Volume 213,
Issue 5,
2005
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4月第1土曜特集【内分泌疾患UPDATE】
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医学のあゆみ 213巻5号, 297-297 (2005);
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■視床下部-下垂体
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医学のあゆみ 213巻5号, 301-305 (2005);
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摂食調節異常の結果で起こる病態としてもっとも多いのは肥満である.近年,日本では肥満者の増加と糖尿病,高血圧症,高脂血症などの肥満症の増加が大きな社会問題になっている.肥満症の効果的な治療には肥満のメカニズム,すなわち摂食調節機構やエネルギー代謝調節機構の解明が重要である.摂食調節には視床下部や大脳辺縁系などの中枢神経系だけでなく脂肪細胞や腸管などの末梢組織も重要で,さまざまな神経ペプチド,神経線維,迷走神経,グルコース・遊離脂肪酸・マロニルCoAなどの代謝産物,さらにはエネルギー代謝調節因子であるAMP−
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医学のあゆみ 213巻5号, 306-310 (2005);
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下垂体および下垂体腺腫の発生・分化機序において,転写因子が中心的な役割を果たしている.なかでもPit−1はもっとも早く同定された下垂体特異的転写因子であり,GH,PRL,およびTSH産生細胞の分化を誘導することが知られている.これまでのヒト下垂体腺腫の解析や,実験動物,培養細胞などを用いた解析により,ホルモン産生細胞の分化・成熟過程には複数のステップが存在すること,異常な転写因子の発現は細胞系譜を越えた異常な分化を誘導することなどが報告され,転写因子の発現のタイミングと組合せが重要であることが明らかとなっ
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医学のあゆみ 213巻5号, 311-316 (2005);
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典型的な身体所見を呈するCushing症候群の発見は容易であるが,微妙な中心性肥満や皮膚萎縮といった所見は意外に見落としやすく,それが“顕性”であることに気づかれない場合がある.本稿では隠れたCushing症候群を拾い上げるための留意点,および内分泌学的なスクリーニングを経てCushing病に至る診断の過程を要約する.また,特徴的身体所見をまったく欠如する症例の存在も知られている.このうち副腎性のものについては10年来注目され,知見が重ねられてきたが,下垂体性のものについての知見はきわめて限られている.い
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医学のあゆみ 213巻5号, 317-320 (2005);
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先端巨大症は下垂体成長ホルモン(GH)産生腫瘍によるGH分泌過剰が原因で発症し,心疾患や糖尿病,高血圧などを併発し,適切な治療をしないと一般人口に比べ約2〜3倍の死亡率増加がみられる.死因の多くは心血管障害,呼吸器疾患や悪性腫瘍であり,生存率に影響する因子として最終GH値,年齢,推定罹病期間,高血圧症があげられる.先端巨大症治療の第一選択は手術療法である.手術後コントロール不良例などに対し薬物療法が用いられるが,ソマトスタチンアナログは重要な位置を占め,徐放型オクトレオチド製剤がコンプライアンスの面から有
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医学のあゆみ 213巻5号, 321-324 (2005);
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画像診断の進歩に伴い,下垂体偶発腫(pituitary incidentaloma)に遭遇する機会が増えている.平成13年度厚生労働省特定疾患対策研究事業間脳下垂体機能障害に関する調査研究班により下垂体偶発腫に関する全国調査が行われ,その自然史および治療方針が示された.下垂体偶発腫は短期間では不変のまま経過することが多く,また実質性腫瘍と *胞性腫瘍では自然経過が異なり,それぞれで治療方針を分けて考えることが重要である.腫瘍のサイズ,臨床症状が手術適応の判断材料となる. *胞性病変は不変例が多く,自然緩解
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医学のあゆみ 213巻5号, 325-329 (2005);
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プロラクチノーマは下垂体腺腫のなかでもっとも頻度が高く,他の下垂体腺腫と違うのは薬物療法がきわめて有効な点である.薬物療法としてドパミン受容体アゴニストであるブロモクリプチン(BRC),テルグリド(TG)が使用されてきたが,最近,強力なドパミンD2受容体アゴニストのcabergoline(CAB)が使用可能となった.CABは,BRC,TGに比べPRLの正常化率,腫瘍縮小率,排卵周期正常化率が高く,副作用も軽微で,長時間作動薬であり,週に2回の服用でよく,今後は本剤がおもに用いられると思われる.
