医学のあゆみ
Volume 211, Issue 6, 2004
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11月第1土曜特集【リンパ球分化の分子メカニズムと疾患】
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- ■胸腺におけるT細胞分化と疾患
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胸腺におけるself-tolerance誘導と自己免疫疾患の回避
211巻6号(2004);View Description Hide Description胸腺はT細胞の分化・成熟の場である.ここでまず,T細胞レセプター遺伝子の再構成が起こり,生体に侵入する多種多様な病原微生物に対応しうるよう,さまざまな構造の抗原結合部位をもったT細胞レセプターがつくられる.胸腺上皮細胞はMHC分子を発現しており,ここには自己の体を構成する蛋白由来のペプチドが結合している.それぞれ異なる構造をしたT細胞レセプターを発現する胸腺細胞のなかから,抗原認識に必要なMHC分子を認識できるレセプターを発現した胸腺細胞が選択され,生存できる.一方,自己を構成する蛋白由来のペプチドと強く -
胸腺における内因性メモリー型Th2細胞の分化とアレルギー
211巻6号(2004);View Description Hide DescriptionT細胞の機能分化はサイトカイン遺伝子座で起こるクロマチン構造のエピジェネティックな変化によって規定され,DNaseIに対する感受性領域を探ることにより解析が進められてきた.著者らはこの感受性領域に焦点を当てトランスジェニックマウスのシステムを用いることにより内因性メモリーTh2細胞の存在を同定した.この内因性メモリーTh2細胞は胸腺由来であり,自己抗原による刺激がその細胞の出現に必要とされること,ナイーブT細胞からTh2細胞への分化に必要とされる初期のIL—4の産生源としてのこの細胞が重要であることを明ら - ■成熟T細胞分化と疾患
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記憶T細胞と感染症──記憶T細胞の分化維持機構
211巻6号(2004);View Description Hide Description免疫記憶は感染症での獲得免疫の要となる現象であり,その主体を担う細胞はT細胞,B細胞などのリンパ球である.抗原に反応するT細胞レセプターをもつナイーブT細胞は抗原刺激後増殖し,その多くが効果細胞として機能を発現するが,一部の細胞は抗原特異的記憶T細胞に分化する.この記憶T細胞は,すでに抗原が生体から除去された後も長期間生体内に存続可能であり,微生物再感染時に微生物除去のために速やかに応答してくれる.近年,この記憶T細胞の分化機構としてCD8ααの役割やTNFレセプタースーパーファミリーの関与が注目され,維 -
内在性制御性T細胞と免疫自己寛容
211巻6号(2004);View Description Hide Descriptionヒトを含めた正常動物内に存在するCD25+CD4+制御性T細胞は自己免疫反応のみならず腫瘍免疫,移植免疫,さらにはアレルゲンや微生物などの外来抗原に対する免疫反応をも負に制御している.最近の研究によりFoxp3遺伝子が内在性CD25+CD4+制御性T細胞の発生分化をつかさどるマスター遺伝子であることが明らかになった.この遺伝子の異常は,ヒトで自己免疫病,アレルギー,炎症性腸炎の原因となる.すなわち,制御性T細胞の発生・分化の異常がヒトの自己免疫疾患の発症に直接につながる. -
アレルギー疾患の発症を制御するTh2細胞の分化機構
211巻6号(2004);View Description Hide DescriptionヘルパーT細胞は細胞性免疫に関与するTh1細胞と,液性免疫に関与するTh2細胞という2つのエフェクター細胞に分類される.これら2つのサブセットは,たがいにバランスをとりながら免疫反応を調節している.生体内におけるTh1/Th2細胞のバランスの崩れが種々の免疫疾患の発症に関与していることが明らかとなり,Th1/Th2細胞バランスを調節することで疾患の発症を制御できるのではないかと考えられている.たとえば,Th2細胞がもたらす過剰な反応はI型アレルギーにつながるとされているが,Th1細胞にはTh2細胞が引き起 -
NALT形成メカニズムの解明によるアレルギー予防・治療への貢献
