評価法も多元的にならざるをえない.臨床的な評価法には,言語によるもの,数字によるもの,患者の行動によるもの,そして痛みに対する身体反応の変化によるもの,がある.VASによる評価は簡便なため,臨床では一般的であるが,同一部位の手術後の急性痛でも患者によってのVAS値は大きな幅があり,鎮痛薬投与下であって同じである.熱刺激,圧迫など物理的刺激や虚血刺激による痛みの実験的評価法の結果から - ■治療の最前線1:疾患別治療
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片頭痛・群発頭痛の治療トピックス
211巻5号(2004);View Description Hide Description国際頭痛分類が15年ぶりに改訂された.片頭痛では慢性片頭痛という分類が加わったことが最大の変化と思われる.トリプタン製剤のわが国での発売開始から4年が経過し,4種類のトリプタンがさまざまな剤型で使用可能となっている.今後も剤型追加や新しいトリプタンの発売が予定されている.最近,片頭痛患者の多くで片頭痛発作時にアロディニアを伴うことが注目されており,トリプタンの早期治療の重要性を示す現象としても関心を集めている.群発頭痛の外科的治療として,ガンマナイフや視床下部に対する深部脳刺激が今後の選択肢として拡大して -
心血管系の虚血性疼痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description心筋虚血時の胸痛,あるいはそれに類似する自覚症状,末梢の虚血による痛みは,虚血を反映する生体シグナルとして重要である.しかし,痛みそのものが病態に対し悪影響をもたらすこともあり,痛みに対する早急な対応が必要となってくる.虚血による疼痛はまず酸素欠乏による細胞内変化,発痛物質の産生をきたし,ついで求心線維の興奮,そして中枢神経系へと伝達していく.慢性の狭心症患者における脊髄刺激療法がAHAのガイドラインに認められ,長期間の調査でも有効性が証明されてきた.また,近年は再生医療の進歩が著しく,虚血性疾患に対して -
CRPS type I−−ペインクリニックでの治療
211巻5号(2004);View Description Hide Description反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)がCRPS typeIと定義されたことで,早期の診断・治療がなされるようになった.CRPS typeIの治療は機能回復が最終目標となり,神経ブロック治療,リハビリテーション,薬物治療に大別される.神経ブロック治療の主軸は交感神経ブロックとなる.有効ではないとする意見もあり,その効果についていろいろと論議されているが,非常によい効果を示すことがあり,積極的に選択すべき方法である.また,患者のQOLを考えた神経ブロック治療も必要となる.リハビリテーションの中心となるのは -
CRPS typeIII(カウザルギー)の治療
211巻5号(2004);View Description Hide Description古くから強い疼痛を主訴とし,発汗障害,血流障害,骨や筋肉の萎縮,発毛や爪の異常,浮腫などを伴う外傷後難治性疼痛の存在は知られており,多くの臨床家が治療に難渋してきた歴史的背景があったが,診断・治療のアプローチがまちまちで疾患概念に混乱をきたしていた.そこで1994年,世界疼痛学会(InternationalAssociation for the Study of Pain:IASP)が外傷後慢性疼痛症候群に対し複合局所疼痛症候群(complexregional pain syndrome:CRPS)の用語 -
急性帯状疱疹痛と帯状疱疹後神経痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description帯状疱疹の治療でもっとも重要なことは,帯状疱疹に関連した疼痛に対する治療である.帯状疱疹に関連した疼痛には急性帯状疱疹痛と帯状疱疹後神経痛がある.激しい急性帯状疱疹痛の治療はバラシクロビルを内服することが基本であり,非ステロイド性抗炎症薬で疼痛を軽減できない場合には,早期からの麻薬の服用あるいは交感神経ブロックが勧められる.帯状疱疹後神経痛の治療の基本は,三環系抗うつ薬のノルトリプチリンあるいはアミトリプチリンの服用である.非ステロイド性抗炎症薬は無効である.三環系抗うつ薬は疼痛が軽減するか副作用で増量が -