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医学のあゆみ 213巻5号, 331-336 (2005);
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下垂体腺腫に対する外科的治療のひとつにガンマナイフ手術がある.とくに外科手術では到達困難な海綿静脈洞内進展病変に対しその有用性はかなり認められている.とくに機能性下垂体腺腫に関しては,腫瘍コントロールのみでなく,異常ホルモン値の正常化も治療目的となっており,確実かつ十分量の照射が要求されている.ガンマナイフは開頭を必要としない低侵襲であり,かつ最近の技術革新により0.1 mmレベルの治療が行えるようになった.これは脳外科マイクロサージェリーに匹敵する高い精度と大きな安全性を合わせもつ“放射線手術”へと発展
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医学のあゆみ 213巻5号, 337-341 (2005);
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成長ホルモン(GH)は身長増加に重要なホルモンである.成長ホルモンをコードする遺伝子,GH−1遺伝子の異常によって低身長を呈する症例がある.GH−1遺伝子異常はほとんどの症例でGH単独欠損症(IGHD)となる.ところが,GHは十分に分泌されるにもかかわらず,分泌されるGH分子の構造が異常であるためにGHの作用が発揮されず,結果的に成長障害を呈する,いわゆる生物学的不活性型GH(Kowarski症候群)の症例もGH−1遺伝子の点変異によることを著者らは報告してきた.このように,GH−1遺伝子異常症は多様な臨
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医学のあゆみ 213巻5号, 342-346 (2005);
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尿崩症はけっして発生頻度の高い疾患ではないが,その臨床症状を容易にまた客観的に把握できることから,症例報告を含め尿崩症に関する発表論文数は少なくない.それほど関心をもたれている疾患ではあるが,とくに遺伝性に発症する尿崩症の分子メカニズムが解明されてきたのは最近のことであり,またいまだに詳細が不明な部分も残されている.本稿では臨床的には相同の症状を示す家族性中枢性尿崩症および先天性腎性尿崩症について概説するとともに,これまでの両疾患に関する研究の発展と現在得られている知見を紹介する.
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■甲状腺
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医学のあゆみ 213巻5号, 349-354 (2005);
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Basedow病の治療方法としては,抗甲状腺薬による薬物療法と甲状腺を亜全摘する外科的療法,および131I放射性ヨード療法の3つがある.それぞれ一長一短があるが,わが国では圧倒的に薬物療法が好んで用いられている.しかし薬物療法としても,用いる抗甲状腺薬の選択,量,投与方法,期間などいろいろな問題がある.日本甲状腺学会では,一般医家の先生方にできるだけエビデンスに基づいた,現時点でベストと考えられる薬物治療指針を提示すべく,作業を行ってきた.同時に,どちらの抗甲状腺薬がよいのか,どれだけの量から開始するのが
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医学のあゆみ 213巻5号, 355-359 (2005);
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Basedow病眼症はBasedow病の25〜50%,橋本病の2%にみられる.遺伝因子を背景に環境因子が誘因となり,何らかの自己免疫異常が生じて後眼窩組織のTSH受容体や外眼筋抗原に対して自己免疫反応が起こると考えられているが,その本質はいまだ不明である.眼症状は上眼瞼後退,眼瞼浮腫,眼球突出,涙液分泌低下,結膜,角膜障害,複視,視力低下と多彩で,眼症状が先行する場合もある.眼症の診察には活動性(CASとMRI),重症度(NOSPECSの分類),QOLの評価が重要である.軽症例は経過観察,上眼瞼後退は交感
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医学のあゆみ 213巻5号, 361-366 (2005);