211巻6号(2004);View Description Hide Description上気道は空気中のバクテリアや吸入性アレルゲンが侵入する最初の臓器である.鼻咽腔関連リンパ組織(nasopharynx—associated lymphoid tissue:NALT)は上気道における粘膜免疫誘導組織として重要なリンパ組織として認識され,ヒトにおけるワルダイエル @桃輪はNALTに相当する臓器と考えられている.NALTの発生メカニズムはその他の二次リンパ組織とはまったく異なることが明らかとなった.アレルギー性疾患患者の @桃Th細胞はTh2型にシフトしており,アレルギー性疾患においてNALT -
NKT細胞の異常と自己免疫疾患
211巻6号(2004);View Description Hide DescriptionNKT細胞はTh1/Th2細胞の分化に関与し,そのバランスをコントロールしていることが示唆されるが,このNKT細胞の数的あるいは機能的な異常が自己免疫疾患と関連していると考えられている.NKT細胞のTCRリガンドであるα—GalCerを用いて自己免疫疾患をコントロールしようとする試みが数多くなされており,NKT細胞をターゲットとした治療法の開発が注目されている. -
gp130シグナルの異常とリウマチ様関節炎
211巻6号(2004);View Description Hide DescriptionIL—6ファミリーサイトカインの共通シグナル伝達物質であるgp130の759番目のアミノ酸をチロシンからフェニルアラニンに置換したノックインマウス,gp130F759マウスはSHP2—Gab1/2—ERK—MAPKのシグナル伝達系路が選択的に遮断され,IL—6ファミリーサイトカイン刺激によるSTAT3の活性化が遷延した細胞内シグナル伝達の不均衡を伴う.gp130F759マウスは出生直後から末梢リンパでのCD4+T細胞の分裂増殖が野生型マウスよりも亢進しており,加齢とともにCD4+T細胞数が増加する.また, - ■B細胞分化と疾患
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B細胞初期分化異常と疾患
211巻6号(2004);View Description Hide DescriptionB細胞初期分化は,獲得免疫系が膨大な数の生命の存続を脅かす外来の病原体に対して生命の存続をはかるために発展させてきた,たいへんに巧妙で精緻な分子機構に依存する.その異常は,先天性の免疫不全症をきたすこともあり,古くから多くの臨床家,研究者の興味を集めてきた.B細胞の初期分化においては多様な病原体に対する抗原特異的レセプターを産生するためのVDJ再構成と,多様性を獲得する代償として無秩序につくられる抗原レセプターの品質管理がとくに重要で,その目的でプレB細胞レセプターが存在する.この複雑な過程にはしばしば先 -
B細胞異常と自己免疫疾患
211巻6号(2004);View Description Hide Description自己反応性B細胞は正常個体にも存在しているが,通常はこの異常活性化を防止するための自己寛容機構が備わっている.この機構が破綻すると,病的自己抗体の産生を伴う自己免疫疾患が発症する.自己免疫疾患は,自己抗体の産生とこれに伴って形成される免疫複合体によって惹起される組織障害が病因となる全身性自己免疫疾患と,自己反応性T細胞やマクロファージによる組織障害がおもな病因となる器官特異的自己免疫疾患に大別される.しかし,後者においても自己抗体の存在が病態の増悪に関与することが示されており,自己反応性B細胞の異常活性化 -
成熟B細胞の活性化と自己免疫
211巻6号(2004);View Description Hide Description成熟B細胞は抗原と反応するとアポトーシスを起こすが,抗原とともに活性化T細胞上のCD40L分子と反応するとアポトーシスが解除され,B細胞は活性化・増殖する.抗原による成熟B細胞アポトーシスには抑制性BCR共受容体CD22およびCD72によるシグナル抑制が必要であり,シグナル抑制を解除すると,抗原と反応したB細胞はアポトーシスを起こさず,活性化・増殖する.したがって,CD22,CD40,CD72は抗原と反応したB細胞の運命を決定する分子スイッチであると考えられる.これら分子スイッチのオン・オフが適切に起こる -
AIDの機能とその破綻による病態