関節リウマチと痛み
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionリウマチは免疫異常を伴う炎症性疾患である.リウマチ治療の最大の目標は関節破壊の進行を抑制し,社会的・文化的活動に支障をきたさないよう生活の質(quality of life:QOL)を保持することにある.痛みのコントロールもQOLの大切な部分である.リウマチの治療には,薬物療法,理学療法,手術療法,心理療法などが有効である.発症早期に適切な薬物治療が行えれば,痛みも最小限に抑えられQOLも保持できるので,初期から免疫抑制剤を中心とした強力な薬物療法を導入するよう提言されている. -
がん性疼痛治療−−患者が満足する治療法をめざして
211巻5号(2004);View Description Hide Description公表されてから18年,現在においても“WHO方式がん疼痛治療法”ががん疼痛治療の基本である.がん患者の治療にかかわる医療者は,WHOの2つの提言,1「がん患者の痛みは治療できる症状であり,治療すべき症状である」,2「患者には痛みをコントロールするために十分な鎮痛薬を要求する権利があり,医師にはそれを投与する義務がある」を銘記しなければならない.がん疼痛治療薬として多様なモルヒネ製剤があり,最近ではフェンタニルとオキシコドンが加わった.痛みの程度も治療効果も“患者しか”評価できないことをつねに念頭におい -
糖尿病性神経障害──痛みの成因と治療
211巻5号(2004);View Description Hide Description糖尿病性神経障害に起因する急性疼痛としては,高血糖を急速に是正したときに発症する治療後神経障害が重要であり,神経動静脈シャントの開存による神経虚血の関与が指摘されている.一方,ポリニューロパチーに起因する慢性疼痛は,節性脱髄,軸索萎縮,神経再生などの器質的病変に加えて高血糖に起因する生化学・生理学的異常に基づく神経の易興奮性が関与していると考えられる.すなわち,小径ニューロンのNa+やCa2+のチャネル電流の増加などである.一酸化窒素(NO)産生低下,プロテインキナーゼC活性増加,脳内μオピオイド受容体の -
PCAポンプを利用した術後痛管理の実際
211巻5号(2004);View Description Hide Description術後痛管理はこの10年ほどで格段の進歩を遂げた.術後痛は耐えるのが当たり前といわれた時代は過ぎ去り,現在先進各国では術後痛管理を十分に行わない医療機関は機能評価や格づけに影響するほど重視されている.近年の技術の進歩,とくに自己調節鎮痛法(patient controlled analgesia:PCA)の普及は大きな役割を果たしている.また,機器の開発に加えて安全に管理するための管理体制の確立も重要である.本稿ではPCAポンプを利用した術後痛管理について述べる. -
ペインクリニック医が携わる肩・上肢痛の治療
211巻5号(2004);View Description Hide Description肩・上肢の痛みにおいてペインクリニックの医師が治療に携わる疾患は多岐にわたる.なかでも頻度の多いものでは頸椎疾患(頸椎椎間板ヘルニア,変形性頸椎症,外傷性頸部症候群など)や五十肩,胸郭出口症候群に伴う痛みである.これらの疾患では,通常の薬物治療や理学療法では十分に痛みの緩和が得られない場合にペインクリニックに紹介されることが多い.神経ブロック治療が奏効すれば日常生活動作の改善に大きくつながり,観血的治療を回避することが可能となる.また,腕神経引き抜き損傷や幻視痛,CRPSといった難治性疼痛もペインクリニッ -
胸部痛──診断治療のポイントと疼痛学
211巻5号(2004);View Description Hide Description胸部には心臓,肺,大動脈,気管,食道などの重要な臓器がある.これら胸部臓器や周囲組織の障害はさまざまな胸部痛を惹起する.胸部内臓に由来する胸部痛のうち,解離性動脈瘤,急性冠動脈症候群,肺塞栓症はとくに診断治療に緊急を要する.内臓痛はその局在性や性質が漠然としており,またその求心路が体性神経求心路と脊髄後角で収斂するため,関連痛として体性神経領域の痛みとして感じられるなどの特徴がある.そのため胸部内臓痛の鑑別診断は困難を伴うことがある.本稿では近年研究が進む内臓痛の病態生理学を紹介し,ペインクリニックで扱う -