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甲状腺癌では大半を乳頭癌の組織型が占めるため,臨床的には超音波画像診断や穿刺針吸引細胞診による確定診断と外科治療の迅速性が鍵となる.すなわち,早期診断,早期治療である.乳頭癌の遺伝子診断としては,MAPキナーゼ活性化経路に関する細胞内情報伝達系分子群の遺伝子異常が多く検出され,とくに小児や若年発症ではret/PTC遺伝子再配列異常,成人ではBraf遺伝子点突然変異を有する頻度が高い.良悪性の鑑別に苦慮するのが濾胞癌であり,一部にRas遺伝子異常やPAX8−PPARγ遺伝子再配列,さらに最近では甲状腺ホルモン受容体β遺伝子異常が報告されている.予後不良な未分化癌はまれではあるが,分化癌からの未分化転化への臨床経過をとる場合と,はじめから激烈な増悪型で急激に発症する場合があり,多くはp53遺伝子異常がその予後不良と関係する.網羅的遺伝子発現検索や癌特異的な遺伝子群の発現増減に関する探索も決定的な診断根拠には達していない.手術や放射性ヨウ素治療が無効な甲状腺癌には種々の分子標的治療が試みられているが,臨床治験の積み重ねにより,今後それぞれの適応や効果判定が必要である.
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医学のあゆみ 213巻5号, 367-370 (2005);
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血中FT4が正常でTSHのみ高値を示すsubclinical hypothyroidismは一般人口の1〜10%に存在し,女性に多く,高齢者でより頻度は高い.本症では血中脂質が有意に高く動脈硬化や心筋梗塞の独立したリスク因子として認識されはじめた.50〜60歳以上の女性や妊婦例ではT4治療が勧められているが,他の症例では治療の有効性はまだ確立されていない.
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■副甲状腺VD-Ca代謝
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医学のあゆみ 213巻5号, 373-376 (2005);
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原発性副甲状腺機能亢進症の診断・治療はこの数年間で大きな変革を遂げた.診断ではwhole(1−84)PTH測定の普及である.局在診断は超音波検査の進歩が著しい.MIBIシンチ,CT検査の適応も明確になってきた.その局在診断能の向上により低侵襲性小切開手術や完全内視鏡下手術が可能になった.これらの手術では術後の疼痛,違和感などはほとんどなく,day surgeryも行うことができる.腫瘍の局在の部位によっては術直前,術中の小型ガンマカメラによる副甲状腺腫へのMIBI集積の確認が行われる.また,術中迅速PTH
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医学のあゆみ 213巻5号, 377-383 (2005);
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副甲状腺機能低下症は,さまざまな要因により発症する疾患群である.家族性のものも知られているが,その病態については不明のものが多かった.しかし,最近10年あまりの知見の増加により,副甲状腺機能低下症の分子基盤の理解は飛躍的に進歩した.従来,特発性副甲状腺機能低下症とされていた疾患群の機序は4種に大別できることが明らかにされ,それぞれの病態についての責任遺伝子の同定が進んでいる.また,偽性副甲状腺機能低下症,偽性偽性副甲状腺機能低下症の発症には複雑なインプリンティングが関与しているが,その制御機構も明らかにさ
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医学のあゆみ 213巻5号, 384-388 (2005);
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カルシウム感知受容体(calcium sensing receptor:CaSR)は,細胞外Ca2+イオンをリガンドとするG蛋白共役型の膜受容体である.CaSRは副甲状腺にもっとも強く発現されており,副甲状腺ホルモン(parathyroidhormone:PTH)の産生・分泌を抑制するネガティブフィードバックを媒介し,Ca代謝に重要な役割を果たしている.したがって,CaSR遺伝子の変異やCaSRに対する自己抗体は種々のCa代謝異常症を引き起こす.一方,CaSRのアゴニストやアンタゴニストはそれぞれcalc
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医学のあゆみ 213巻5号, 389-394 (2005);
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低リン血症と骨軟化症の関係を論じるとき,もっとも簡単なアプローチは先天性の低リン血症とそれに伴う骨軟化症の病態を解析する方法である.代表的な疾患である家族性低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症の研究は,PHEXが同定されて以降はphosphatoninとよばれるPHEXの基質で,あらたなリン調節ホルモンを探索することに中心が移ってきた.腫瘍性骨軟化症や常染色体優性遺伝性低リン血症性くる病の責任遺伝子がFGF23であることが同定され,XLHの病態がすべて解明されるかに思われた.しかし,病態は当初考え
