Volume 213,
Issue 1,
2005
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4月第1土曜特集【自己免疫疾患研究の最先端】
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医学のあゆみ 213巻1号, 1-1 (2005);
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■病因
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医学のあゆみ 213巻1号, 5-9 (2005);
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膠原病はcommon diseaseと同様,polygene系の遺伝要因と環境要因によって発症が規定される多因子疾患である.多因子疾患の病態解析には形質と遺伝子型との関連をトータルゲノムを対象として遺伝統計学的に解析するアプローチが有効であるが,ヒトの膠原病ではきわめて形質が多様であることと雑種であるため多くの困難があり,まずその遺伝的仕組みを明らかにするには遺伝的背景が均一なマウスなどのモデル動物を用いた解析が有用である.多因子疾患の解析は現在においても2つ近交系間で交雑種(F2,N2)を作成し形質と遺
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医学のあゆみ 213巻1号, 10-14 (2005);
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自己免疫疾患はかなり高頻度に分布する疾患であり,その罹患率は人口の4%に及ぶ.とくに乾癬(2.8%),関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA,1.0%),甲状腺機能亢進症(Graves病,0.5%),1型糖尿病(0.4%)などが頻度の高い疾患である.また,これらより罹患率の低い疾患には全身性エリテマトーデスや炎症性腸疾患などが存在する.これらはみな,環境要因と遺伝要因とが複雑に絡みあって発症に影響を与えていると考えられている.自己免疫疾患のほとんどはHLAローカスに感受性多型を有して
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医学のあゆみ 213巻1号, 15-19 (2005);
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“自己免疫疾患は多くの遺伝的要因に何らかの環境要因が加わって発症する”と説明されるが,それぞれなにがどの程度関与するのかは不明である.いわゆるmolecular mimicryについて数多くの病原体と抗原分子が考察されてきたが,いまだに病因・病態にかかわる機序が証明されたものはない.感染の影響は,獲得免疫系のほかにToll like recepto(r TLR)を介した自然免疫系とのかかわりも注目されている.性ホルモン,紫外線,栄養などさまざまな環境刺激は,免疫反応の亢進と抑制の両方を誘導しうることがほと
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■病態
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医学のあゆみ 213巻1号, 23-28 (2005);
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免疫系は胸腺・骨髄における遺伝子再構成および正・負の選択を介して自己には反応しないが,無数ともいえる異物に反応できるリンパ球を準備している.異物が侵入すると抗原特異的なリンパ球は速やかに増殖し(クローン拡大),排除が終了するとリンパ球はアポトーシスなどの仕組みによって除去される(クローン縮小).このような免疫の恒常性および自己・非自己の識別の破綻が自己免疫反応および自己免疫疾患の発症につながると考えられている.自己免疫反応は多数の要因によって制御されているが,近年の分子生物学の発達によって,自己免疫現象を
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医学のあゆみ 213巻1号, 29-33 (2005);
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Toll様受容体(TLR)は哺乳類の抗原提示細胞に発現する一群の膜蛋白である.TLRは自然免疫による病原体認識と感染防御,さらに獲得免疫の成立に重要な受容体であることがすでに明らかになっている.さらに最近になって,TLRシグナルおよびTLRによって誘導されるIFN−αが自己免疫の誘導・維持にも関与していることが示唆されている.このことから,TLRシグナルに関する知見は感染免疫やアレルギーの治療ばかりでなく,自己免疫を制御する手段の確立にも寄与することが期待される.本稿では自己免疫病態におけるTLRの役割に
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医学のあゆみ 213巻1号, 35-40 (2005);