腹痛に対する治療方針
211巻5号(2004);View Description Hide Description腹痛を訴える患者を診察することはまれなことではないが,そのなかには迅速な治療を必要とする,場合によっては命にかかわる急性腹症が潜在している.急性腹症とは“急激に発症する腹痛を主訴とし,緊急に治療を要する腹部疾患群”と定義され,腹痛の診断においてこの急性腹症を鑑別できるかどうかが最重要課題である.全身状態不良であったり明らかに緊急を要する患者においては,問診や腹痛の種類や部位,触診などの理学所見から,必要な血液検査,画像検査を的確に選択する必要があり,多くの鑑別診断のなかから絞り込んでいかなければならない. -
椎間板ヘルニアによる腰痛・下肢痛に対する新しい保存療法──基礎的研究と臨床応用の可能性
211巻5号(2004);View Description Hide Description腰椎椎間板ヘルニアとは椎間板の中央部に存在する髄核が外側へ脱出した状態である.しかし,腰椎椎間板ヘルニアを有する症例がすべて腰痛や下肢痛を訴えるわけではない.まったく腰痛や下肢痛を呈さないボランティアにおいて,40〜70%に腰椎椎間板ヘルニアの所見が認められることが明らかにされている.これらの事実は,腰椎椎間板ヘルニアの存在自体またはヘルニア腫瘤による神経根圧迫のみが腰椎椎間板ヘルニアによる腰・下肢痛の病態ではないことを示唆している.脱出した椎間板髄核が炎症を惹起すること,そしてこの炎症の責任物質として炎 -
分娩痛の発生機構とその制御(無痛分娩)
211巻5号(2004);View Description Hide Description分娩は多くの妊婦に耐え難い疼痛をもたらし,強いストレスを与える.その結果として妊婦や胎児に多大な生理学的な変化が生じ,予備能が小さければ母児ともに危機に陥る.したがって,分娩過程で生じる疼痛の特徴を正確に把握し,その時期に即した対処法が要求される.無痛分娩には局所麻酔薬とオピオイドを硬膜外腔へ投与したり,くも膜下へのオピオイドの投与を併用することがもっとも一般的に用いられる有効な方法である.適切な除痛法によって正常の分娩経過に影響を与えず,母児ともに有害事象が起こらないような対策を十分に立てることが重要で -
小児の痛みをどう治療するか
211巻5号(2004);View Description Hide Description小児の疼痛管理には麻薬の静脈内投与(IV—PCA),硬膜外鎮痛(シングルショット仙骨ブロック,持続硬膜外鎮痛),腸骨鼠径神経ブロックなどの末梢神経ブロック,NSAID(座薬,内服)があり,著者らの施設での方法と適応について概説した.客観的疼痛評価には限界があり,患者の痛みは患者本人にしかわからないことを再認識すべきである.IV—PCAは安全で,末梢静脈確保ができる医師ならだれでも行うことのできる,優れた疼痛管理法である.区域麻酔を主体にした術後疼痛対策の有用性は成人領域では多数報告されているが,実施が簡単 - ■治療の最前線2:特殊な治療
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NSAIDsを用いた治療の新展開
211巻5号(2004);View Description Hide Description非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はその鎮痛作用,解熱作用,消炎作用によりもっとも多く使用されている薬物のひとつである.近年,疼痛を生じるメカニズムの解明が飛躍的に進歩し,NSAIDsが末梢神経のみでなく中枢神経系にも作用することが明らかになってきたことから,NSAIDsの脊髄をターゲットにした治療方法が注目されている.またその多岐にわたる作用を利用して,神経のみならず血小板や癌細胞に対するNSAIDsの作用を期待した治療も行われるようになってきた.癌性疼痛の治療では初期の段階からNSAIDsの使用を -
“痛みが楽になった”と実感させるオピオイド鎮痛薬の使い方