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■副腎
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医学のあゆみ 213巻5号, 397-400 (2005);
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副腎皮質クローン化細胞から副腎皮質様組織の再生に成功したとの報告を認めるが,機序は明確ではない.一方,ES細胞にSF−1/Ad4BPを恒常的に発現させることによりprogesteroneまで産生させたとの報告を認める.骨髄細胞のステロイド産生細胞への分化能については未知数であったが,著者らは,長期培養骨髄細胞にアデノウイルスを組みこんだSF−1を強制発現させることにより副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)に反応しかつde novoに多様なステロイドホルモンを分泌するステロイド産生細胞に変化させうることをはじめ
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医学のあゆみ 213巻5号, 401-407 (2005);
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副腎皮質におけるステロイド生合成にかかわるP450酵素,移送蛋白,コファクターなどの遺伝子の多くはすでにクローニングされている.これにより疾患を対象とした分子遺伝学的解析が進められ,先天性副腎皮質ステロイド生合成異常を呈する各疾患の確定診断,出生前診断,治療に有用な情報を提供するとともにさらには各疾患に病因・病態の多様性が存在することが明らかにされたり,また新規病因が同定されてもいる.先天性リポイド過形成症は日本人に比較的多く発症するが,StARとP450sccの2つの異常によって発症し,また発症時期,重
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医学のあゆみ 213巻5号, 409-415 (2005);
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副腎偶発腫(副腎インシデンタローマ)は近年の画像診断技術の進歩と普及により発見の頻度が増加してきている.厚生労働省「副腎ホルモン産生異常に関する研究班」では平成11年(1999)度より全国の200床以上を有する医療機関1,014施設に調査票を送付し,副腎偶発腫についての継続的な疫学調査を行っている.平成14年(2002)度までの4年間に報告を受けた3,239例の集計結果によると,副腎偶発腫の平均年齢は58.0±13.0歳で,性差はなかった.腫瘍側は左右ほぼ同数で,発見時腫瘍径の平均は3.0±2.2 cmで
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医学のあゆみ 213巻5号, 417-422 (2005);
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Cushing症候群は高コルチゾール血症に基づく特徴的臨床症状を呈し,おもに糖・脂質代謝異常,循環異常を伴う.Cushing症候群の病態としてACTH依存性と非依存性に分類されるが,後者は副腎原発の疾患を指す.副腎疾患として片側性副腎疾患である腺腫と癌腫,両側性疾患としてACTH非依存性大結節性副腎過形成(AIMAH)と原発性色素性結節性副腎異形成が知られる.両側性疾患はその病因が分子生物学的に明らかになりつつあり,遺伝性も少なからず認められる.近年,特殊な病態として食事依存性Cushing症候群など副腎
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医学のあゆみ 213巻5号, 423-427 (2005);
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単一遺伝子異常による高・低血圧症は,そのほとんどがミネラロコルチコイドの生合成から効果発現に至る過程の異常である.デキサメタゾン抑制性高アルドステロン症,AME症候群,Liddle症候群,偽性低アルドステロン症II型(Gordon症候群)の4遺伝性高血圧症や,逆に高血圧抵抗性を示す偽性低アルドステロン症I型,Gitelman症候群,Bartter症候群の病因遺伝子が同定された.最終的な血圧異常に至るメカニズムも徐々に判明しつつあり,理にかなった治療が可能となりつつある.システム全体を筋道立てて考え,バラン
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医学のあゆみ 213巻5号, 429-434 (2005);