211巻6号(2004);View Description Hide Description抗原刺激があると,B細胞は2つの方法で抗体遺伝子をゲノム遺伝子レベルで改変する.クラススイッチ組換えは抗体遺伝子定常領域を切り換える遺伝子組換え反応で,体細胞変異は可変領域に点突然変異を導入する反応である.この2つの反応によって,抗体遺伝子座はその抗原をよりよく排除できるクラスと抗原認識能力を獲得する.AIDはこの2つの反応の要となる遺伝子である.したがって,AIDの機能障害は抗体の機能を大幅に制限し液性免疫不全につながる.実際,高IgM症候群II型の原因はAID遺伝子座の変異によることがわかっている.一 - ■自然免疫系細胞分化と疾患
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樹状細胞によるT細胞応答の制御と疾患
211巻6号(2004);View Description Hide Description樹状細胞(dendritic cell:DC)はナイーブT細胞を活性化する唯一の抗原提示細胞であり,免疫システムを多方面から統御する細胞として注目されている.DCは生体内に広く分布するが,単一な細胞集団ではなく,その起源および属性からミエロイド系DCとリンパ球系DCに大別される.DCは骨髄幹細胞から分化し,生体局所への移動・分布の過程で成熟し,免疫応答を誘導する.DCにより誘導されるT細胞応答の種類はDCの系統および成熟段階やサイトカインなどの微小環境によって決定づけられる.また,DCは抗原特異的なT細胞 -
Toll様受容体を介した免疫制御機構
211巻6号(2004);View Description Hide Descriptionヒトを含めた高等動物の生体防御機構は自然免疫と獲得免疫の協調作用により成立している.まず,病原体の侵入が自然免疫により感知され,その後に獲得免疫の成立が誘導される.この一連の過程に,Toll様受容体(TLR)とよばれる一群の膜蛋白が重要な役割を果たしていることが明らかにされてきている.TLRを介した自然免疫の活性化は感染免疫において重要であるが,さらにアレルギーを制御する手段としても有望視されている.ここではTLRの機能に関して最近の知見を概説する. -
アレルギーにおける好酸球の分化
211巻6号(2004);View Description Hide Description気管支喘息を代表とするアレルギー性疾患の病態にはT細胞,好酸球,肥満細胞,好塩基球,好中球など種々の細胞浸潤による炎症性の組織傷害が重要であると考えられている.これら炎症細胞のなかで,好酸球は,多彩なエフェクター機能を有することから,重要な役割を果たしていると考えられている.しかし,好酸球に対する強力な分化誘導作用をもつIL—5を標的として実施された抗IL—5抗体投与の臨床治験の結果では末梢血および喀痰中の好酸球は劇的に減少するにもかかわらず,明らかな抗喘息効果を認めなかったため,喘息における好酸球および -
IL-18とアレルギー性炎症
211巻6号(2004);View Description Hide Descriptionアレルギー性炎症は従来,アレルゲン/IgE/Th2細胞の協調作用で誘導されると考えられていた.ところが,グラム陰性菌の細胞壁の主成分であるLPS刺激によってマクロファージから分泌されるIL—18は,IgEとアレルゲンの架橋なしに好塩基球やマスト細胞に作用してIL—4/IL—13とヒスタミンの産生を誘導する.さらに,IL—18は抗原刺激なしにNKT細胞に作用してIL—4産生とCD40L発現を誘導し,B細胞を刺激してIgE産生を誘導する.このようにアトピー反応には,アレルゲンが関与する“獲得型アトピー”と,関 -
NKT細胞と自己免疫疾患
211巻6号(2004);View Description Hide DescriptionNKT細胞はNKマーカーを発現するT細胞の総称であるが,その多くはT細胞受容体(TCR)α鎖に可変性のないinvariant鎖(マウスではVα14Jα281,ヒトではVα24JαQ)を発現している.Vα14NKT細胞は多型性のないCD1d分子により提示された糖脂質をリガンドとするユニークなリンパ球である.TCRを介した刺激によりIL—4,IFN—γを短時間で大量に産生することから,その免疫調節機能が注目されている.とくに自己免疫疾患においてはαガラクトシルセラミドやその誘導体であるOCHなどの糖脂質リガン
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