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionオピオイド鎮痛薬の多くはモルヒネをはじめとして“医療用麻薬”であり,有用な“鎮痛薬”である.モルヒネは200年の歴史をもつ十分な臨床経験を積んだ薬剤であり,多様な剤型の多種類の製剤がある.フェンタニルやオキシコドンが新しく臨床に導入され,オピオイド鎮痛薬の使い方が広がり患者の病態に合わせて使い分けることが容易になった.ただし非がん疼痛に対しては使用可能な薬剤が限られており,疼痛患者のQOLを向上させるためには保険適応の再検討と拡大が必要である.“患者が満足する痛みの治療”を行うために,医療者には麻薬に対す -
慢性痛での抗うつ薬の適応──SSRIとSNRIを中心に
211巻5号(2004);View Description Hide Description鎮痛補助薬のなかでもとくに使用頻度が高いと考えられる抗うつ薬に関する一般的事項,その慢性痛での適応につき,SSRIとSNRIを中心に述べた.従来の抗うつ薬では抗コリン作用や循環系に対する作用が大きな問題となることから,より選択的なNAや5—HTの再吸収阻害薬の開発が望まれていたが,この点をクリアすべく登場したのがSSRI,SNRIである.これらはNAや5—HTの再取込みを選択的かつ強力に阻害して下行性抑制系を賦活し,疼痛抑制効果を発揮する.さらには,中枢神経系の5—HT濃度の上昇によるオピエート様効果,N -
硬膜外鎮痛と先制鎮痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description手術中は硬膜外麻酔またはこれと全身麻酔を併用し,術後は硬膜外腔へ局所麻酔薬またはこれとオピオイド鎮痛薬を混合して持続投与しながら管理すると,術後の痛みはオピオイド鎮痛薬を静脈内へ投与するときより軽い.術後呼吸器合併症も少ない.ほかにも心筋虚血発作が少ないなど,硬膜外鎮痛に多くの利点を認める報告もあるが,意見の一致をみていない.手術中は術野からの侵害刺激によって末梢または中枢が感作されるため,術後にしばしば痛覚過敏やアロディニアを発症する.このように術後痛が慢性化して苦しんでいる患者は多い.術前からきちんと -
イオンチャネル作用薬による疼痛治療──Naチャネル遮断薬を中心にして
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionイオンチャネル作用薬は過敏化した侵害受容系を抑制または正常化し,鎮痛を得る目的で使用される.現在この目的で,Naチャネル遮断薬である抗不整脈薬のリドカイン,メキシレチンおよび抗痙攣薬であるジフェニールヒダントイン,カルバマゼピンが使用されている.非経口投与にはリドカインが使用され,多くの神経因性疼痛に有効である.経口投与にはメキシレチン,ジフェニールヒダントイン,カルバマゼピンおよびバルプロ酸が使用されるが,有効例は限られる.今後,イオンチャネルに選択的な遮断薬や作動薬の開発などを通して,副作用が少なく有 -
鎮痛補助薬の使い方──GABA受容体作動薬,α2受容体作動薬,NMDA受容体拮抗薬を中心に
211巻5号(2004);View Description Hide Description鎮痛補助薬とは,本来は鎮痛の目的ではなく,痛みの種類によって他薬との併用で鎮痛薬の作用を増強あるいはそれ自身で鎮痛作用をもつ薬である.種類としては,抗うつ薬,抗不安薬,抗てんかん薬,抗不整脈薬,副腎皮質ステロイド薬,NMDA受容体拮抗薬,α2アドレナリン受容体作動薬などがあげられる.抗不安薬は直接的な鎮痛作用はまだ広く認められていないが,本来の作用である抗不安作用や筋緊張緩和作用などを目的に使用される.α2アドレナリン受容体作動薬とNMDA受容体拮抗薬はペインクリニック以外で使用されることはあまりないが, -
神経ブロックの適応──診断への応用
211巻5号(2004);View Description Hide Description診断的神経ブロックとは,神経ブロック針を脳・脊髄神経や交感神経などに刺入し,局所麻酔薬を用いて神経機能を一時的に遮断して,その神経系の関与を判断することである.本稿では神経ブロックの診断への応用として,知覚神経由来の痛みの発生部位の判別法,また交感神経関与か知覚神経由来の痛みかを判定する具体的な方法について記した.とくに星状神経節や腹腔神経叢などの交感神経のブロック,脳神経叢ブロック,硬膜外ブロックなどについては図を付して示した.これらの痛みの診断の重要性については“痛みの悪循環”について説明し,その悪循 -