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高血圧症診療は最近の新薬の開発とともに格段の進歩を遂げている.その結果,降圧治療が容易となり,血圧を下げれば事足りるという風潮が高まっている.しかし,いまこそ二次性高血圧症の存在を再認識し,注目すべき時代になっている.すなわち,原発性アルドステロン症はけっしてまれな疾患ではなく,かならずしも低カリウム血症を呈さず高血圧のみが主症状であるため,高血圧症例をスクリーニングし,低レニン性高アルドステロン血症を示す高血圧症患者を的確にスクリーニングする必要がある.副腎静脈採血法でアルドステロン過剰分泌が片側性か両
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医学のあゆみ 213巻5号, 435-438 (2005);
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アルドステロン(aldo)はNaの再吸収およびそれに伴う血圧の上昇のみならず,心血管系や腎に直接作用し臓器障害を引き起こすことが動物実験や臨床研究から明らかにされてきた.近年開発された選択的aldoブロッカーであるエプレレノンはスピロノラクトンに比べて副作用が少なく,従来の降圧薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体ブロッカー,Ca拮抗薬と同等の降圧効果を有し,大規模臨床研究から急性心筋梗塞後の重症心不全に対する有用性が確立され,さらに高血圧症に伴う心肥大や腎機能障害の予防に有効
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医学のあゆみ 213巻5号, 439-444 (2005);
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自己免疫性Addison病に橋本病,1型糖尿病,特発性副甲状腺機能低下症,肝炎,白斑,悪性貧血などの自己免疫疾患を合併した多腺性内分泌不全症(PGA)は1〜4型に分類される.このうちAddison病,副甲状腺機能低下症,皮膚粘膜カンジダ症からなる1型は,染色体22q22.3上の原因遺伝子AIREの変異によるまれな常染色体劣性遺伝疾患である.一方,より頻度が高く,発症もより高年齢で女性に多い2型は,Addison病と橋本病,1型糖尿病からなり,感受性遺伝子としてのHLAハプロタイプとの関連性に加えて,CD4
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■性腺
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医学のあゆみ 213巻5号, 447-451 (2005);
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哺乳動物の性は性染色体によって決定されるが,生殖腺の性決定がもっとも早期に進行する.性的に未分化な生殖腺が精巣と卵巣に性分化する過程についての研究が急速に進展している.とくに,精巣決定因子として知られるSRY遺伝子の発現と精巣のセルトリ(Sertoli)細胞の分化の様子が可視化された意義は大きい.一方,Sertoli細胞とともに精巣を構成するライディッヒ(Leydig)細胞に関する解析はSertoli細胞より遅れていたが,最近になって遺伝子破壊マウスの解析を中心にLeydig細胞の分化を制御する遺伝子が明
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医学のあゆみ 213巻5号, 453-458 (2005);
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性分化異常症について,外陰部分化異常症をおもに単一遺伝子疾患と多因子疾患の観点から概説した.単一遺伝子疾患は1個の遺伝子変異が強い浸透率を伴い,質的あるいは量的形質異常を生じる場合が該当する.現在までに,性腺形成障害や仮性半陰陽において多数の遺伝子が原因遺伝子として同定されている.多因子疾患は疾患感受性多型と環境因子の総和により量的(まれに質的)形質異常を招く状態が該当する.近年,機能的多型の関連解析や機能不明多型の関連解析により多くの感受性遺伝子あるいは候補が見出されている.この両者の観点からの分子遺伝
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■ステロイドホルモン
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医学のあゆみ 213巻5号, 461-465 (2005);
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近年,受容体のみならず転写共役因子の解明が進み,ステロイドホルモンの作用機構の詳細が明らかになった.これに伴い,従来知られていた受容体の変異によるステロイドホルモン抵抗症のほかに,転写共役因子の異常による疾患のような新しい疾患概念が構築されつつあり,またその一方でステロイドホルモンの標的遺伝子の異常や標的細胞内におけるステロイドホルモンの代謝調節により,最終的なホルモン作用のアウトプットに変化が生じ,ステロイドホルモン抵抗症,あるいは過敏症が生じることも推察されており,とくに生活習慣病との関連も取りざたさ
