医学のあゆみ
Volume 213, Issue 11, 2005
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あゆみ リンパ球ホーミングの分子機構──最近の展開
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免疫細胞の動態制御因子Rap1/RAPL
213巻11号(2005);View Description Hide Description全身性動的システムからなる免疫監視機構の基盤となるのは,インテグリンを介した免疫細胞の接着および遊走である.インテグリンを介した接着はおもにインテグリンの接着活性のレベルで調節されている.すなわち,抗原あるいはケモカイン刺激後,インテグリン自身の発現量を変えることなくインテグリンの接着活性を速やかに上昇させる仕組みが免疫細胞には特異的に備わっている.低分子量G蛋白質Rap1およびその下流標的分子RAPL(Regulator of Adhesion and cell Polarization enriche -
リンパ球の運動性を制御する分子DOCK2
213巻11号(2005);View Description Hide Description細胞は走化性分子の濃度勾配を感知するとその方向に“偽足”をのばし,これを駆動力として細胞運動が惹起される.このような偽足の形成には細胞骨格の再構築が必要であり,これは低分子量GTP結合蛋白Racによって制御されている.リンパ球において,主たる走化性分子はケモカインであり,その濃度勾配はケモカイン受容体によって感知されるが,Rac活性化を制御する分子は不明であった.CDMファミリー分子は線虫から哺乳類にいたるまで保存されており,低分子量GTP結合蛋白質の上流で機能することで細胞骨格を制御している.著者らは免 -
新規シアロムチンnepmucinとその機能
213巻11号(2005);View Description Hide Descriptionリンパ節やPeyer板に存在する高内皮細静脈(HEV)は,血液中のリンパ球をリンパ組織実質へと移行させる特殊な細静脈である.リンパ節HEVにはHEV特有の糖鎖修飾を受けた複数のムチンコア蛋白質が発現する.これらの分子はその糖鎖構造を介してL−セレクチンリガンドとして機能し,HEVでのリンパ球ローリング制御を通じてリンパ球ホーミングに必須の役割を果たしている.著者らはHEV細胞の遺伝子発現プロファイル解析より,ムチン様ドメインと免疫グロブリン(Ig)ドメインを合わせもつ新規シアロムチンnepmucinを同定 -
リンパ節間質ストローマ細胞の機能とリンフォトキシンシグナル
213巻11号(2005);View Description Hide Description免疫系細胞が外来病原体を認識し最大限の効率で獲得免疫反応を誘導するためにはリンパ節のような特殊な“場”が必要である.リンパ節組織内には明瞭な区画構造があり,リンパ球をはじめとする種々の免疫細胞がサブセットごとに効果的に配置されている.こうした特徴的な組織構造は,“諸刃の剣”である免疫細胞が必要以上に活発化するのを抑えつつ,時間的・空間的に秩序のある免疫反応制御のために不可欠であると考えられる.各亜区画内ではそれぞれ機能の異なる非血球系ストローマ細胞(間質支持細胞)群が裏打ちするかのように緻密なネットワーク -
硫酸化糖鎖のリンパ球ホーミングにおける役割
213巻11号(2005);View Description Hide Descriptionリンパ節高内皮細静脈(high endothelial venule)には硫酸基の修飾を受けた6−スルホシアリルルイスX(6−sulfo sLex)とよばれるユニークな糖鎖が発現している.この糖鎖はリンパ球表面のL−セレクチンと特異的に相互作用し,内皮細胞上におけるリンパ球のローリングを媒介する.本稿ではこの糖鎖の生合成にかかわる硫酸基転移酵素のノックアウトマウスから得られた最近の知見を中心にして,硫酸化糖鎖のリンパ球ホーミングにおける役割を概説する. -
胸腺内T細胞分化に伴う細胞移動のケモカイン制御
213巻11号(2005);View Description Hide Description免疫系において中心的な役割を果たすT細胞はその大部分が胸腺に由来する.胸腺では骨髄などから供給される造血幹細胞由来前駆細胞がT細胞へと分化・成熟する.胸腺におけるT細胞分化には,骨髄から胸腺への前駆細胞移行など臓器間の細胞移動や,皮質から髄質など胸腺器官内の細胞移動が伴うことが知られている.しかし,それら細胞移動の詳細な機構や生理的意義はいまだに明らかではない.近年,胸腺T細胞分化に伴う細胞移動の制御におけるケモカインおよびケモカイン受容体の関与がつぎつぎと明らかにされてきた.本稿では著者らが最近報告した -