交感神経ブロック
211巻5号(2004);View Description Hide Description交感神経は,ある種の疼痛の発生機序に関与している.痛みは交感神経活動と関係があり,支配領域の交感神経遮断により疼痛の緩和が得られることから証明されている.このような交感神経依存性疼痛には診断と治療に交感神経の遮断が有効である場合が多い.本稿では交感神経と痛みとの関係について,さらに交感神経の関与する疼痛に適用される各種交感神経ブロックを紹介し,その鎮痛機序について述べる.交感神経ブロックによる疼痛緩和は,その支配領域の交感神経遮断の結果のみでなく,免疫系や内分泌系に影響を与えることによっても効果が得られる -
慢性疼痛に対する神経ブロック療法−−胸部傍脊椎ブロックの有用性
211巻5号(2004);View Description Hide Description慢性疼痛は急性疼痛と異なり多岐にわたる発症メカニズムをもち,内服治療,電気刺激療法,神経ブロック療法などさまざまな治療が行われているが,難治性である.神経ブロックは感覚遮断,交感神経遮断の2つの意味をもち,慢性疼痛においても有力な治療手段のひとつである.また,神経ブロックの効果が一時的であっても,リハビリテーションなど多面的なアプローチと組み合わせることでADLの改善が期待できる.著者らは,神経ブロックのなかでも胸部傍脊椎ブロックを積極的に施行し,慢性疼痛に有効であった症例を多数経験している.カテーテル挿 -
神経ブロックの適応──腹部内臓痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description神経ブロックによる内臓痛の治療手段の代表的なものとしては,硬膜外ブロックがあげられる.本ブロックは主として局所麻酔薬を用いるが,持続法が可能なことから,応急処置的な除痛手段以外に,継続することによって病態を改善するような効果も期待できるきわめて有用な手段である.局所麻酔薬以外には微量のモルヒネや拮抗性鎮痛薬も用いられる.痛みの原因や病態が明確になり,さらに長期の除痛効果を期待する場合には,神経破壊薬の使用が可能な内臓および腹腔神経叢ブロック,下腸管膜動脈神経叢ブロック,上下腹神経叢ブロックが適応になる.長 -
椎間関節ブロックが適応となる痛み
211巻5号(2004);View Description Hide Description脊柱の椎体間は前方の椎間円板と後方の椎間関節により連結されている.椎間関節に由来する痛みは,関節の部位によって後頭部から肩甲部,背部,腰部および殿部にかけて発現する.したがって,こうした部位にみられる痛みのなかには椎間関節ブロックが著効を示すものが数多く含まれている.透視下に行われる椎間関節ブロックは,頸部を除けば手技的には重篤な合併症の危険性は少なく,診断的な意味からも有用であり,適応となる症例を的確に診断すれば,良好な除痛効果が期待できる治療法である. -
神経ブロックの適応──くも膜下腔酢酸メチルプレドニゾロン投与の鎮痛効果とメカニズム
211巻5号(2004);View Description Hide Description疼痛の治療に使われた腰椎くも膜下腔酢酸メチルプレドニゾロン投与は,さまざまな合併症が報告されて以来葬り去られてしまったが,難治性の帯状疱疹後神経痛に対して本法を1週間おきに4回行い,疼痛が約30%に減少した.治療を成功させるためにはさまざまなキーポイントがあり,それを熟読する必要がある.さらに,本法の安全性は確立されていないことを念頭において,施行にあたっては細心の注意を払う必要がある.さらに,著者の研究における脳脊髄液中の炎症細胞やinterleukin—8の所見から,帯状疱疹では脊髄の関与を無視できな -
脊髄電気刺激療法──現状と将来