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医学のあゆみ 213巻5号, 466-472 (2005);
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メタボリックシンドロームの新しい分子病態として“脂肪細胞におけるグルココルチコイド(アディポステロイド)作用活性化”の意義が明らかになった.細胞内でグルココルチコイドを活性化する変換酵素,1型11β−hydroxysteroid dehydrogenase(11β−HSD1)はPPARγの標的遺伝子であり,PPARγアゴニストによって強力に抑制され,遺伝子発現レベルは肥満個体の脂肪組織において著明に上昇する.11β−HSD1を脂肪細胞で過剰発現するトランスジェニックマウスは内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性,
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医学のあゆみ 213巻5号, 473-477 (2005);
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内因性のエストロゲンはその欠損病態やモデル動物の解析から,インスリン感受性を増大し,体脂肪の増加を防ぐ方向に働いていると考えられる.一方,内因性のテストステロンも体脂肪の増加を防ぐ方向に作用するが,インスリン感受性は低下させる方向に作用していると考えられる.性ステロイドは加齢変化を認めることから,メタボリックシンドロームの発症機構や性差を説明する重要な背景因子といえる.
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医学のあゆみ 213巻5号, 479-484 (2005);
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ステロイドの副作用の多様さは十分知られるところであり,これまで感染症,耐糖能異常,消化管潰瘍などに多くの治療的努力がなされてきた.しかし,ステロイドによる骨量低下,それに引き続く骨粗鬆症は,知識として理解されていても十分な対処がなされていたとはいいがたい.これには十分有効な治療薬がなかったことも起因している.近年の骨代謝学の進歩,あらたな骨粗鬆症治療薬の開発により,ステロイド性骨粗鬆症に対しても十分有効な対処が可能になってきている.欧米諸国をはじめ世界各国からは,大規模研究の結果をもとにステロイド性骨粗鬆
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■ホルモン補充療法
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医学のあゆみ 213巻5号, 487-493 (2005);
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ヒト成長ホルモン(GH)製剤の補充は,GH分泌不全性低身長症の第一選択薬としてすでに確立された治療法である.さらに,臨床的に著しい低身長を呈し,GH分泌不全の所見はなくともGH投与により成長促進効果が認められる疾患があり,わが国ではこれまでにTurner症候群,軟骨異栄養症,慢性腎不全に伴う低身長,Prader−Willi症候群に対するGH治療が承認されている.GH製剤は自己皮下注射が認められており,注射は毎日,就寝前に行う.本剤で頻度が多い有害事象は血液検査上でみられるCK,肝酵素の上昇であるが,これら
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医学のあゆみ 213巻5号, 494-500 (2005);
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男性ホルモン補充療法(ART)の適応症例については,まだその基準が定まっていない.これは男性ホルモンの基準値が曖昧であったためで,最近日本人健常男性の総テストステロン値(T)とフリーテストステロン(fT)値の設定がなされた.これをもとに若年成人期と比較したときにT値,fT値がどの程度維持されているかを表す指標として,YAM値比率でのART基準値が提案された.われわれはT値をYAM値比率70%,3.2 ng/ml以下,fTはYAM値比率60%,9.1pg/ml以下としてARTを行い,その改善率を検討する予定
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医学のあゆみ 213巻5号, 501-505 (2005);