腸管粘膜固有層へのIgA抗体産生細胞のホーミング
213巻11号(2005);View Description Hide Description腸管の粘膜固有層には炎症の存在しない生理的な状態でもリンパ球やマクロファージ,樹状細胞など多数の免疫担当細胞が存在している.こうした状況は生理的炎症ともよばれ,腸管粘膜に特徴的な組織像である.なかでも粘膜免疫にとって重要な位置を占めているのが,分泌型IgA抗体であり,陰窩上皮付近を中心に存在するIgA形質細胞によって産生される.従来,腸管粘膜固有層へのIgA抗体産生細胞のホーミング機構には不明な点が多かった.しかし,最近になり,具体的なケモカイン/ケモカイン受容体系の役割が明らかになってきた.本稿では,腸 -
スフィンゴシン1−リン酸受容体アゴニストによるリンパ球動態調節
213巻11号(2005);View Description Hide Description免疫系のなかで中心的な役割を担うT細胞は胸腺内で分化・成熟した後に,胸腺髄質から末梢血管へと放出される.血管へ移行した成熟T細胞は,脾,リンパ節,Peyer板などの二次リンパ系組織へ移行(ホーミング)した後に,さらにリンパ管を経て血管へと再循環し,その過程で抗原と出会った際に免疫応答を引き起こす.このようなT細胞の胸腺内分化に伴う細胞移動および二次リンパ系組織へのホーミングの過程にはケモカイン/ケモカイン受容体の相互作用が重要である.一方で,T細胞がリンパ系組織から移出される機構については不明な点が多かっ
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フォーラム
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第69回日本循環器学会学術集会総会シンポジウムレポート Ion channels and cardiac arrhythmias:Current understanding and future perspective(イオンチャネルの基礎と臨床:新しい展開)
213巻11号(2005);View Description Hide Description
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TOPICS
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- 内分泌・代謝学
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- 耳鼻咽喉科学
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連載 五感の生理,病理と臨床
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はじめに
213巻11号(2005);View Description Hide Description五感は体外からの情報を得る感覚認知機構であり,その生理,作用機構の解析については最近急速に進歩を遂げてきている.現代生活の様式が大きく変化しているなか,五感の様相にもいろいろな問題を提起している.とくに人工的に合成された色,音,香り,味やデジタル化された視覚,聴覚情報などが蔓延している.さらに,現代生活特有の五感の異常も出現してきている.また,いわゆる生活習慣病の要因のひとつに,五感の異常,鈍麻が関与している可能性もある.五感を積極的に利用したさまざまな治療法(アロマセラピー,音楽療法,光療法など)も補完 -
1.脳の視覚情報処理
213巻11号(2005);View Description Hide Description1960年前半にはじまる視覚の脳研究は計測手法の開発に支えられ,めざましく進展した.網膜から数十の視覚連合野からなる視覚情報処理の階層構造が明らかにされ,それらの視覚系皮質をつなぐ視覚チャネルの存在も明らかにされている.工学的な観点から視覚情報処理を研究する視覚の計算論も大きな発展を遂げている.当初は網膜から視覚信号が視覚チャネルを遡り視覚系皮質の頂点に到達することにより視覚が成立すると考えられていたが,そのような単純な図式では説明できないさまざまな視覚情報処理の側面が明らかにされた.立体視の対応点問題,
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