211巻5号(2004);View Description Hide Description脊髄電気刺激療法はゲートコントロール説の臨床応用として1967年より開始され,その後,単なる痛みを軽減する目的以外に,多くの疾患に応用されて現在に至っている.現在施行されている脊髄電気刺激療法は,経皮的に硬膜外腔に留置した電極から脊髄後索を電気刺激して除痛効果を期待するものである.約1週間前後の施行期間中にその効果を確認した後に刺激電極,刺激電気発生装置を皮下に植え込む方法をとっており,1999年に保険適応となったこともあって,自律神経の障害を伴った神経因性疼痛疾患をはじめ,脊椎手術後の難治性疼痛疾患,末 -
難治性求心路遮断痛に対する大脳一次運動野選択的刺激療法
211巻5号(2004);View Description Hide Description求心路遮断痛には脳卒中後疼痛,脊髄損傷後疼痛,腕神経叢損傷後疼痛,幻肢痛,complex regional painsyndrome(CRPS)などがあり,有効な薬剤はあまり存在せず,慢性難治性疼痛に移行することがある.大脳皮質電気刺激療法(MCS)が脳卒中後疼痛に対して有効であることが1991年に見出されてから,各種求心路遮断痛に成功例が報告されてきた.しかし,その除痛効果のメカニズムは不明であり,大脳皮質運動野の刺激が本当にもっとも除痛効果があるのかも結論が出ていない.今回MCSの歴史,さまざまな術式 -
物理的鎮痛法──光線療法,温熱療法,電気療法
211巻5号(2004);View Description Hide Description物理的エネルギーを用いた鎮痛法には,光線療法,温熱療法,電気療法などがある.光線療法には,低出力レーザー,直線偏光近赤外線,キセノン光などがあり,温熱療法には加温による温熱療法と寒冷療法がある.電気療法にはさまざまあり,皮膚から電気を用いるものではTENSが代表的である.これらの治療法に共通した特徴は非侵襲的治療で,高齢者や種々の合併症を有する患者にも適用できることである.とくに,出血傾向などの問題で神経ブロックができない場合にはよい適応となる.しかし,これらの治療法はいずれも治療効果が穏やかで,鎮痛作用 -
東洋医学的治療−−漢方療法
211巻5号(2004);View Description Hide Description日常臨床では漢方薬は3種類の方法によって処方される.西洋医学的に病名から処方されることが多いが,日本漢方では症状や症候(証)から漢方薬を選別し,中医学では疾病の病因を見きわめたうえで漢方薬を処方している.本稿ではペインクリニック外来でしばしば遭遇する頭痛,肩こり,腰痛,膝関節痛,帯状疱疹,帯状疱疹後神経痛について中医学的な弁証論治に基づく疾病の原因とその症状を示し,さらにそのときにみられる舌診と脈診の性状,適用となる漢方薬を提示した.まず頭痛を中医学的に弁証すると,風寒,風熱,肝陽,気虚,血虚,R血,心火 -
心因性疼痛──慢性疼痛
211巻5号(2004);View Description Hide Description心因性疼痛に関しては,現在では“慢性疼痛”とほぼ同義語として扱われることが多い.本稿では『心身症診断・治療ガイドライン2002』を参考に,慢性疼痛の病態・診断・治療の現況について述べた.慢性疼痛は長期化するにつれ,器質的疼痛に加えて機能的・心理社会的障害が加わるため単一の治療では治療困難であり,麻酔科医に加え,心身医学,精神医学,心理学からのスタッフも参加する治療ユニットの具体的な作成が急務である. - ■特別寄稿
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“痛みの10年”宣言と脳の世紀
211巻5号(2004);View Description Hide Descriptionアメリカ議会は2001年からの10年間を“痛みの10年”とする宣言を採択した.痛みの研究と治療の進展を目的としたこの宣言が出されるに至った大きな要因のひとつに,1990年代の研究成果によって痛みの概念に変革が起こったことがある.これは,慢性痛症が痛覚系の可塑的変容によって新しく生じた病気であることを意味し,慢性痛の治療にも影響を与えた.この宣言をきっかけとして,アメリカだけでなく世界中で痛みに関する,とくに慢性痛に関するさまざまな活動が行われている.“痛みの10年”宣言以前に,アメリカ議会の“脳の10年”
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