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補体系は,血清中と細胞膜上の30種類以上の蛋白で構成され,古典的経路(classical pathway),第二経路(alternative pathway),レクチン経路(lectin pathway)の3つの活性化経路が存在する.補体系は病原体に対する初期防御機構のみならず,免疫複合体やアポトーシス細胞の体内からの除去に関しても重要な役割を果たしている.補体系が関与する病態には大きく分けて2つあり,ひとつは補体蛋白質の欠損・機能異常によるもの,もうひとつは自己抗体の反応により自己の細胞をターゲットとし
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医学のあゆみ 213巻1号, 41-46 (2005);
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全身性エリテマトーデス(SLE)は腎,胸腺,肺,皮膚をはじめ多くの臓器および組織に著明なリンパ球浸潤を認め,ループス腎炎をはじめ多彩な臨床症状を呈する全身性自己免疫疾患である.SLE病態におけるサイトカイン・ケモカイン動態に関しては数多くの報告があるが,発症機序,すなわち免疫寛容の破綻における役割はいぜんとして不明な点が多いのが現状である.SLEの動物モデルであるBWF1マウスにおいてはB細胞ケモカインBLC/CXCL13の異所性高発現が胸腺へのB1細胞の遊走異常をもたらし,免疫寛容の破綻に直接的に関与し
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医学のあゆみ 213巻1号, 47-51 (2005);
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自己抗体の出現は自己免疫疾患を特徴づけるものである.自己抗体研究を大別すれば,産生機序,病態形成への関与,そして検出同定解析法などとなるだろう.とくに検出同定解析法について近年,古典的な発現型cDNAライブラリーの検索に換わる,プロテオミクスを用いた自己抗体・自己抗原の検出同定解析手法が確立されてきた.自験例を含め本稿で紹介する.
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医学のあゆみ 213巻1号, 52-58 (2005);
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免疫グロブリンFcレセプター(FcR)は免疫グロブリンの各クラスを規定する定常領域であるFc(fragmentcrystallizable)部分を認識する.T細胞を除く多くの免疫系細胞は,その細胞表面上に発現する活性化型と抑制性のFcRによってその活性化閾値が制御され,これにより細胞性免疫,および液性免疫が巧みに調節されることになる.したがって,活性化型FcRの機能が破綻したマウスではアレルギーや自己免疫疾患を発症しなくなる一方,抑制性FcRであるFcγRIIbが欠損することにより逆にこれらの疾患が高率に
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医学のあゆみ 213巻1号, 59-63 (2005);
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NKT細胞はNKマーカーを発現するT細胞の総称であるが,その多くはT細胞受容体(TCR)α鎖に可変性のないinvariant鎖(マウスではVα14Jα18,ヒトではVα24Jα18)を発現している.Vα14NKT細胞は多型性のないCD1d分子により提示された糖脂質をリガンドとするユニークなリンパ球である.TCRを介した刺激によりIL−4,IFN−γを短時間で大量に産生することから,その免疫調節機能が注目されている.感染症,自己免疫,癌免疫,移植免疫などの免疫反応のみならず,動脈硬化の病変形成にも関与してい
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医学のあゆみ 213巻1号, 64-68 (2005);
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代表的な自己免疫疾患である関節リウマチ(RA),全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成においてT細胞は重要である.RAでは,1.リウマトイド因子・抗CCP抗体の自己抗体の産生に関与,2. IL−17産生によるTNF−αの炎症誘導作用の増強,3. T細胞レセプターシグナル異常による関節炎惹起性自己反応性T細胞の出現,4.抑制性T細胞の関節炎局所への集積などの関与が考えられる.SLEでは染色体の構成成分であるヌクレオソームが抗二本鎖DNA抗体の産生に関与する重要なT細胞自己抗原であることがわかってきた.さ
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医学のあゆみ 213巻1号, 69-73 (2005);
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正常個体中にはCD25分子(IL−2レセプターα鎖)を恒常的に発現するCD4+制御性T(Treg)細胞が存在し,自己免疫のみならず腫瘍免疫,移植免疫,感染免疫など多様な免疫応答を負に制御している.内在性制御性CD25+CD4+T細胞はマウスおよびヒトの遺伝性自己免疫疾患の原因遺伝子として同定されたFoxp3を特異的に発現し,この分子が制御性T細胞の発生・分化,および機能の発現に必須である.一方,内在性制御性T細胞の現在もっとも有用であるマーカーCD25も,Treg細胞の恒常性維持に必須な分子である.
