医学のあゆみ
Volume 212, Issue 13, 2005
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あゆみ ストレス性精神障害の臨床と基礎:Up-to-Date
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うつ病と自殺
212巻13号(2005);View Description Hide Descriptionうつ病においては自殺のリスクは非常に高く,ここ5〜6年にわたるわが国での自殺者数の高止まり傾向も,うつ病の増加に基づく部分が大きいと考えられる.どのような病型,どのような要素をもったうつ病者で自殺の危険性がとくに高いか(自殺リスクの評価)に関する研究も広く行われている(表1).入院症例については,入院当日,退院直後の自殺リスクがもっとも高いとの研究結果は注目に値する.焦燥の出現,およびそれに続く急激な鎮静は,直近の自殺を予測する重大因子である.うつ病者の自殺を予防する最大のポイントは,当然のことながら,き -
パニック障害
212巻13号(2005);View Description Hide Descriptionパニック障害は,生涯罹患率1.4〜3.5%とけっしてまれな疾患ではないこと,およびさまざまな身体症状を発作的に繰り返すため,内科のみならず,あらゆる身体科を受診する可能性がある.しかし,適切な診断がなされず,診断・治療が遅れてしまうケースも少なくないと思われる.1980年には,フロイトの提唱した“不安神経症”から独立した疾患概念となり,以降,さまざまな研究から,パニック障害の病因に生物学的な異常が関与していることが間違いないとされるようになった.パニック障害は,繰り返すパニック発作および持続する予期不安, -
養育環境とストレス性精神障害──養育環境は児童・乳幼児のストレス性精神障害に影響を与えるか?
212巻13号(2005);View Description Hide Description養育環境は2つの意味で,児童期・乳幼児期におけるストレス性精神障害に関係している.第1は虐待やネグレクトが外傷となりストレス性精神障害を児童や乳幼児が発症する場合であり,この場合は養育環境そのものが外傷となる.第2は外傷後における児童や乳幼児の適応(PTSDの発症や重症度を含む)と養育環境との間に関係があるという意味である.本稿ではこの両者について文献を振り返り,つぎにその関係のメカニズムについて議論する.最後に,児童・乳幼児のストレス性精神障害に治療を行う場合,養育環境についての評価と親へのアプローチが必要であることを強調する. -
ストレス脆弱性形成の分子機序
212巻13号(2005);View Description Hide Descriptionうつ病や外傷後ストレス障害などのストレス性精神障害発症のリスクファクターとして,幼少期の恵まれない養育環境があげられる.齧歯類や霊長類を対象とした母子分離の研究から,幼少期ストレスは成長後のストレス曝露時に副腎皮質ホルモンの過剰反応を引き起こし,ストレス脆弱性の形成に密接に関与することが予想されている.副腎皮質ホルモンは核内にある受容体と結合して転写因子として働き,脳内遺伝子の発現を変化させることになり,ストレス曝露に伴う過剰な分泌はストレス脆弱性を顕現化させる可能性がある.このほか,母子分離によってスト -
ストレス応答と神経免疫内分泌学
212巻13号(2005);View Description Hide Descriptionさまざまなストレスに対して生体は神経・内分泌・免疫系の調節系により内部環境の恒常性が維持されている.これらの3つの系は情報伝達の仕組みを共有している.情報伝達物質には,ホルモン,ニューロトランスミッター,サイトカインなどが含まれる.ストレス刺激は,大脳皮質,辺縁系あるいは脳幹部からセロトニンやアセチルコリンなどの神経伝達物質を放出させ,視床下部,下垂体を介し,内分泌系を賦活化させ免疫系に影響を与える.また,ストレス刺激は脳幹を刺激し,交感神経系を興奮させ,免疫系器官にある神経末端からノルアドレナリンやニュ -
ストレス事象の予測に関する脳機能画像解析
212巻13号(2005);View Description Hide Descriptionわれわれは,しばしば予測という心理的な構えを準備することで,ストレスに対する心理的負荷を軽減していると考えられる.そこで著者らはストレス事象の予測に着目して,1.ストレス事象の予測がいかなる脳部位において行われるか,2.予測することによりストレス事象の認知処理過程が影響を受けるか,3.ストレス関連障害の代表としてうつ病をとらえ,ストレス事象の予測に関する脳機能が健常人と異なるか,について脳機能画像解析法を用いて検討を行った.その結果,ストレス事象を予測することにより,前頭前野を含む脳内ネットワークを介して
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フォーラム
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TOPICS
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- 循環器内科学
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- 内分泌・代謝学
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- 臨床栄養学
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連載 遺伝子診断の最前線
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2.遺伝医学教育,社会啓発──正しい遺伝の知識を広めるために
212巻13号(2005);View Description Hide Descriptionわが国ではさまざまな場面において“遺伝”がタブー視されてきた背景があり,国民および社会の“遺伝”“ゲノム”“遺伝情報の意味”についての理解は十分とはいえない.オーダーメイド医療の実現,そして遺伝情報による差別のない,真に一人ひとりの人権および尊厳が尊重される成熟した社会の形成の実現のために,正しい遺伝の知識を広めていくための方法を確立し,これを国家事業として推進することは緊急に求められている課題である.
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