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ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)は,閉経後の女性に対し女性ホルモンを投与して高齢女性の健康を保持し,増進することを目的に開発された治療法である.エストロゲンは生体の機能維持に対し保護作用を示す効果を有するにもかかわらず,最近の無作為対象比較試験ではHRTによる有害性が指摘されるようになり,そのメリットは更年期症状の緩和効果と骨量増加,および骨折予防効果に限定されるようになった.そのほか直腸癌の予防などの報告もあるが,確定されるほどのエビデンスはない.一方,
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医学のあゆみ 213巻5号, 507-512 (2005);
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副腎皮質網状層から分泌される副腎アンドロゲンであるdehydroepiandrosterone(DHEA)は加齢とともに低下するので,動脈硬化や肥満,糖尿病との関連が示唆されていたが,その本態は不明である.著者らは脂肪細胞を使用して,DHEA単独が糖の取込みを促進するという驚くべき事実を見出し,この機序がphosphatidylinositol3−kinaseとその下流に存在するatypical PKCの活性化によることを明らかにした.一方,最近カロリー制限と血中DHEA濃度および寿命との関係を調査した論
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■腫瘍
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医学のあゆみ 213巻5号, 515-519 (2005);
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多発性内分泌腺腫症1型(multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)は常染色体優性遺伝を示す遺伝性の内分泌腫瘍疾患であり,副甲状腺,膵や十二指腸の消化管内分泌,下垂体などに多発性に腺腫または過形成を発生する.1997年にMEN1の原因遺伝子(MEN1遺伝子)とそれによってコードされる蛋白(menin)が解明された.以来,現在まで300種類を超える遺伝子変異が報告されている.MEN1遺伝子は癌抑制遺伝子であり,片方の対立遺伝子に胚細胞突然変異が存在し,これにもう片方の対
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医学のあゆみ 213巻5号, 520-526 (2005);
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多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)は,1.甲状腺髄様癌,副甲状腺過形成または腺腫,副腎髄質の褐色細胞腫を主徴とするMEN2A,2.副甲状腺病変は伴わず粘膜神経腫が合併するMEN2B,3.甲状腺髄様癌のみ発症するFMTC(familial medullary thyroid carcinoma),4.それ以外,に分類される.診断はRET遺伝子変異を検出することで可能である.また,同変異を認めた保因者に対する予防的甲状腺全摘術の有用性が報告されている.褐色細胞腫(pheochromocytoma)は交感神経節
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医学のあゆみ 213巻5号, 527-531 (2005);
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前立腺癌は乳癌と並び代表的なホルモン依存性(感受性)癌である.アンドロゲン除去を中心としたホルモン療法は,前立腺癌の治療体系のなかで重要な位置を占めている.アンドロゲン除去によるホルモン療法も多様な選択肢が用意されつつある.しかし,とくに進行性前立腺癌でホルモン療法中に認められるホルモン依存性の喪失(再燃)は治療上の大きな障害である.本稿では前立腺癌でのアンドロゲンの作用・代謝およびホルモン依存性の喪失におけるアンドロゲン受容体,増殖因子,サイトカインなどの関与を概説する.さらに,前立腺癌のホルモン依存性
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医学のあゆみ 213巻5号, 533-538 (2005);
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乳癌は代表的なホルモン依存性癌であリ,その増殖や進展にエストロゲンが深く関与している.乳癌におけるエストロゲンは卵巣から供給されるほか,乳癌組織において局所的に合成されることが近年明らかになった.乳癌組織内のエストロゲンは乳癌細胞に発現するエストロゲン受容体(estrogen receptor:ER)と結合後,さまざまな標的遺伝子を誘導し,乳癌細胞を増殖させる.したがって,乳癌における内分泌療法はこのようなエストロゲン作用の遮断を目的としており,現在の乳癌治療においてきわめて重要な役割を担っている.具体的