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医学のあゆみ 213巻1号, 74-78 (2005);
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全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ(RA)に代表される自己免疫疾患の発症過程においては,免疫寛容の破綻に伴う自己反応性T細胞の活性化が関与し,自己反応性B細胞活性化と自己抗体による組織障害が介在する.したがって,T細胞とB細胞間のシグナルは疾患制御の標的となりうる.SLEやRAに対する臨床試験ではT細胞共刺激分子を標的とした生物学的製剤が良好な成績を示し,またCD20抗体はB細胞の再構成,量的・質的減衰を介してB細胞−T細胞間相互作用を制御し,一部の症例で寛解導入を可能としている.今後,これら
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■治療
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医学のあゆみ 213巻1号, 81-87 (2005);
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自己免疫疾患に対する新規の免疫抑制薬であるレフルノミド,タクロリムス,ミコフェノール酸モフェチルについて概説する.レフルノミドはピリミジン代謝を抑える初の免疫抑制薬であり,関節リウマチ(RA)に対して優れた効果を示す.しかし副作用が少なくなく,とくに間質性肺炎は重篤であり,致死性が高い.腸肝循環を有し血漿半減期が長いため,重篤な副作用発現時や妊娠希望時はコレスチラミン投与が必要となる.タクロリムスはわが国で開発されたマクロライド系抗生物質で,全身型重症筋無力症に使用されている.RAに対しても適用が追加され
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医学のあゆみ 213巻1号, 89-95 (2005);
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関節リウマチ(RA)をはじめとする自己免疫疾患において,サイトカインはその病態の形成にかかわることがわかってきた.とくに炎症性サイトカインであるTNF−α,IL−1,IL−6の関与は明らかであり,これらを標的とした治療法は従来の治療法に抵抗性の難治性自己免疫疾患に対する新しい治療法として確立されつつある.すでに欧米で承認されている薬剤は,TNF−α阻害剤であるinfliximab,adalimumab,etanercept,IL−1阻害剤であるanakinraの4剤であるが,このほかにも開発が進められてい
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医学のあゆみ 213巻1号, 96-98 (2005);
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骨髄移植は先天性免疫不全症,造血系疾患,代謝異常症,自己免疫疾患などに実施され,効果をあげている.しかし,HLAをマッチしたドナーが不足しているため,アロの骨髄移植においては移植片対宿主病の発症や生着不全の問題があり,かならずしも成績は思わしくない.著者らは20年前に自己免疫疾患自然発症モデルマウスを用いて,自己免疫疾患は造血幹細胞の異常により発症し,正常のマウスの骨髄を移植することによって治療できることを発見した.以後,アロの骨髄移植をヒトで安全に実施するための方法論を模索し,最近,革新的な移植方法を開
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医学のあゆみ 213巻1号, 99-103 (2005);
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樹状細胞(dendritic cells:DCs)は樹状突起を有する抗原提示細胞であり,造血幹細胞よりミエロイド系やリンパ球系分化経路を経て未熟樹状細胞へ分化し,さらにさまざまな刺激により成熟樹状細胞に至る.樹状細胞は分化系列,成熟段階の異なる多様なサブセットとして生体に広く存在し,自然免疫系と獲得免疫系をつなぐ抗原提示細胞として免疫応答や炎症反応のみならず,さまざまな免疫疾患の発症・増悪にも関与している.一方,定常状態における免疫寛容(トレランス;tolerance)の誘導機構における未熟樹状細胞の役割
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医学のあゆみ 213巻1号, 105-110 (2005);
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自己免疫疾患に対する遺伝子療法はいまだ実用化されたものはない.しばしば使われるウイルスベクターの安全性に疑義を生じるような事件があったからである.しかし,遺伝子治療は局所治療が可能で,単回投与で持続効果が期待できるほか,遺伝子発現を調節できる可能性や安価に市場供給できる可能性がある.安全性を考慮すると,遺伝子治療でのみ達成される治療戦略が今後の開発の中心となるべきである.現時点は,間接法を用いたリンパ球ミサイル療法,著者らの進める細胞周期制御療法などがその例となるであろう.